“Yamada: Way of the Samurai (ซามูไร อโยธยา)”

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“Yamada: Way of the Samurai” (2010) Nopporn Watin
(イギリス盤DVDで鑑賞→amazon.co.uk、”Muay Thai Warrior”のタイトルで米盤DVD&Blu-rayあり→amazon.com

 2010年制作のタイ映画。山田長政を主人公にしたフィクショナルな時代アクション映画。
 主演はタイで活躍する日本人男優、大関正義。タイ語原題”ซามูไร อโยธยา”、別題”Yamada: The Samurai of Ayothaya”等。

 ナレスワン大王治世下のアユタヤ王朝。未だ敵国ホンサワディー(ビルマ)の脅威衰えぬ中、アユタヤ日本人町の侍、山田長政は、アユタヤで敵国の手先となって暗躍する者の中に日本人がいるらしく、その頭目を突き止めろとの命を受ける。
 しかしその直後、忍者たちの襲撃を受けた長政一行は、その黒幕が身内の日本人重臣だと知る。仲間は皆殺されるが、長政は一人、通りがかったタイ人の衛兵たちに救われ、彼らの元で治療を受ける。
 命を救われた恩義もあり、長政は次第に彼らに親しみを覚えるようになる。しかし自分の正体を知られた黒幕は、唯一の生き証人である長政に刺客を差し向ける。長政はそれを撃退るが、タイ人衛兵たちは、彼が同じ日本人から命を狙われていると知り、不信感を覚える。しかし、衛兵たちの師である僧侶は、「人には他人に言えない秘密もあるものだ」と、彼らの猜疑心を諫める。
 一方で長政は、自分の日本古武道でタイ人衛兵たちに試合を挑むが、彼らのムエタイに手もなく打ちのめされてしまう。長政は、件の僧侶にムエタイの伝授を頼み、最初はそれを拒んだ僧侶も、長政の「自分は日本生まれだが、アユタヤで死にたい」という決意を聞き、彼にムエタイを教えることにする。
 やがて長政のムエタイは上達し、タイ人衛兵の一人とも親友になり、ついにはナレスワン大王の近衛兵を選抜するトーナメントにも出るようになる。しかしその一方で、ホンサワディー軍はアユタヤ侵攻を計画しており、また、依然自由の身のままの例の黒幕も、長政の命を狙い続けていて……といった内容。

 え〜、ぶっちゃけ、山田長政とナレスワン大王が同時代に出てくるという点から言っても、史実的には全く則しておらず、完全なフィクション作品です。
 映画全体のテイストも、いわゆる史劇ではなく完全に娯楽アクション映画。昔のソード&サンダル映画のノリに近いです。
 で、私はこれ、好きです。
 何でも衛兵たちは本物のムエタイ選手たちだそうで、訓練にしろ戦闘にしろ、アクションシーンの見応えはバッチリで、話も、愛国心とか友情とかコッテコテのオトコノコ系で、同時に日タイ友好に関する目配せもしっかりあって、しかも基本的に、全編半裸のアジアン・マッチョしか出てこない(笑)。
 200人の敵を10人で迎え撃つなんて燃え系展開もあれば、宴会なんかで歌舞シーンが入ったり、キレイどころとの仄かなロマンスがあったり、おませな少女キャラによる箸休めがあったり……と、内容的には往年のソード&サンダル系娯楽映画を彷彿させるサービス具合。エピソード構成なんかも、古式ゆかしき大衆娯楽活劇映画のクリシェに則ったという感じで、基本的にそういうのが好きな私なんかは、ちょっと嬉しくなっちゃうくらい。一方、それが古くさいと感じてしまう方もおられそうではありますけど。

 アクションの演出も、血飛沫こそCGですけど、基本はエフェクトで誤魔化したりしない正当派。その肉体をフルに使った立ち回りだけでも、なかなかの充実感&見応えでした。無双の戦士たちが返り血で真っ赤になって、スゴい形相で相手をバッタバッタ斃していく様は、カッコいいと同時に、何だか戦いというより「Massacre!」って感じもして、見ていて敵が気の毒になってくるくらい(笑)。
 日タイ友好という点でも、例えば僧侶が長政にムエタイを伝授するくだりで、「ムエタイの真髄は、手・肘・足・膝といったものを武器として用いる《攻め》にあるが、日本古武道の真髄は、相手の力を受けつつ、それを利用して攻撃に転ずるところにある。よって、もしそれらの異なる二つを共に習得し、それを合体させれば、そなたは無双の武術を身につけることになる」と説いたり、また、長政が友となったタイ人衛兵に、日本刀の柄をアユタヤの木工細工に変えた得物を送り、それをイコール、彼らの理想とする生き様に重ねて見せるなどといった形で描いていて、これもクリシェ通りながらも上手く表現しているなという感じ。
 また、生まれや国は違っても、どこの土地に骨を埋めるか、何を愛して何を守るか、それさえ同じならば同士であるといった部分も、男泣き系の燃え要素としては、けっこうグッとくる部分。
 で、ちょっと面白かったのが、《見かけや出自が違っても同じ人間》ということを表現する場合、我々の感覚だと《肌の色は違えども血の色は同じ》というのがあると思うんですが、タイだとどうもそうではないらしいということ。映画の中で長政は、タイの少女から「白い顔」などと呼ばれ、日焼けによる肌の色の違いという意識があるようなんですが、更に《血の色は違っていても》という言葉が頻繁に出てくる。まぁ、英語字幕の翻訳に因るのかもしれませんが、この《出自の違い=血の色が違う》というのは、ちょっと日本人にはない感覚ではないか……なんて思ったり。

 主演の大関正義氏は、顔はちょっと冴えないかな〜という気もしますが(すいません)身体は立派。あとナレスワン大王役が、個人的にご贔屓のウィナイ・クライブットだったのが嬉しいサプライズ。まぁ、特別出演的な感じで、さほど登場シーンもありませんでしたが……。
 因みに師となる僧侶役も、『ナレスワン大王(ザ・キング 序章・アユタヤの若き英雄、アユタヤの勝利と栄光)』や『マッハ!弐』の僧侶(後者は未見ですが)や、『ランカスカ海戦 パイレーツ・ウォー』のお師匠さん役とか、『ビューティフル・ボーイ』や『スリヨータイ』にも出ていた、ホントしょっちゅうお見かけする(そしていつもお師匠様的ポジションの)のソラポン・チャトリ。

 正直スケール感はあまり……というか全くない映画なんですが(基本的にアクションがメインで、大規模な合戦シーンなどは皆無)、全体のテイストが完全にコスチューム・アクション映画に統一されているので、それがさほどマイナス要素にはなっていない。ただ、ウチの相棒は「ちょっと安っぽくてイマイチ」と評価。
 個人的な好みとしては、もうちょっとキャラクターを掘り下げるための生活描写などのディテールが欲しかった気はしますが、これはDVD特典の未公開シーンを見たところ、実は長政とヒロイン、おしゃまな少女、子供たちなどによる、ユーモラスかつハートウォーミングなシーンあれこれが、撮影はされていたのに最終的にはカットされてしまったんですな。おそらくテンポ重視で中だるみを避けたんだと思いますが。
 結果、尺も全部で1時間半弱とスピーディな展開ですし、気楽に見られるアクション映画としては充分佳良だと思います。

 まぁ、ぶっちゃけた話、内容的には山田長政である必要は全くなく(What if的な楽しみ方は全くできず)、むしろタイに骨を埋めた無名のサムライの話にした方が、全体の収まりは良くなるのではないかとは思うんですけれど、コスチューム・アクション好きな方なら、お楽しみどころもいろいろありだと思います。
 どっか買い付けて、DVDスルーでいいから日本盤出してくれないかしら……。

Photoshopによるマンガ原稿の仕上げ動画


 先日、ふとした拍子に「Mac OS Snow Leopard以降のQuickTime Playerでは、PCの作業画面の動画キャプチャができる」ということを知って、なんか試してみたくなったので、いつもやっているマンガのPhotoshop上での仕上げ作業をムービークリップにしてみました。
 いざ録画した素材を編集する段になって、ようやくPCの壁紙がちょっとアレなことに気づき、う〜む、もっと無難なものに変えておいた方が良かったか……などと思いましたが、もう後の祭り(笑)。というわけで、画面の真ん中でこっちを睨み続けるヴィクラム様が気になるかもしれませんが(因みに映画『Raavanan』のスチル)、まあ気にしないでください(笑)。

 基本的には、マンガ1ページ分の作業をそのまま丸々録画して、それを4倍速と8倍速を織り交ぜて再生したものです。
 但し、普段ならアクションとバッチを使って、複数ファイルを一度にまとめて処理している作業(この場合は【スキャン画像補整>2値化>セル化>ゴミ取り準備】まで)や、ファンクションキーを割り振ったアクションで、ボタン一発で処理している作業(【グレー画像の網点化】や【完成画像のグレースケールから白黒2値への変換】)などは、そのままだと何が起きているのかちょっと判りにくかったので、この動画クリップ制作用に、後から改めてアクションを使わずに再作業したものを録画した部分もあります。
 また、最後に出てくる完成画像には、キャラクターの上腕にタトゥーが入っていますが、作業動画にはそれが含まれていません。
 というのも、このキャラがタトゥーを入れているということを、すっかり失念して数ページ作業を進めてしまい、気づいたときには既に作業画面の録画も終えてしまっていて……という事情がありまして(笑)。なんか、それ用にわざわざ再作業するのもアレだよなぁ……ってな感じで、そこはそのままにしてしまいました。
 いちおうここで補足しておきますと、タトゥーはベクター画像のパスデータを、Photoshopのカスタムシェイプに登録しておき、それを自由変形とワープを使って形を整えて貼り込んでいます。

 動画制作に関しては、QuickTime Playerでの録画は【ファイル>新規画面収録】で行えます。
 再生スピード変更はQuickTime Proを使って、【ファイル>書き出す>イメージシーケンス】で目的の再生スピードに合わせてコマを落とし、それを再度【ファイル>イメージシーケンスを開く】で動画に戻しています。編集も、これは時系列で繋げばいいだけなので、QuickTime Proの【コピー>ペースト】で大概は済ませています。
 こうして出来た作業動画を、iMovieに読み込み、頭の写真と最後の画像を足し、BGMやテロップを付けています。
 BGMは昔GarageBandで作った曲を使用。Logic Expressでブラッシュアップしたフルコーラス版は、ここにアップしています。

ちょっと宣伝、スパンキングマンガ描きました

endline 本日2月23日発売の「肉体派ガチ! vol.2 特集/雄尻」に、読み切りマンガ『END LINE』掲載です。

 特集が《雄尻》なので(因みに《おしり》と読みます)、スパンキングものを描いてみました。ゲイもののネタとしては定番(特に欧米では)な気がしますが、考えてみると合意のプレイ系スパンキングものって、私は殆ど描いたことがないような気がしたので(『PRIDE』でちらっと出したくらい?)、それをメインに据えて描くのは今回が初めてかも。
 キャラは、大学アメフト部員とそのコーチという組み合わせ。ラブ要素を目に見える形では出さず(水面下でどうなのかは、また別の話)、パターンとしては体育会系ゲイポルノの王道的な様式。

 実はこれを描く際に、エロ部分の修正基準について編集さんから詳しく聞き、それを元に「画面的には修正を入れる必要が全くないのに、でもエロエロ」というのをやってみようと思ったんです。
 いろいろな事情もあって、「肉体派」シリーズの修正が前号からキツくなりまして、実は前号に描いた『モンスター・ハント・ショー』も、かなりキツめのモザイク修正が入るということを事前に伺い、ならばそれを逆手にとってやろうと、ああいう内容にしたんですな。若干の皮肉も込めて(笑)。
 で、今回は更に、モザイクを入れるコマが全くないのに、でもエロい……ってのをやろうと思ったんですが、その作業途中で、諸般の事情でこの「肉体派ガチ! vol.2」から、成年コミックマークが入ることになり、その結果、修正基準も以前のラインに戻ったので、この狙いはあんまり意味がなくなっちゃいました(笑)。

 ってな裏話はともかくとして、いい感じにコンパクトな小品に仕上がったと思うので、よろしかったらお読みくださいませ。お尻好き(穴じゃなくて臀球の方)の方には、特にオススメです(笑)。

肉体派ガチ! VOL.2 肉体派ガチ! VOL.2
価格:¥ 920(税込)
発売日:2012-02-23

“Dabangg”(ダバング 大胆不敵)

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“Dabangg” (2010) Abhinav Kashyap
(インド盤Blu-rayで鑑賞、米アマゾンで入手可能→amazon.com

 2010年製作のインド/ヒンディ映画。肉体派サルマン・カーン主演。義賊気取りの腕っ節の強い警官を主人公にしたアクション映画。タイトルの意味は「恐れ知らず」。
 数々の記録を塗り替えた大ヒット作品だそうで、同国フィルムフェア賞で作品賞を含む6冠を獲得。

 主人公は幼い頃父親を亡くし、母の再婚相手の義父や、後に生まれた弟とは上手くいっていない。やがて成長した彼は、腕っ節が自慢の警察官になるが、義父や弟との関係は改善されていなかった。
 ある日主人公は銀行強盗を一人でブチのめすが、義賊を気取って、取り戻した金は自分が着服してしまう。弟はある娘と恋に落ちるが、彼女の家の貧しさが障害となって、両方の親から結婚の許可を貰えない。思い詰めた弟は、兄の隠していた金を盗んでしまうが、それを母親に見られてしまう。
 一方の主人公も、捕り物中に出会った娘に恋をするが、そんな中で母親が急逝してしまい、それを切っ掛けに主人公と義父との亀裂は決定的なまでに拡がってしまう。更に主人公が、弟の結婚式を横取りするような形で、自分の結婚式をあげたことによって、兄弟関係も更に悪化する。
 それを件の銀行強盗の黒幕の悪徳政治家が利用し、弟に兄を殺させようと仕組むのだが…といった内容。

 これは確かに面白かった!
 正直ストーリー的には新味はなく、ド派手なアクション、歌と踊り、家族の確執と再生、ヒーローと美女のロマンス、政治家のパーティーが絡んだ陰謀、お笑い……等々、古いタイプのインド映画のお約束要素がテンコモリなんですが、3時間越えも珍しくないそういったタイプの映画に比べて、本作はテンポ良く2時間でスッキリとまとめているのに、何よりも感心。
 クリシェのさばき方も上手く、例えば歌と踊りにしても、いきなり海外ロケというお約束を、主人公たちのハネムーンという設定にしていたり、また、お色気サービスで入るダンスも、ギャングの宴会に主人公率いる警察隊が潜入するという、エピソードの繋ぎとして上手く活用していたり、古くからのお約束ごととしての定型を守りつつも、それを構成上無理がないようにする工夫が見られるのが、個人的にはかなりの高評価。
 ド派手なアクションシーンも楽しく、蹴られた人が数メートルも吹っ飛んで壁をブチやぶるなんてのはお約束ですけど、クライマックスにどっかんどっかん爆発を持ってきて、その後に、上半身裸になったマッチョ同士の対決を、エモーショナルな盛り上げとシンクロさせて持ってきたりして、これまた構成の組み方や見せ方の工夫が巧み。
 で、そんなアクションや歌舞シーンが、なんかヒンディ映画というよりタミル映画っぽかったので、てっきり南インド映画のヒンディ版リメイクなのかと思っていたら、さっき調べたらそうではなかったのでビックリ。
 主人公が単なる正義感やマッチョ一本槍でなく、金をくすねたりユーモラスな一面もある、人間味を感じさせるキャラなのも効果的。ヒロインはこれがデビュー作らしいですが、まあ次から次へ美人が出てくるもんだなぁと、これまた感心。
 感動要素が過度にベタベタしていないのも佳良。
 音楽も踊りも、主題歌的な男っぽい”Udd Udd Dabangg”を筆頭に、全体的にゴキゲンな仕上がり。ただ正直、サルマン・カーンの踊り自体は、少し動きのキレに欠けるかな〜という感あり。

 というわけで全体のノリとしては、クラシックな要素をモダンな感覚で再構築したみたいな良さがあります。いろいろテンコモリでトゥーマッチな楽しさもありつつ、かといってそれほど強引な感じもせず、コンパクトで見やすく後味も良しで、「あ〜、満足満足」って感じ。
 インド映画ファンでもあまり馴染みのない方でも、痛快娯楽作が好きな方だったらタップリ楽しめること請け合いの、広くオススメしたい一本。

“Udd Udd Dabangg”

【追記】『ダバング 大胆不敵』の邦題で、2014年7月に目出度く日本公開されました。

“Band Baaja Baaraat”

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“Band Baaja Baaraat” (2010) Maneesh Sharma
(インド盤Blu-rayで鑑賞、米アマゾンで入手可能→amazon.com

 インド/ヒンディ映画。タイトルの意味は「ウェディング・ミュージック・バンド」。
 恋愛抜きの約束で組んでウェディング・プラン会社を立ち上げた、大学を出たての若い男女の仕事と恋の顛末を、若者向けのフレッシュでポップな味付けで、タイトル通り音楽タップリに描いた作品。

 デリーの大学を今年卒業する主人公は、特に将来の展望もなく、出会ったカワイコチャンにコナをかけたりしているがそれも不振。そんなとき家族から、卒業したら田舎に帰れと言われる。
 実家で彼を待っているのは、サトウキビを刈り取る農作業なので、それは嫌だと、何とかこのまま都会で仕事に就こうと考える。そこで先日ソデにされた、卒業したらウェディング・プランの会社(会場の手配や飾り付けや食事や余興と行った、結婚式&披露宴の演出を請け負う)を立ち上げるというカワイコチャンに、一緒に仕事をさせれくれと頼み込む。
 最初は警戒していた彼女も、初めての仕事のトラブルで毅然とした態度をとった彼を見直し、恋愛抜きのビジネスパートナーという約束で共に会社を立ち上げる。
 二人の始めた会社は、少ない予算の結婚式でも、アイデアと真心で立派なものにし、そんな二人の心意気に惹かれた仲間も増え、口コミで評判も呼んで順風満帆。次から次へと仕事も舞い込み、遂には今までにない大規模で大予算の結婚式の演出も手掛けることになる。
 順調な仕事と並行して、二人の関係もどんどん接近、そしてついに一線を越えてしまうのだが、果たして恋のパートナーと仕事のパートナーは両立するのか、その両方の行方はいかに……? といったような内容。

 とにかく元気いっぱいな内容。
 フレッシュで溌剌とした主演俳優二人、動的なカメラワークと早いカット割りでテンポよく進む展開、若い感性が手掛ける結婚式ということで、まるで下北沢の雑貨屋みたいな、カラフルでキラキラでポップな映像の数々、ゴキゲンな音楽……と、前半戦は文句なし。
 ただ後半、フォーカスが恋愛と仕事の問題に移ると、展開面がいかにもなクリシェに偏ってしまって目新しさに乏しいのと、それと並行して、前半で見られたような青春ドラマ的なフレッシュな魅力が薄れていってしまうのが残念。
 例えば、二人の関係がギクシャクしていったところに、ヒロインに金持ちの男との縁談話が持ち上がるなんてのは、いかにも類型的に過ぎて興ざめするし、仕事の上でも袂を分かった二人が、それぞれ相手を蹴落として自分が注文をとろうとするあたりは、フレッシュでひたむきだった前半のキャラの魅力に、かなり翳りを落としてしまっている感じ。
 こういった要素は、やはり展開をお約束に頼り切ってしまった弊害だと思うので、最後は予定調和でいいにせよ、そこに至るまでは脚本にもう少し、工夫やひねりが欲しかったところ。全体の出来が上々なだけに、何とも残念。

 とはいえ、これは一種の音楽映画でもあるんですが、そういう面はかなり上手くできています。
 なんと言っても、楽曲が良い。まだ学生時代の主人公たちの日常描写に併せてBGM的に流れる、凝ったコード進行とアレンジによるロック/ポップステイストの”Tarkeebein” 、予算が少ない結婚式の余興に自分の友達のバンドを呼んだものの、ロック風の音楽にお客の反応が悪いので、ヒーローが自らそこにインド風味を加えて、更にヒロインを巻き込み、身体を張って盛り上げようとする、モダンなロック風の要素とバングラ・ビート的な要素をミクスチャーした”Ainvayi Ainvayi”、大規模な結婚式の大物ゲストの代わりに、自分たちがステージで歌い踊って見せる、やはりロック的なテイストとインド的なテイスト、そしてヒップホップ風味もある”Dum Dum”あたりは、音楽的にも映像的にも大きな見所。
 全体の中での音楽シーンの配置の仕方、ストーリーの中への溶け込ませ方なども、良く考えられていて成功している印象。
 また、予定調和的とはいえクライマックスはしっかり盛り上げてくれるし、オマケに前出の”Ainvayi Ainvayi”にブラスセクションを加えた変奏による、エンドロールのキラキラでポップな楽しさは一見の価値ありで、これのおかげで全体のお株もぐぐっと上昇した感あり。
 もちろんサントラは速攻でゲットしました(笑)。

 そんなこんなで、若干の惜しい部分はあるものの、全体的にはフレッシュな魅力に溢れていて、後味も良く、鑑賞後の満足度も高い一本でした。
 インド映画好きにも、インド映画には馴染みがない方にも、どちらにもオススメできる佳品だと思います。
 逆に、インド映画に「ヘンなもの」を期待する方には、まったくオススメしませんが(笑)。

“Tarkeebein”

“Ainvayi Ainvayi”

“Dum Dum”

“Ainvayi Ainvayi – Delhi Mix”(エンド・クレジット)

“Propaganda”

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“Propaganda” (1999) Sinan Çetin
(トルコ盤DVDで鑑賞、米アマゾンで購入可能→amazon.com

 1999年製作のトルコ映画。Sinan Çetin監督作品。
 第二次世界大戦後のトルコ東部、長閑な田舎村が新たに決まった国境線によって、トルコとシリア二つの国に分断されてしまい……という、実話に基づく内容を、ユーモラスかつ感動的に描いた作品。

 第二次世界大戦終結後の1948年、アンカラで出世して役人になったメイディが、大勢の部下と共に故郷の村に帰還する。彼の幼馴染みで独立戦争では共に闘った医者のラヒム始め、村人たちは故郷に錦を飾った彼を大歓迎する。
 しかし彼の乗ってきた汽車には、大量の有刺鉄線が積まれていた。実はメイディは中央から、この地に国境を作り、その税関吏となる命を受けていたのだ。
 やがて国境に添って鉄条網が張り巡らされ、出入国ゲートも完成し、村人たちはそれを華々しく祝うが、実際のところはそれが何を意味するのか、何も判っていなかった。夜も更けて宴会も終わり、ラヒム一家はいつものように自分の家に戻るが、それは新しくできたゲートの向こう側だった。
 翌朝、教師をしているラヒムの上の娘が学校に行こうとするが、ゲートを通して貰えない。驚いたラヒムがゲートに行くと、そこにはメイディがいて、これからは国境を越えて勝手に行き来はできず、ゲートを通るにはパスポートが必要だと告げられる。
 こうして、何人もの村人が行き来を止められるが、素朴な彼らはパスポートというものが何であるかも判らないし、実のところ税関吏のメイディ自身、パスポートというのがどんなものなのか、まだ見たことすらなかったのだ。
 メイディの息子とラヒムの下の娘は愛し合っており、近く結婚を控えた許嫁の間柄で、実は既に婚前交渉もしていて娘は妊娠していたのだが、その二人の逢瀬も、この新しい国境によって引き裂かれてしまう。
 そんな中、ゲートを守る兵士たちをからかった、ひょうきん者の太鼓叩きに対して、メイディは部下に唆されて、ついに発砲命令を下してしまう。ラヒムはそんなメイディに怒り、彼を侮辱し挑発するために、自分の娘は別の男の嫁にすると言ってしまう。それを知ったラヒムの娘は、夜こっそりと国境を越えて、メイディの息子の元に忍んでいくが、メイディの部下でゴリゴリの官僚主義の男に知られて、捕まって投獄されてしまう。
 メイディの妻も、頭の固い夫に嫌気がさして家を出て、国境の向こう側に行ってしまい、息子も「僕はお父さんを愛していない」と言い放つ。自分から離れていく息子を止めるため、メイディはついに我が子に銃口を向けてしまう。
 果たしてこの国境は、このまま人々の心も家族の絆も、全て引き裂いてしまうのか? ……といった内容。

 いやぁ、面白かった。
 汽車の到着から始まる出だしは、音楽(セゼン・アクス。アルバム”Işık Doğudan Yükselir”のタイトル曲)の効果も相まって、実に重厚な味わい。そして、国境ができた晩、何も知らないラヒム一家が帰宅するのを、唯一訳知りのメイディがゲート越しに見送る場面なんか、スローモーションを上手く使って実にエモーショナルに盛り上げてくれるので、いったいこの先どんなシビアな展開に……とドキドキ&ビクビクものなんですが……。
 実はその後の展開は、確かに状況はシビアなんですけど、そんな中でもけっこう逞しく適応していく村人の姿がユーモラスに描かれたりして、決して重い暗い系にはいかないのが逆に新鮮。鉄条網を挟んで学校の授業が行われ、鉄条網越しに割礼の儀式が行われ、恋人たちは鉄条網に刺されながらのラブシーンを演じ……と、なかなか楽しい(笑)。
 で、そんな笑わせる系の展開の中に、引き裂かれた絆といったエモーショナルな展開がドカンと挟まり、更にその上にしっかりと、国家とは国境とは何かといった風刺や、人間性を無視した官僚主義の愚かしさや、人々の生活を置き去りにする政治への批判といった要素が、テーマとして浮かびあがってくる仕掛け。

 笑いも涙も感動もテンコモリという、インド映画なんかと同様の娯楽的な作りなんですが、バランスと後味が良いので消化不良みたいな感じにはならないし、作劇的にも、最後の最後まで「いったいどうなるんだろう」という、不安と期待で引っ張り、でもしっかり感動させてくれて、しかも後味も良い……という、満足の一本でした。

“Vizontele”

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“Vizontele” (2001) Yilmaz Erdogan, Ömer Faruk Sorak

(トルコ盤DVDで鑑賞、米アマゾンで購入可能→amazon.com

 2001年製作のトルコ映画。Yilmaz Erdogan監督・主演作品、共同監督Ömer Faruk Sorak。
 70年代初頭、トルコの僻地の田舎村に初めてテレビが来ることになり、それを巡る人々の騒動を描いたコメディ作品で、本国では大ヒットしたそうな。

 電話はロクに通じず、新聞も二日遅れで届く田舎村。娯楽はラジオと、村に唯一ある天井のない映画館だけ。そんな村に初めて《ヴィゾンテレ(テレビジョンの勘違い)》なる《絵が出るラジオ》が来ることになり、村長さんは歴史的な出来事だと大張り切り。
 ところが、アンカラから受信設備と受像器を届けにきた技師たちは、この僻地に来るだけで疲労困憊。こんな田舎に一日たりともいられるかと、「高い所に設置するように」とだけ言い残して、さっさと帰ってしまう。村長さんは、何だかわけの判らないヴィゾンテレ一式を抱えて大弱り。
 そこで白羽の矢が立ったのが、村人から《きちがいエミン》と呼ばれている、頭はちょっとイカれているけれども、変な仕掛けを作ったりラジオの修理だけはできるという変人。村長さんを先生と慕うエミンは、大喜びでこの大役を引き受ける。
 しかしヴィゾンテレの到来が嬉しくないのが、村の映画館を経営する一家。もともと村長一家とは仲が悪い上に、ヴィゾンテレに客を奪われては大変と、宗教家を抱き込んで「ヴィゾンテレは悪魔の機械で人々を堕落させる!」と反対キャンペーンを始める。
 そんな中、いよいよヴィゾンテレが高い丘に設置され、華々しいセレモニーの中、村長とエミンの手でスイッチオン。しかし映るのは砂嵐だけ。こりゃ場所が悪かったかと、別の丘に移動してみても結果は同じ。結局いくら試しても映像は映らず、村長の面目も丸つぶれになってしまう。
 落ち込む村長に、エミンは「丘がだめなら、もっと高い所で試そう」と、誰も登らないような、このあたりで一番の高山のてっぺんにヴィゾンテレを持って行こうと提案。いったんは諦めかけた村長も、エミンの不屈の魂に押されて、一緒に行くことにする。
 果たしてヴィゾンテレは映るのか? ……といった話。

 これは面白かった。
 基本的にはコメディで、テレビの出現を巡るドタバタ劇なんですが、それだけではなく合間合間に、徴兵された村長の息子と村の娘の仄かな恋愛とか、村の子供たちの悪戯風景とか、飲んだくれの夫に顧みられない妻の悩みとか、微笑ましかったり、しんみりしたり、切なかったり……といった、様々なエピソードがぎっしり詰め込まれている。
 キャラクターも、きちがいエミン(=監督&脚本の人)と人の良い村長さんを筆頭に、出征した息子が心配でたまらない村長の妻とか、アンカラかぶれで女好きでホラ吹きの映画館一家の息子とか、どもりの宗教家とか、スイカ売りのデブとその妻とか、ひと癖もふた癖もある連中が勢揃いで、しかもそれらが皆、いずれも愛すべき人物に描かれている。
 民族要素の色濃い軽快なテーマ曲を初め、音楽も実にご機嫌。

 ただ、一つ大いにビックリしたのが、ドタバタやペーソスで笑わせて、二段オチまで用意して、たっぷりハッピーな気分にさせておいて、しかしラストで一気に急転直下、思っくそシビアな展開になったこと。
「うわぁ……ここまできて、この終わり方?」と、しばし呆然。
 いちおう、この急転直下のエンディングがあるおかげで、実はこの映画は、笑わせて楽しませるだけではなく、あちこちに仕掛けられていた風刺性……文明の利器の持つ意味とか、宗教と世俗、伝統とモダン、都会と田舎の対立とか、トルコという国の置かれている状況とか、そういった諸要素が一気に深みを増すという効果があるんですが、それにしても、それまでが楽しすぎたせいもあって、このエンディングには一瞬頭が真っ白に……。
 というわけで、思いっきり楽しいコメディ映画なのに、同時に何と言うか、無常観漂う悲劇でもあったりするので、何とも複雑な後味に。

 聞くところによると、トルコ映画ではそういうのは珍しくないらしんですが、なんかちょっと……慣れないと消化に悪い、みたいな感じではありました。
 しかし、そんな「複雑な後味を覚悟」という前提付きで、それでも実に面白い一本ですので、一見の価値はありのオススメ作品です。IMDbでも7.8点という高評価。

“Guzaarish”

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“Guzaarish” (2010) Sanjay Leela Bhansali
(インド盤Blu-rayで鑑賞、米アマゾンで購入可能→amazon.com

 2010年製作のインド/ヒンディ映画。監督はご贔屓サンジャイ・リーラ・バンサーリ。主演はリティック・ローシャン&アイシュワリヤ・ラーイという、これまたご贔屓コンビ。
 事故で全身麻痺となったマジシャンと、彼の望む尊厳死を巡る内容。

 主人公はかつて天才マジシャンとして名声を博しながらも、事故で14年間寝たきりになっている男。自分で鼻の頭を掻くこともできない彼を、美人の看護婦が12年間、一日の休みもとらずに献身的に介護している。
 そんなある日、主人公は自分の顧問弁護士を呼び、尊厳死をしたいと告げる。その望みは、件の看護婦、弁護士、主治医、彼の元に押しかけでやってきた弟子といった人々の間に波紋をもたらす。
 インドでは尊厳死は認められていなかったが、弁護士は彼の意を汲み、それを認めろというリクエスト(guzaarish)を法廷へと持ち込む。また主人公は、自分がホストを務めるラジオ番組を通じて、尊厳死の是非をリスナーにも問う。
 果たして死とは、そして生とは何なのか。人間の命は誰のものなのか。人生とは、そして幸福とは何なのか、主人公と周囲の人々の下す決断はどうなるのか……といった内容。

 まあ、何と言っても巨匠(と言っていいと思う)バンサーリ監督の作品なので、一定以上の水準は楽々クリアしている見事な出来映え。
 圧倒されるような映像美、エモーショナルな展開、格調高い演出などは、いつも通りの見事さ。重たいテーマを扱いながら、全体が重くなり過ぎない手綱さばきも上々。
 テーマとしては、既存の価値感そのものに疑問を発し再考を促すという、いかにもこの監督らしいもので、この難しいテーマを、主人公という軸を一本きちんと通すことによって、最後は余韻があって清々しさすら感じられる作品に仕上げているのは、かなりスゴいと思います。
 ただし同時にこの監督は、リアリズムよりはロマンティシズムや美学を優先させる傾向があるので、果たしてこのテーマにこういったアプローチが合っているのかという部分で、いささか疑問が残る感はあり。また、ストーリー的にも、ちょっと部分的に作りすぎの感があるのは否めない。
 特にストーリーに関しては、展開の意外性を狙ったのかのような、後半の作劇が大いに疑問。
 尊厳死を望む主人公と、周囲の人間が、悩み悲しみながらも次第にその意を汲んでいくという、その構図だけでも充分以上にドラマティックであるにも関わらず、14年前の事故の真相とか、押しかけ弟子の正体とか、美人看護婦の過去とか、個人的には蛇足としか思えないエピソードが、後半になってからあれこれ挟まってくる。
 結果として、ストーリー自体が嘘っぽいものとなり、しかも展開も駆け足気味で、せっかく場所を自宅に移しての法廷劇の場面の、特に主人公と母親のエピソードで最大限に高まる感動が、これらの蛇足によって薄まってしまった感あり。
 ただ、ラストにはそういった不満も消えて、「このエンディングで、この清々しい余韻の残る感動って、スゴい!」という気分になったので、まぁ帳消しという感じも。
 映像自体は、いつもながらホント溜め息ものの美しさ。
 日常パートで見られる布や光を使った表現、夢や回想に出てくるマジック場面のファンタジックな美しさ……などなど、もうこれは見所だらけ。まぁちょっと「……ひょっとして『潜水服は蝶の夢を見る』と『プレステージ』を見て思いついた?」みたいな気がしなくもありませんが(笑)。
 役者さんもそれぞれ佳良。特にリティック・ローシャンは素晴らしかった。

 という感じで、作品としては部分的に瑕瑾がないとは言えないし、完成度としても”Devdas”や”Black”、そして世評はイマイチながら私個人としては高評価の“Saawariya”よりも、正直落ちると思いますが、それでも充分以上に見応えのある作品。
 毎度のことながら、この監督の作品が本邦では殆ど未紹介なのは、つくづく惜しいと思います。

“Bruc. La llegenda (Legend of the Soldier)”

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“Bruc. La llegenda” (2010) Daniel Benmayor
(イギリス盤DVDで鑑賞→amazon.co.uk

 2010年製作のスペイン映画。スペイン独立戦争、モンセラート山麓の戦いでナポレオン軍に大敗を喫させた《Brucの太鼓》伝説を題材にしたアクション・アドベンチャー史劇。
 英DVD題”Legend of the Soldier”、インターナショナル・タイトル”Bruc, the Manhunt”。

 1808年、スペイン独立戦争、モンセラート山麓Brucの戦いで、ナポレオン軍は数的に優勢であったにも関わらず、「何百ものスペイン義勇兵と悪魔の仕業のような音」によって全滅した。しかし、戦いの後に戦場を訪れたフランス人の隊長は、その証言に疑問を抱き、それは太鼓の音が山に反響したのではないかと推理する。
 その推理は正しく、件の鼓手の正体はある村の炭焼きの息子で、今では村の皆からBrucとあだ名され英雄視されていた。しかし、本人はそれを居心地悪く思っており、更に悪いことには、村を訪れた仏人ジャーナリストが彼の絵を描いたことによって、その存在と居場所が仏軍の知る所となる。
 仏人隊長はナポレオンから、フランスの不敗を全欧に示すためにも、件の鼓手の首を切って持ってくるよう命を受け、手練れの部下数名と共に鼓手の捜索に向かう。そしてある晩、鼓手が恋人と逢い引きしている間に、彼の家は暗殺部隊に襲われ、家族が皆殺しにされる。
 鼓手は辛うじて山に逃げるが、部隊は家々を爆破し、村人たちを脅し、鼓手の恋人を見つけ出すと、彼女を人質にして山狩りを始める。最初は逃げ回っていた鼓手だったが、フランス人たちが聖職者も見境無く殺し、恋人の身体も傷つけるに至って、ついに反撃に出てモンセラート山で彼らと対決する……といった内容。

 題材となった《Brucの太鼓》というのは、「一人の鼓手が打ち鳴らす太鼓がモンセラート山に反響し、仏軍がそれを数百の軍勢のように錯覚して遁走した」という伝説らしく、それを「実際はこれこれこうでした」と膨らませて描いた内容で、映画全体の印象は、肩の凝らないアクション・アドベンチャーという感じ。
 ストーリー的には、戦う青年の成長を軸にして、近親者の悲劇、きれいな娘さんとのロマンス、そして追い詰められる主人公が遂に逆襲に転じるカタルシス……と、いかにも古典的な冒険小説のような味わいです。そこにもう一つ、Brucの戦いの真相がどうであったのか、それが、小出しにされる主人公の回想通じて、その実際が明らかになっていく……という要素もあるんですが、これはさほど成功していない感じ。
 主な舞台となるモンセラート山は、現在では奇岩で知られる観光名所ですが、その風景を存分に生かした、上下にたっぷり拡がりのある映像の数々は、大いに魅力的。
 やはり観光名所であるモンセラート修道院も、有名な黒い聖母像も出てきたりして、私自身、ここいらへは観光で行ったことがあるせいもあって、そんな中で繰り広げられる追跡劇は、かなり楽しめました。撮影もなかなか美麗で、程々にケレン味もあって佳良です。

 ただ、肝心の演出がいささか凡庸。
 追い詰められていく主人公という要素が、物語的には描かれているんですが、それが心理的に迫ってくるまでには至らず。けっこうサスペンスフルなシーンとかもあるんですが、イマイチ緊張感に欠ける感じ。また親兄弟や恋人といった主人公回りのドラマも、通り一遍のクリシェをなぞっただけという程度。
 逆に、本来ならば《悪役》側のはずの追跡者たち各々に、判りやすい絶対悪では終わらせないような描写を、あれこれと付加しようとする姿勢が見られるんですが、これが却って、全体のシンプルな構造と齟齬をきたしてしまい、感情移入やドラマのエモーショナルな盛り上がりを、邪魔してしまっているきらいがあります。
 そこいらへんのバランスがちょっと悪く、どうせなら全体をクリシェで固めてしまって、古典的な痛快娯楽作にしてしまった方が良かったような気もして、何となく虻蜂取らずになってしまっているのが残念でした。

 ただ、それぞれの役者の佇まいなどは佳良です。
 主人公を演じるファン・ホセ・バジェスタは、ちょい泣き虫顔のナイーブそうな若者で、上手い具合に雰囲気がキャラと合っている感じ。恋人役のアストリッド・ベルジュ=フリスベも、文句なしのカワイコちゃん。
 追跡者側は、一同を率いるフランス人隊長役にヴァンサン・ペレーズ。目力で狼を追い払うなんて面白シーンもあり。部下の一人、口のきけないマッチョに格闘家のジェロム・レ・バンナ。肉体美を見せるシーンも、しっかりあります(笑)。隊長の腹心であるアラブ人に、『ヴィドック』で主人公の相棒ニミエ役だったムサ・マースクリ。
 他の部下も、隻眼だったり二枚目の騎士風だったりと、キャラは劇画的に立っていてなかなか楽しいです。だからこそ尚更、イマイチ痛快娯楽作になっていないのが残念な感じがしてしまう。

 とはいえ、アクション・シーンのアレコレとか、風景の素晴らしさとか、お楽しみどころもあちこちありますし、尺も1時間半足らずとコンパクトなので、題材に興味のある方やスペイン好きの方だったら、気楽にそこそこお楽しみいただけるのでは。

ちょっと宣伝、『エンドレス・ゲーム』第2話です

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 今月21日発売の雑誌「バディ」3月号に、集中連載『エンドレス・ゲーム』第2話掲載です。
 え〜、前回は「まだイントロ」という感じでしたが、今回はもうガンガンに「エロ」です。3ページ目で脱いで、あとはもうずっと濡れ場(笑)。
 若干オモチャ使ったりラフプレイ系のテイストはありますが、尺八や肛姦といったいわゆる「普通のセックス」を和姦で、ページ数をタップリ使ってネットリ描くのは久しぶりかも。
 SM好きの方には、内容がちと物足りないかも知れませんけれど、それ以外の方(でキャラがタイプの方)には、抜きネタ用にオススメです(笑)。
 まぁこんな感じでしばらく進めていきたいと思いますので、皆様よろしくお引き立てくださいませ(笑)。

Badi (バディ) 2012年 03月号 [雑誌] Badi (バディ) 2012年 03月号 [雑誌]
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2012-01-21