お蔵出し〜夜に聴きたいダンス・ミュージック in Early 90’s

jamieprinciple
Jamie Principle “The Midnite Hour”
 何だか急にハウスが聞きたくなって、十年ほど前に良く聞いていたCDを引っ張り出して参りました。
 ジャケで一目惚れしたゲイ・シンガー。シンプルでドライなバックトラックに絡むファルセット・ヴォイス、鐘の音で始まる1曲目から鐘の音で終わる10曲目まで、徹頭徹尾クールな哀感がカッコイイ。
 当時は比較的キャッチーな”Please Don’t Go Away”や”The Midnite Hour”が好きだったけど、改めて聞き直してみたら、もうちょい渋めの”Private Joy”や”You’re All I’ve Waited 4″がエラくカッコ良く聞こえました。因みに”Sexuality”という曲も大好きで、私が自分の文章で「セクシャリティ」ではなく「セクシュアリティ」という表記にこだわるのも、この曲の影響であります。
 で、これ聞いていたらコレ(↓)も聞きたくなりまして……
lillouis
Lil’ Louis & The World “Journey With The Lonely”
 ハウスはもっぱらシングル買いが多くて、アルバム単位で愛聴したのはそうそうないんですが、もし人から「ハウスのアルバムのベスト1は?」と聞かれたとしたら、マイベストは間違いなくこの一枚。
 SEと会話から始まる一曲目”Club Loney”は「このビートに乗って永遠に揺れていたい」って思うくらい好きだし、ミニマル音楽的な快感の”Newdancebeat”、メロウ&ムーディーな”Do U Luv Me”、ひんやりクールなジャズ風味の”Thief”、極上のリゾート・ミュージックのような”Shore”、どれもこれもたまらなく好き。
 そしてとどめはアルバムラストの”Jazzmen”。シンプルなリフレインに、やがてひっそりとトランペットが寄り添い、ベースがそれに答え、やがてグイグイと盛り上がっていく後半は、もうアッチ側に引っ張られそう。久々に聞き直しても、やはり変わらぬ永遠の名盤でした。
 で、お次はコレ(↓)を聞きたくなり……
yoyohoney
Yoyo Honey “Voodoo Soul”
 これはハウスじゃなくてグラウンド・ビート(……だと思うんだけど、正直こーゆー用語ってあんまり自信ないんで、間違っていたらゴメンチャイ)。
 とにかく1曲目”Voodoo Soul”が大好き。暗く重厚なストリングスに重くうねるビート、クールでドライな女声ヴォーカル、ドラマチックだけど暑苦しくはない展開……誤解を恐れずに言うと、ちょっとMassive Attackにも似たカッコ良さです。”Groove On”や”Yo Yo”や”Circle On You”のゆったりしたうねりも大好き。全体的には重めだけど、鬱系ではなくて、内省的でメロウな重さとでも言うか。とにかく気持ち良いアルバムです。
 で、次に聞きたくなったのがコレ(↓)。
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Ephraim Lewis “Skin”
 これになると、既にダンス・ミュージックですらないような気もしますが、本当に大好きだった一枚なのでご勘弁を。特に、表題曲の”Skin”は、いつかこの曲のイメージでマンガを描いてみたいなどと思っていたほどでして。
 きっかけは、音楽雑誌で「マーヴィン・ゲイ meets ブライアン・イーノ」と紹介されていて興味を持ったんですが、1曲目”Skin”のイントロの、たゆとうような幻想的なバックトラックと、柔らかく繊細なヴォーカルで、早くもノックダウン。次の”It Can’t Be Forever”、メロウで切ない”Drowning In Your Eyes”、サビのファルセットへの移行を聞いただけで泣きそうになる”World Between Us”、どの曲もどの曲も素晴らしいものばかり。どう素晴らしいのかというと、空間的な広がりを感じさせつつ、それでいて内省的でもあり、甘美でもあり、しかし痛みもあり……すんません、何だか抽象的なことしか言えないや。音楽の印象を言語化するのって、難しいですね。
 とにかくアルバム全体で、柔らかく包み込みながらインナースペースへの旅に誘ってくれるようで、改めて聞いてもやっぱり良くて、いつまでも大切に取っておきたいアルバム。
 ですから、それからしばらく経って、音楽雑誌で「今は亡きイーフレイム・ルイスが云々」という文章を読んだときは、本当に驚いて、あんまり驚いたのでジーメンの編集後記で「詳細をご存じの方は教えて!」と呼びかけてしまったくらいでした。そして、親切な方からお手紙をいただき、この彼がこのアルバム一枚残したきり、次のアルバムの制作中に若くして急逝(確か階段から転落死だったと思う)したことを知ることができました。本当に惜しい、そして悲しい……。
 そんないきさつもありまして、なおさら思い入れが深い……ということで、最後の一枚(↓)。
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Ephraim Lewis “Skin” (Maxi Single)
 ”Skin”のシングル盤です。表題曲のミックス違いを含む三種と、”World Between Us”の別ミックス一種を収録。
 で、このリミックスがまた良くて。”Skin – Shiny Black Boots Mix”は、オリジナルにエッジなギターが加わりビートも効いたヘビー・ヴァージョン。”Skin – Undaya Mix”は逆に、ドラムレスでビートが後退し、シンセの比重が増したよりアンビエントなヴァージョン。そして極めつけは、”World Between Us – Monasterial Mix”。バックトラックは微かな音響のみで、ほとんどア・カペラ寸前にまで削ぎ落としたヴァージョン。これは本当に、恐ろしいほど静かで美しい。
 どこかで運良くこのシングルを見かけたら、迷わず購入をオススメします。
 で、Lil’ Louis & The World “Journey With The Lonely”とYoyo Honey “Voodoo Soul”とEphraim Lewis “Skin”は、今でもamazon.co.jpで購入可能のようで、しかも試聴もできますんで、もし興味のある方は、ぜひお試しくださいませ。
 さて、クールで内省的なヤツばかり連続して聞いていたら、逆にアッパーでアゲアゲなヤツも聞きたくなってきました。久々にシングル盤も引っ張り出してみようかな。
 あと、今回これらのアルバムを引っ張り出してみて驚いたんですが、これら全部、リリースが1992年でした。う〜ん、スゴい年だったんだなぁ。ビックリです。