『ジュデックス』+”Nuits Rouges”

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『ジュデックス』(1965)ジョルジュ・フランジュ
“Judex” (1965) Georges Franju
(イギリス盤DVDで鑑賞→amazon.co.uk

 1963年製作のフランス映画。監督は『顔のない眼』のジョルジュ・フランジュ。
 1910年代にルイ・フイヤード監督が撮ったサイレント活劇映画へのオマージュとして、謎の覆面義賊団と女盗賊一味の闘いを描いた映画。

 銀行創立20周年と娘ジャクリーヌの再婚を祝う舞踏会を控えた悪徳銀行家ファブローの元に、ラテン語で《裁き》を意味する「ジュデックス」の署名と共に、「これまでの罪を償うために財産を人々に返還せよ、さもなくば舞踏会の日の深夜に命を奪う」という内容の脅迫状が届く。
 ファブローは探偵を雇うが、自分は相変わらず罪業をなじりに来た老人を車ではねる等の悪行を繰り返し、更には孫娘の家庭教師マリーに結婚を迫る。ジュデックスの手がかりは何も掴めないまま、いよいよ祝賀仮面舞踏会が開かれるが、会場に鳥の仮面を付けた謎の手品師が現れる。
 そして時計が十二時を打った瞬間、ジュデックスの警告通りファブローは息絶え、手品師はひっそりと会場を後にする。父の死後、ジャクリーヌは父のしてきた悪行を知って家屋敷や財産を処分することにし、婚約者も彼女から去る。しかし家庭教師のマリーは、恋人と共にファブローの財産を狙っていた。
 そんな中、数人の覆面男たちが、ファブローの遺体を墓地から盗み出す。実はファブローは仮死状態にされていただけで、そのままジュデックスの秘密基地に幽閉され、「お前は死刑の予定だったが、娘さんの行いで救われ、終身刑に変更する」という宣告を受ける。
 一方、マリーと恋人は、夜中にファブローの屋敷に忍び込むが、それをジャクリーヌに見られてしまう。マリーたちは、ジャクリーヌを眠らせて連れ去ろうとするが、ジュデックスがそれを助ける。ジャクリーヌが目覚めたとき、その傍らには鳩の入った鳥籠と、「何かあったら、すぐにこの鳩を放ちなさい、私が助けに行きます」というジュデックスからの手紙が残されていた。
 やがて、ファブローが生きていることを知ったマリーたちは、まず彼を助けて財産を奪おうと企み、その前に口封じのためにジャクリーヌを殺そうとうるが……といった内容。

 なるほどサイレント時代の活劇映画へのオマージュらしく、まさに《奇想天外》という言葉が相応しいストーリー。
 意外であればあるほど良しといった感じで、リアリティも伏線もへったくれもない展開に偶然に偶然が重なって、まあ何とも楽しく転がっていきます。登場人物や道具立ても、つば広帽に覆面黒マントのハンサム義賊、黒い全身タイツに身を包んだ変装が得意な女盗賊、マヌケな探偵と冒険好きの少年、曲馬団の美少女軽業師、廃墟となった古城の地下にある秘密基地、電気仕掛けの様々な空想科学系不思議小道具……といった感じで、レトロ風味がいっぱい。
 モノクロ映像は美しく、活劇ながらも所々にハッとするような詩的なイメージも。映画はアイリス・インで始まり、エピソードの合間合間には、中間字幕調の装飾的な章題が置かれ、いかにも無声映画へのオマージュという雰囲気はタップリ。監督自身による、自分が幼少期に見た映画の想い出の再現といった感じもあり。
 サイレントの活劇映画っぽい強引な作劇は、思わず笑っちゃうところもあったりして、個人的には(ちょっとネタバレ気味なので白文字で)「敵と取っ組み合っていたら、相手の指輪で生き別れになっていた実の息子だと判る」と「壁を昇りあぐねていると、偶然そこに曲馬団の馬車が通り知り合いの軽業師が乗っている」の二つが大爆笑でした(笑)。

 キャストは、私の知っているところでは、ジャクリーヌにエディット・スコブ、軽業師の美少女にシルヴァ・コシナ。
 音楽は『顔のない眼』同様モーリス・ジャールで、これまたステキな曲を聴かせてくれます。特に仮面舞踏会のシーンは、音楽の良さと画面のファンタジックさが相まって忘れがたい出来。
 そんなこんなで、レトロ好きならタップリ楽しめる一本ですが、前述のように作劇やキャラクターも含めて、意図的にアナクロに徹しているので、レトロ趣味がない方には敷居が高いでしょう。
 しかしこうやって見ると、オマージュ元のルイ・フイヤードの映画も見てみたくなるなぁ……DVD出たけどスルーしてた『レ・ヴァンピール 吸血ギャング団』見てみようかしらん。

『ジュデックス』から、ファンタジックな美しさが忘れがたい仮面舞踏会のシーン。

“Nuits Rouges” (1974) Georges Franju
『ジュデックス』と同じく、ジョルジュ・フランジュ監督がクラシック活劇映画へのオマージュとして撮った1974年度作品。
 こちらはカラーで、元々はTVシリーズだったものを、再編集して長編映画に仕上げたものらしいです。

 とある学者の執事が金に困り、主がテンプル騎士団の財宝の握っていると、情報屋にたれ込む。その情報は、地下基地に潜む紅い覆面の男を頭とした覆面ギャング団一味に伝わり、学者はギャングに襲われ口を割らないまま殺されてしまう。
 警察が捜査に乗り出した頃、学者の甥で船乗りの青年が帰還する。しかし直後に本物の甥が現れ、先に現れたのは偽者だと判明する。偽者の手引きをしたことで執事は警察に拘束されるが、何も自白しないまま、ギャング団のマッドサイエンティストによってゾンビ化された刺客に殺されてしまう。
 甥は警察とは別個に、ガールフレンドと、彼女の友人で詩人かつ探偵の男と共に、3人で事件の謎を探り始める。それを知ったギャング団のボスの右腕で、キャットスーツに身を包んだ美女の殺し屋は、ガールフレンドを誘拐しようと計画するのだが…といった内容。

 奇想天外というかシッチャカメッチャカというか、これまた何とも奇天烈なストーリー。
 隠し扉だの地下基地だのゾンビ化手術だの彫像の中に潜む悪漢だの、次から次へと繰り出されるガジェットや仕掛けは実に楽しく、クライマックスはギャング団とテンプル騎士団の銃撃戦というブッ飛び具合。
 ただ『ジュデックス」とは異なり、手法的にはっきりとサイレント活劇へのオマージュを打ち出しているわけではなく(せいぜいアイリス・インが多用されるくらい)、時代設定も制作当時の《現代》なので、レトロ活劇の魅力というよりは、単に古臭くてユルい活劇映画に見えてしまう感もあり。
 また、キャラクターや役者にあまり魅力がないのも、『ジュデックス』と比べて痛いところ。美人殺し屋のゲイル・ハニカットは、峰不二子みたいでなかなかヨロシイんですが、肝心のヒーロー(甥っ子)やヒロイン(ガールフレンド)に魅力がなく、影も薄いのが何とも残念。
 とはいえ、その女殺し屋がキャットスーツ&覆面で、夜の屋根の上で暗躍するシーンや、主人公と探偵が、マネキンに化けていたゾンビ軍団に襲われるシーンや、赤覆面のボスが、バイクで下水道(?)を逃走するシーンなどに、ちらほら魅力的な映像もあり。
 まあ全体のノリはユルいんですが、テンポそのものは決して悪くなく話もサクサク進みますし、DVDも『ジュデックス』のオマケみたいにしてついてきたものなので(英盤で『ジュデックス』『Nuits Rouges』の二枚組)、レトロ好きなら軽いノリで楽しめると思います。

 ”Nuits Rouges”から、覆面&キャットスーツの美人殺し屋と警察が、夜のパリの屋根の上でまったり対決するシーンのクリップ。

レ・ヴァンピール-吸血ギャング団- BOX クリティカル・エディション [DVD] レ・ヴァンピール-吸血ギャング団- BOX クリティカル・エディション [DVD]
価格:¥ 12,600(税込)
発売日:2008-11-29

“Bol”(『BOL ~声をあげる~』)

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“Bol” (2011) Shoaib Mansoor
(インド盤DVDで鑑賞、米アマゾンで入手可能→amazon.com

 2011年製作のパキスタン/ウルドゥ映画。ショエーブ・マンスール監督作品。タイトルの意味は《話す》。
 イスラムにおける父権的&女性蔑視的なドグマに囚われた父親と、その妻や娘たちの辿る悲劇を描いた社会派ヒューマン・ドラマ。パキスタン映画の興行成績を塗り替えた大ヒット作だそう。IMDbでも8.0/10という高評価。
【追記】アジアフォーカス・福岡国際映画祭2012で上映、福岡観客賞受賞。

 死刑執行直前の一人の若い女囚が、最後の願いとしてマスコミの前で話しをすることを望み、「私は殺人者ではあるが犯罪者ではない」と前置きしてから、自らの個人史を語り始める。
 彼女は貧しいが子沢山、それも女児ばかりの家に生まれた年長の娘だった。父親は熱心な宗教的求道者として周囲からは尊敬を勝ち得ていたが、ドグマに囚われ妻や娘たちを家に閉じ込め、学校にも行かせず外出もさせないという男だった。
 父は男児の誕生を望んで、繰り返し繰り返し妻を妊娠させるが、生まれてくるのは女児ばかりだった。そしてようやく息子が授かるが、その子は半陰陽と判断され、父親はその存在を恥じて家に閉じ込める。成長した彼はトランスジェンダー的な振る舞いを見せるようになる。
 ヒロインはそんな弟を独り立ちさせるために、母や妹たちや開かれた価値観を持つ隣家の息子の助力を得て、絵が得意な彼を、父親に内緒でトラックに絵を描くペンキ屋に弟子入りさせる。ペンキ屋の親方は彼の才を認めるが、彼の中性的な物腰が他の同僚やトラック運転手から目を付けられ、ついに親方のいない間に乱暴されてしまう。
 母や姉たちは、出掛けたまま帰って来ない彼のことを案じるが、父親は「そのままどこかで死んでくれればいい」とまで言う。そして、乱暴されたあと縛られて放置されていた彼は、ヒジュラ(男女以外の第三の性。多くは女性化した男性で、歌舞や売色等を生業とする)に助けられ、家まで送り届けられる。父親はそれを無視して扉を開けようとしないが、母や姉たちがそれに気付いて彼を迎入れる。
 事情を聞いた母や姉たちは、彼を無理に一人前の男にしようとした自分たちが間違っていたと悔やむが、この事件で父親はますます息子を疎むようになり、ついにはその寝室に忍び込み……といった内容で、ここまでが前半。
 後半はこれが皮切りとなり、父親が預かっていたモスクを建てるための募金の使い込みや、そんな父親が娼館の主と金銭的な取引をして、そこの娘の腹を借りることになるという事件が絡み、そんな父親と独立心のあるヒロインの対立は、ますます激しさを増していき、結果この一家はどんどん泥縄に……となっていきます。

 これはお見事。大いに見応えあり。
 前述したTGの息子の部分だけでも、かなりズッシリとしたテーマなんですが、それはまだほんの序の口。後半は、ドグマによって抑圧される女性とそれを容認してしまう社会、男児を重視する社会が産み出す様々な歪みといった、問題提起や告発に繋がっていき、それがダイナミックなストーリーのうねりと共に描かれていきます。
 死刑直前のヒロインの独白でストーリーが始まることによって、過去に何が起きたのかということと、そして現在のヒロインはどうなるのかという、二本柱で全体を牽引していくので、もう先が気になってたまらない。で、その語られる内容が、特に狙ってツイストを入れてくるわけではないのに、それでも驚くべき展開になっていくので、とにかく最初から最後まで目を離せない感じ。
 とはいえ、ひたすら重くて暗いというわけでもなく、ユーモア描写こそありませんが、それぞれのキャラクターをじっくり描き込んだ波瀾万丈の大河ドラマといった趣で、重いテーマながらもグイグイと力強く引き込んで見せていきます。
 そして、現実の残酷さと希望の双方を踏まえたラストには、思わずウルウル。

 演出も見事。冒頭、向かい合った男女が会話しているシーン……と思いきや、カメラが動くと、二人の間に鉄格子があることが判るカットから「おっ」と思わされましたが、全編に渡って、落ち着いたカメラワークと構図で見せる、しっかりとした重厚な出来映え。
 インド映画同様に、パキスタン映画にも歌や踊りは必須のようで、この映画にも何回か歌舞が登場しますが、挿入歌的な見せ方、ラジオから流れる歌に合わせて踊る、音楽のライブ場面……といった具合に、極力ストーリーに溶け込ませて自然に見せようという工夫があるので、あまり腰を折られる感はなし。
 もちろん、ドラマの置かれている社会事情を考慮しないと、理解や感情移入がしにくいであろう部分もありますし、こういうテーマだとどうしても、一部の音楽シーンが冗長に感じられる部分もあるんですが、しかし重厚なヒューマンドラマとして文句なしの見応え&良作。

 女性映画でもあり、社会派映画でもあり、ヒューマニズム映画でもあり、波瀾万丈の大河ドラマでもあり、ストーリーの面白さ、考えさせられるテーマ、胸を打たれるエモーショナルな展開の数々……と、見て損はない一本。

【余談】DVDのジャケやメニュー画面で一番デッカい二枚目男性が、実はストーリー的にはわりとどーでもいい隣家のお兄ちゃんだったので、ちょっとビックリ(笑)。

単行本『田舎医者/ポチ』表紙色校到着

 4月13日にポット出版さんから刊行予定の新マンガ単行本『田舎医者/ポチ』の表紙色校正が出たので、昨日チェックしてきました。
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 今回は、ちょっとレトロな暖かみのある感じにしたかったので、用紙も純白ではなく生成り系の色合いで、紙としての風合いもあるものを希望したところ、かすかにクリーム色がかって細かな繊維が混入しているテクスチャーの用紙を用意していただけて、結果、もうバッチリの仕上がりです。
 上の写真だと、わりと色彩が鮮やかめに出ちゃってますが、現物はもうちょい浅く沈んだ感じ。
 印刷面の保護も、紙の風合いを損なわないように、通常用いられるPP貼り(透明ビニールようなシートを圧着する)ではなく、マットニスを引いていただくことになっています。
 因みに、私がイメージとして編集さんに提案したのは、《ハトロン紙でカバーをかけるのが似合う本》というもので、イラスト自体もそういった雰囲気を目指して、通常とはちょっと異なるテイストのものを描いてみました。
 本がお手元に届いた際には、そんなちょっとレトロな風合いをお楽しみいただけるかと思いますので、お楽しみに。

 本の発売時期ですが、店頭に並ぶのはゲイショップが最も早く、おそらく4月10日頃になるとのこと。一般書店の店頭は、それより少し遅れて13日頃から。
 ポット出版で直接予約いただいた方、特に先着60名様のサイン本をご予約された方には、見本が刷り上がってポット出版に届いた段階で、私がサインを入れてお送りすることになるので、ゲイショップに並ぶよりも少し早めにお送りできると思います。なお、サイン本の予約は既に定員に達してしまいましたが、通常の予約は引き続き受け付け中ですので、どうぞご利用ください。申し込みページは、こちら
 ネット書店等に関しては、これは各ショップの在庫云々や、間に入る取り次ぎ云々が絡んできますので、正確なところは出版社側では把握できないとのこと。アマゾンなどで発売当初に予約および購入が集中してしまい、発売後すぐに品切れになってしまうことがままありますが、そういった状況には出来るだけ小まめに対応してくださるとのことです。
 発売当初でアマゾンで品切れになった場合、足下を見た業者がプレミア価格を付けてマーケット・プレイスで販売するなんてことも、わりとちょくちょく見かけますが、もしそんなことになっても、他のネット書店には在庫がある場合もありますし、少し待てばアマゾンの在庫も復活しますし、本の在庫自体がなくなって入手不可能になるわけではないので、どうか焦らないようお願いいたします。(過去の単行本で品切れになっているものに関しては、また事情が異なりますので、それはお間違えのないように)

 それでは、発売までいましばらくお待ちくださいませ。

“Badrinath”

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“Badrinath” (2011) V. V. Vinayak
(インド盤Blu-rayで鑑賞、私が利用した購入先はここ

 2011年制作のインド/テルグ映画。
 寺院の守護者となるべく育てられた無双の武芸者と、神を信じない娘とのロマンスを、ブッ飛び級のスケールで描いたアクション大作。

 古来からインドの寺院は、その知識を狙う外敵や、植民地支配を目論む帝国主義者、そして現代はテロリストなどに狙われてきた。
 そんな寺院の守護者を育てるべく、ヒマラヤ奥地の秘寺バルディナースに子供たちが集められ、腕の1振りで百人の敵を倒す古武道が教えられる。中でも抜きんでいたのは、元々は修行者ではないものの「門前の小僧が経を詠む」的にスカウトされた、武芸に秀で信仰にも篤いバードゥリという若者だった。
 ある日バードゥリは、老人が孫娘を連れて寺院にお参りに来る途中、発作を起こして倒れたのを救う。老人は一命をとりとめるが、美しい孫娘のアラカナンダは、幼い頃に眼前で両親が寺院の聖火の事故によって焼死していたため、神を信じることができず、逆に憎んでいた。
 アラカナンダは初めバードゥリと反発しあうが、彼女の心は次第に彼の信仰心によってほぐされていき、やがて彼を愛するようになる。そして結婚を夢見るようになった彼女を、バードゥリの両親も未来の嫁候補として歓迎するのだが、そんな折り、バードゥリのグルである寺院の老師が、彼を自分の後継者にすると決める。
 しかしそれは即ち、バードゥリは妻帯が許されなるということも意味していた。アラカナンダの気持ちを知っているバードゥリの両親はそれを嘆くが、人並みの人間の幸せを越えたグルになるという名誉もあり、その申し出を受諾する。老師は、このことはバードゥリには教えるなと命令し、その結果アラカナンダも、自分の恋心を彼に伝えるきっかけを失ってしまう。
 しかしアラカナンダは、この寺院が冬の間は雪に閉ざされ、寺院の扉も封印されるのだが、その封印時に祭壇に供えられた灯明が、再び扉が開けられる半年後にまだ燃えていたら、灯明に供え物をした願掛けが成就するという話を聞き、そこに望みを託すことにする。彼女はバードゥリに、好きな相手と結婚できるよう願掛けしたいと、その相手がバードゥリ自身であることは伏せたまま、彼の助力を得て寺院に備える秘境に咲く花を取りに行く。
 その一方で、地方の悪辣な有力者と結婚しているアラカナンダの叔母が、悪党と結婚したことで親族から縁を切られ、また、以前公衆の面前でアラカナンダに侮辱されたことを根に持って、彼女を自分の息子の嫁にすることで、屈服させ跪かせようと企んでいた。密かに紛れ込んでいたスパイによって、アラカナンダがバードゥリに恋をしていると知った叔母一家は、彼を殺して彼女を強奪するよう、息子に命令する。
 更にもう一方、寺院の僧侶たちの中にも、バードゥリがアラカナンダを愛しており、彼らの仕える神を裏切って娘を選んだのではないかと疑いを持っており、その話はバードゥリの老師の耳にも届いてしまう。
 果たして二人の運命はいかに……? ってな内容です。

 いや、これは面白かった!
 特に今あらすじを説明した前半までは絶好調。スペクタクル、アクション、ロマンス、歌と踊りが、ジェットコースター・ムービーばりのテンポで次々と展開していき、息をもつかせぬ面白さ。
 まぁストーリーとしては、比較的シンプルな予定調和もので、もうちょっと大きな仕掛けがあってもいいかな……とは思うんですけど、それでもストーリー的な「この後どうなる?」要素が、ヒーローとヒロインのロマンス、それによる信仰と世俗愛の相克、ヒーローと老師の間の信頼や誤解、ヒロインと悪い近親者の間の因縁……などなど、上手い具合に複数要素を絡て引っ張っていくので、全体の牽引力や「目が離せない!」感は上々。
 そこに加えて、暴れ出す象だの、秘境に咲く花だの、善人だけが打たれることの出来る滝だの、閉ざされた寺院の中で点され続ける灯明だの、神の力が宿った土塊だのといった、細かなガジェットやエピソードを色々入れてくるので、それらがテンポの早さとも相まって、なかなかの効果に。
 ただ、後半はちょっとテンポが悪くなり、クライマックスも尻すぼみ感があるのが惜しい。
 前半では比較的控えめだったお笑い場面が、後半の、よりによって事態が逼迫してきた状況下で、しょっちゅう挿入されるもんだから、どうしても見ていてイライラするし、インド映画的には問題なくても、やはりそれがテンポを殺してしまっていることは否めない感じ。ふんだんに入る歌と踊りも、ちょっと後半は多すぎるかなという気も。
 とはいえクライマックスは、ヒーローとヒロインとヒーローの老師という3者の関係を、ヒロインの恋情と共に揺れ動く、信仰心の喪失/復活/再喪失といったモチーフに絡めながら、エモーショナルにグイグイ盛り上げてくれるので、展開自体は上々。前述した尻すぼみ感というのは、悪役が最後を迎えるシーンに映像的な外連味や盛り上がりが乏しいのと(まぁそれ以前が色々スゴ過ぎたので、それらと比べるとどうしても見劣りしてしまう……という要因もありますが)、ハッピーエンド後の余韻が乏し過ぎるので、あくまでも「気分的な盛り上がりが物足りない」という話であって、ストーリーの決着や、それに持っていく作劇自体は、充分以上に佳良だと思います。

 映像的な見応えとしては、まずスペクタクル面で、ヒマラヤの秘寺の大セット。色鮮やかな美術、いかにもインド映画らしいモブと小道具大道具の物量作戦、自然の雄大さ、プラスCG合成による「ないわ〜w」ってな光景……などなど、スケール感と目の御馳走感がバッチリ。
 アクションは、ワイヤー系のアクロバティックなものですが、寺院を占拠したテロリスト軍団やら、恋敵の差し向ける刺客軍団などを相手に、マッチョな肉体美ヒーローが独り剣を片手に、バッタバッタとなぎ倒していくという塩梅なので、これまた文句なしにカッコいい。
 血飛沫は派手に飛び散り、腕や首が飛んだりもするんですが、後者に関しては、一瞬見せてホワイトアウトというパターン。最初は効果のうちかと思ったんですが、後に白いマスクで画面の半分が隠される場面もあったので、どうも検閲とかそっち系の要因らしいですな。
 歌と踊りは、寺院のセットを使った大群舞あり、MTV系のカッコいい(……多分)セットを使ったヒップホップ系あり、ヒーローとヒロインがいきなりスイスだかどっかの雪山や古城にワープして歌い踊るとゆーお約束もあり、テルグ映画っぽいテンポの早い泥臭い系もあり……と、どれも楽しく、これまた大満足。
 音楽自体も上々です。

 主人公バードゥリ役のアル・アルジュンという男優は、私は今回が初見ですが(オープニング・クレジットでは『スタイリッシュ・スター』というキャッチコピーがw)、なかなかのハンサム君で肉体も見事、アクションと踊りもバッチリ(ただし踊りに関しては、動きの速いコレオグラフィーが連続すると、ちょっと息切れ感が見える部分もあり)で、こういう映画のヒーローとして文句なしの百点満点。
 特に肉体美はかなりのもので、しかもテロリスト相手の大殺陣の見せ場では、何故か上半身裸にハードゲイ風のレザーのハーネスなんか着けてたりして、かなりのお得感が(笑)。一緒に見ていた相棒も、横で大喜び(笑)。
 アラカナンダ役のタマンナ・バディア(?)は、個人的に高評価のタミル映画”Paiyaa“などでヒロイン役をやっていた女優さんで、私はこの人、美人だし、気品もキュートさもあるし、大好きです。老けメイクで老師役を演じているプラカシュ・ラジも、タミル映画の親分役や悪党役でよく見るお顔。

 というわけで、前半=文句なしの面白さ、後半=ちょい弛緩あり、ってな感じで、前述したように締めがもう一つ惜しい感もあるんですが、それでも、とにかく見所は盛りだくさんだし、インド映画に馴染みがあってもなくても、たっぷり楽しめる快作だと思います。

予告編。

“Omkareshwari”〜寺院のセットや絢爛たる色彩美による、冒頭の群舞シーン。こーゆーのって見てるだけでも嬉しくなっちゃう(笑)。

“Nath Nath”〜いかにもテルグ映画っぽい、テンポの速い楽しい系。歌詞がテーマソング的で、エンド・クレジットもこの曲でした。

“Nacchavuraa”〜ロマンティック&セクシー系のミュージカル・シーン。う〜ん、いい曲。大好き。映像的には、ずぶ濡れになったり、見晴らしのいい場所や外国にワープはお約束だけど、雪山系はいつ見ても、風邪ひきやしないか心配になりますな(笑)。

“Kto nigdy nie żył…”

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“Kto nigdy nie żył…” (2006) Andrzej Seweryn
(ポーランド盤DVDで鑑賞、米アマゾンで入手可能→amazon.com

 2006年制作のポーランド映画。英題”Who Never Lived”。
 自分がHIV+だと知った若いカソリックの神父と、その周囲の人々の織りなす様々な人間模様を描いたヒューマン・ドラマ。主演はご贔屓ミハウ・ジェブロフスキー。

 若きヤン神父は、ワルシャワで麻薬中毒の若者たちをサポートしており、彼らからも慕われている。しかし今日もまた一人の若者がオーバードーズで死に、葬式の場で露わになった世代間の断絶に、彼は怒りを含んだ説教をする。
 そんなある日、彼は教会の上層部から、現在の任を離れてローマへ行くよう命令される。自分が世話をしているジャンキーたちのことを、教会が日頃から快く思っていないことを知っている彼は、その命令を拒否するために、枢機卿に掛け合おうとする。
 しかしその最中、ヤン神父は健康診断の結果HIV+だと告げられる。彼は思い悩んだ末に、母親にそれを打ち明けるが、保守的なカトリック信者である母親は、息子の病気を労るどころか、逆に非難する。彼は治療と祈りの生活のために、ワルシャワから遠く離れた田舎の修道院に入る。
 修道院で農作物を作りながら、静かな生活を送り始めたヤン神父だったが、そこでもHIVに対する偏見は根強く、シャワー室で一緒になった修道士は逃げだし、彼の育てた作物は村に出荷されることがなかった。そしてついに彼は、希望と信仰を失い、独り修道院を出てしまう。
 雨の夜道、ヤン神父は通りがかった車と接触事故を起こしそうになり、運転していた3人の若者と、そのまま行動を共にするようになる。彼らはこれから、人気歌手のコンサートに行く途中だったが、その歌手とは、ヤン神父がかつてサポートしていた麻薬中毒者の兄であり、旧知の間柄だった。
 若者たちはそんな事情を知らないまま、しかも中の一人の女性は、次第に彼に惹かれていくのだが……といった内容。

 まず、HIV+になった聖職者という、テーマ自体が意欲的。
 作品としては、社会派的な重く考えさせられるものというよりは、HIV+の神父というファクターを通じて、人間の生きる意味ということを宗教的要素と絡めながら、ポジティブなメッセージ的に観客に伝えようといった感触。
 HIVの扱いに関しては、いわゆる難病もの的に煽るわけではなく、またそこから病気以上の余計な付加要素を見いだしたがる風潮に対しても、はっきり否とという態度を示しつつ、それと共にどう生きるかということを焦点にした、ある種の啓蒙映画的なニュアンスが見られます。
 その反面、こうあるべし、こうあって欲しいといった形に、ストーリー的な決着を迎えるので、ハートウォーミングで後味も良いものの、いささか甘さが感じられるのは否めない。作劇的にも、主人公個人のドラマとしては佳良なんですが、後半のエピソードの組み方などには、伝えたいテーマのためにストーリーを《作り》すぎてしまったという感じの、ちょっとご都合主義的な部分も散見されます。

 映像は佳良。
 前半のワルシャワを舞台にしたパートは寒色系、中盤の修道院では暖色系、後半のロードムービー的な部分ではニュートラルな色調と、全体が良く計算されており撮影も美麗。特に修道院パートの美しさが良く、それが逆に、何かの拍子で露呈する病気への偏見を引き立てる効果に。
 主人公ヤン神父を演じるミハウ・ジェブロフスキーは、贔屓目をさっ引いても見事な出来。前述したように映画として好感が持てる反面、いささか甘さや食い足りなさがある内容を、その演技でしっかり保たせている感。特に修道院に入って以降の、毛もじゃヒゲもじゃが良い……ってのは、単に私の好みですけど(笑)。
 もう一つ、主人公の友人で人気歌手でもあるRobert Janowskiという、おそらく実際にも音楽スターらしい人が出演していて、映画自体のテーマをこの人の歌の歌詞に託している部分があるんですが、この部分が前述したように、メッセージ性としては効果的な反面、ドラマとしては甘さになっている感があります。

 総合的には、主人公の内面を軸にした部分は文句なしで、青春群像劇的な要素は、魅力的ではあるけれどちょっと半端、しかし志とクオリティは高し……って感じでした。
 信仰という要素が密接に絡んでくる(タイトルにもある『人が生きる意味とは』というテーマが、キリスト教的な背景思想に基づいたそれなので)のは、ちょっと日本人には敷居が高いですが、決して悪くない作品だと思います。
 若干の食い足りなさがあるのは否めませんが、重いテーマならではの悲痛だったり感動的だったりする場面をあれこれ挟みつつ(出荷されなかった自分の育てた作物に、ヤン神父が自ら火を放つシーンなんか、ちょっと泣きそうになりました……)、最終的には明らかなメッセージ性を持たせた、青春映画的な爽やかさすら感じるエンディングへ持っていった佳品。

 予告編が見つからなかったので、映画の名場面を繋いだファンメイドのクリップを。音楽は映画で使われているのとは異なりますが、作品の雰囲気は良く掴んでいるかと。

ちょっと宣伝、マンガ『エンドレス・ゲーム』第3話掲載です

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 3月21日発売の雑誌「バディ」5月号に、集中連載マンガ『エンドレス・ゲーム』第3話掲載です。
 先月ちょっと一回お休みしてしまいましたが、今回もエロエロでございます。何つっても《日常ベースのこってりハードなエロマンガ》が基本コンセプトなもので(笑)。
 けっこうキャラが自然に動いてきたので、予想していたよりも少し長くなるかもな……なんて予感も。主人公のヒゲ坊主も、描いていてけっこう楽しいし(笑)。
 ただまぁぶっちゃけこの手の話は、長くしようと思えば幾らでも続けられるので、落としどころをどこに持ってくるか……ってのが勝負どころで、全体の長さもそれに左右されるという感じではありますが。さて、どうなりますやら(笑)。
 とりあえず来月もまたエロがメインの展開を用意しておりますので、いましばらくお付き合いくださいませ。

Badi (バディ) 2012年 05月号 [雑誌] Badi (バディ) 2012年 05月号 [雑誌]
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2012-03-21

“1920 Bitwa Warszawska (Battle of Warsaw 1920)”

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“1920 Bitwa Warszawska” (2011) Jerzy Hoffman (Jerzego Hoffmana)
(ポーランド盤DVDで鑑賞、米アマゾンで入手可能→amazon.com

 2011年制作のポーランド映画。インターナショナル題”Battle of Warsaw 1920″。監督は『ファイアー・アンド・ソード』『THE レジェンド 伝説の勇者』のイェジー・ホフマン。
 第一次世界大戦直後のポーランド・ソビエト戦争を描いた戦争スペクタクル+メロドラマで、ポーランド初の3D映画だそうな(私は2Dで鑑賞)。

 第一次世界大戦直後、レーニン&スターリン以下ボリシェビキは、欧州全体に社会主義国家連合を打ち立てるために、まずポーランドを押さえようとする。
 主人公の軍人ヤンは、赤軍の侵攻に備えての出征前夜、キャバレーの歌姫オーラに唐突に結婚を申し込み、オーラもそれを受諾する。二人は結婚式を挙げ、ヤンはオーラに「必ず戻ってくる」と約束して出征する。しかし出征先で、妻のオーラの写真を娼婦だと揶揄されたせいで諍いとなり、結果共産主義者の濡れ衣を着せられ処刑されそうになるが、そこに赤軍が攻め込み、ポーランド部隊は破れヤンは捕虜になる。
 一方ワルシャワでは、独立したばかりのポーランド国家元首ピウスツキ元帥とその腹心が、ボリシェビキの侵攻に対して策を練っており、やがてグラブスキ首相を廃して新首相を立て、農村や聖職者も巻き込んだ挙国一致の愛国精神を盛り上げることに成功する。
 そんな中オーラは、かねてから彼女を狙っていた男に、ヤンは生きているが赤軍に寝返ったという情報を元に脅され、身体を強要されそうになるが、やがて彼女自身、自分にもできることがあるはずだと、看護婦となって戦場に赴く。
 ヤンも無事に赤軍の手から逃れ、コサック兵の助けもあってポーランド軍に復帰するのだが、赤軍はワルシャワに向かって着々と侵攻中しており……といった内容。

 視覚的な部分に限定して言えば、あれこれ目の御馳走的な見所が沢山あり、それだけでもけっこう楽しかったんですが、映画全体の出来はと言うと……う〜ん、これは決して褒められたものではないかな、というのが正直なところ。ドラマとしては、安っぽいドクトル・ジバゴみたいな感じです。
 イェジー・ホフマン監督の、ちょいと前時代的な娯楽センスは、個人的にはけっこう好きなんですが、古典原作の時代もの『ファイアー・アンド・ソード』や、エピック・ファンタジーの『THE レジェンド 伝説の勇者』では、それがオーセンティックな味わいに繋がって有効だったのが、こういう近代ものになると、ちょっと裏目に出てしまった感あり。
 例えば、ヒーロー&ヒロイン周りには、彼らの数奇な運命を盛り上げる様々な事件が起きるんですが、なんつーか、ジュール・ヴェルヌの冒険小説ですかってな感じで、エピソードの内容もキャラの立て方も、箸休めのユーモア場面の入れ方も、何ともかんとも作劇の感覚が古くさい……。
 それでもまぁ、そういったクリシェ多用の娯楽活劇に徹してくれれば、それはそれでいいと思うんだけど、戦闘シーンになると、今度はいきなり今様のリアル志向で、戦争という名の殺し合いをきっちり描く系の生々しさになるんで、メロドラマ部分との水と油感がスゴい。
 かと思えば、ピウスツキ元帥を中軸としたパワーゲーム的な部分は、そのとき歴史が動いた系の再現ドラマみたいな感じ(鑑賞後にウィキペディアでいろいろ見てたら、けっこう皆さん本人にそっくりなので驚きましたが)なので、なんかもう軸足をどこに置いて見たらいいものやら……。

 ただ、映像自体は、過去のイベントの再現という意味でも、スペクタクルな見せ物という意味でも、物量感やスケール感は申し分なく見応えあり。デジタル・コンポジットは使っているとは思いますが、CGくささは殆どないので、重量感もかなりのもの。
 それと、ピウスツキ元帥役にダニエル・オルブリフスキー、Bolesław Wieniawa-Długoszowski(読めない……)役にボグスワフ・リンダ、グラブスキ首相役にミハウ・ジェブロフスキー、音楽がクジェシミール・デブスキ……なんて面々も、個人的には好き要素。
 また、映画の内容と合っているかどうかは別としても、ニヒルなコサックとか、薄幸の女性脇キャラとか、ヒロイックな神父様とか、逆境に立ち上がるヒロインとか、センチメントなエモーションの盛り上げ方とか、予定調和とか、昔の冒険活劇やソード&サンダルを思い出させるような、個人的にはある意味で楽しい要素もアレコレあり。

 という感じで、映画自体の出来としてはイマイチ(IMDbで4.6/10、ポーランドの映画サイトで5.1/10という評価も納得 )ですけど、歴史の絵解きとしての映像的な見せ物と割り切って見れば、お好きな方なら目の御馳走はいっぱいあると思います。
 事前の期待値がけっこう高かったので、個人的にはちょっと残念な感はありますが、それでも映像だけでも満足できちゃうような、そんな大作ではあります。
 因みにポーランド盤DVDは、英語字幕付き&メニュー画面もちゃんと英語も用意されているというインターナショナル仕様で、ケースもデジパック&写真いっぱいのブックレット式で、なかなか豪華な作りでした。
【本国版予告編】

【インターナショナル版予告編】

【追記】2014年9月26日に、『バトル・オブ・ワルシャワ 大機動作戦』の邦題で、目出度く日本盤DVD発売!
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“Karzan, Jungle Lord (Karzan, il favoloso uomo della jungla)”

dvd_karzan
“Karzan, Jungle Lord” (1972) Demofilo Fidani
(”The Italian Jungle Collection”と題された2 in 1米盤DVDで鑑賞→amazon.com、併録作は女ターザンものの”Luana”)

 1972年制作のイタリア製ターザン……ならぬカーザン映画。どう見てもお馴染みのキャラクターなのに、権利の関係でちょびっとだけ名前が変わってます……ってな系統の良くあるパターン(笑)。伊語原題”Karzan, il favoloso uomo della jungla”。
 主演のカーザン役は、ジョニー・キスミューラー・Jr……って、誰(笑)。いちおうIMDbによるとアルマンド・ボッティンという役者さんで、この映画でのみ、このキスミューラー・Jrを名乗っている模様。
 なお監督のデモフィロ・フィダーニという人は、ツイッターでフォロワーさんに教えていただいたんですが、「マカロニ・ウェスタンファンの間ではクズ映画ばっかり撮ることで名高い監督」なんだそうです(笑)。

 アフリカ奥地、ジャングルの蔦を使ってサーカスのように移動する、謎の半裸白人男性の映像が撮影される。
 探検家のフォックスは、おそらく十数年前に同地で消息を絶った飛行機と関係があるのではと推測し、富豪のカーター卿に探検のスポンサーになってくれと頼む。野人を捕らえ、再度文明化することができるかということに、学術的興味を感じたカーター卿は、スポンサーを引き受け、恋人のモニカと共に探検に同行するとにする。
 アフリカに渡ったカーター卿一行は、現地で曰くありげな男《クレイジー》やポーターを雇い、毒蜘蛛や毒蛇に襲われながらも、野人の住むタブーの台地へと近づいていく。しかし、そこで原住民の襲撃を受け、隊員の一人が死に、荷担ぎ人足は逃げ帰り、残りの者は捕まってしまう。
 探検隊は柱に縛られ、あわや危機一髪…というときに、崖の上に件の野人カーザンが姿を現すが、その横には革ビキニを着たブロンドの女野人シーランの姿もあった!(えっ)
 シーランは原住民のアフロヘアーの女とキャットファイトを始め(ええっ)、そしてカーザンはモニカ一人を助け出し、自分の第二夫人にするために樹上の住居に連れ帰り(えええっ)、モニカはシーランに言葉を教えるが、シーランとカーザンはモニカを尻目に泉で水泳を始め(はあ?)、ムーディなラウンジ風オルガン音楽にのせて、腰布&革ビキニの男女のスローモーションが延々延々延々と続き……(誰か助けて…)。
 しかしモニカの協力で、カーザンとシーランは探検隊に捕まってしまい、縄で縛り上げられて連行されてしまう。そこにチンパンジーのチータが、二人を救いにくるのだが、カーザンだけは助かったものの、シーランは囚われの身のまま。
 カーザンはシーランを助けだそうと、隊の後を尾けるのだが、そこにワニが襲いかかったりゴリラの着ぐるみが襲いかかったり…ってな内容。

 え〜とまぁ、何と言いますか…久 々 に ヒ ド い も の を 見 た って感じ(笑)。
 前半の延々と続く、スリルもへったくれもない探検行の段階から、早くも退屈で死にそうになるんですが(まぁ、猛獣と人間が決して同一画面にはフレームインしないなんてのは、低予算映画のお約束なので目を瞑りますけど……)、その後、いったん原住民を撃退して助かったはずなのに、次のカットで何の説明もなく、いきなり捕まって柱に縛られているあたりでは、見ていて思わず相棒と一緒に「ええっ?」と、素っ頓狂な声を上げてしまったくらい(笑)。
 後はもう、シッチャカメッチャカとしか(笑)。モニカが野人に掠われたのに、ちっとも心配したり救出に向かおうとしない他の隊員たちとか、掠われたモニカが唐突にシーランに言葉を教え始めるくだりとか、突っ込みだしたらきりがないシロモノ(笑)。
 時代の反映なのか監督の趣味なのか、ヘンにクローズアップやあおりを多用した、カットアップみたいなサイケ風味の演出の意味不明さとか、最後の「ええっ、そんなオチ???」という驚天動地のい〜かげんエンドとか、サルが砂浜に棒で《THE END》と書くエンドクレジットとか、もう勘弁して(笑)。

 まあ、どんだけヒドいかってのを、ちょっとネタバレ込みで説明するので、お嫌な方はこの段は飛ばしてください(笑)。
 まず、曰くありげな《クレイジー》というキャラ。ニヒル系な外見の白人男性で、いちおう初登場時には「こいつは口がきけないが、腕は立ち、しかも第六感があるので役に立つ」と紹介されて、それで探検隊に加わるわけです。
 さて、こいつが探検隊に加わって何をするかというと、歩いているときも野営の間も、ひたすらハーモニカを吹いているだけ。で、そのハーモニカを落っことしてしまい、それを探している間に隊から遅れてしまい、オマケに蛇に襲われる(笑)。
 原住民との交戦が始まると、草むらの中に身を伏せているときに、目の前をトカゲだかなんだかが歩いているのを見つける。で、周囲の騒動はどこ吹く風で、それを捕まえて歯で頭を食いちぎる。それだけ(笑)。
 最終的には、原住民の投げた槍から隊長を庇って殺されちゃうんですが、え〜と、第六感とゆー設定はどこに消えたのかしら……しかもちっとも役に立ってないし……これで墓標にハーモニカを添えられても、感動どころか苦笑しか浮かばないんですけど(笑)。
 もう一つ、「ええっ、そんなオチ???」という驚天動地のい〜かげんエンドについても。
 いちおうカーザンは、シーランを連れて行った探検隊に追いついて、彼女を助け出すんですが、自分は銃に撃たれて負傷し、捕まってしまう。で、フォックスは「こいつを見せ物に出して云々」と、儲け話の皮算用を始めるが、カーター卿は「自分の興味は学術的なもので、金儲けではない」と反対する。
 そしてカーター卿は、「最初は、いったん野人となった人間を、再度教育して文明化することで、科学の発展に貢献できると思っていたが、しかし今カーザンを連れ去ってしまうと、ジャングルに一人残されたシーランは、可哀想に、生き延びることができないだろう」と主張し始め、逃げたシーランが茂みの中でメソメソしているのを、猿のチータが慰めるカットなんかを挟みつつ、カーザンを解放すべきだと主張するカーター卿と、いや、このまま連れ帰って見せ物に出すと言い張るフォックスの口論が続き、カーター卿が「金が目的なら私が出そう!」とか何とか言った、次の瞬間。
 シーンは陽光まぶしく波頭きらめく浜辺(どこ???)に変わり、ムーディーなラウンジ音楽が流れる中、原初世界のアダムとイヴよろしくキャッキャウフフと戯れあうカーザンとシーランの映像になり、チータが棒きれで砂に《THE END》の文字を書いて、はいおしまい。見ているこっちは、あまりの唐突さに、ただただポカ〜ン(笑)。

 という具合で、特にヒドかった二つをピックアップしましたが、ぶっちゃけ全編こんな感じなので、ホント突っ込みだしたらキリがないです(笑)。
 こういう《偽ターザン映画》は、インド版とかトルコ版とかエジプト版とか(日本版とかポルノ版とかも……)見ましたが、その中でもこのイタリア版は、かなりヒドいシロモノなので、ネタとして楽しみたいという方以外には、決してオススメいたしません(笑)。
 ”Karzan, Jungle Lord”から、シーランを追うカーザンが、唐突にゴリラ(の着ぐるみ)に襲われるシーンのクリップ。これまた余りの唐突さに加えて、着ぐるみとか吠え声とかいろいろヒドさに、飲んでたコーヒー吹きそうになりました(笑)。

単行本『田舎医者/ポチ』予告編(& Hype 1.5.0 レビュー)

 4月13日発売予定の新単行本『田舎医者/ポチ』の、収録作品のアニメーテッド・プレビュー付き予告編を作ってみました。
 下の画像をクリックするか、このリンクをクリックすると見られますので(読み込みにちょっと時間がかかるかも知れません)、お時間のある時にでもどうぞ。
 収録作品が映画の予告編みたいに動きます(笑)。
inakaisya-pochi-preview

 予告編の制作には、前にここここで書いた、HTML5をベースにしたインタラクティブなアニメーションを作れるアプリケーション、Hypeを使いました。
 先月メジャー・アップデートがあったので、今回初めてバージョン1.5.0を使ってみました。レイアウトやアニメーション編集の機能強化、HTMLウィジットやメールフォームの追加、iBooks Authorへのエクスポートなど、様々な機能がバージョンアップしたんですが、確かにバージョン1.0と比べて格段に使いやすくなっています。
 というわけでその中から、使ってみて「良くなった!」と感じたものを、幾つかピックアップ。

【Locking and Visibility】
 Adobe Illustratorを使ったことのある方なら判ると思うんですが、Hypeも画像やテキストといったオブジェクトを、下から上に重ねていくように画面をレイアウトしていきます。で、今まではそれが重なっていくと、どうしても下に隠れたオブジェクトを選択するのが難しくなっていったりしました。
 新バージョンではタイムライン上で、可視/不可視のオン/オフが、アイコンのクリック一つで出来るようになったので、そういった「うが〜、この下にあるオブジェクトを選択したいのに、上のが邪魔で選択できねぇ!」みたいなストレスが皆無に。
 そしてアニメートしないオブジェクトをロックすることも出来るようになったので、つい間違ったオブジェクトを動かしてしまってundo……ってなこともなくなりました。

【Sweet Snapping】
 これはIllustratorのスマートガイド機能と似たような感じで、この機能をオンにしておくと、いま選択してドラッグしているオブジェクトと、他のオブジェクトとのセンター合わせや距離(ピクセル数)などのガイドが表示されるようになる、というもの。
 前のバージョンでは、画面全体のセンターあわせくらいしか、こういうガイドは出なかったので、この新機能でオブジェクトの位置を揃えたりするのが格段に楽になりました。

【Rulers and Guidelines】
 作業ウィンドウの上方と左方に、ルーラー(定規)が表示できるようになりました。このルーラーからはPhotoshopと同じ要領で、ガイドを引っ張り出すことができます。
 当然このガイドにはオブジェクトをスナップできるので、これまたレイアウト作業が格段に便利に。そしてこのガイドは、現在作業しているのとは別のシーンにコピーもできるので、複数シーン間でのレイアウトの統一なども、ぐっと楽に。

【Grouping】
 複数オブジェクトをグループ化できるようになりました。
 以前は、複数のオブジェクトを同時に同じ動きをさせたい場合、複数オブジェクトを選択した状態で、録画機能をオンにしてまとめてドラッグ&ドロップ……とかしなきゃならなかったのが、このグループ化機能によって、アニメーションを各オブジェクトにではなく、グループ全体に適用するころができるようになりました。
 これはまさに切望していた機能強化で、実際すごく便利!

【Redesigned Animation Interface】
 アニメーション用のタイムラインが、今までは一つだったのが、新バージョンではオブジェクト用と各オブジェクトのアニメーション用の、二つのウィンドウに分かれました。
 これによって、上のオブジェクト用ウィンドウでオブジェクトを選択すると、選択されたオブジェクトのアニメーション用タイムラインが下のウィンドウに表示されるという形になり、今までのようにアニメートしたいオブジェクトの属性を、いちいち開いたり畳んだりという手間が省かれました。
 更に、オブジェクト用ウィンドウに表示されているアニメーションのタイムラインを直接選択&ドラッグすることで、開始位置や終了位置を変えたり、全体の位置そのものを移動したりできるようになりました。
 これまた、以前は変更したいアニメーション用のキーフレームを、タイムライン上で全て選択してからドラッグしたりしなければいけなかったので、タイミングの微調整はもとより、いったん全体を作ってしまってから、頭や途中に別のアニメーションを挿入したくなったので、そこから後のアニメーション全てをまとめて後ろに動かしたい……なんて作業が格段に楽になりました。

【Bounce and Instant Timing Functions】
 アニメーションのモーション指定が、今までのLinear(一定速度)、Ease In Out(最初と最後だけゆっくり)、Ease In(最初だけゆっくり)、Ease Out(最後だけゆっくり)の4種類に、新たにInstant(途中経過のアニメートなしでモーションがいきなり切り替わる)とBounce(最後に弾むようなアクション)が加わりました。
 特にInstantがありがたく、例えば今までオブジェクトをいきなりパッと表示したい場合、まずタイムラインの一番頭に透過100%のキーフレームを置き、次に表示したい時間の1フレーム前にも透過100%というキーフレームを置き、1フレーム後の目的のフレームに透過0%のキーフレームを置く……なんて作業が必要だったのが、このInstantを使えば、1フレーム前にキーフレーム云々という作業がいらなくなります。

 以上、今回初めてHype 1.5.0を使ってみて「うぉ〜便利になった!」と自分が感じたポイントを、幾つかピックアップしてみました。
 操作方法もPhotoshopやIllustratorといった定番ソフトのそれに似ているので、特にマニュアル等で確認しなくても、勘と見当でサクサク使える感じです。

ちょっと宣伝、新マンガ単行本『田舎医者/ポチ』4月13日発売です

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 お待たせしました、新刊マンガ単行本『田舎医者/ポチ』、4月13日にポット出版から発売です。
 ホントはもっと早く出る予定だったんですが……いろいろ事情があって(って単純に私のせいなんですが)遅れてしまいました。そこいらへんの経緯は、後書きをお読みくださいませ(笑)。
 収録作品は主に近年の「バディ」掲載作から、『田舎医者(単行本用に6ページ加筆)』『スタンディング・オベーション』『傀儡廻(くぐつまわし)』『ポチ』『ジゴロ』『LOVER BOY』、そしてやはり「バディ」掲載作ですがお蔵出しの旧作『43階の情事(1999年)』、そして単行本用描き下ろし新作『見知らぬ土地で奴隷にされて(24ページ)』の、計8作となります。
 ポット出版さんからの単行本なので、ページ数は一般的なマンガ単行本とかよりはかなり多めの、計270ページオーバー。とはいえ、本文の紙質が良く、わりと薄手の紙なので、単行本の厚み自体はさほどありませんが。
 収録作の内容見本などはこちら
 表紙絵メイキングはこちら
 現在、版元のポット出版さんでは、直接通販の予約受付も始まっています。送料無料で、書店に本が並ぶよりも、少し早めにお手元に届くはず。
 先着30名様限定ですが、私の直筆サイン本サービスもあり。
 予約方法等、詳しいことはこちらのページをどうぞ。
ポット出版へ直接のご予約いただくと先着30名様まで田亀源五郎直筆サイン入り!!─『田舎医者/ポチ』(著●田亀源五郎)の予約を開始しました

【追記】なんかあっという間に30名をオーバーしまったそうで、編集さんと話して急遽倍の60名様までに増やしたんですが、それも間もなく定員に達したそうです。ありがとうございました!
 サイン本の受付は終了しましたが、通常の予約は引き続き受付中です。ご希望の方はどうぞご利用ください。
ポット出版/『田舎医者/ポチ』予約ページ
 というわけで、もうじきにお届けできると思います。お楽しみに!
 アマゾンでも予約可能。
『田舎医者/ポチ』amazon.co.jp

●書誌データ
『田舎医者/ポチ』田亀源五郎
希望小売価格:2,400円 + 税 (非再販商品)
ISBN978-4-7808-0178-1 C0979
A5判 / 272ページ
ゲイ・コミックの巨匠にして、世界的なゲイ・エロティック・アーティストである田亀源五郎が描く傑作短篇集。
表題作「田舎医者」(初出時より6頁加筆)をはじめ、描き下ろし作品「見知らぬ土地で奴隷にされて…」(24頁)収録。
輪姦(和姦)もの、ハードSMもの、ショタ系……などなど、さまざまなバラエティに富んだ計8篇。著者自身による作品解説付。
目次
◎田舎医者
◎スタンディング・オベーション
◎傀儡廻(くぐつまわし)
◎ポチ
◎ジゴロ
◎Lover Boy
◎見知らぬ土地で奴隷にされて…
◎43階の情事
・初出一覧
・あとがき
・プロフィール