明日、7月19日発売の雑誌「バディ」9月号に、マンガ『童地獄(わっぱじごく)・中編』が掲載されます。内容は、時代物ショタ責めマンガ。
先月号の前編では、肉体的な責めがメインでしたが、中編のメインは、凌辱プラス精神的恥辱責め。前編に引き続き、ラブのひとかけらもございません(笑)。
というわけで、よろしかったらお読みくださいませ。
来月の後編もお楽しみに!
バディ9月号 (amazon.co.jp)
HOUSEとバイオニック・ジェミーとゴールドパピヨン
児雷也画伯のブログで、大林映画の最高峰『HOUSE』のサントラがCDになっていたことを知り、急いで購入。すると、それを見た熊が「自分も買う」と言うので、一緒に新宿のディスクユニオンへ。
渋谷から新宿へ行くのに、初めて副都心線に乗ってみた。JR新宿駅の混雑を通らずに、ダイレクトに新宿三丁目に出られるので、実に快適。これから新宿に行くときは、これを使おう。
ディスクユニオンで、テレビ『バイオニック・ジェミー』のサントラを見つけたので、大喜びで購入。しかし、後から良く見たら、『バイオニック・ジェミー』の中の「ゴールドマン暗殺指令」の第一話と第三話のBGM集という、えらいニッチなシロモノだった(笑)。しかも、テーマ曲は収録されておらず、テーマ曲の没バージョンが収録されているというマニアックさ(笑)。
とはいえ、テーマ曲だけだったら、別のコンピレ盤に収録されているのを持っているし、音楽そのものもラロ・シフリンとバート・バカラックとレーナード・ローゼンマンが混じったみたいでカッコイイし、聞き覚えがある曲もあるし、満足のいく一枚でした。作曲者のジョー・ハーネルのサイト(既に故人のようですが)で、少し試聴できるので、興味のある方はどうぞ。
でも、どうして『バイオニック・ジェミー』のDVDは出ないんだろう? 出たら即買いなのに……。
因みに、私の「恥ずかしい過去」の中に、「マルベル堂の通販でリンジー・ワグナーのブロマイドを買ったことがある」というエピソードがあるくらい、バイオニック・ジェミーは好き(笑)。「♪わたしのからだを〜かけぬ〜ける〜ばいお〜にっくの〜」とかゆーヘンな日本語版主題歌だって、ちょっとだったら歌えるぞ(笑)。
同じくディスクユニオンで、ジュスト・ジャカンの映画『ゴールドパピヨン』の「ディレクターズカット版」なる輸入DVDも発見。個人輸入で取り寄せようか、ちょっと悩んだ後、ついでなので購入することに。
ところが帰って鑑賞してみたら、尺は日本盤DVDと同じで、特にどこも増えているシーンはなくて、ちょいとガッカリ。どうやらアメリカ公開版はかなりカットされたものだったらしく、それと比べてのディレクターズ・カット版だったみたい。因みに日本公開時にもカットされていたシーンはあって、LDでも同様だったんだけど、それは日本盤DVDで既に復活済みだったので、あまり内容的なありがたみはなし。
ただ、日本盤には仏語音声しか収録されていなくて、LDで親しんでいた英語音声が聞けなかったのが残念だったんだけど、この米盤は英仏二カ国語収録なのは嬉しかった。特に、ウィラード役のブレント・ハフの声は、やっぱ吹き替えられた仏語じゃなくて、ご本人の喋る英語がヨロシイ。
いや、好きなんですよ、このときのブレント・ハフ。セクシーだし、カワイイし、カッコイイし。でも、この映画以外だと、B級ベトナム戦争映画の『ストライク・コマンドー2』とか、B級ファンタジー映画の『ストーム・クエスト』とか、けっこうしょーもない映画でしか見たことがない(笑)。あ、でも『ストライク…』の方は、劇中で『レイダース/失われた聖櫃<アーク>』のアクション・シーンを完全コピーしていたり、上半身裸での電気拷問シーンがあったりで、嫌いじゃないけど(笑)。改めて調べてみたら、現在まで途切れずに出演作があるし、監督業にも進出していたりと、お元気なご様子。
特典は、ジャカン監督のオーディオ・コメンタリーとインタビュー、トーニー・キテインのグエンドリン写真ギャラリー、キンゼイ博士が語るジョン・ウィリー(音声のみ)、米国版と国際版の予告編とか(国際版の方は、予告編というかプロモーション・フィルムっぽかった)……と、なかなか本格的。
というわけで、期待していた未公開シーンはなかったものの、この映画をこよなく偏愛する私としては、満足のいくお買い物でした。
そうそう、この米盤DVDを出しているメーカーですが、「セヴェリン」っつー、いかにもマニア御用達の会社名でした(笑)。
というわけで、何だか個人的な偏愛モノが三つ重なった、そんな一日でした。
“The Savage Sword of Conan”



“The Savage Sword of Conan”
前回の画集“Conan: The Ultimate Guide to the World’s Most Savage Barbarian”に引き続き、またまた「蛮人コナン」本をご紹介。今回はアメコミ版です。
現在、コナンのコミックスは、米ダークホース社から、私の知っている限りでは4つのシリーズで刊行中です。”Conan Ongoing series”と”Conan miniseries”と銘打たれた2つが新作、”The Cronicles of Conan”と”The Savage sword of Conan”が復刻本。
まあ、流石に私もそれらをコンプリート買いしているわけじゃありません。全部合わせると20冊以上にはなるしね。で、だいたいは好みのアーティストが描いている本だけ、ぽちぽちツマミ買いしているんですが、今回紹介する”The Savage Sword of Conan”シリーズだけは、今のことろ一番のお気に入りでコンプしてます。
私も最近知ったんですが、かつてコナンのアメコミ版は、同じマーヴェルから”Conan the Barbarian”と”The Savage Sword of Conan”の二種類が出ていたらしいです。で、”Barbarian”の方が本文もカラーの普通のアメコミ(ちょっと語弊があるけれど、まあいわば低年齢層向け)で、本文が白黒の”Savage Sword”がアダルト向けというラインだったらしい。因みに、前述のダークホース刊の4種のうち、”The Cronicle of Conan”が、この”Barbarian”をリマスタリング(っつーか、彩色をデジタルでやり直したというか)して合本にしたシリーズです。
で、アダルト版の方の”Savage Sword”の合本版ですが、現時点では3冊が刊行済みで、4巻が近日発売予定。
書影を見ての通り表紙はカラー(当時の表紙絵を使用)ですが、本文はわら半紙っぽい紙に黒の一色刷り。ちょいと耐久性に不安がある紙質ではありますが、印刷そのものは、粗悪な紙に見られがちな、にじみやかすれ等はいっさい見あたらず、極めてクリアーな品質。本文中に、当時の雑誌の表紙がモノクロで掲載されているんですが、これもグレーの階調がきちんと出ているので、ひょっとしたら見た目よりちゃんとした紙なのかも知れません。
ページ数は、一冊当たり驚きの550ページ近く。薄い用紙なのに本の厚みは2センチ以上あって、見応えタップリ。
さて、私が何故この”SavageSword”シリーズを気に入っているかというと、それはやはり絵の魅力、これに尽きます。白状しちゃうけど、私はアメコミって、もっぱら「見る」だけで、ほとんど「読む」ことはないです(笑)。
そして、このシリーズの絵は、やはりアダルト向けラインだったせいか、いわゆる昔のアメコミ風とは異なった、もっと作家性の強い、コミックの絵というよりは「ペン画」を思わせるものが多く、これが実に何とも良いのですよ。
では、具体的な絵の話。
アメコミでは、様々な作家が同じシリーズを描き継ぐのが常ですが、私が何と言っても大好きなのは、ペンシラーがジョン・ブシェマ、インカーがアルフレッド・アルカラというコンビ。(日本のマンガと異なり、アメコミの制作はシステマチックに分業化されていて、鉛筆で絵を描く人とインクでペン入れする人、別々のアーティストだったりします)



まあ、上のサンプル画像を見ればお判りと思いますが、ハッチングの強弱だけで、明暗から立体感から質感から、ダイナミックかつ繊細に見せてくれて、もうペン画として本当にクオリティが高い。全コマこんな調子で描かれているもんだから、ページをパラパラめくっているだけでウットリです(笑)。しかもね〜、内容は半裸のマッチョだし、しょっちゅうとっ捕まって縛られたりするし(笑)。
他にも、魅力的なアーティストは沢山います。
1巻を例にとると、ページは少ないんですが、ペンと鉛筆のミクスチャーで魅せる、ジェス・ジョドロマンの絵は見逃せない。

筆のタッチがダイナミックな、パブロ・マルコスも良い感じ。

もちろん、バリー・ウィンザー・スミスも描いているし(ただ正直なところ、私は彼のコミック版の絵は、その世評の高さほど好きではないです。一枚物のイラストレーションは、すごく良いと思うんだけど、コミックになると、顔の造形のクセの強さやデッサンの弱さが気になるし、出来不出来のムラも大きいような気がします)、お懐かしや、アレックス・ニーニョも描いている。
他にも一枚絵で、ニール・アダムス、ジェフリー・ジョーンズ、エステバン・マロート……と、ツルモトルーム版『スターログ』の愛読者にはタマラナイ名前が並びます(笑)
2巻では、やはり相変わらずジョン・ブシェマ+アルフレッド・アルカラが絶好調で、しかも嬉しいことに本の8割方はこのコンビの作画。

ニール・アダムス+ザ・トライブのコンビも見応えあり。

3巻では、上でちょっと苦言を呈してしまったバリー・ウィンザー・スミスが、今度は本領発揮で素晴らしい作画を。

太目の線でコントラストを効かせた、アーニー・チャンも良い。

一枚絵だけど、1巻で既出のジェス・ジョドロマンの再登場も嬉しいところ。

というわけで、興味のある方は、まず1巻を入手してみることをオススメします。それが気に入ったら、2巻3巻も気に入ること間違いなし。
“The Savage Sword of Conan vol.1” (amazon.co.jp)
“The Savege Sword of Conan vol.2” (amazon.co.jp)
“The Savage Sword of Conan vol.3” (amazon.co.jp)
(何故かアマゾンでは3巻の書影が違っている……)
ただ、ひとつだけ惜しいのは、当時のカバー画がモノクロで収録されているところ。いちおう、表紙と裏表紙に一点ずつカラーでも掲載されているんだけれど、せっかくなら全部カラーで見たかった。
あ〜あ、画集の紹介のときに紹介した、お気に入りのアール・ノーレムの表紙絵なんか見てると、特にそう思っちゃうんだよなぁ……残念。
“Conan: The Ultimate Guide to the World’s Most Savage Barbarian”

“Conan: The Ultimate Guide to the World’s Most Savage Barbarian”
先日ここで “Conan, The Phenomenon: The Legacy of Robert E. Howard’s Fantasy Icon”という、ロバート・E・ハワードが生み出した「蛮人コナン」の図像的イメージを、その誕生から現在に至るまで辿った画集を紹介しましたが、最近また、それとは別の切り口のコナン本を入手したので、そのご紹介。
どんな内容の本なのかというと、まず、日本でも発売されているような、歴史物のムック本を想像してください。『ビジュアル図解・××史』みたいな、地図や写真、出土品や想像図なんかをタップリ使って、テキストでそれを補足する……みたいなタイプの大判本。
そんな感じで、ハイボリア時代と蛮人コナンの生涯を、編年体で解説した、フルカラー&ハードカバーの大判本です。
トッド・マクファーレンによる序文に続き、「ハイボリア時代とは」「地図」「主な神々」なんつー、ファンタジー設定好きには嬉しくなっちゃうような導入を経て、いよいよコナンの一代記が、「キンメリア時代」「盗賊時代」「傭兵時代」「黒海岸時代」などなど綴られていきます。で、そこで出てくるイベントやキャラクターなどが、後述するような様々な図版で紹介されていく……ってな構成。
資料性という意味では、こういったコナンの物語を年代記的に体系化するという行為そのものが、ハワードの死後に別の作家によって行われた、いわば二次創作とも言えるような行為なので、果たしてこういった内容の本に、どれほどの正当性があるかどうかは疑問です。
しかしまあ、そういった原理主義的な考え方はともかく、これは、一人の作家が生み出したキャラクターが時と共に一人歩きを始め、その結果生まれたキャラクター・ブックだと考えればいいでしょう。
アメコミなんかが好例ですが、こういった、キャラクターを軸として、そこにある種のファン心理が収束していき、結果として個人の創作力を越えた広大なユニバースが形成されていくというのは、創作の一つの姿や可能性として、作家としてもかなり興味深いものがありますね。
さて、コナンやハイボリア時代ってのは架空のものですから、もちろん遺跡だの出土品だのがあるわけじゃない。
しかし、そこはそこ、1930年代初頭にハワードの筆によって誕生して以来、様々な作家とメディアに受け継がれながら、現在にいたるまで長い歴史のあるコナンのことですから、ヴィジュアル資料は多岐豊富なわけです。この本では、小説版の表紙絵からアメコミ版の決めゴマ、アンティーク調の創作地図からゲーム版の美術設定ボードと思しき図像まで、古今の様々な作家による様々なコナン像が、これでもかこれでもかってくらい、ふんだんに収録されております。その豊富さといったら、私も初めて見るような絵ばっかり。

ただ、純粋な画集として楽しむには、図版の作者のクレジットが明確ではなかったり、レイアウト効果重視でトリミングや切り抜き版を多用していたり……と、難点もなきにしはあらず。
しかし、それでもこの膨大な図版枚数と、それらをまとめて見る機会の少なさという点を考えると、そういった難点も相殺して余りあるという印象。参考にアップしたサンプル画像をご覧頂ければ判りますが、全ページこんな感じで、それが160ページ以上続くんですから、満足度はかなり高い。
また、画集的な意味で、特に個人的に嬉しかったのは、収録作家陣の豊富さ。カバー絵を描いている、私も大好きなアレックス・ロスから始まって、もちろんフランク・フラゼッタやボリス・バレジョーなんて有名どころもあるんですけど、それより今まであまり見る機会のなかった、アダルト・アメコミ版のカラー表紙絵の方が、扱いも大きく多数収録されていること。

クレジットがないので良くは判りませんが、私の判ったところでいうと、前にここで紹介したことのある、男性向けパルプ雑誌の表紙絵とかも描いていたイラストレーター、アール・ノーレムの描くコナンなんか、実にヨロシイですな。サンプル画像にある、怪物に組み伏せられているヤツとか、手鎖で女の上に立っているヤツとかがそうです。
そんなわけで、前回のコナン本に引き続き、これまたマッチョ絵好きにはオススメできる画集でした。
“Conan: The Ultimate Guide to the World’s Most Savage Barbarian” (amazon.co.jp)
トロイのトイレ
前回の記事に絡めて、私が実際にトロイアの遺跡(現トルコのトゥルヴァ)に行ったときの写真なんぞを、いくつかアップしてみませう。
私がトロイアを訪れたのは、1991年から92年にかけて、インドからエジプトまで陸路横断旅行をした途中のことででした。
この写真は、トゥルヴァの街の全景。
92年の元旦、イスタンブールに宿をとっていた私は、長距離バスに乗ってトロイア遺跡の観光に行きました。ところが元旦というせいもあって、遺跡まで行くバスがなく、国道だかハイウェイだかで途中下車して、あとは遺跡まで雪道を、えっちらおっちら1時間ほどかけて歩くはめになりました。
遺跡の入り口では、こんな感じで「トロイの木馬」がお出迎え。もちろん観光用に新たに作られたものなので、私が行ったときには、まだまだ真新しい感じでした。
いちおう脚の間の梯子を登って、木馬の中に入れるようになっています。窓がついていることからもお判りのように、ちょっとした展望台になっているというわけ。この写真でも、てっぺんからどなたかの顔が覗いていますね(笑)。
トロイアの遺跡は、こんな感じで石組みが残っているくらいで、いわゆる遺跡遺跡した美しい建造物とかは残っていません。何かの工事現場だと言われたら、そう信じてしまいそうなくらいで、スケールもさほどない。
歴史や神話にある程度の思い入れがないと、観光してもさほど楽しめないかもしれません。
ただ、その「何も残っていない」ことが、逆に「兵どもが夢の跡」といった情緒もかき立ててくれるという側面もあります。
しかも私が訪れたときは、ご覧の通りのかなりの荒天だったので、その荒涼としたムードも、いや増しに強調されました。個人的には、けっこうロマン気分に浸れた印象の深い場所です。
で、遺跡の中にはお便所もあるんですが、これがそのサインボード。
男女の表示が、ちゃんとパリスとヘレネーになっているという、洒落っ気が楽しかった(笑)。
身体が冷えたのでここでオシッコして、その後は、雪道を再度えっちらおっちらと戻り、バスを摑まえてベルガマ(ペルガモン)へと移動しました。
『トロイ ディレクターズ・カット』
『トロイ ディレクターズ・カット』(2007)ウォルフガング・ペーターゼン
“Troy (2007 version)” (2007) Wolfgang Petersen
2004年に公開された、ウォルフガング・ペーターゼンの映画『トロイ』が、尺が30分ほど長くなったディレクターズ・カット版になって発売されたので、ホクホク喜んで買って参りました。
結論から先に申しますと、オリジナルの劇場公開版が好きな方だったら、このディレクターズ・カット版は必見。劇場公開版がディテール・アップされていて、味わいも深みも迫力も増しています。
でも、オリジナル版がそんなに好きではなかったら、このディレクターズ・カット版も、印象自体には大幅な変化はないでしょう。
未見の方には、このディレクターズ・カット版はオススメ。
どういった部分が変わっているかというと、まずはキャラクターの細かな掘り下げの部分。キャラクター像自体には大幅な変化はないんですが、シーン自体が新たに増えているものもあり、シーンは同じだがセリフが増えている部分もありで、こういった追加によって、個々のキャラクターの心情やモチベーションなどが、よりクリアで繊細なものになっています。
もう一つ目立つのは、戦闘シーン絡みの追加。血生臭い場面が増えているのと、それと同時に戦いの哀しさや虚無感も、より強調されています。特に、導入部に追加された犬のシーンと、クライマックスのトロイ落城の追加シーンは秀逸。これらの追加によって、この悲劇の持つ「人の世の哀しさ」を、オリジナル版より更に巨視的な視点から俯瞰するような、そんな味わいが加わっています。
ちょいとマニアックなファン視点でいくと、音楽の変更も見逃せないところ。
というのはこの映画、公開直前になって、音楽のガブリエル・ヤレドが降ろされてしまい、ジェイムス・ホーナーへと変わったという経緯があるんですが、今回のディレクターズ・カット版では、エンド・クレジットに追加音楽としてヤレドの名前があります。ヤレド好きの私としては、この復活劇は嬉しいサプライズ。
もちろん、メインに使用されているのはホーナーのスコアなんですが、例えばエンド・クレジットで使われていた、ジョシュ・グローバンの歌う「リメンバー・ミー」が、今回のディレクターズ・カット版では未使用だったりして、音楽の使われ方が全体的にちょっと渋めになっている印象があります。
ケレン味が減った分、物足りなさを感じる方もいそうではありますが、個人的にはオリジナルのホーナーの音楽に、悪くはないんだけどちょっと大味な感じを受けていたので、この変更は好印象でした。
『トロイ ディレクターズ・カット』(amazon.co.jp)
さて、ついでにオリジナル版とディレクターズ・カット版に共通する、映画自体の印象なんぞについて、改めて少し書いてみましょう。
まず、この映画に対する評価が決定的に分かれる点として、『イーリアス』およびトロイア戦争に絡む伝承を、この映画がかなり大胆にアレンジしていることについて、それを是とするか非とするかが挙げられます。で、私個人としては「これはこれでアリ」という是の立場です。
というのも、トロイア戦争の話というのは、それを基に娯楽映画を作ろうとすると、モノガタリの幕切れをどうするか、そのトリートメントがかなり難しいと思うんですよ。で、トロイア戦争を描いた映画を見るにあたっては、それをどうクリアするかというのも、個人的に興味が惹かれるポイントだったりするわけです。
以下、ちょっと『トロイ』及び他のトロイア戦争ものの映画に関するネタバレ含みます。お嫌な方は、この段は飛ばしてください。
まず、ロバート・ワイズの『トロイのヘレン(DVD題「ヘレン・オブ・トロイ」)』では、パリスとヘレネーの恋を軸に描きつつ、ラストでヘレネーはメネラーオスの元に戻る。これは伝承通りといえばそうなんですが、娯楽映画としては、何となく終わり方がスッキリしないというか、いまいち釈然としない感が残ります。見所は多々ありますが、映画全体としては、あまり成功しているとは思えないというのが正直な印象。
TVムービーの『トロイ・ザ・ウォーズ』でも、やはりヘレネーとパリスの恋を軸にしており、二人の末路に関しては、やはり同種のスッキリしない感があります。。ただしこの作品では、イーピゲネイアの生け贄のエピソードを入れることによってアガメムノーンを悪役にし、モノガタリの最後に、クリュタイムネストラによるアガメムノーンの殺害を持ってくることでカタルシスを作り、娯楽作品的なバランスを保っています。
イタリア史劇の『大城砦』では、映画の冒頭が、ヘクトールの死体を引きずり回すアキレウスのシーンで始まり、主人公はそれを見守るアエネイアースです。モノガタリはトロイアの落城で終わりますが、そこから脱出するアエネイアースと、そこに「この一行が後のローマの始祖となる」というナレーションをかぶせることによって、悲劇でありながらも前向きな、娯楽映画としては実に良いバランスのエンディングになっている。
トロイア戦争ものというと、その後日譚であるエウリピデスのギリシャ悲劇を、マイケル・カコヤニス監督が映画化した『トロイアの女』なんかも忘れがたいですが、これはいわゆる娯楽映画ではないので、そういったトリートメントは見られません。また、逆に言うと、こういった原典の忠実な映像化というスタンスでは、ハリウッド的なビッグ・バジェットによる映像化は不可能でしょう。
というわけで、ふんだんに金を掛けて作られる大作娯楽映画の場合、原典に忠実であれと期待すること自体が、そもそも無理のある話なんですな。その無理を承知の上で、ではいかにトリートメントを加えて、映像作品としての魅力を見せているか、というところに、私としては最も興味が惹かれるわけです。
『トロイ』の初見時には、憎々しく描かれたアガメムノーンを見て、ひゃー、どうすんのよ、こいつが最後まで生きてたら、観客は納得しないんじゃないの、とか、しかも、イーピゲネイアもクリュタイムネストラもカッサンドラも出てこないし、どーやってオチをつけるんだろう、と、他人事(笑)ながら心配になっちゃったんですが、メネラーオスが殺された時点で、覚悟が決まった……というか、もう何が出ても驚かない心構えはできました(笑)。
つまり、この映画の場合は、とにかく娯楽作品的なフォーマットが最重要視されている。エピソードの取捨択一も、そこが基準になっているので、巧拙はともかくブレはない。正直なところ、アキレウスの死のタイミングが変更されたり、木馬を城内に入れるに至るくだりのあたりとか、エピソード的な破綻や無理がないとは言えないんだけれど、それでも苦労と工夫の跡はしのばれる。
そんなこんなで、この映画における大胆なアレンジは、これはこれでアリだというのが、私個人の評価。
その他の魅力としては、モノガタリの中に、戦いとは、名声とは、神とは、信仰とは、といった様々なテーマを盛り込まれているところとか、全体が群像劇として描かれていることなどがあります。
特に後者に関しては、当代の人気俳優、期待の新人、往年の名優、出ると嬉しいバイプレイヤー、といったキャスティングの妙味も加わって、実に充実していました。キャラクターは良く立っているし、皆さん存在感や魅力もタップリ。
アクション・スペクタクルとしても、モブやセットの物量的なスケール感はすごいし、かと思えば、演舞を思わせるような美しくてシャープな剣劇もある。古代幻想としてのトロイア戦争の視覚化という点では、文句なしの素晴らしさ。
美術面の検討も素晴らしくて、特に衣装は素晴らしい。衣装デザインのボブ・リングウッドは、かつてジョン・ブアマンの『エクスカリバー』とデヴィッド・リンチの『砂の惑星』で、感動して名前を覚えた方だったんですが、古代的な質感を損なわず、それでいて優美さも持ち合わせているこの映画の衣装デザインは、本当に好き。
木馬も良かった。どっから材料を調達するんだというツッコミどころを、見事な発想でクリアしつつ、同時に造形的にも美しいのが素晴らしい。映画に登場した歴代の「トロイの木馬」の中では、問答無用で一等賞。
あと、『300』の登場で、ちょっと印象は霞んじゃったけど、マッチョ映画としても見応えあります(笑)。ネイサン・ジョーンズは、この映画で名前を覚えたんだっけ(笑)。
ちょっと宣伝、ショタ責め時代劇マンガ(前編)描きました
6月21発売の「バディ」8月号に、ショタ責め時代劇マンガを描きました。タイトルは『童地獄(「わっぱじごく」と読みます)』。8月号に掲載されるのは前編。
主人公のタイプは、例によってショタっつーより、もう少し年長な感じ。筋肉も、いつものショタキャラよりは、ちょいと増量気味。
内容は、ラブのかけらもございませんで、もうひたすら責めと凌辱、それオンリー。
考えてみると、ショタ系で髷物を描くのは、これが初めてです。同じ責め場を描くにしても、熊系の野郎責めを描くのとはまたひと味違って、なかなか楽しゅうございました(笑)。
というわけで、よろしかったらお読みくださいませ。
バディ8月号(amazon.co.jp)
……で、来月号もお楽しみに(笑)。
夏向き変わり種クラシック
梅雨のわりには好天続きで、湿気と雨が苦手な私にしてみれば、本来ならば好調子……のはずが、忌々しいことに風邪なんぞをひいてしまって、ちょっと寝込んでしまいました。
とはいえ、幸い急ぎの締め切りとかがなかったので、二日ほど食事をおかゆさんにして、タバコも吸わずに大人しく寝ていたら、熱も引いて咳もおさまりました。
さて、先日久々にレコ屋のクラシック売り場に行って、いろいろ物色してきたんですが、その中から、夏向けの変わり種をご紹介しましょう。
“Franz Schubert / Renegades Steel Orchestra”
スティールパン(スティールドラム)って楽器、ご存じですか? トリニダード・トバゴ生まれの、ドラム缶から作られた打楽器で、いかにもカリビア〜ンなムードを醸し出してくれる、コロコロキラキラした涼やかな音色が魅力です。
そのスティールパンのアンサンブルで、シューベルトの楽曲を演奏しているのが、このアルバム。「軍隊行進曲」から始まって、「セレナーデ」、「死と乙女」、「未完成」、「アヴェ・マリア」……といった具合に、誰でも一度は耳にしたことがあろうお馴染みのメロディーが、20人編成のスティールパンの演奏で、コロコロキラキラと爽やかに奏でられます。
そうそう、音楽の授業でお馴染みの「魔王」も入ってます。知らないって? ほら、あの「♪風〜の夜に〜、馬〜を駆り〜、駆け〜り〜ゆ〜くもの〜あ〜り〜」ってヤツ、「♪おと〜さん、おと〜さん」ってヤツですよ。音楽鑑賞の授業で聴いたことあるでしょ? あの曲も、スティールパンの音色になると、何とも爽やかな雰囲気になっちゃうので、何だか聴いていて頬がゆるんできます(笑)。
まあ、クソマジメなクラシック好きな方にはどうかと思いますが、ラウンジとかエキゾチカがオッケーな方には、これはかなりオススメ。何てったって楽しいし、何よりキレイだし、そして演奏のクオリティも高いです。
限定盤のせいか、アマゾンでは見あたらなかったんですけど、タワレコのサイトにありました。こちら。
で、これを聴いていたら、だいぶ前に買ったヤツなんだけど思い出したアルバムがあったので、ついでにそちらも紹介しませう。
“Parsifal Goes La Habana / Ben Lierhouse Project”
これは「パルジファル、ハバナへ行く」というタイトルからも察しがつくように、ワーグナーの楽曲をキューバ音楽のアレンジで演ったものです。
編成はオーケストラを従えたラテン・ジャズ・バンドといった感じ。ムーディなピアノ、ラテン・リズムを刻むパーカッション、優美なストリングス等々が絡み合った、実にゴージャスな味わいで、コンセプト的にはキワモノっぽい感じなのに、実際の音にはそういった雰囲気は皆無なのがスゴイ。
ただし、前出のスティールパンのアルバムが、楽曲の構成自体はクラシック準拠なのに対して、こちらはモチーフにクラシックの曲を使って、それをラテン・ジャズ調に変奏しているという感じ。曲によっては、どこがワーグナーなのかヨーワカランといったモノもあります。
とはいえ、例えばあの「タンホイザー序曲」が、原曲のドラマチックさはそのままに、そこにラウンジ的な軽妙さが加味されて、何とも自然にラテン・ジャズへと変身しているのを聴くと、かなりビックリ&カンドーいたします。「パルジファル」が、ジャズィなリズムとアーシィなコーラスを得て、ミュージカルの感動のフィナーレみたいになってたりするのも、また楽し。
こっちはアマゾンにありました。こちら。