今年のあれこれ

 2009年も残り一日なので、今年のあれこれをちょいと反芻してみたり。

 マンガは、ゲイ雑誌を主軸に一般向けも二つほど(うち一つは、まだ世に出ていませんが)混じって、わりと充実していたかな。『父子地獄』を完結できたのも嬉しい。
 あと、月産ノルマ78ページという月があって、これは自己記録を更新してしまった(笑)。私はアシスタントを使わず一人でやっているので、流石にこれはちょっとキツく、某少年週刊マンガ誌の編集さんにも驚かれました(笑)。
 とはいえ、年間を通しては、そうメチャクチャ忙しかったというわけではなく、10年ほど前の、「バディ」で『銀の華』、「ジーメン」で『PRIDE』を、毎月並行連載しつつ、「ジーメン」では表紙イラストとレギュラー記事も幾つか担当し、合間に挿絵なんかもやりつつ、更には別名義での小説連載までしてた頃にくらべりゃ、ぜんぜん余裕かも。正直、あの当時のことをもう一度やれと言われても、今じゃ体力的にも無理だと思う(笑)。
 マンガ単行本も、日本で一冊、フランスで三冊(まだ最後の一冊は手元に届いていないけど)、イタリアで一冊出せたので、全部併せると例年以上のペースに。
 それと、マンガ関係で今年一番驚いたのが、文化庁メディア芸術祭から、『外道の家』がノミネートされたのでエントリー承諾書にサインしてくれ、という書類が来たこと。まあ、結果はもちろんかすりもしませんでしたが、ゲイ雑誌発のあーゆー作品が、こーゆーのにノミネートされたことだけで、もうビックリでした(笑)。

 一枚絵関係だと、これはやっぱりこのブログで詳細をレポした、フランスでの個展が大きかったですな。セレブにも会えたし(笑)。
 あと、オーストラリアの企画展にも参加したし、銀座の画廊の企画展にも監修で関わったけ。銀座ではトークショーもしましたが、ここんところ毎年、何かしらの形でこのトークショーってぇヤツをやっているような気がする(笑)。
 イギリスとフランスで一冊ずつ、アートブックへの掲載があったのも嬉しい出来事。

 プライベートでは、何よりかにより20年来の念願だった、モロッコ旅行ができたのが嬉しかった。
 アイト・ベ・ハッドゥの景観やメルズーガの大砂丘でのキャンプは忘れがたいし、マラケシュの喧噪も懐かしい。フェズのメディナで道に迷い、加えて暑さでヘロヘロになったのも、今となっては楽しい想い出。人里離れたところにある、ローマ遺跡のヴォルビリウスから、持参した携帯で鎌倉の実家に電話したら、ちゃんと繋がって父親が出たからビックリもしたっけ(笑)。
 タジン(モロッコ料理)も、色んな種類を食べられて美味しかった。個人的には、マトンとプルーンの入ったヤツと、肉団子と卵が入ったヤツが好きだったな。あと、パスティラという、鳩の肉をパイで包み焼きして、上にアーモンドと砂糖がまぶしてある、不思議な料理(笑)。しょっぱいんだか甘いんだか、何とも形容しがたい味なんだけど、でも不思議と美味しいのだ。
 あとはやっぱり、屋台のオレンジ・ジュースですな。生のオレンジを、その場でギュッギュッと幾つか搾って、ガラスのコップに入れてくれるの。疲れて喉が渇いたときには、これが一番でした。イランやパキスタンのザクロ・ジュース以来の、感激の美味しさ(笑)。

 映画は、ブログでもいろいろ書きましたが、輸入DVDで見た未公開映画に、感銘を受けたのが多かったような。
 何だかねー、最近「これは見たい!」って楽しみにしてたヤツが、劇場公開されずってパターンが多くて……。昨年暮れだったかも、ドイツ映画の実写版『クラバート』が、ドイツ映画祭か何かで上映されて、どーしてもスケジュール的に行けなかったんで、いつか一般公開されるんじゃないかと待ちつつも、けっきょくそれっきりでソフト化もされてないみたいだし……。
 そんな中で、『キング・ナレスアン』の日本盤DVDが無事出たのは、もうホント嬉しかったし、この間書いたように、『戦場でワルツを』を無事劇場で見られたのも嬉しかった。
 現在公開中のヤツだと、『監獄島』は、愛しのストーン・コールド・スティーブ・オースチン様主演だから気にはなるんだけど、内容的にどんなものなのか(笑)。ストーン・コールド様だけが目当てだったら、脱ぎっぱなしのプロレスのDVD見てた方がオイシイかも知れないし(笑)。因みに、このストーン・コールド様のプロレスの輸入盤DVD、私の気付かないところでウチの相棒が、ジャケを見てレザー系ゲイAVだと勘違いして、ホクホク喜んで再生し、中身を見てガッカリしたという逸話が、我が家にはあります(笑)。
 あと、映画じゃなくてテレビドラマですが、年末になってNHKの『坂の上の雲』を見たら、思いのほか出来が良くてハマってしまった。このドラマのことを何も知らなかったので、何を見るでもなく漫然とテレビを点けたら、第三話の再放送をしている最中で、軽い気持ちで「お〜、明治ものだ!」と見始めたら、そのまま最後まで目を離せなかった(笑)。
 私は普段、連続テレビドラマを見る習慣が全くないんですが、こればかりは、残り二話もしっかりチェック。放送時間になってテレビの前にやってきた私を見て、相棒が「ひゃ〜、珍しいね!」と驚いてた(笑)。というわけで、気に入ったにも関わらず、一話から三話前半までは未見なので、年明けとかにまた再放送してくれないかしらん。それとも、さっさとDVD出すとか……って、NHKだとDVDも高価そうだけど(笑)。
 それとまあ、こーゆーゲイはけっこう多いんじゃないかと思いますが、広瀬武夫役の藤本隆宏ってイイですね(笑)。相棒も「誰だい、これは?」と目を輝かせていました(笑)。越中褌でのヌードがあったので、今度は六尺姿を希望(笑)。
 昔の東宝の『日本海大海戦』では加山雄三だったけど、あたしゃこっちの藤本氏の方がダンゼン好きだ。しかし、気に入ってしまっただけに、今から「杉野はいずこ」のシーンを見るのが、怖いような楽しみのような……。

 マンガは、ブログで紹介しそびれていたヤツだと、何と言っても吾妻ひでおの『地を這う魚 ひでおの青春日記』が素晴らしかったなぁ。

地を這う魚 ひでおの青春日記 地を這う魚 ひでおの青春日記
価格:¥ 1,029(税込)
発売日:2009-03-09

 何がいいって、面白いとかしみじみするとか、そーゆーのもあるんですけど、何よりかにより作品全体の空気感がタマラナイ。その空気感に浸りたいがために、もう何度読み返したことか。
 自分が入っていきたくなる世界がそこにある、個人的な大傑作。
 最近買ったヤツでは、夢枕獏/伊藤勢『闇狩り師 キマイラ天龍変』1巻。

闇狩り師 キマイラ天龍変 1 (リュウコミックス) 闇狩り師 キマイラ天龍変 1 (リュウコミックス)
価格:¥ 590(税込)
発売日:2009-12-16

 雑誌『リュウ』を、オマケの手ぬぐいとクリアファイルに惹かれて買ったら(って小学生かい)、そこに連載されていたマンガで、絵に勢いがあってカッコイイので、単行本出たら買おうと待ち構えておりました(笑)。
 もともとが小説の外伝的な位置づけらしく、ストーリーの方はちょっとよーワカラン部分もあるんですけど(夢枕氏の小説も、浅学にも私は、20年以上前に『猫弾きのオルオラネ』を読んだっきりだし)、やっぱ勢いのある絵と迫力のある画面構成がカッコイイです。
 しかし、ドーデモイイことなんですけど、この伊藤勢といい、伊藤真美とか伊藤悠とか、伊藤姓のマンガ家さんって、絵に勢いがあって画面構成に迫力のある、カッコイイ作風の方が多くありません?(笑)
 何だか、だんだん「今年を振り返る」じゃなくて、ただの「近況つれづれ」になってきたので、ここいらへんでオシマイ。

マシン・トラブルと新環境

 マンガの締め切り直前に、マシントラブル発生。
 よりによって締め切り直前に……と思いつつ、しかし私の場合、マンガ制作でコンピュータは仕上げに段階でしか使わない、つまりベタ塗りとトーン貼りだけ(「バディ」の原稿に関してはネーム入れも)なので、まあ必然っちゃあ必然か(笑)。

 因みに結論から先に言うと、まあ何とか間に合いました。
 ここ数年はずっと、メインの作業にはMac mini G4 + Pantherっつー、かなりレトロな組み合わせを使っておりまして、もう一台、Intel iMac + Leopardってのもあるんですが、そっちはホビーユースのみで、まだ仕事には殆ど使っていなかったんですな。
 とゆーのも、マンガの仕上げで最もよく使う、PowerToneっつーPhotoshop用のプラグインがネックでして。こいつが、いつまでたってもバージョンアップしてくれないので、Intel Macに入れているPhotoshop CS4に正式対応していない。
 加えてPhotoshop CS4は、スキャナー機器のTWAINにも対応していないし、逆に、Mac mini G4に入っているPhotoshop CS2 + PowerTone 3っつー組み合わせには不満がなかったので、まあ古い環境のままでズルズルきていたわけです。
 ところが、このMac mini G4がイカれやがった。「?」マークが点滅したまま、起動しないんですな。
 いくつか応急処置を試してみたものの、効果なし。これ以上マジで対処していると、締め切りブッチの危機なので、急遽Intel iMacで仕上げをすることに。

 ただ幸いなことに、以前あれこれ調べたときに、Photoshop CS4でもRosettaで起動すれば、PowerTone 3もTWAIN機器も使えるということは判っていた。
 で、その時点で、念のためにIntel iMacにも、PowerTone 3のインストールは済ませていたし、トーンファイルや、スキャナーの初期設定や、Photoshop用のマンガに使うデータ(アクションとかスウォッチとかトーンカーブとかブラシとか、エトセトラ、エトセトラ……)なんかはコピーしていたし、それ以外にも、必要なファイルは常に外付けHDにバックアップをとっているので、まあ要するに、テーブルの上を片付けてマシンの配置を変えて、あとは機械を繋ぎ直しさえすれば、Intel Macでも作業は問題なく出来るというわけ。
 仕事である以上、サブマシンは常に確保していないとね。

 とはいえ、いざ作業を始めると、それでも幾つか小さなトラブルにはぶつかりました。
 例えば、タブレット(Intuos 3)の動作が変。考えてみると、まだIntel iMacには繋いだことがなかったので、急いでWACOMのサイトからドライバをダウンロード。
 ところが、これがヘンに時間がかかって(残り4時間とか表示される)、挙げ句の果てにはタイムアウトしてしまった。しかし、それまで無線LANでネットに繋いでいたIntel iMacを、急遽イーサネット・ケーブルを背面にブッ刺して有線接続にしたら、あっという間に問題解決してダウンロード終了。
 本来ならばここで、無線LANに使っているAir Macのアレコレとかも、再検討しなきゃならないんだろうけれど、そんな余裕はないので後回し(笑)。

 肝心のPowerTone 3の方は、まあ基本的には問題なく作動してくれるんですが、Photoshopのアクションで組んでいるトーン貼り(砂目とかドットとか、貼る面積や場所に左右されないトーンのうち、自分の定番の何種かをアクションに組み込んでいます)を何度か実行すると、「メモリが足りません」というアラートが出て使えなくなったりしました。
 これは、いったんPhotoshopを終了してから再度立ち上げると解決。アクションを使わないトーン貼りのみだと、このアラートも出ず。

 TWAIN機器の方も、問題なく作動してくれたんですが、スキャニング中にTime Machineのバックアップが始まると、何だか挙動不審になるような気配が。
 時間がないので正確な判断ではないですが、とりあえず、マンガの仕上げ作業中は、Time Machineは手動でオフにしておきました。

 あと、慣れの問題もあります。
 Photoshop CS4では、CS2と比べて、手のひらツールでビューを移動すると、ヘンにグニョーンと動いたり、止めたつもりがビミョーに動き続けて気持ち悪かったり、ドキュメントを複数開いたら、デフォルトでタブ表示になっていて使いにくかったりしたんですが、そこいらへんは初期設定をアレコレ切ったら解決。
 CS4から出来るようになったビューの回転は、これはなかなか便利で大歓迎なんですが、前述した初期設定で必要のない項目を切った際に、「OpenGL描画を有効にする」も切っていたら、このビューの回転も使えなくなってしまい、一瞬、原因が判らずに戸惑ったり。

 逆に、良いポイントもいろいろあり。
 まず、何てったって処理スピードの違いが大きい。
 というのも、「バディ」の誌面が大きくなったのを契機に、作業サイズを、それまでのA5原寸/600 dpiから、B5原寸/1200 dpiに変えたんですが、正直なところ以前のMac mini G4 + Photoshop CS2の環境では、かなり重くてストレスでした。

 ちょっと話が逸れますが、何でサイズと一緒に解像度も上げたかというと、掛けアミのツブレ具合とか垂直水平の流線の出具合(特にヌキ部分)で顕著ですが、やはり解像度を上げるとそれなりの効果はあるんですよね。まあこれは、私が最近ペンタッチを変えて、それまでのイリヌキがハッキリした一本線から、よりザクザクとラフに重ねて線を引く度合いが増えたところ、従来の600 dpiでは追っつかない部分が出てきたってこともあります。
 くっきりした線の再現性では、600 dpiでも問題はなかったんですが、「筆勢主体、荒れやかすれも上等!」な線だと、線のニュアンスが失われると、それが「味」ではなく「汚れ」になってしまう。いささか逆説的ではありますが、それが自分なりに得た結論。
 あ、でもこれはあくまでも、白黒二値の場合ですよ。グレースケールやカラー画像だったら、そこまで解像度の影響はないと思います。よく言われるように、350dpiもあれば充分。あと、白黒二値でも、スキャンではなくデジタル描画の場合も、これまた話は別だと思います。

 さて、話を戻しますと、前の環境と比べると、こっちのIntel iMac + Photoshop CS4は、いくらRosettaで起動しているとはいえ、そういったストレスはなく、サクサク作業ができます。
 私の場合、スキャンした線画をクリンナップするのに、アバウトに「サイズ変更>トーンカーブ補正>線画のチャンネル保存>線画のセル化>ゴミ取りを容易にするためのゴミのピックアップ」といった作業をアクションで組み、それを複数ファイルに対してバッチで自動処理しているんですが、以前はそれを始めると「やれやれ、一休みするかい」と、ちょいとベッドにゴロンと横になったりしていたところ、今回は「ちょっと一服……」程度の時間で終わってしまったり(笑)。
 こんな具合で、ファイル一つ開くにも保存するにも、以前よりだんぜん早くなって大助かり。

 あと、ショートカット・キーの扱いが変わったのも、使いやすくなりましたね。
 例えば私の場合、作業中によく使うショートカットで、「鉛筆」や「ブラシ」の「B」や、「バケツ」や「グラデーション」の「G」なんてのがあるんですが、これが複数回押すと、順番にツールが切り替わるようになった。最初はこれ、その仕組みに気付かなくて、「うが〜、さっきまでバケツだったのに、なんで勝手にグラデーションに変わってるんだよ、使えね〜!」とかムカついていたんですが、いったん慣れてしまったら、便利だったらありゃしない(笑)。

 というわけで、このまま新環境でもぜんぜんオッケー、それどころか、おそらく結果としては作業効率も上がって万々歳……と言いたいところなんですが、現実問題として、PowerToneの扱いを考えると、果たしてこれもどこまで保つやら……。
 CELSYSさん、ホント何とかしてよね……と、Mode時代からの付き合いの身としては、声を大にして言いたい。
 Comic Studioもいいソフトだとは思うし、私も部分的には使っているんですが、でも総合的には、私みたいにPC上でのペン入れはせず、仕上げだけをデジタルでやりたい場合は、あんまりアドバンテージないんスよ。
 オンラインストアも閉じてしまい、入手ルートも確保されていない現状では、こんなこと愚痴っても無駄かもしれないけど。

 そんなこんなで、環境移行もしたことだし、前にここで当時のデスクトップ画像を披露しているので、新環境の画像もアップしときます。
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 今度のデスクトップは、前にこことここで書いた、ポーランドのTV版『クォ・ヴァディス』で巨人ウルスス役を演じていた、柔道選手ラファウ・クバッキの勇姿。今はもうなくなっちゃったらしい、本人の公式サイトからダウンロードできた壁紙です。
 色だけ、自分でセピアにいじったんだったかな? デスクトップがあんまりカラフルだと、絵を描いたりするには何かと邪魔なので。

プレゼント

 予約していたブツが、クリスマス当日に届きました。
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 キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
 というわけで、小学館クリエイティブの『ジャングル大帝 マンガ少年版 豪華限定版』です。ご覧のように、輸送用のケースに入っております。

 で、それを開けると……
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 チョコレートのギフトボックスみたいな、黄金色の外箱が。前に買った『完全復刻版 新寶島 豪華限定版』と同じパターンですな。

 で、それも開けると……
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 B5版ハードカバーの本2冊と、付属の小冊子、複製原画なんかが出てくる。
 まだパラパラとめくっただけで、きちんと読んではいないんですが、やっぱ大判なのと、カラーや2色ページが再現されてるのは嬉しいなぁ。
book_jungle4
 というわけで、期せずして自分から自分へのクリスマス・プレゼントをゲットしました(笑)。
 実は、「ちぇっ、なかなか届かねェなぁ」なんて思ってたんだけど、こーゆーオチだと、ちょっと嬉しい(笑)。

 そういやこの黄金の外箱って、ガキの頃に良く見かけた、クリスマス用のチョコレート・ギフトを思い出させますね。表面がクリスマス・モチーフのレリーフになっているデッカい板チョコで、付属の小さい金属製のハンマーで砕きながら食べるやつ。
 あれは、外箱のゴージャス感といい、レリーフの物珍しさといい、ハンマーで砕くギミック感といい、少年時代に大好きだったっけ。懐かしい(笑)。
 で、『ジャングル大帝』も、少年時代の記憶と密接に結びついているので……って、流石に私は、このマンガの連載をリアルタイムで知っている年代ではないんですが、テレビアニメと、親に買って貰ったレコード『子どものための交響詩 ジャングル大帝』が大好きだったもんで、ますます懐古的な気分に(笑)。
 自分が使っていた幼児用スプーンも、レオの絵が付いていたし、レオの顔の形をしたお風呂用のスポンジなんてのも使っていた記憶が。確かスリットが入っていて、中に石鹸を入れられるようになっているの(笑)。
 そんなこんなで、ちょいノスタルジー気分の、クリスマス当日でした。
 しかし、こんな気分になってしまうと、頭の切替をしてゲイSMマンガを描く仕事に戻るのが、ちょいと厄介でもあります(笑)。

メリー・クリスマス

 クリスマス・イブだけど、仕事してます。
 現在描いているマンガの主人公は、こんな男。
draft_2009xmas
 これだけだと、あまりにクリスマス気分と関係がなさすぎるので(笑)、ゲイ・アーティスト仲間から貰ったクリスマス・カードも、一緒にご紹介。

 アメリカのアーティスト、Rob Clarkeから貰ったヤツ。
 相変わらずクィアなネタ(笑)。GIFアニメで動きます。
lottaballs_Gengoroh

 イタリアの二人組アーティスト、Franze & Andärleから貰ったヤツ。
 フランスのH&OやドイツのBruno Gmunderから、海賊が主人公のゲイマンガ”Black Wade (Jimbo)”が発売中。
xmascard2009

 それでは皆様、良いクリスマスを。

 一つ追加。
 ロシアの二人組アーティスト、Alexey & Alexeyからもグリーティングが届きました。
 ダイレクトなブツだったので、申し訳ないけれど、ちょいと修正いれてのアップです。
xmas_alexey

『レッド・ウォリアー』

レッド・ウォリアー [DVD] 『レッド・ウォリアー 』(2005)セルゲイ・ボドロフ/アイヴァン・パッサー
“Nomad” (2005) Sergei Bodrov / Ivan Passer

 例によって酷い邦題ですが、原題は「遊牧民」の意で、18世紀のカザフスタンを舞台にしたエピック・ドラマ。
 制作国はカザフスタンとフランスですが、制作途中で資金切れとなり、ハリウッド資本(ワインスタイン兄弟)に引き継がれたらしいです。というわけで、米国公開バージョンなのかセリフは全て英語、メインの俳優陣も、アメリカ/イギリス映画で見かける面々。

 ストーリーは、18世紀のカザフスタン、複数の氏族が割拠して統一国家としては成り立っていなかったカザフ人のもとに、モンゴル系のジュンガル人が来襲して危機に陥っていたところ、予言された英雄が現れ、民族を統一してカザフスタンの危機を救う……といった内容。
 ここいらへんの歴史は全く知らなかったので、それだけで興味深く見られましたが、映画の感触としては、歴史劇というよりエピック・アクション劇といった感じで、往年のソード&サンダル映画なんかに近い、肩の凝らない娯楽作でした。
 救世主出現の予言、親を殺された赤子、主人公を導くオブザーバー的な役割の師、幼なじみの戦友、ヒロインを巡る三角関係……といった具合に、エピソード自体はエピックもののクリシェのオンパレードといった感じで、ストーリー的な新味は、あまりありません。
 実は、セルゲイ・ボドロフの単独監督作品だと思っていたので、けっこう期待していたんですが、その期待は、正直外れてしまいました。
 というのも、再生してみたら、監督がボドロフとアイヴァン・パッサーの二名になっていて、「ん?」と思ったんですけど、後からIMDbで調べてみたら、そもそもはパッサーが監督していたところ、前述の資金難で新しいプロデューサーが入り、その時点で監督もボドロフに交代したらようです。
 そのせいもあってか、ボドロフ監督の2007年作品『モンゴル』には、いたく感銘を受けたんですけど、この『レッド・ウォリアー』には、『モンゴル』の美点は殆ど感じられず。あの、神話的なまでの力強さを期待してしまうと、完全に裏切られてしまうのでご注意あれ。

 逆に、『モンゴル』がイマイチだった人には、こっちは軽い娯楽作品として退屈せずに楽しく見られるので、オススメかも。私自身、前述の期待値をさっ引いて考えれば、けっこう楽しめました。いちおう歴史に題材を採ってはいますが、モノガタリの構造としては、中央アジアの遊牧民というエキゾチックな舞台で繰り広げられるヒロイック・ファンタジー(ただし魔法と筋肉は抜き)みたいな感じなので。
 中央アジアの草原がメインなので、風景なんかは実に雄大で良し。騎馬の群れや軍団なんかの、物量感も佳良。
 町並みや城塞なんかも、国は違いますが、サマルカンドやタシケントなんかを思わせるペルシャの影響が色濃い様式で、そんな城塞を舞台にした攻城戦とかは、あまり他では見られませんし、見ていて楽しいです。
 アクション面では、いかにも遊牧の騎馬民族といった感じの、アクロバティックな乗馬技術を生かしたシーンなんかに、目を惹かれます。左右に居並ぶ矢衾の間を、サーカス芸のように馬を乗りこなし、飛んでくる矢を交わしながら駆け抜けるシーンとか、かなり見応えがありました。
 風俗描写やお祭りの情景なんかが見られるといった、観光映画的な楽しさもあり。
 ああ、あとラストカットが美しかったなぁ。ここはすごく印象に残りました。

 ただ、役者さんにちょいと難ありで、別に演技とかは問題ないんですが、問題はルックス。
 いや、美形だのブスだのといったことでもなくて、主役のクノ・ベッカーという人(未見ですが、『GOAL! ゴール!』シリーズの主演男優さんだそうです)、この人はメキシコ人らしいんですけど、正直、お顔が白人白人しすぎていて、あんまり中央アジアの人には見えないんですよ。
 サブ・キャラクターのジェイ・ヘルナンデス(『ホステル』の主役の人)も、いかにもラティーノといった顔なので、同様の違和感があるし、悪役のマーク・ダカスコスも、この人はハワイ系らしいですが、やっぱりしっくり来ない。
 まあ、民族や文化が交錯している中央アジアだし、バタくさい顔でも不思議はないのかも知れませんが、それでも周囲の人々がモンゴロイド系の顔なだけに、やっぱちょっとヘンな感じがします。特に主役のベッカーは、どう見ても父親役の人と同じ人種には見えないし。
 というわけで、メインのキャラクターが、それらしく見えないというのが、どうも全体の説得力の足を引っ張っている感が否めません。今どきの映画で、これはちょっと辛いかなぁ。
 ただ、オブザーバー役のジェイソン・スコット・リーや、ヒロインのオンナノコ(ちょい、眉毛描いている珍獣ハンターの人に似ている気が)や、敵の王様なんかは、違和感もないしいい味を出しています。

 そんなこんなで、まあ全体的に「そこそこ」ではありますが、中央アジアの風物史が好きとか、馬が好きとか、エキゾなエピックが好きとか、絵面としての歴史劇を楽しみたいとか、そういった好きポイントが合致する人ならば、珍しいネタでもありますし、一見の価値は充分にあると思います。
 シルクロード好きなら、要チェックですね。

『クズが世界を豊かにする』

クズが世界を豊かにする─YouTubeから見るインターネット論 『クズが世界を豊かにする─YouTubeから見るインターネット論』松沢呉一

 仕事の息抜きにちょっと……とか思って読み始めたら、もうそのまま止まらなくなって最後まで突っ走り、結果、仕事に大支障をきたしてしまった……とゆーくらい、とにかく内容が面白い!
 まず最初に、それを強調しておきたいと思います。
 具体的にどういった内容の本かと言いますと、副題にもあるように、YouTubeで見られる種々雑多な映像の紹介を通じて、では、そういったものから何が見えるか、ということを著者が思索探求していき、それがインターネット時代におけるメディア論や、日本と欧米の比較文化論、アートやパフォーマンスの表現論、などなど、様々かつ刺激的な論考が述べられる本です。
 で、それがめっぽう面白い。
 基本的に語り口調のせいもあって、ミクロから始まりマクロへと至る著者の論考が、その移行プロセスそのままに、まるで共通体験をしているようにダイレクトに頭に入ってくる。しかも、ちっとも堅苦しくないどころか、逆にユーモア満載、しかも思考の展開プロセスはスリリングですらある(だって耳クソの話がメディア論に繋がったりするんだもの!)ので、読んでいてホント、面白くて、途中でヤメられなくなっちゃう。
 そんな具合で、著者の人並み外れた好奇心と探求心もあって、本の内容も実に多層的です。
 前述したような、メディア論や比較文化論といった要素もあるんですが、例えば、インターネット時代に対応した思考方法の転換を説く指南書的な側面もありますし、或いは、インターネット時代のメディアに適合した情報発信方法のHOW TO書的な側面もある。ビジネス書的に読んでも、おそらくヒントがいっぱいあるんじゃないだろうか?
 より有効に楽しくインターネットと付き合う方法も学べますし、特に、受動的にそれらを消費するだけではなく、ホームページやブログ等を使って情報や表現を発信したい人なら、この本から得るものは沢山あると思います。あと、作家さんや編集者さんだったら「判断の主体」の章は必読!
 私自身、これまで考えてきたこととか、これからやりたいと思っていることについての、方法論や思考法的な意味での解答やヒントがいっぱい得られました。
 そんなこんなで、お世辞抜きで激オススメの一冊。
 いや〜、思考する楽しさを満喫しました!
 松沢さん、スゴい!
 出版社による本の紹介ページはこちら。
 松沢呉一さんのブログはこちら。

『映画秘宝』とか

映画秘宝 2010年 02月号 [雑誌] 映画秘宝 2010年 02月号

 現在発売中の雑誌『映画秘宝』2月号で、特集「ゼロ年代ベストテン!!」に、アンケートおよびコメントが掲載されております。
 どーゆー特集かというと、2000年から2009年までの、いわゆる「ゼロ年代」に制作・公開された映画のなかから、個人的なベストテン作品と、ベストワン男優、ベストワン女優、ベストワン監督、ベストワンシーンなどを選出し、その理由などのコメントを添えるというものです。
 評論家、ライター、タレント、漫画家、小説家、映画監督……などなど、カルトでゴージャスな皆様に混じって、私のベスト&コメントも載っておりますので、よろしかったらぜひお読みくださいませ。

『シュマリ』のホモソーシャル性とホモセクシュアル性

シュマリ 1 (手塚治虫文庫全集 BT 25)シュマリ 2 (手塚治虫文庫全集 BT 26)
 手塚治虫文庫全集で『シュマリ』が出ていたので、久々に読みたくなって購入。例によって、私の持っていた本(小学館文庫版)は、実家に置いてあって手元にはないもんで。
 で、およそ20年ぶりくらいに再読したら、中盤で描かれるシュマリと人斬り十兵衛の関係性に、やけにドキドキしちゃったりして。
 というのも、基本的にこの二人の関係は、あくまでも「男同士の固い友情」、つまりホモソーシャル的なものなんですが、今回再読したら、そこに、ホモソーシャルからホモセクシュアルへと揺らぐ、微妙な「危うさ」のようなものを感じてしまっだのだ。
 加えてこの十兵衛というキャラが、ヒゲ面の中年男だし、腕や足にはしっかり毛も生えているし……まあこれは手塚マンガの常で、コマによってあったりなかったりするんですけど(笑)、内面的にも、過去を捨てた寡黙で一本気な男、しかもめっぽう腕も立つ、という、ツボのド真ん中を付いてくるタイプで、オマケにしょっちゅう、褌一本の裸になるもんだから、なおさらドキドキしたりニヤニヤしたり(笑)。

 具体的に、どーゆートコロにドキドキしたかというと、シュマリと十兵衛は、札幌の集治監(監獄)で出会うんですが、最初はフツーに、互いにタダモノならぬ気配を感じて牽制し合うような、いかにも「男と男」の関係なんですな。
 ところが、とある事件をきっかけに、十兵衛はシュマリに一目置く……というか、その男気に惚れて、シュマリが炭坑に移送されると、自分も一緒についていくことを望む。
 で、いざ炭坑に移ると、二人は起居を共にするようになるんですが、ここでの十兵衛は、シュマリのためにたすき掛けで料理は作るわ、針仕事はするわ、弁当のオカズに気を配るわ、あまつさえ、食卓で物価の高さに愚痴をこぼしたり、厨房で後かたづけをしながら情歌めいた都々逸を口ずさんだり……と、まるでシュマリの女房のように振る舞うわけですよ。
 はぐれ者のいかつい野郎どもが、こうして二人身を寄せ合って暮らすというのは、それだけでも私的には、かなり「萌え」なシチュエーションなわけで(笑)。
 では、どこが前述の「危うさ」に通じるかというと、基本的に、「男が男に(精神的に)惚れる」という、ホモソーシャル的なリレーションシップとは、これは、二者が互いに相手を「オス同士」だと、認め合っていることが前提となるわけですよ。
 ところが、この場合の十兵衛は、シュマリの中に、自分の「オスらしさ」を越える「男性性」を見て、共に生きたいと願った結果、自らシュマリの女房役を買ってでている。つまり、「対等のオス同士」だという関係は、この段階で既に崩れているんですな。

 そこでちょっと、十兵衛がシュマリの男気に惚れた「事件」を、改めて振り返ってみると、未読の方のお楽しみを削がないように詳細は省きますが、実はこの事件は、「男根の切断」で始まり「睾丸の粉砕」で終わっている。
 となると、いささか強引ではありますが、この一連の流れを構造的に整理して考えると、以下のような構造が浮かびあがってくる。
 まず、オスだけの社会で、あるオスAが自分の強さを誇示するために、他の弱いオスを力によって去勢する。
 そこに、もっと強いオスBが現れて、オスAはオスBに負けて去勢されてしまう。
 それを見ていたオスCが、オスBの中に自分を越えるオスらしさを認め、そこに惚れ込む。
 そして、オスBが群れを離れる際、行動を共にすることを望んだオスCは、自らに状況的な去勢を施す……つまりジェンダー・ロール上でフェミナイズすることによって、オスBと「つがい」の関係になろうとする。
 どうです、こう書くと、かなり「危うい」感じでしょう(笑)。

 まあ、深読みのし過ぎだと思われるのは、重々承知のうえではあります。
 しかし、実際に十兵衛が、炭坑に移送されるシュマリについていきたいと望む場面では、彼は「道行き」なんていう、男女の駆け落ちや心中行の意味がある言葉を使っていたりするんで、こりゃ深読みもしたくなるってもんです。
 そして、もっと後になって、十兵衛の昔馴染みだったらしい「なつめ」という女が出てくると、こういった「危うさ」が、もっと深まってくるんですな。
 なつめは、十兵衛を慕って追ってきたんですが、それを十兵衛は「そんな女は知らない」と突っぱねる。そんな十兵衛に対して、シュマリはそれとなく「その女と一緒に行け」、つまり、自分ではなくその女と「つがい」になれと勧める。すると十兵衛は、こう答える。

見損なっちゃ
いけねえ
おれはおまえと
死ぬまで離れんと
決めたんだ
おれにとっちゃ
おまえさんしか
頭にないんだよ

 という感じで、こうなるともう、恋愛感情による三角関係の様相と、構造的には同じなわけです。
 もちろん全体を通じて、あくまでも「男と男のあつい友情」という枠は、外見的には崩れてはいないんですけれど、どうも私には、このシーンが「ホモソーシャルという分厚い楯の隙間から、一瞬、秘められたホモセクシュアル的な情念が噴出した瞬間」のように見えてしまう。

 こんな感じで読み解いて(或いは意図的に誤読して)いくと、まだまだ他にも気になる要素が出てくる。
 例えば、なつめというキャラは、初登場時に「男装」しているんですな。
 まあ、こういった異性装というのは、手塚作品では定番のネタなので、それほど特別視することではないんですが、しかし、十兵衛が以前関係を持っていた「女」が、こういった「男装」が可能な、つまり、性差にアンドロギュヌス的な「曖昧さ」を持つキャラクターだということは確かなわけで。
 また、この場にはもう一人、オス的な獣欲の塊のような、弥十という男(これ、音が「野獣」と同じなあたりが、いかにも手塚作品っぽい)が居合わせている。
 弥十は、なつめが女であることに気付き、オスとしての欲望の手を伸ばす。それを感じたなつめは、十兵衛に庇護を求める眼差しを向けるんですが、十兵衛は全くそれに気付かない。この場面のみならず、十兵衛が女に対して、何らかのオス的な興味を示すシーンは、全体を通して皆無なんですな。
 更にもっと言うと、十兵衛が捨てた過去の中にも、男色や衆道といったものに結びつけることが可能な要素があったりする。
 とはいえ、この件に関しては、読者の知識次第で、そういう深読みも可能になるというだけで、マンガの中でそういった部分に関する言及があるわけではないですし、前述した知識というのも、一般的というよりは、かなり偏向したものだとは思いますが。
 まあ、こんなことを考えていると、どんどん「ゲイ的な興味」から「やおい的な妄想」になってしまいそうなので、ここいらへんでヤメにしておきましょう(笑)。

 そんなこんなで、もともと『シュマリ』という作品は好きだったし、十兵衛だけではなく、お峯さんとかポン・ションとか、好きキャラもいっぱいいたんですけど、今回の久々の再読では、やっぱりこの十兵衛が絡む第11章から第23章までが、特に印象に残りました。
 でも不思議なことに、最初に読んだときも……これは確か高校生の頃だから、ひゃ〜30年前だ(笑)、それから何度か再読したときも、十兵衛とシュマリの関係性にジーンときたり感動した記憶はあるけれど、こういう感じでドキドキしたっつー記憶は、全くなかったりします。
 ひょっとしたら、歳くってプラトニック・ラブに憧れるようになったのかしらん(笑)。それとも、やおい脳が進化しちゃったのかも(笑)。

『提督の戦艦』

提督の戦艦 [DVD] 『提督の戦艦』(2008)アンドレイ・クラフチューク
“Адмиралъ” (2008) Andrei Kravchuk

 第一次世界大戦からロシア革命の激動の時代を舞台に、ロシア帝国海軍の提督から白軍の司令官となったアレクサンドル・コルチャークの後半生を描いた映画。
 DVDパッケージの煽り文句は、スペクタクル戦争アクションという感じなんですけど、実際に中身を見てみると、ストーリー的な軸は、コルチャーク提督と部下の妻の不倫劇で、その合間合間に、歴史的叙事や大規模な戦闘シーンが描かれるという内容。いわば、スペクタクル・メロドラマって感じ。

 で、スペクタクル系のヴィジュアル面は、実に充実しております。戦闘シーンは、物量もスケール感もあれば、迫力やエグ味もタップリ。広大なロシアの風景も雰囲気抜群。
 また、歴史劇としてのヴィジュアルも、美術や衣装は文句なしの出来映えだし、舞踏会とかは実に華麗でゴージャス。絵巻物的に存分に楽しめるので、そういう面の満足度はかなり高し。
 ただ、内容の方は……まあ悪いとは言わないけど、いささか単純に過ぎるかなぁ。
 メロドラマ部分は、視点が完全にヒーローとヒロインに寄り添っているパターンなので、主人公カップルに感情移入して見ないと、ちとキツい。主役二人以外のキャラクターに関して、ほとんど掘り下げがないので、人間ドラマ的な深みという点では、正直かなり物足りない。
 ただ、ヘンに判りやすい悪役然とした恋敵がいるとか、そういったキャラクター造形的な安っぽさがないのは好印象かな。二組の夫婦による四角関係のわりには、あんまりドロドロしないので、前述したような物足りなさがある反面、スッキリとした清々しさのようなものはあります。

 歴史劇としては、時事を綴った絵巻物的には面白いんですけど、それ以上でも以下でもなし。
 エピソードや見せ場は盛り沢山で、見ていて飽きることも全くないんですけど、反面、歴史観がシンプルすぎて、善悪がはっきりとした紋切り型であるという感は否めない。
 あと、やはりキャラクター描写が主人公カップルに偏り過ぎているので、それ以外に色々とドラマチックなことが起こっても、叙事的な群像劇としての魅力がイマイチで、もう一つエモーショナルな盛り上がりに繋がらないのは残念。
 そんなこんなで、ある意味単純極まりない内容を、豪華絢爛でスペクタキュラーな映像で彩るという、いわば『タイタニック』のロシア版みたいな感じです。じっさい構成とか見ると、かなり同作を意識しているっぽいし。
 個人的な好みだけで言うと、こっちのヒーロー(『ナイトウォッチ』の主演男優)の方がディカプリオよりもタイプだし、ヒロインもこっちの方が美人に感じたので、『タイタニック』よりは感情移入しやすかったかな(笑)。
 まあ、ボンダルチュクの『戦争と平和』や、リーンの『ドクトル・ジバゴ』なんかと比べてしまうと、率直に言って、それらには遥かに及ばない出来ではありますが、シンプルゆえの気楽な面白さはあるし、画面自体は前述したように見応えタップリなので、歴史モノが好きだったら見て損はないと思います。

 最後に一つ、興味深かったのは、イデオロギー的な立ち位置。
 この映画では、完全に、ロシア革命や赤軍を「悪」、主人公側の白軍を「善」とする立場で描いています。
 ナチスよろしく、暴虐的な集団として描かれるボリシェヴィキを見て、つい相棒と「ソビエト時代だったら、ぜったいに作れなかったよね〜、こんな映画」なんて言い合ってしまったくらいで。
 しかし、社会のパラダイム・シフトによる価値観の逆転が、かくも極端に出ているのをオンタイムで見ると、ちょいと空恐ろしい感じはします。二次大戦前後の日本も、こんな感じだったのかしらん。

“GOKU vol.3″、続報

h&o_site_goku
 マンガ『君よ知るや南の獄』フランス語版”GOKU”の最終巻ですが、版元であるH&Oのサイトに情報がアップされました。
 それに伴いサイトのトップ絵も、ご覧のように三上くんになってます。
 ……うん、我ながら凛々しく描けてるぞ(笑)。
 例のコフレ(ボックス入り三巻セット)の画像も、サイト内にアップされているので、興味のある方はどうぞ。大仰な化粧箱とかではなくて、カジュアルな感じです。あっちの本屋で、クリスマス・プレゼント用とかに買ってもらえるといいな(笑)。
 あとは、現物が届くのを待つばかりですが、この出版社はいつも対応がしっかりしているので、まず大丈夫でしょう。