“1920 Bitwa Warszawska (Battle of Warsaw 1920)”

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“1920 Bitwa Warszawska” (2011) Jerzy Hoffman (Jerzego Hoffmana)
(ポーランド盤DVDで鑑賞、米アマゾンで入手可能→amazon.com

 2011年制作のポーランド映画。インターナショナル題”Battle of Warsaw 1920″。監督は『ファイアー・アンド・ソード』『THE レジェンド 伝説の勇者』のイェジー・ホフマン。
 第一次世界大戦直後のポーランド・ソビエト戦争を描いた戦争スペクタクル+メロドラマで、ポーランド初の3D映画だそうな(私は2Dで鑑賞)。

 第一次世界大戦直後、レーニン&スターリン以下ボリシェビキは、欧州全体に社会主義国家連合を打ち立てるために、まずポーランドを押さえようとする。
 主人公の軍人ヤンは、赤軍の侵攻に備えての出征前夜、キャバレーの歌姫オーラに唐突に結婚を申し込み、オーラもそれを受諾する。二人は結婚式を挙げ、ヤンはオーラに「必ず戻ってくる」と約束して出征する。しかし出征先で、妻のオーラの写真を娼婦だと揶揄されたせいで諍いとなり、結果共産主義者の濡れ衣を着せられ処刑されそうになるが、そこに赤軍が攻め込み、ポーランド部隊は破れヤンは捕虜になる。
 一方ワルシャワでは、独立したばかりのポーランド国家元首ピウスツキ元帥とその腹心が、ボリシェビキの侵攻に対して策を練っており、やがてグラブスキ首相を廃して新首相を立て、農村や聖職者も巻き込んだ挙国一致の愛国精神を盛り上げることに成功する。
 そんな中オーラは、かねてから彼女を狙っていた男に、ヤンは生きているが赤軍に寝返ったという情報を元に脅され、身体を強要されそうになるが、やがて彼女自身、自分にもできることがあるはずだと、看護婦となって戦場に赴く。
 ヤンも無事に赤軍の手から逃れ、コサック兵の助けもあってポーランド軍に復帰するのだが、赤軍はワルシャワに向かって着々と侵攻中しており……といった内容。

 視覚的な部分に限定して言えば、あれこれ目の御馳走的な見所が沢山あり、それだけでもけっこう楽しかったんですが、映画全体の出来はと言うと……う〜ん、これは決して褒められたものではないかな、というのが正直なところ。ドラマとしては、安っぽいドクトル・ジバゴみたいな感じです。
 イェジー・ホフマン監督の、ちょいと前時代的な娯楽センスは、個人的にはけっこう好きなんですが、古典原作の時代もの『ファイアー・アンド・ソード』や、エピック・ファンタジーの『THE レジェンド 伝説の勇者』では、それがオーセンティックな味わいに繋がって有効だったのが、こういう近代ものになると、ちょっと裏目に出てしまった感あり。
 例えば、ヒーロー&ヒロイン周りには、彼らの数奇な運命を盛り上げる様々な事件が起きるんですが、なんつーか、ジュール・ヴェルヌの冒険小説ですかってな感じで、エピソードの内容もキャラの立て方も、箸休めのユーモア場面の入れ方も、何ともかんとも作劇の感覚が古くさい……。
 それでもまぁ、そういったクリシェ多用の娯楽活劇に徹してくれれば、それはそれでいいと思うんだけど、戦闘シーンになると、今度はいきなり今様のリアル志向で、戦争という名の殺し合いをきっちり描く系の生々しさになるんで、メロドラマ部分との水と油感がスゴい。
 かと思えば、ピウスツキ元帥を中軸としたパワーゲーム的な部分は、そのとき歴史が動いた系の再現ドラマみたいな感じ(鑑賞後にウィキペディアでいろいろ見てたら、けっこう皆さん本人にそっくりなので驚きましたが)なので、なんかもう軸足をどこに置いて見たらいいものやら……。

 ただ、映像自体は、過去のイベントの再現という意味でも、スペクタクルな見せ物という意味でも、物量感やスケール感は申し分なく見応えあり。デジタル・コンポジットは使っているとは思いますが、CGくささは殆どないので、重量感もかなりのもの。
 それと、ピウスツキ元帥役にダニエル・オルブリフスキー、Bolesław Wieniawa-Długoszowski(読めない……)役にボグスワフ・リンダ、グラブスキ首相役にミハウ・ジェブロフスキー、音楽がクジェシミール・デブスキ……なんて面々も、個人的には好き要素。
 また、映画の内容と合っているかどうかは別としても、ニヒルなコサックとか、薄幸の女性脇キャラとか、ヒロイックな神父様とか、逆境に立ち上がるヒロインとか、センチメントなエモーションの盛り上げ方とか、予定調和とか、昔の冒険活劇やソード&サンダルを思い出させるような、個人的にはある意味で楽しい要素もアレコレあり。

 という感じで、映画自体の出来としてはイマイチ(IMDbで4.6/10、ポーランドの映画サイトで5.1/10という評価も納得 )ですけど、歴史の絵解きとしての映像的な見せ物と割り切って見れば、お好きな方なら目の御馳走はいっぱいあると思います。
 事前の期待値がけっこう高かったので、個人的にはちょっと残念な感はありますが、それでも映像だけでも満足できちゃうような、そんな大作ではあります。
 因みにポーランド盤DVDは、英語字幕付き&メニュー画面もちゃんと英語も用意されているというインターナショナル仕様で、ケースもデジパック&写真いっぱいのブックレット式で、なかなか豪華な作りでした。
【本国版予告編】

【インターナショナル版予告編】

【追記】2014年9月26日に、『バトル・オブ・ワルシャワ 大機動作戦』の邦題で、目出度く日本盤DVD発売!
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