銀座ヴァニラ画廊で開催中の「伊藤文學コレクション〜薔薇族周辺のゲイ・エロティックアート展」ですが、展示の模様と、7日に行われた「伊藤文學×田亀源五郎」トークショーの写真が、企画のマルプデザインさんのブログにアップされました。
会場写真はこちら。
トークショーのもようはこちら。
展覧会は、いよいよ今週末まで。まだの方、お見逃しなきよう!
トークショー無事終了
ヴァニラ画廊での伊藤文學氏とのトークショー、無事終了しました。
用意した椅子だけでは間に合わず、立ち見も出る盛況ぶり。ご来場くださいました皆様、どうもありがとうございました。
トークに熱中するあまり、終了は予定していた時間を30分ほどオーバーしてしまいました。立ち見の方は、特にお疲れになったと思います。ゴメンナサイ。
トーク自体は、「ここでしか聞けない話」が、フンダンに飛び出しました。私自身、文學さんのノー・リミットなお話しぶりに、途中何度かヒヤヒヤしたほどでして(笑)、その分、ご足労いただいた皆様には、お楽しみいただけたのではないかと思います。
会場には、映像取材のスタッフもいまして、後日YouTube等にアップの予定だそうです。詳細が判りましたら、また改めてお知らせしますので、どうぞお楽しみに……とはいえ、あんまりヤバい部分はカットされると思いますけど(笑)。
展覧会自体は、13日まで開催されていますので、トークショーには来られなかった方も、会期中にぜひお立ち寄り下さい。
展示されているゲイ・エロティック・アートの数々は、作家の顔ぶれといい出品点数といい、必見と言っていい充実ぶりです。特に、壁面を埋め尽くす大川辰次と平野剛の二大作品群は、もう圧巻ですぞ!
つれづれ
gender series vol.2『男が描く男・女が描く女』
2009.6.8(月)〜6.14(日)
12:00-19:00まで/最終日17:00まで
ジェンダーシリーズの第二回目として「人物」を取り上げてみた。同性が描く同性の像は、異性が捉えるものと微妙な温度差があるように思う。どこに魅力を感じ、どのような世界観を伝えたいのか八人の作品の中から見えてくるものを検証したい。/柴田悦子画廊
出品作家: 阿部清子/奥津直道/勝連義也/木村浩之/伴清一郎/平野俊一/佛淵静子/松谷千夏子
柴田悦子画廊
〒104-0061 東京都中央区銀座1-5-1第3太陽ビル2F
TEL & FAX:03-3563-1660
http://www.shibataetsuko.com/
私が監修および出品している「伊藤文學コレクション/薔薇族周辺のゲイ・エロティックアート展」と、会期も重なっているし会場も近くなので、来週以降銀座にお出かけする方は、ぜひハシゴしてみてはいかがでしょう?
『懺悔録〜我は如何にしてマゾヒストとなりし乎』沼正三
戦後最大の奇書『家畜人ヤプー』の著者・沼正三、ついに逝く─
●沼正三がその死の直前までSM専門誌「S&Mスナイパー」(ワイレア出版、現在は休刊)に書き続けた実体験エッセイ、「ある異常者の体当たり随想録」から選集。
●未完の短編小説「化粧台の秘密」、2006年に受けた生前のインタビューを特別収録!!
出版社による本の紹介ページ
現在締め切り明けホヤホヤなので、まだ序文とインタビューしか読んでいないんですが、なにはともあれ、この装丁がカッコイイなぁ。
上の書影では判らないと思いますが、風合いのあるマットな黒の中に、バーコ印刷(だと思う)で入れてあるグロスの黒のワンポイント。カバーを外した本体も、黒の中に黒でデザインされていて、光の当たり方で文字や図柄が浮かびあがってくる。
ステキ、ステキ。所有しているのが嬉しくなっちゃうタイプのご本でした。
アマゾンでのお買い求めは、こちらから。

音楽は、ここんところモロッコで買ってきたCDばっかり聴いています。
どこの国の音楽でも、私は懐メロ系というか、古めの録音のものが大好物なので、今回の旅行でも「なんか古いのちょ〜だい!」と言って買ってきました(笑)。
ただ、帰国してから検索してみたんですが、左上のNass El Ghiwane(ナス・エル・ギワン)以外の情報は、ほぼゼロだったので、詳しいことは何も判りません。
まず、そのNas El Ghiwaneから。ガイドブックにも書いてありましたが、70年代にこのNass El Ghiwaneが、グナワなどのモロッコの民族音楽を発展させた大衆音楽を発表したことによって、モロッコにバンド・ブームのようなものが起こったそうです。「モロッコのビートルズ」とか「モロッコのローリングストーンズ」なんて異名もとっているとか。
確かに、伝統音楽をルーツにしつつも、グルーヴィなポップさがあるような。聴きやすい反面、トランス感はあまりなし。
右上のIzanzarenは、もっとルーツ寄りなのかな。一曲一曲が長いし、聴いていて何となく語り物みたいな感触がある。ゆったりとした長い前奏は叙情的にしっとり聴かせ、それからテンポがアップ。パーカッションと撥弦楽器のアルペジオのリフレインに乗せて、ソロや掛け合いやコーラスで、どこかノスタルジックな感じのするメロディーを聴かせてくれます。
いやぁ、これは個人的に大当たり。いぶし銀といった感じの柔らかなオヤジ・ヴォーカルの魅力もあって、何とも癒される。ダウナー系のトランス感もあり。
ちょっと面白かったのは、聴いていて「え? これ、インドかネパールの音楽じゃないの?」とか、「まるで沖縄民謡!」みたいな曲がありました。全体的に、アッパーなグルーヴ感はなし。
左下のH. Mehdi b. Mubarekは、Izanzarenより更に激シブ。
ヴォーカル自体は、Izanzarenより張りがあって、唱法も歌い上げる感じなんですが、無伴奏の独唱に、擦弦楽器や撥弦楽器や笛やコーラスによる短くてシンプルなメロディーが、合いの手みたいに入ってくるだけ……と思いきや、一瞬だけ金属質のパーカッションが乱入してきて、ぐわっとテンションが上がった……かと思ったら、次の瞬間にはもう退場、ふたたび渋〜い歌が……ってな塩梅。ダウナーなトランス感が、Izanzarenより更にアップ。
あと、これまたちょっと面白かったのが、笛が入ってくる曲が、音の質感やメロディーのせいか、何だかバルカン音楽っぽい感じに聞こえました。
右下のArchach(これがホントにグループ名なのかどうか自信なし)は、Nass El GhiwaneとIzanzarenの中間な感じなので、ひょっとして件のバンドブームで出てきた人たちなのかも。
ユニゾンのコーラスと撥弦楽器とパーカッションのリフレインに、後半部分的にアドリブっぽいフレーズが絡んでくるとか、ソロの語り物みたいなルーツ寄りっぽいものもあれば、そこにドラムセットが加わってグルーヴ感がアップしている曲もあり。Nass El Ghiwaneよりポップ感はないけれど、まったりとした和み度はアップ。
という感じで、けっこうどれも気に入って愛聴しています。
モロッコ音楽って、実は今までハッサン・ハクムーンとかグナワ・ディフュージョンくらいしか聴いたことがなく、さほど「好き!」って感じでもなかったので、今回の旅行ではCDはちょびっとしか買わなかったんですが……しまったな〜、こんなに気に入るんだったら、もっといっぱい買ってくれば良かった(笑)。
ちょっと宣伝、展覧会『伊藤文學コレクション』とトークショー
今度の月曜日、6月1日から13日まで、銀座のヴァニラ画廊で企画展『伊藤文學コレクション 薔薇族周辺のゲイ・エロティック・アート』(特別展示・入場料500円)が開催されます。
で、この展覧会なんですが、私めも及ばずながら監修という形で関わらせていただいております。
まあ、監修といっても、そんな大層なものではなく、展示の中心は伊藤文學氏ご所蔵の『薔薇族』に掲載された男絵の原画であります。私の役割は、展示の主旨および全体の構成を考えることと、文學氏のお手元にはない作家の原画を集めるためのお手伝いをすること、そして、自分自身の作品を展示用に提供する、といったところです。
企画をしてくださったのはマルプデザインさん。
展示作家は、三島剛/船山三四/小田利美/遠山実/児夢(GYM)/長谷川サダオ/木村べん/平野剛/大川辰次/稲垣征次/三上風太/田亀源五郎という顔ぶれを予定しています。
文學氏ご所蔵分と、私が所蔵・保管しているものに加えて、稲垣征次さん、STUDIO KAIZの城平海さん、ゲイ・アートの家の荻崎正広さんに、それぞれご協力いただきました。
歴史的なゲイ・エロティック・アートの展示としては、文學氏も私も過去に何度か行ってきましたが、これだけの作家が揃う展示というのは、ちょっとなかったのではないかと思います。
貴重な日本のヴィンテージ・ゲイ・エロティック・アートの数々が、美麗な原画のまま一堂に会するこの機会、アートやサブカルチャーやゲイ文化やエロティック文化に興味のある方は、ゲイもヘテロも関係なく、ぜひ足をお運びください。
また、展示期間中の6月7日(日)には、イベントとして画廊内で、「伊藤文學氏・田亀源五郎氏による特別トークショー」も開催されます。時間は15時から、入場料は1500円(1ドリンク付き)になります。
文學氏とは、もちろんこれまでお会いしたこともお話ししたこともありますが、トークショーという形では初めてなので、今からいささか緊張気味(笑)。司会進行をやってくださるのは竜超さん。
また、会期中にはポット出版さんにご協力いただき、私の編纂した画集『日本のゲイ・エロティック・アート vol.1 ゲイ雑誌創生期の作家たち』と『vol.2 ゲイのファンタジーの時代的変遷』を、画廊で直接お買い求めいただけるようになっております。
展覧会のお土産に、トークショーのついでに、二冊揃いでぜひどうぞ。
さて、最後に私の出展作ですが、2007年のフランス個展用に制作した連作、『七つの大罪』を揃いで出させていただきます。
これまで、書籍やイベントで、一、二枚が公開されたことがありますが、ほとんどは日本国内では未発表。もちろん、七枚セットでは本邦初公開となります。
なかなかお見せできるチャンスもないので、皆様、この機会にぜひご覧ください。自分で言うのもナンだけど、美麗かつエロいという自信作ですぞ(笑)。
“Outside/Inside” by Bruce Of Los Angeles
ヴィンテージ・メールヌード写真集のご紹介。
ブルース・オブ・ロサンジェルスことブルース・ベラスは、1940年代から70年代にかけて活躍した、アメリカの写真家。当初は、当時アメリカで流行していたボディービル・ブームの中で、ビルダーの写真などを撮っていましたが、56年に自らフィジーク雑誌「メール・フィギュア」を創刊することによって、その作品はゲイ・エロティック・アートに接近していきました。
このフィジーク雑誌というのは、いわばボディービル雑誌のふりをしたゲイ雑誌のようなもので、トム・オブ・フィンランドやジョージ・クエインタンスといったゲイ・エロティック・アーティストたちも、こういった雑誌を経て世に出ています。
ブルース・オブ・ロサンジェルスの成功は多くの模倣者を生み、更に後世には、ロバート・メイプルソープやブルース・ウェーバーやハーブ・リッツといった、コマーシャル/ファインアートの写真家にも影響を与えました。
そんなブルースの写真集ですから、当然のことながら、エロティック・アートとしての表現は、時代に即したごく控えめのものです。
下にリンクを貼った日本アマゾンの商品ページに、内容のサンプルが少し掲載されていますが、それをご覧になればお判りのように、その写真には、現在に生きる我々の感じるところの、ポルノグラフィー的な過激さというのは、ほぼ皆無と言っても良いでしょう。これらの写真が、当時のゲイたちにとってどれだけ「扇情的」なものであったかは、これは想像を逞しくするしかありません。
とはいえ、ではこれらの写真が、今となってはノスタルジーの対象にしかならないものかというと、決してそうではないのが、このカメラマンのスゴいところ。ギリシャ彫刻的な「男性美」にフォーカスを絞り、ただそれのみを、堅牢なコンポジションと共に捉えた作品の数々は、被写体と画面双方の美しさによって、今なお新鮮に映ります。それらをご覧になれば、前述した後世の写真家への影響というのも、良くお判りいただけるはず。
また個人的には、シンプルなメールヌード以外にも、数は少ないながら鞭打ちや人間馬といったサドマゾヒズム的な要素が見られるのも興味深いところ。こういった傾向は、同時代のトム・オブ・フィンランドやジョージ・クエインタンスの作品でも見られます。以前こちらの記事で少し書きましたが、暴力性や被虐性といったものが、古くからマッチョイズムの表現手法の一つとして存在しているということが、この写真集でも改めて確認できます。
本のサイズは、アナログLPジャケットくらいの大判。頑丈なハードカバーで、同じく頑丈な外箱入り。この外箱は、写真のプリントを入れるラボ袋を模したデザインになっていて、なるほど、当時ナマ写真を注文すると(フィジーク雑誌ではプリントやムービーの通信販売も行われていました)、きっとこういう袋に入ったものが送られてきたんだろうなぁ、などと偲ばれる作りになっています。
本文の方は、屋外で撮られたもの(Outside)と屋内のもの(Inside)の二部構成。上質な紙に上質の印刷。ブルースのモデル・リストや、そのパーソナル・データを完備(本書収録作だと、有名どころでは、ジョー・ダレッサンドロの背面からのフルヌードあり)。
そんな感じで、所有欲をしっかり満足させてくれるような、上質な造本の写真集になっています。
それと、もう一つ特筆したいのが、これはアマゾンの商品説明には何も書かれていないんですが、オマケとしてDVDが一枚付いています。
収録されているのは、(おそらく)当時販売されていた、ブルースが撮影したメールヌードのショートフィルム12本。内容はというと、健康的な肉体美の青年たちが、ビーチや牧場などで裸になり、ポージングしたり水遊びをしたり男同士で戯れたりする……といった、ごく他愛もないものなんですが、これが何ともノスタルジックな美しさがあってヨロシイ。
フィルムはレストアされているらしく、多少の傷やゴミはあるにせよ、画面の揺れや明滅、トビやツブレはほぼなく良好。音声はBGMのみ。音質の良さからして後付でしょうが、画面のノスタルジックなムードともマッチしていて佳良。ヴィンテージ・ゲイ・アートのファンやメールヌード好きはもちろん、環境映像的にも楽しめそうな、なかなか優れモノの内容です。
ご参考までに、キャプチャ画像を幾つか。こちらとこちら。
そんなこんなで、決して安価ではないですけれど、豪華写真集にレアもののDVD付きなので、写真集好き、メールヌード好き、ゲイアート好きだったら、買って損はないマストな一冊ですぞ。
あ、でもオカズを期待する人には不向きですからね(笑)。
“Outside/Inside” Bruce Of Los Angeles (amazon.co.jp)
フランス紀行、落ち穂拾い



マレ地区の書店Les Mots A La Boucheでのサイン会。
写真は、書店外観、サイン会の最中、書店の中でLes Mots A La BoucheのウォルターとArtMenParisのオリヴィエと一緒に。
Les Mots A La Boucheでは、ポット出版さんから出していただいている本も輸入販売していただいているので、卓上には仏語版単行本と一緒に、日本語版『君よ知るや南の獄』の単行本も置いてあります。来てくれた人数は、一昨年のBlueBookParisよりは少なかったかな。前半はずっとサインし通しだったけれど、後半になったら、一息つく暇もちょくちょくあった感じです。
夜遊び。
一昨年と同じ、Yes Sir!というパーティーに招待されて行ったんですが、そのときオリヴィエと一緒のところを撮られた写真が、フランスのゲイ雑誌”TETU”のサイトにアップされてました。
こちら。
よく見たら、オリヴィエの肩の上に心霊写真みたいにして、クリストフも写ってます(笑)。


HIVチャリティー・オークションのカタログ。
一昨年、ギャラリーに依頼されて描いた『HIVと戦うキャプテン・ベアー』の大判プリントが、昨年、フランスのHIVチャリティ・オークションに出品されまし。写真は、そのカタログの表紙と掲載ページです。
出品作家は50名強。表紙をご覧になればお判りのように、ほとんどがバリバリの現代美術ばっか。私の作品を含め、エロティックな要素はほぼゼロ。
オリヴィエによると、無事落札されたそうなので、お役に立てて良かった良かった。


一昨年やったフォトセッションのプリントを、ようやく貰えました(おせーよ)。
アレックス・クレスタの撮った写真は、彼のサイト(現在改装中)にアップされていたので、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、パトリック・サルファーティの方は初公開。
今回、パトリックに会うのを楽しみにしていたんですが、残念ながら所用でパリにいなくて会えませんでした。彼の撮ってくれた写真は、他にも何枚かあるんですが、私は、ちょっとサイケな感じのするこれが一番お気に入り(笑)。
という感じで、フランスの土産話も、ここいらへんで打ち止め。
ここんとこ、期せずして連日更新になっていましたが、今後はまた、以前のようなまったりペースに戻る予定。
長々お付き合い下さいまして、ありがとうございました。
ちょっと宣伝、東京プライドフェスティバルでサイン本販売
今年は東京のゲイパレードはありませんが、そのかわり、5月23日(今週の土曜日)に代々木公園イベント広場で、「第1回 Tokyo Pride Festival」が開催されます。
イベントの内容等は公式サイトをご覧いただくとして、トークショーやコンサートといったイベントと共に、会場には様々な企業や団体のブースが出展されます。
その中の、ゲイ雑誌「バディ」のブースで、拙著『外道の家』(上中下巻)の著者直筆サイン本が販売されます。昨日、それぞれ10冊ずつ×3で、合計30冊にサインを入れました。
一般書店の店頭で見つけられず、ネット書店でも入手できず、ゲイ・ショップに行く機会もなくて……と、これまで入手しそびれていた方、本とサインを一緒にゲットできるチャンスですぞ〜(笑)。
また、詳細は確認していないんですが、編集さんの説明によると、「バディ」にコミック連載している作家さんのサイン本をブースの目玉商品にしたい、とのことでしたので、おそらく小日向先生や大久保ニュー先生のサイン本も、同様に販売されるんだと思います。
さらに伏見憲明さんが、御自身で「バディ」のブースにいらして、近著『MILK 写真で見るハーヴィー・ミルクの生涯』の即売会をなさるということで、こちらもサイン本ゲット(&ナマ伏見センセー拝見)のチャンス(笑)!
私自身は、ちょっとスケジュールの関係で、会場に行けるかどうか微妙なところなんですが、皆様、ぜひ「第1回 Tokyo Pride Festival」にお出かけのうえ、イベント参加・見物・お買い物など、存分にお楽しみくださいませ。
アート・コレクターのお宅訪問、追補
フランスからの携帯更新で、アート・コレクターのお宅にお邪魔したら、住んでる世界が違う感がバリバリでスゴかった、なんてことをお伝えしましたが、どうスゴかったのか、改めてお伝えしませう。
まず、場所からしてスゴいのだ。
これがなんと、パレ・ロワイヤルの中! かつて作家のコレットが住んでいたのと同じアパルトマン! 建物に入る前から「どっひゃ〜!」でゴザイマス(笑)。
で、いざ建物の中に入り、エレベーターに乗って居住階にお邪魔すると……もう玄関から、美術品と骨董品の山。床には、現代美術のドでかいオブジェだの、中世彫刻やアジア美術らしき石像や胸像だの、いたるところにズラズラと飾られている。
壁も、これまたそこいら中が、三段五段に飾られた絵画で埋め尽くされていて、しかもハンパじゃない作家揃い。号数は決して大きくはないんですが、ぱっと見ただけでも、ピカソやマグリットやタンギーだってのが判るし、面白いデッサンがあったから「誰の絵ですか?」と聞いたら「スーティンだよ」ってな返事だし……もう、一緒に飾られてるウォーホールやホックニーが、小物に見えるくらいのラインナップ。
すっかり美術館に来た気分でいるところ、椅子を勧められてお茶でおもてなしされたんですけど、これがまた、もう家具から食器から、どう見ても骨董品かアート・ファニチャーの「タダモノじゃない!」ってヤツばっかり。
ティーカップ持ちながら、「……もしこれを割っちゃったら、いったいいくら弁償しなきゃならないの?!」ってな感じで、もう、お茶を飲むのもガクブル、壷から角砂糖を取るのもヒヤヒヤ、とてもじゃないけど、くつろげたもんじゃありませんでした(笑)。「おかわり、自由にね」って勧められても……いや、そんな高価そうなティーポット、おっかないから持ちたくありません、って感じ(笑)。
もっとも、招いてくださった方ご本人は、いたって気さくな方で、バルコニーに案内して外の景色を見せてくれたり(もちろん、見えるのはパレ・ロワイヤルの中庭なので、ステキな眺めに決まっております)、別の部屋やベッドルームを見せてくれたり(するとまた、ビアズレーやイヴァン・ビリビンがあって、ビビりまくり。でも、ビリビンの原画を見たのは初めてだったから、嬉しかった〜)、いろいろと気を使ってくれました。
で、緊張しすぎてか、オシッコをしたくなったので、トイレを借りると、これまた壁に、コクトーとホックニーとバーン=ジョーンズとトム・オブ・フィンランドの、いずれもメールヌードのデッサンが飾られている……ってなステキさ。もう、緊張しすぎて、オシッコ止まるかと思いました……ってか、もう画廊の真ん中に便器があるみたいなもんで、「こんなとこで、チンポ出して放尿なんぞして、ホントにいいのか?!」ってな感じ(笑)。
で、おそらく私が来るのに備えて、普段は仕舞っているのであろう私の絵を、部屋に並べていてくれたんですけど、う〜ん、何かちょっと複雑な気持ちがしましたね。
何というのか、自分が描いた絵が他の人の「所有物」になっている、というのは、親が娘を嫁にやる気分に、ちょっと近いのかなぁ……。自分のものだったのに、もう自分のものじゃなくなった、みたいな、何とも言えない気分。
まあ、それでも「うんうん、いい家に貰われて良かったね」という、変な親心みたいな気分にもなったりして。
でも、もしこれが絵じゃなくて人間だったら、他の連中から「アンタなんて身分が違うわよっ!」とか「この淫売の小娘!」とかいって、いじめまくられそうな気もするけど(笑)。
……って、何で『女の闘い』風になるのやら(笑)。
『三羽のカラス』とか”XXL”続報とか
児雷也大画伯から、御著『三羽のカラス』を頂戴しました。ふふふ、サイン入り。役得、役得。
大画伯のマンガは、基本的にはほのぼのラブラブ系が多いけど、今回の単行本は、ちょっとダークなヤツとか、ちょい無理矢理系とか、ボンデージのシーンとか入っていて、嬉しいなぁ(笑)。でも、もし収録作から一番のお気に入りを選べと言われたら、ハートウォーミング系の『希望町三丁目富士乃湯物語』。私の趣味からすると、意外かもしれないけど(笑)。
それにしても、どのページもどのコマも、画面の密度が濃いこと濃いこと。おかげで、読み終わるのに、えらい時間がかかったぃ(笑)。
あとは、凝り性の大画伯らしく、これ、装丁もレイアウトも、全部ご自分でおやりになったんでしょうね。完成原稿を、ネーム入力済み(&陰部修正済み)のQuarkXPressファイルで納品するマンガ家なんて、大画伯の他にいらっしゃるんでしょうか。
因みに、御自身のブログで、以前、
「『三匹のブタ』発売おめでとうございまーす」と。
なにその児童図書っぽいタイトル。
などとお書きになっておられましたが(え〜、いつも画伯には大先生呼ばわりされてるので、そのお返しに、ちょっと通常以上に敬語調にしてみました)、じっさい、カバーを外すとホントに児童図書っぽく見えたりして(笑)。こーゆー感じの本、学級文庫とかにあったような(笑)。
あ〜、あといい機会なので、世間様、特にノンケさんと腐女子の皆様に一言。
え〜、よく私の絵を「ガチムチ」呼ばわりされる方がいらっしゃいますけど、基本的に私のキャラはただの「マッチョ」でして、「ガチムチ」じゃないんですよ。ホントーの「ガチムチ」ってのは、児雷也大画伯のお描きになるような男のことを言うんです。
さて、もう一つ書籍情報。
以前ここで紹介して、その後ここで「amazon.co.jpでの取り扱いがなくなっちゃった」とお伝えした、世界のゲイ・アートの超マエストロ、Tom of Finlandの超豪華画集”XXL”ですが、また復活していました。マーケット・プレイスですけど、今ならamazon.co.jpで入手可能なようです。
“XXL” Tom of Finland (amazon.co.jp)
前回、買い逃して悔しい思いをした方、いらしゃいましたら、今がチャンスかも。
フランスでのインタビュー、追補
パリで受けたインタビュー取材映像が、ウェブ上で公開されています。
こちら。
日本語音声・フランス語字幕付きなので、日本の方には問題なくお楽しみいただけるかと(笑)。
しかし、昔は自分の録音された声を聞いたり、動くビデオ映像を見たりするのは大嫌いだったんですけど、これも慣れがあるんですね。最近では、そういうのを聞いたり見たりすることに、あまり抵抗がなくなってきました(笑)。
インタビューの収録は、ギャラリーのある建物のパティオで行われました。
写真向かって左がディレクターのクリストフ(着やせして見えますが、脱ぐとすごいマッチョで、肩に見事なタトーゥーが入っているセクシー・ガイ)、右の青いTシャツの彼がインタビュアー。
インタビューは、インタビュアーが英語で尋ねる質問に、私が日本語で答えるという形式だったので、英語脳と日本語脳の切り替えが上手くいかなくて、ちょいとシドロモドロ気味になっちゃってますね。つまり、英語で尋ねられるもんだから、反射的に回答も英語で考えてしまい、それを日本語に訳しながら喋る……みたいな感じになっちゃいまして……なぁんて説明すると、私がすごいバイリンガルみたいですけど、じっさいのところ私の英語力は、旅行英会話レベルのメチャクチャなものなので、誤解なされないように(笑)。
あと、自分の左斜め前にカメラ、右斜め前にインタビュアー、正面は何もなし、という状況だったので、話すときにどこ(誰)を見ていればいいものやら……。そのせいで、目が泳ぎまくっています(笑)。
途中で、質問を繰り返す云々とブツクサ言ってるのは、事前にクリストフから、「このインタビューでは質問者の音声は入らないから、例えば『好きな色は?』と聞かれたら、『赤』と答えるんじゃなくて、『好きな色は、赤です』って、何が質問されたのかが判るように答えてね」と言われていたのに、それを失念して喋りはじめちゃったからです(笑)。
このインタビューの長尺+英語字幕版が、後日、クリストフの個人サイトにもアップされるそうです。
こちら。
私のところは、まだcoming soonになってますが、既に公開されているコンテンツが、硬軟取り混ぜてなかなかスゴい面子なので、ぜひご覧あれ。
ゲイ・エロティック・アート関係だと、画家(マンガ家)のローガンやカメラマンのリック・カストロ、ゲイ・ポルノ・スターのフランソワ・サガット、ファインアート系ではピエール・モリニエにジェフ・クーンズ、俳優のトミー・リー・ジョーンズやジャンヌ・モローやティルダ・スウィントン、映画監督のウィリアム・フリードキン、作曲家のハワード・ショア、ファッション・デザイナーのカール・ラガーフェルド、ホラー作家のポピー・Z・ブライトまで。
こういった面々が一堂にずらずら並ぶあたりの感覚が、フランスの良いところですな。
因みにクリストフは、宮崎駿の大ファンでありまして、私が『崖の上のポニョ』をまだ見ていないと言ったら、「どうして見ないんだ、ダメじゃないか!」と諭されました(笑)。

