レディコミ描きました。今月24日発売、ぶんか社『ほんとうに怖い童話』11月号掲載の、「落日〜西太后と東太后」です。
タイトルからもお判りのように、今回は実在人物伝で、西太后というネタも、クライアント様からのご指定でした。近世の実在人物を描くのは初めてですし、同時にレディコミ的な必須要素も満たさなければならないので、今まで私がやってきたマンガのお仕事とは、かなり勝手が違いまして、新鮮でもあり、同時に難しくもありましたね。
一番の難関は、どこまでを史実に沿って、どこをアレンジするかという匙加減。そういった条件下で、とりあえずは何とか、作品としての独自性も出せるように頑張ってみました。いちおう、オリジナルのアイデアも盛り込んでみたので、史実をご存じの方は、そこいらへんの差異もお楽しみいただければと思います。
それと、描いていて面白かったのは、これ、ゲイマンガでも何でもないんですが、内容が「女の戦い+エログロ風味」なので、ゲイものじゃないのに、でも何となく「オカマっぽい」んですよね(笑)。そんなせいもあって、昔の少女マンガみたいな「白目!」みたいな演出を、パロディとしてではなく、マジに使えたのが嬉しかった(笑)。まあ、流石に「……おそろしい子!」まではやってませんけどね、そこまでやるとギャグになっちゃうから(笑)。
この11月号、特集が「毒婦たちの犯罪史」ってとこからして、オカマウケしそうであります。ノンケ女性だけではなく、オカマテイストの持ち主を自認するゲイの方々も、よろしかったらお読みくださいませ。
札幌旅日記
前日。
児雷也画伯から「連絡用に携帯を持ってきてくれ」とメールがきたので、部屋を発掘。というのも私は、携帯は「いちおう持っている」ものの、ほとんど携帯したためしがなく、電源入れることすらめったにないのである。
で、今回も、最後に使ったのは、下手をすると1年以上前という状態だったので、果たして見つかるかどうか危ぶまれたのだが、何とか無事に発見。ところが、充電器につないだものの、様子が変。ひょっとしたら、もうバッテリーがイカれているのかも。
とりあえず、明朝まで充電してみて、それでダメなら、早めに家を出て、途中で機種変更することにする。
夜、現在進行中の仕事を出来るだけ進めておこうと、せっせかマンガなぞ描いていたら、下描きが完成しているにも関わらず、ノンブルを振り間違えていて、なんと4ページ多く描いていたという、ショーゲキの事実が発覚。ページ数が多めで、しかも単行本用の加筆原稿なので、ノンブルもヤヤコシイ状態だったとはいえ、こんなとんでもないミスは初めて。
パニック状態になりつつも、ワンエピソード削ってしまえば、後は残りのネームで何とか補完できそうな目処がついたので一安心。予定していた就寝時間を過ぎていたけど、修正作業をする。
一日目。
やっぱり携帯はお亡くなりになっている様子。というわけで、早めに家を出て、途中のお店に寄って機種変更。ついでに料金も、もっとお得なコースに変更してもらう。
終わったら、お店の人が「粗品ですが」と、ボールペン一本と、トイレットペーパー(何故??)を2ロールくれた。普段ならありがたくちょうだいするところだけど、これから札幌に行くのに、三日間トイレットペーパー2ロールを抱えて歩くのは、どー考えてもイヤなので、辞退してボールペンだけいただく。
羽田に向かい、飛行機に乗る。特に遅延もなく順調。でも、国内便に乗るのは久々だったので、ドリンクが有料なことにビックリ。ピーナッツか飴くらいは出るかと思ったら、それもなし。出たのは、おしぼりだけ。でも、飲食抜きでおしぼりだけ貰っても……ねえ(笑)。
新千歳空港到着。ターミナルから少し離れたところに停まって、建物まではバスで移動。それ自体は珍しくないんだけど、その移動用のバスが、どっかの路線バスの払い下げ車両らしく、区間運賃表やら運賃箱やらが付いたまんまなのには、ちょっとビックリ(笑)。
で、実は私、ちょいと前に足を痛めてしまい、それに仕事も重なっていたので、この三週間、家から一歩も出ない生活をしていました。一緒に住んでる相棒が心配して、外出禁止令が出てたもんだから、マジで玄関から出たことすらなかったのに、それを、三週間ぶりに家から出たかと思ったら、その足で北海道ってのも、我ながら何だかなぁと可笑しくなったり(笑)。
札幌駅に、児雷也画伯とイベントスタッフの方がお迎えに来てくれる。車でホテルに移動、フロントでチェックインだけ済ませて、そのまま画伯のお宅に直行。
部屋にあがって早々に、リビングにあった某有名デザイナーによる超高級アートファニチャーを、猫の運動用器具と勘違いするという大失礼をぶちかましてしまう(笑)。
座り心地の良さそうなオシャレなソファーの前に、テーブルではなく、ジムにあるみたいなトレーニング・マシーンが置いてあるのが、ファンの期待を裏切らない感じでステキ(笑)。画伯の部屋を覗くと、私の部屋と大差ない、足の踏み場もないカオスっぷりだったので、何だか一安心(笑)。
一服したあと、まずはチャリティ・オークション用の合作イラストを描くことにする。合作をするのは久しぶりで、かつて「さぶ」時代に、戎橋政造くんや晩三吉先生と一緒にやった以来だから、下手すると15年ぶりくらいかも。
画伯の提案で、二人のキャラが向かい合ってキスしている絵を描くことにする。代わりばんこに下絵を入れて、マーカーでペン入れ。サイズはB2だったか、とにかく日頃めったに描かない大きいサイズだったので、デッサンの狂いが不安。ついつい、ひっくり返して遠くから眺めたり、姿見で画面の反転チェックをしたりする。
絵を描く画伯を見るのは初めて。下絵の線からして、何のためらいも迷いもなく、一本線でぐいぐい描いていくのがスゴイ。流石だなぁ、描く前から頭の中に、完全に形があるんだな。下絵の入れ方も形の取り方も、自分とは全く違う。やはり、人のメイキングを見るのは面白い。
合作イラストが仕上がると、引き続き、サイン会用の色紙の準備。一枚の色紙の左右に、画伯と私が、それぞれサインを入れる。で、白く残した中央に、来てくださった方のお名前を入れるという寸法。しかし、おしゃべりしながらなので、なかなかはかどらない(笑)。
10枚できたかできないかのうちに電話があり、作業をいったん中断して、イラスト展とサイン会をするEZO cafeの会場を見に行くことになる。
車で移動、EZO cafeに到着。とてもキレイで、オシャレな雰囲気。使われていない店舗を借りて、自分たちで改装したのだと聞いてビックリ、更に、二日間のイベント終了後には撤去してしまうと聞いて、ダブルビックリ。もったいないなぁ。
作品の展示も、スッキリとしていてグッド。二人の作品を並べると、私はほぼ100%チンコが描かれているのに対して、画伯はほぼ100%チンコなしというのが、最大の差異かも。作家性の違いだなぁ。
そうこうしていると、ケースケに会う。東京パレード以来かな、会うたびにどんどん血色が良くなっているような気がする(笑)。明日のトークショーで着るEZO Tシャツを購入した後、再び画伯宅に戻って、サイン色紙の準備の続き。目標は、晩飯までに50枚くらい。しかし、相変わらず、手を動かしている時間より口を動かす時間の方が長い。結果、50枚にはちょっと届かず。
9時過ぎだったか、打ち合わせを兼ねた夕食に。前に大阪でお会いしたことがある、こーたさんが迎えにきてくれる。料亭っぽい居酒屋のようなところへ移動して、ほどなくブルボンヌも到着。
ブルちゃんと会うのは久しぶり。でも、私のことを「せんせ〜ぇ」と呼ぶのはやめて欲しい。何だか自分が、杉村春子か淡谷のり子にでもなったような気がするんで(笑)。
トークショーのメンツが揃ったので、楽しく飲み食いしながら打ち合わせ。流石は北海道、お魚もジャガイモもトウモロコシも美味しい。料理の盛りつけ方に、いちいちツッコミが入るあたりが、いかにもオカマのディナータイム(笑)。
夕食後、画伯に連れられてゲイバーへ移動。お店の人もお客さんも、あまりにもハイテンションなので、ちょっとビビる(笑)。お店の奥に、城平海センセと岩田巌くんを発見、でも、あまりの人の多さに挨拶するのが精一杯。
時間が経つにつれ、バーの雰囲気もどんどんカオティックになっていく。ブルボンヌも来て、稚児嵐丸ちゃんとも久々の再会。稚児ちゃんもケースケ同様、以前より血色や肌のツヤが良くなっているのは何故?
益荒男くんから電話。同じビルの中の別のお店にいるらしいので、合流する。
疲れてきたので、一足お先にホテルに帰ることにする。前日、ちょっと寝不足だったので、入眠は早かったんだけど、久々のゲイバーで、毒気にあてられたせいか、明け方に悪夢で目が覚めてしまった(笑)。
二日目。
午後のサイン会までフリーなので、昼頃まで寝坊してから、パレード見物に大通り公園に。札幌のパレードは良いと、色んな人から聞いていたけど、確かに連帯感が強い感じで雰囲気が上々。工夫を凝らしたフロートや衣装もステキ。
大塚隆史さんやエスムラルダさんに会ったのでご挨拶。エスムさん、この間まで入院されてたけれど、お元気そうで何より。でも、エスムさんの芸風だと、パレードの途中で血を吐いて倒れるとかでも、絵になりそうだけど(笑)。
そういえば東京パレードの時にも、小日向くんやサムソン高橋さんとかに久々に会ったっけ。日頃あまり出歩かない私には、こーゆー場は色んな人と再会できるのが楽しい。
ベア・クラブ・ジャパンのLone Star会長とも久々の再会。一緒にサンフランシスコのゲイ・パレードで歩いたときから、もう10年以上は経ってるのに、あの頃とちっとも変わってない感じ。私の方は、激太りしたのに(笑)。
パレードの出発をお見送り。みんな行ってしまうと、会場がガランとして寂しくなったので、バディのブースにお邪魔して、みさおはるきちゃんやマツコ・デラックスとお喋り。ついでに販売も手伝い、まだ初々しいお客さんに、六尺褌を締め方のコーチのサービス(?)付きで販売することに成功(笑)。
みさおちゃんとは、最近は会うたびに、少女マンガの話ばかりしているような気がする(笑)。マツコに会うのは久しぶり。ついつい座り込んで長話してしまう。マツコ、何だかメキシコの宗教画とかフェルナンド・ボテロの描くモナリザみたいな、妙に「母っぽい」オーラが出てきたような(笑)。
パレード一行が帰ってきて、会場が再びにぎやかになってきた頃、お迎えが来たので、サイン会の会場へ移動。EZO cafeの入り口脇に、パーテーションで仕切られたサイン会コーナーが出来ている。ちょっと、デパートやスーパーの一角にある、占いコーナーっぽい(笑)。
児雷也画伯もやってきて、サイン会スタート。私は色紙だけだから楽なもんですが、画伯はエゾラTシャツにもサインを入れるので、大忙し。大変そうな画伯を横目に、私はキャラメルコーン喰ったりして、楽をさせていただく(笑)。
サイン会の後、イベントのリハーサルのためにEZO nightの会場に移動。クラブではなくライブハウスなので、ステージはしっかりしているし、照明設備も充実していているので、ショー映えが良さそう。
他の出演者の方々も集まっている。きみちゃんに会うのはすごく久しぶりで、ひょっとしたら10年ぶりくらいかも。えらくマッチョになっていてビックリすると同時に、心の中で美味しそうだと舌なめずり(笑)。DJ KUTSUWADAさんとも、下手すると15年ぶりくらいの再会。ただ、皆さん顔なじみなのか、互いの紹介等がいっさいなかったので、私には、最後までお名前が判らない方が多かった(笑)。
自分たちの出の確認が済んだところで、フリーになったので、児雷也画伯にジンギスカン屋に連れていって貰う。店が混んでいてかなり待ったけど、待つだけのことはある美味しさでした。
食事を終えて会場に戻ると、もうナイトはスタートしていた。楽屋付近で待機していると、前を通ったキャッツアイのローラさんが、「何だかジンギスカン臭くない?」と一言。すいません、それは私です。
ここで困ったことが一つ。リハのときは皆さんスッピンだったけど、今はもうメイクで顔がぜんぜん違っているので、もう誰が誰やら判らない。八代亜紀みたいなドラァグ・クイーンに話しかけられても、それがこーたさんだとは、一分くらい判らなかった(笑)。
そうこうするうちに、トークショーの時間に。画伯指定の、ホイットニー・ヒューストンをBGMに、ステージへ。ホストはブルちゃんとこーたさん。クラブ・イベントなので、あまりマジな話をしてもなんだろうと思い、オネェ・リミッターをオフにしたビッチ系トークでいくことにした。でも、ちょっと飛ばしすぎたかも。
トーク自体は、時間がえらく短く感じられたけど、クラブで立って聞くには、あれくらいの長さでいいのかな。でも、何だか初体験の話と、合作イラストの制作過程の話しかしなかったような気がする(笑)。
ビッチ系なので、ついついブルちゃんとかに話を振ってしまって、画伯とあんまり絡めなかったのはマズかった。反省。画伯とは、そのうちもうちょっとゆっくり、落ち着いたトークショーもしてみたい。
ともあれ、トークショーも無事に終わり、あとはオークションまで出番がないので、知り合いと喋ったりして、会場で適当に過ごす。
人が多くて、他の人のショーはあまり見られなかったけど、きみちゃんの欧陽菲菲には大爆笑。死ぬ前にもう一回見たいなぁ。あと、ブルちゃんのナウシカ。この時は、ちょっと足が痛かったので、楽屋前の通路に座っていて、ステージは見ずに音だけ聞いていたんだけど、それでも腹筋攣りそうなくらい笑った。ブルちゃん、ショーのみならずトーク全般、まるで剃刀のような切れ味で、やっぱ只者じゃない。
オークションで、再びステージへ。描いた本人が言うのもなんだけど、この画伯との合作は、かなり良い出来だったと思う(時間的な余裕があれば、分割スキャンかちゃんと複写して、データベースとして手元に残しておきたいくらいだった)ので、良いお値段で落札して貰えたのは嬉しかったな。
ショーが全て終わったところで、画伯に連れられて、昨日とは別のバーに。こちらも盛況で満員状態。しばらく立ち飲みしていたら、やがて隅の席が開いたので、画伯としっぽり話し込む。
3時過ぎだったか4時頃だったかにホテルに戻り、シャワーを浴びて爆睡。今度は悪夢は見なかった。
三日目。
今日は小樽へ遊びに行く予定。昼前にホテルをチェックアウトして、集合時間まで画伯宅で待機。
画伯も相方さんも、かなりお疲れの様子なのに、いろいろと気を遣ってくれる。「気を遣わないでいいから」とは言ってみるものの、やはりそうはいかないんだろうなぁ。何だか申し訳ない気分。
昼頃、何台かの車に分乗して小樽へ。30人近いゲイ(しかもヒゲ面多し)が、徒党を組んで小樽の街を、きゃあきゃあ賑やかに闊歩する。デートで来ているノンケの恋人たちや、明るい家族連れの皆さんが、我ら一行とすれ違うときに、緊張しているのが判る(笑)。
お寿司、美味し。ソフトクリーム、美味し。蒲鉾を串に刺して、チーズをかけて焼いたもの、美味し。ウチの相棒は練り物好きなので、お土産に蒲鉾と竹輪を購入。ついでに、熊の絵の付いたガラナの缶ジュースも購入。まだ飲んでないけど。「ROYCE’のチョコがけポテチが美味しいよ」と聞き、それも購入。
ひょんなことから、この30人のゲイで、どうやら自分が一番年上らしいことに気付いて、プチ落ち込む。しかし考えて見りゃ、20代前半の人たちが生まれたときから、こちとらゲイ作家稼業をしているんだから、それもいたしかたないか。
ひとしきり楽しんだ後、札幌に戻る。飛行機の時間まで、画伯宅で時間を潰させていただく。画伯も相方さんも、もう沈没寸前。にも関わらず、札幌駅まで送ってくれる。何から何まで、お世話になりっぱなし。多謝。
夜、東京帰着。暑さと湿気に、そのまま札幌にUターンしたくなる(笑)。
札幌でイベントに参加します
今度の週末(15、16日)、『EZO』というイベントに参加するため、札幌に行って参ります。
北海道に行くのは生まれて初めて、当然、毎年開催されているパレード『レインボーマーチ札幌』も、まだ見たことがありません。イベントで色んな方々とお会いできるのも楽しみだし、パレード見物(16日開催)も楽しみ。
さて、イベントの方ですが、私が参加するのは、児雷也画伯と合同のイラスト展と、やはり児雷也画伯と一緒のトークショーになります。
あとは、サイン会やらチャリティーオークション(合同で色紙を描くんだったかな?)やらもあったような気がしますが、なんせスケジュールとかに関しては、聞いたそばから「はいはいOKです、お任せします」と、完全に主催者様に寄っかかり、煮るなり焼くなり好きにして状態なので、自分でも細かいことが良く把握できていません(笑)。
詳しいことはEZOのサイトで確認してくださいませ。
他にも豪華ゲストのショーとか、かわいいオリジナルTシャツの販売とか、いろいろ盛りだくさんのイベントです。
え〜、因みにイラスト展の方は、先頃フランスで発売された画集の中から、10〜15点が展示される予定です。児雷也画伯の作品も、やはり仏版画集から同点数だとか。
トークショーの方は、まだお題も何も聞いてません(笑)。勝手に喋らせておくと、STAR WARSや円谷特撮の話とかになっちゃいそうですが、画伯相手だとSM話ができないのが物足りない(笑)。
それでは皆様、週末に札幌でお会いいたしませう。
ちょっと宣伝、ショタもの2連発
企画でショタもの描きました。
どーゆー企画かと言いますと、日本初の少年愛アニメこと、アダルトアニメーション『ぼくのぴこ』シリーズの主人公を使って、「俺のぴこ」を描くっていう内容です。
お話しを持ってきてくださったのは、三代目葵マリーさん。初めてお会いしたのは昨年暮れで、今年の初夏頃から具体的な打ち合わせをして、雑誌「バディ」さんでカラーイラストを、雑誌「お尻倶楽部」さんでショートコミックを描くことになりました。
まず、「バディ」のイラストの方は、「競り市」というリクエストをいただいたので、地下組織のオークションみたいなノリで描かせていただきました。左上の画像がその一部ですけど、ちょいとエロゲっぽいタッチを意識してみました。
次に、「お尻倶楽部」のコミックの方ですが、こちらのリクエストは「初老の男性と絡ませて欲しい」とのことでした。で、まあ「お尻倶楽部」だから、こりゃやっぱりお尻メインでいくのが良いだろうな〜と判断して、エロオンリーの肛虐モノにしました。版元の三和出版さんのサイトで、ちょっとだけサンプルが見られます。
というわけで、よろしかったらどちらもよろしく。amazon.co.jpで買えます。
バディ10月号
お尻倶楽部9月号
「バディ」の方は、イラスト以外にもマンガ『外道の家』を連載中です。長年続けてきましたが、いよいよ12月号で最終回。もういっぽうの「お尻倶楽部」の方は……う〜ん、ちょいとゲイには敷居が高いかも(笑)。でも、こーゆーのを描くことはなかなかないので、お好きな方でしたら、ハードルを跳び越えて、ぜひ!
ちなみに、元祖「ぴこ」ってのはどんなかといいますと、公式サイトをご覧になっていただければお判りになりますが、実際はもっとフェミニンな感じで、「オンナノコみたいなオトコノコ」です。ただ、私にはそーゆーのは描けないし(っつーか、そーゆーニーズなら、そもそも私んとこに話は来ないでしょう)、打ち合わせで「髪型だけ守ってくれれば、あとは俺流アレンジ可」とのことだったので、私が描いた「ぴこ」はだいぶ男っぽくなっちゃいました。
私の場合、ショタっ気というと、少年マンガの主人公みたいな、腕白坊主だのヤンチャ坊主だのといった感じのキャラに惹かれるので、そういう意味では、第二弾の『ぴことちこ』に出てくる「ちこ」くんの方が、オトコノコっぽさが強いので好みですね。
あと、ショタ同士のカラミよりも、ショタと大人のカラミの方が好みなので、理想を言えば、『ぼくのぴこ』に出てくる大人キャラ「もっくん」と、「ちこ」が絡んでくれるのが一番(笑)。あ、「喫茶店のおじいさん」と「ちこ」でもいいけど(笑)。
というわけで、元祖アニメーションの方もよろしく。セクシュアリティ的な差異は別にしても、どちらも情緒的な演出が効いていて、なかなかの佳品です。
ぼくのぴこ/DVD
ぴことちこ/DVD
“Con Games”

“Con Games” (2001) Jefferson Edward Donald
前回の“Lash!”のついでに、同書の米アマゾン商品ページの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」で出てくる、野郎責めB級ビデオ映画のDVDをご紹介。
刑務所モノです。上院議員だか何だかの息子が、強姦罪だか何だかで投獄されたところ、獄中で殺されてしまい、その上院議員に雇われた主人公が、殺人の真相と暴力刑務所の実像を探るために、囚人になって潜入する……とかいった内容。確か、主人公の父親が別件で服役中で、その減刑が報酬なんだったかな?
撮影なんかは、雰囲気もあってそれほど悪くはないんですが、全体のテンポが、このテの映画にしてはユルくて、ちょいとチンタラした感じかな。ストーリーに変に社会派っぽい要素を絡めていて、それも教科書的なお行儀の良さなのが、パワフルさや爽快さに欠けてしまったのかも。
でも、一部のマニアの間では、けっこう評判が良かったりもします。どんなマニアかというと、ズバリ、ゲイの拷問マニア(笑)。私がこの映画のことを知ったのも、アメリカのそれ関係のメールグループとかで、キャプチャ画像やら動画やらが流布していたもんで(笑)。
では、そこいらへんの解説。
まずはタイトルバック。薄暗い刑務所の廊下を、ツナギを着た黒人の囚人が、ボール・ギャッグに手錠足錠という姿で、二人の看守に連行されて歩いてくる。囚人は独房に放り込まれ、後ろで扉を閉められてオドオドしていると、いきなり上半身裸でスキンヘッドでヒゲのマッチョにタックル喰らって、床に押し倒されてプリズン・レイプ。
まあ、ポルノじゃないんでファックシーンはブラックアウトですが、いちおう事後、床に突っ伏した囚人のツナギが破れていて、尻だけ丸出しになっている、なんてカットはあります。あと、レイピストのスキンヘッドが、ハンパじゃなくガタイが良い。
次の責め場の被虐者は、主人公と一緒に入所した、ゴーティーで胸毛付きの白人マッチョ。こいつはスタンガンくらった後、タンクトップを破かれ両手吊りにされてガットパンチング。
お次は、ハンサムでスベスベお肌の、白人マッチョ主人公。ツナギの上半身をはだけた姿で床に這いつくばったところを、革靴で蹴飛ばされまくった後、警棒でタコ殴り。
主人公の受難はまだ続きます。しばらくたった後、今度は上半身裸の両手吊りで、ガットパンチング。続いて、水を掛けられて電気拷問。このシーン、責め手の看守が「俺のお気に入りの映画は『リーサル・ウェポン』でね」なんて言うあたりが可笑しい。でも、そーゆーわりには、本家ほどの迫力はないんだけど。あと、身体をホールドするためのサスペンダーが丸見えだったりするのも、ちと興ざめ。でも、尺はけっこうあって楽しいし、電極を当てられた事後の肌が焦げていたりするディテールは佳良。
責め場はこんなもんですが、男優陣はメインも脇も、演技はともかくとして顔はおしなべて悪くないし、なかなかのマッチョ揃い。刑務所モノのお約束っぽいスキンやらタトゥーやらもいるし、ちょいヨゴレ入った熊系もいます。で、そーゆー連中が、けっこう意味なく脱いでくれるので、そーゆー目の保養的なサービスも良し。
ちなみに、サディスト看守を演じているのはエリック・ロバーツ。ジュリア・ロバーツのお兄さんだけど、すっかりB級専門になっちゃったみたいですね。
まあ、そんな感じで、一部マニアを除いては、特にオススメできる出来でもないんですが、上記のような内容がお好きな方だったら、けっこう楽しめる内容ではないかと。少なくともアタクシは、じゅうぶん堪能いたしました(笑)。
“Con Games” DVD (amazon.com)
“Lash!”
洋書の紹介です。
副題に”The Hundred Great Scenes of Men being Whipped in the Movies”とあるように、「男が鞭打たれる名シーンのある映画百選」っつー、アメリカ産ムービー・ガイド・ブック。まぁ、なんてステキな本!(笑)
こんなマニアックな本を、書く人も書く人だけど、出版するところがあるってのも、ホント偉いと思う。広いなぁ、アメリカ(笑)。
内容は、「『すべての旗に背いて』のエロール・フリン」だの、「『十戒』のジョン・デレク」だの、「『逆襲! 大平原』のスティーブ・リーヴス」だの、「『マスターズ/超空の覇者』のドルフ・ラングレン」だの、「『スターシップ・トゥルーパーズ』のキャスパー・ヴァン・ディーン」だのといった具合に、男の鞭打ちシーンのある映画の解説が、ずらずら百本並びます。
で、この解説ってのが、これまた潔いっつーか、何というか、もう徹底して鞭打ちシーンの説明に徹しているんですな。ちょっとサンプルに、『スターシップ・トゥルーパーズ』の部分を抄訳してみます。
21章 『スターシップ・トゥルーパーズ』のキャスパー・ヴァン・ディーン(1998年制作・カラー)
ジョン・リコ(キャスパー・ヴァン・ディーン)は、22世紀の軍隊の実弾射撃訓練で、小隊を率いている。彼の指揮下にある新兵の一人が、この訓練中に死ぬ。過失と能力不足で自分を責めるリコに、管理者への処分として刑が言い渡される。
リコの上官であるズィム軍曹(クランシー・ブラウン)は、トレーニング・キャンプの練兵場の反対側にある、金属製のアーチまでリコを連れていく。リコは上半身裸だ。炎天下、仲間の新兵たちが、罰されるリコを見るために、整列して居並ぶ。
ズィムは、アーチの両側12フィートの高さから紐を引き下ろし、リコの手首を縛る。ズィムがアーチのボタンを押すと、リコの両腕は同時に斜め45度の角度に、グイッと引っ張り上げられる。次にズィムは、短い巻いた革をリコの口に押し込む。
「これを噛みしめろ、助けになる」と、軍曹が言う。
「鞭打ち十回!」の命令が下され、リコの背後に立つ一人の新兵が、鞭をしごいて打擲をはじめる。血まみれの傷が、リコの日焼けした肌に刻まれる。リコは、くぐもった叫び声を上げて、一打ごとに身をよじる。
五打目で、リコの膝は崩れ、手首に体重をあずける形でぐったりする。六打目を喰らう前に、巻いた革が口から落ちる。しかし、鞭打ちは続く。
……とまあ、あらすじ紹介からして、映画のストーリーではなく、鞭打ちシーンの解説しかない(笑)。
で、続いて考察が述べられるんですが、その内容も「この映画は、二十世紀のSF映画で、鞭打ちシーンで特筆されるべき最後の一本である」とか、「発達したCGIで、鞭打ちと完全にシンクロしてミミズ腫れが走るのが素晴らしい、ゆえに、レザーが肉を切り裂くイメージに、説得力がもたらされている」とか、「28歳のキャスパー・ヴァン・ディーンの、さっぱりした短髪で顎も四角いハンサムな顔と、美しく日焼けしたなめらかなトルソが、このシーンの価値を更に高めている」なんて具合で、もうゲイ目線とSMマニア目線が丸出し(笑)。
じっさい前書きで、「本書における主眼」みたいな説明があるんですが、それもこんな感じになってます。
(1)誰が鞭打たれるの?
(2)鞭打ちの理由は?
(3)鞭打たれる受刑者の反応は?
(4)受刑者はシャツを着てるの?
(5)受刑者はどう縛られているの?
(6)鞭打ちシーンのカメラ・アングルは?
(7)鞭打ちはどう始まって、どう終わるの?
(8)鞭の音はどんな感じ?
(9)受刑者の肌のダメージ描写は?
(10)鞭打つ人は誰?
(11)鞭打ちシーンの長さは?
……ってな感じで、この本を読めば、鞭打ちシーンのある映画に関する、上記の情報が得られるってわけ。
で、それぞれの主眼点の解説も、これまたマニア心丸出しでして(笑)。例えば、「(4)受刑者はシャツを着てるの?」では、
全ての鞭打ちは、受刑者が腰まで服を脱がされているべきである。よって、『荒野の10万ドル』のリチャード・ハリソンや、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』のハリソン・フォードのような、鞭打たれる受刑者がシャツを着たままのものは、本書の「百の素晴らしい場面」からは除外した。
ただし、受刑者がシャツを脱がされていなくても、シャツの背中が破れているといった場合は、少ないながらもリストに入れたものもある。例えば、『ドラゴナード/カリブの反乱』のパトリック・ウォーバートンや、『海賊黒ひげ』のキース・アンデスなどがそうである。これらのシーンは、シャツの有無の問題を越えて、それを相殺するだけの十分な価値があるからである。
……なんてことが、大マジメに書かれている。
これ、この「マジメ」ってのが、私的にはポイントが高い。というのも、私はこーゆーマニアックなことに関して、変に斜に構えてみたり、露悪的なネタっぽく取り上げるスタンスってのが、あんまり好きじゃないんですな。
これは、エロティック・アートとも関係してくるんですが、マニアックな価値観の所産というものは、それに対して真摯に、真剣に取り組んでいるからこそ、既成の価値体系から逸脱し、時としてそれを無効化してしまうような、独自の「パワフルさ」を生み出す、というのが持論なもので。
そういう意味でも、この著者の、自分が好きなことにピンポイントで絞った内容で、それを十分な質と量で論じ尽くすってスタンスは、かなり好感度大です。ちょっと、お友達になりたい感じ(笑)。
ただ、図像が表紙の一点のみ(『最後の地獄船』のアラン・ラッドだそうです)で、本文はテキストのみで図版の一点もなしってのは、ちょいと寂しい。やっぱこーゆー内容だと、写真の有無って大きいですからね。
そこを除けば、上述したように充実した内容ですし、これをガイドにビデオやらDVDやらを探すっつー楽しみかたもあるので、興味のある方は入手されてみてはいかがでしょう? 日本のアマゾンで買えます。
amazon.co.jpで購入
私は、内容がツボだったということもあって、けっこう楽しめました。
……とはいえ、いかんせん英語だから、パラパラと斜め読みって感じで、きちんと通読はしていませんが(笑)。
ちなみに、米アマゾンでこの本の商品ページを見ると、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」で出てくるのが、両手吊りでガット・パンチングされる半裸のマッチョやら、電気拷問やら、鞭打ちなんかの責め場がある、映画のDVDばっかってあたりが、何とも楽しい&納得がいきます(笑)。
ちょっと宣伝、読み切りマンガ描きました
8月18日発売のコミック・アンソロジー『肉体派 vol.6』(オークラ出版)に、16ページの読み切りマンガ描きました。
今回の特集は「ギャップ」ということだったので、ホームレス(イケメン)×会社重役(ヒゲ)という組み合わせに挑戦。プロット段階では、陵辱系にしようとか思っていたんですが、ネームを進めていたら、なぜかまたもや、けっこうラブい話になってしまいました(笑)。
タイトルは『神経性胃炎』。よろしかったら、お読みくださいませ。
amazon.co.jpで購入
ちなみにこの号で、10月発売予定の単行本の広告が初お目見えです。現在、表紙のラフ出しやら本描きやら、カバー関係の作業を進行中。
トークショー、無事終了

昨日のジュンク堂書店新宿店でのトークショー、無事終了しました。
当初は定員30名を予定していましたが、先日の金曜日の段階で既に予約で満席になってしまったので、急遽10席を追加しました。結局、前日までの予約が38名、当日飛び込みのお客さんも合わせて、用意していた40席は全て満席になりました。
暑い中、足をお運びくださった皆様、どうもありがとうございました!
ちなみにこの写真は、「白昼の都内大型書店に出現した百鬼夜行」こと、開場に向かう途中の私とエスムさんの勇姿(笑)。いちおう、「『ローズ・イン・タイドランド』のジェフ・ブリッジス」をイメージして、服を選んだつもりだったんですが、改めてこーやって客観的に見ると、ただの「だらしない太ったオッサン」でした(笑)。
さて、エスムラルダさんとは業界内で何かと近くにいたものの、きちんとお話ししたのは今回が初めてです。話芸の巧みさはもちろんのこと、ご自分の人生を存分に楽しみつつ、同時に芯の通ったフィロソフィーも持っていらっしゃる、とても魅力的な方でした。
ショーの後の二次会の席でも、お互いに感じている日本のゲイシーンの特徴や、抱えている問題点、未来への展望などについて、更に突っ込んだお話しができて、有意義で楽しい時間を過ごさせていただきました。
今回のイベントは、ジュンク堂書店新宿店の方が、東京プライドパレード応援ブックフェアの一環として企画してくださいました。これはいわば、ヘテロセクシュアル社会側からの、ゲイおよびセクシュアル・マイノリティーのムーブメントに対する、リスペクトとエールです。
イベントを仕切ってくださったポット出版のスタッフや、司会進行をしてくれた沢辺社長も、これもいずれもノンケさんたちです。
こういった、ヘテロセクシュアル側からのエールに対して、ゲイ側からどのように応えることができるか、それが現在の日本のゲイ・コミュニティーの抱えている大きな課題だという気がします。正直なところ、こういった外側からの期待感と、内側の無自覚さという温度差が、ここのところあちこちで目にとまり気になっています。
何も考えずに、ただ与えられたものを消費するだけなのか、それともエールに応えて自分もアクティブになるのか。
とりあえず、本を愛するゲイならば、お気に入りの一冊を見つけるためにも、一度パレード応援ブックフェアに足を運んでいただければと思います。今月末まで開催中。
さて、余談を一つ。題して『エスムラルダのメイクと田亀マンガの意外な共通点』。
トークショーが始まる前、控え室でエスムさんがメイクするのを、横で拝見していたんですが、使ってらっしゃるアイライナーが、なんと「ぺんてる筆ペン(顔料)」だった。エスムさん曰く、何でもシモーヌ深雪さん直伝だそうな。
で、この筆ペン、私がアナログ仕上げをしていた頃は、ベタ塗り用の定番だったんですよね。今でも、書き文字やツヤベタで愛用しています。
ドラァグ・メイクとゲイエロマンガ、意外なところで同じ道具が。皆さん、エスムさんのアイメイクと、『銀の華』の銀さんの黒髪は、実は同じ材料で出来ているんです(笑)。
さて、明日はパレードです。
猛暑が続いていますから、皆さん、熱射病や脱水症状には十分気をつけてください。
“Achilles”

“Achilles” (1996) Barry Purves
私の好きなアニメーション作家で、バリー・パーヴスというイギリス人がいます。
リアル系の人形アニメーションで、初めて見たのは『ネクスト』(1989)という作品でした。シェイクスピアをネタにした5分の短編なんですが、人形の表情も含めたアニメーションの精緻さと、古典趣味に基づく豪華絢爛な美術、そして、舞台劇風の様式美に満ちた演出が、もう何から何までツボだったので、びっくり仰天&驚喜乱舞したもんです。
そして、次に見たのが『スクリーン・プレイ』(1993)。中世日本を舞台に、タカコとナオキという若い男女の悲恋を歌舞伎風に描いた、11分の短編。これまた演出の様式美が素晴らしくって、更にグラン・ギニョール的な残酷趣味も加味されていて、再びすっかり虜になりました。
以来、「もっと作品を見たい、見たい、見たい!」と切望していたんですが、なかなかその機会に恵まれませんでした。特に、何年か前に出たアート・アニメーション系のムックで、この人のフィルモグラフィーが載っていて、その中に”Achilles”という作品名を見つけたときには、こりゃもう間違いなくギリシャ神話やホメロスネタだろうと、もう見たくて見たくてたまらなくなったもんです。
で、つい先日のこと。ちょっとしたきっかけで、この”Achilles”が、実はゲイ・アニメーションだと知りました。
もう驚いたのなんのって! だって、良く知らないまま、想像だけで恋い焦がれていた映画の内容が、よりによってゲイものだったなんて……もう、「丘の上の王子様の正体はアルバート様だった!」みたいなもんで(笑)。
そうと知ったからには、これはもう何としてでも見なければ! ……と決意して調べていたら、割とすんなりアメリカ盤DVDを見つけることができました。

DVDのメインは、Neil HunterとTom Hunsingerという監督の、”Boyfriends”(1996)というゲイ映画なんですけど、そのオマケとして”Achilles”が収録されています。もう、とりあえず”Boyfriends”は放っておいて、届いたその日に”Achilles”を鑑賞。
内容は、もうそのものズバリのイーリアスネタで、トロイア戦争を背景に、アキレウスとパトロクロスの同性愛関係を描いたもの。
アキレウスとパトロクロスは、大理石か石膏っぽいイメージの白いフィギュアで、アキレウスはヒゲモジャのマッチョ、パトロクロスはアポロン型美青年という造形になっています。その他のモブは、テラコッタっぽい赤茶のフィギュアで、シークエンスに合わせて、ギリシャ悲劇風の仮面や動物の頭の形の兜などをかぶっている。
これらの人形が、いかにもバリー・パーヴスらしい舞台劇風の様式的な演出で、アキレウスの誕生からヘレネー誘拐などのトロイア戦争のあらましを語り、その随所に絡めて、アキレウスとパトロクロスの同性愛関係のもつれが描かれます。
ナレーションは、イギリスの名優デレク・ジャコビ。ゲイ的には、フランシス・ベーコンを演じた『愛の悪魔』が忘れがたいですね。
ゲイ映画としての内容は、アキレウスとパトロクロスの間の、まだホモセクシュアルを無自覚の、ホモソーシャル的なリレーションシップに、ホモセクシュアル的な欲求が絡んでくることによって、その関係性に軋みが生じる、という構造になっています。
次の段、ちょいと実例を挙げての解説になるので、ネタバレがお嫌な方は飛ばしてください。
アキレウスとパトロクロスは、最初は子供がじゃれるように、無邪気に湯船で戯れたりしているんですが、二人の間に愛情や肉欲が目覚めていくに従い、次第に関係性がぎこちなくなっていきます。
例えば、二人は戯れあいの延長として性行為に及びそうになるんですが、アキレウスは寸前で拒否してしまう。そんな二人でも、仮面をつけてパリスとヘレネーを演じることによって、愛を交わすことも性交もできるようになる。しかし、行為の最中に仮面が外れてしまうと、やはりそれ以上は続かない。この演出は、ヘテロセクシュアル的な価値体系から脱却できずに、自己の性的指向を受容できずにいるホモセクシュアルの姿を、端的かつ象徴的に描いていて秀逸でした。
やがてアキレウスは、パトロクロスの眼前でブリュセイスを犯す、つまり、アキレウスが己はヘテロセクシュアルであると、自分自身にもパトロクロスに対しても証明しようとする。しかしこの強姦劇も、その目的は達しえない、つまり、アキレウスは女性相手の性交を貫徹できずに終わってしまう。
興味深いのは、この場面では上述した要素と並行して、ブリュセイスを演じているのも、実は仮面をつけた男性であるという仕掛けがあることです。つまり、モノガタリ上ではヘテロセクシュアル的な行為なんですが、その更に外枠、つまりモノガタリの外側から見れば、それが男性同士によって演じられるヘテロセクシュアルのパロディという、実にゲイ的なものになる。
こういった、同一の事象であるにも関わらず、それを捉える視点の位置によって、その意味性が逆転するという面白さは、人形アニメーションによる舞台劇という、その構造自体に二重の虚構性が含まれている、バリー・パーヴスの作風ならではの効果ですね。
さて、話を戻しますと、こうしてブリュセイスはアガメムノンの手に渡ってしまい、屈辱に打ちひしがれたアキレウスに、パトロクロスが手を差し出す。しかしアキレウスは、相変わらずそれを拒否して、孤独とコンプレックスを癒すために酒に溺れていく。
酔ったアキレウスは、自慰をして、逞しい男たちが現れる淫夢に襲われ、自分を心配して訪れたパトロクロスに襲いかかる。パトロクロスは、強姦者のようにのしかかり、泣きながら自分を打擲するアキレウスに、優しく口づけをする。こうして二人は、ようやく性交に至ります。
こういった具合で、セクシュアリティの目覚めによるアイデンティティの揺らぎとか、自己自認を拒むことを原因としたゲイのホモフォビアなど、ゲイ映画として見ても、テーマがしっかりとしていて硬派な味わいです。加えてこれらは、私自身が自作でよく取り扱うテーマでもあるので、親近感もわいてくる。
たったの11分という短編なのに、これだけの内容の濃さで、しかも、人形アニメーションとしてもハイ・クオリティで、ゲイ映画としても秀逸。これは、かなり凄い作品ですぞ。
エロティック作品としても、もちろんハードコア的な直截さはありませんが、ギリシャ彫刻的なセクシーな造形の人形たちが、まるで生きているようように互いの身体に触れあい、睦みあう姿は、必要十分なエロティシズムに溢れています。
DVDは、字幕こそないものの、ありがたいことにリージョン・フリーですので、興味のある方はぜひどうぞ。激オススメ。米amazonで検索する場合は、”Achilles”だとヒットしないので、”Boyfriends”で探すのが吉。
あと、バリー・パーヴスのオフィシャル・サイトのギャラリー・ページにも、スチル写真がありますので、そちらもどうぞ。
“Boyfriends (+ Achilles)” DVD (amazon.com)
あと、前述の『ネクスト』と『スクリーン・プレイ』は、それぞれ日本版DVDも出ています。
『ネクスト』はこちら、『スクリーン・プレイ』はこちら
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ついでにもう一つ、バリー・パーヴスがヴェルディのオペラ『リゴレット』を人形アニメーションに仕立てたものがこちら。

