“The Savage Sword of Conan”

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“The Savage Sword of Conan”
 前回の画集“Conan: The Ultimate Guide to the World’s Most Savage Barbarian”に引き続き、またまた「蛮人コナン」本をご紹介。今回はアメコミ版です。

 現在、コナンのコミックスは、米ダークホース社から、私の知っている限りでは4つのシリーズで刊行中です。”Conan Ongoing series”と”Conan miniseries”と銘打たれた2つが新作、”The Cronicles of Conan”と”The Savage sword of Conan”が復刻本。
 まあ、流石に私もそれらをコンプリート買いしているわけじゃありません。全部合わせると20冊以上にはなるしね。で、だいたいは好みのアーティストが描いている本だけ、ぽちぽちツマミ買いしているんですが、今回紹介する”The Savage Sword of Conan”シリーズだけは、今のことろ一番のお気に入りでコンプしてます。

 私も最近知ったんですが、かつてコナンのアメコミ版は、同じマーヴェルから”Conan the Barbarian”と”The Savage Sword of Conan”の二種類が出ていたらしいです。で、”Barbarian”の方が本文もカラーの普通のアメコミ(ちょっと語弊があるけれど、まあいわば低年齢層向け)で、本文が白黒の”Savage Sword”がアダルト向けというラインだったらしい。因みに、前述のダークホース刊の4種のうち、”The Cronicle of Conan”が、この”Barbarian”をリマスタリング(っつーか、彩色をデジタルでやり直したというか)して合本にしたシリーズです。

 で、アダルト版の方の”Savage Sword”の合本版ですが、現時点では3冊が刊行済みで、4巻が近日発売予定。
 書影を見ての通り表紙はカラー(当時の表紙絵を使用)ですが、本文はわら半紙っぽい紙に黒の一色刷り。ちょいと耐久性に不安がある紙質ではありますが、印刷そのものは、粗悪な紙に見られがちな、にじみやかすれ等はいっさい見あたらず、極めてクリアーな品質。本文中に、当時の雑誌の表紙がモノクロで掲載されているんですが、これもグレーの階調がきちんと出ているので、ひょっとしたら見た目よりちゃんとした紙なのかも知れません。
 ページ数は、一冊当たり驚きの550ページ近く。薄い用紙なのに本の厚みは2センチ以上あって、見応えタップリ。

 さて、私が何故この”SavageSword”シリーズを気に入っているかというと、それはやはり絵の魅力、これに尽きます。白状しちゃうけど、私はアメコミって、もっぱら「見る」だけで、ほとんど「読む」ことはないです(笑)。
 そして、このシリーズの絵は、やはりアダルト向けラインだったせいか、いわゆる昔のアメコミ風とは異なった、もっと作家性の強い、コミックの絵というよりは「ペン画」を思わせるものが多く、これが実に何とも良いのですよ。

 では、具体的な絵の話。
 アメコミでは、様々な作家が同じシリーズを描き継ぐのが常ですが、私が何と言っても大好きなのは、ペンシラーがジョン・ブシェマ、インカーがアルフレッド・アルカラというコンビ。(日本のマンガと異なり、アメコミの制作はシステマチックに分業化されていて、鉛筆で絵を描く人とインクでペン入れする人、別々のアーティストだったりします)
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 まあ、上のサンプル画像を見ればお判りと思いますが、ハッチングの強弱だけで、明暗から立体感から質感から、ダイナミックかつ繊細に見せてくれて、もうペン画として本当にクオリティが高い。全コマこんな調子で描かれているもんだから、ページをパラパラめくっているだけでウットリです(笑)。しかもね〜、内容は半裸のマッチョだし、しょっちゅうとっ捕まって縛られたりするし(笑)。

 他にも、魅力的なアーティストは沢山います。
 1巻を例にとると、ページは少ないんですが、ペンと鉛筆のミクスチャーで魅せる、ジェス・ジョドロマンの絵は見逃せない。
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筆のタッチがダイナミックな、パブロ・マルコスも良い感じ。
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 もちろん、バリー・ウィンザー・スミスも描いているし(ただ正直なところ、私は彼のコミック版の絵は、その世評の高さほど好きではないです。一枚物のイラストレーションは、すごく良いと思うんだけど、コミックになると、顔の造形のクセの強さやデッサンの弱さが気になるし、出来不出来のムラも大きいような気がします)、お懐かしや、アレックス・ニーニョも描いている。
 他にも一枚絵で、ニール・アダムス、ジェフリー・ジョーンズ、エステバン・マロート……と、ツルモトルーム版『スターログ』の愛読者にはタマラナイ名前が並びます(笑)

 2巻では、やはり相変わらずジョン・ブシェマ+アルフレッド・アルカラが絶好調で、しかも嬉しいことに本の8割方はこのコンビの作画。
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ニール・アダムス+ザ・トライブのコンビも見応えあり。
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 3巻では、上でちょっと苦言を呈してしまったバリー・ウィンザー・スミスが、今度は本領発揮で素晴らしい作画を。
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太目の線でコントラストを効かせた、アーニー・チャンも良い。
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一枚絵だけど、1巻で既出のジェス・ジョドロマンの再登場も嬉しいところ。
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 というわけで、興味のある方は、まず1巻を入手してみることをオススメします。それが気に入ったら、2巻3巻も気に入ること間違いなし。
“The Savage Sword of Conan vol.1” (amazon.co.jp)
“The Savege Sword of Conan vol.2” (amazon.co.jp)
“The Savage Sword of Conan vol.3” (amazon.co.jp)
(何故かアマゾンでは3巻の書影が違っている……)
 ただ、ひとつだけ惜しいのは、当時のカバー画がモノクロで収録されているところ。いちおう、表紙と裏表紙に一点ずつカラーでも掲載されているんだけれど、せっかくなら全部カラーで見たかった。
 あ〜あ、画集の紹介のときに紹介した、お気に入りのアール・ノーレムの表紙絵なんか見てると、特にそう思っちゃうんだよなぁ……残念。