“Gölgeler ve Suretler (Shadows and Faces)”

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“Gölgeler ve Suretler” (2010) Derviş Zaim
(トルコ盤DVDで鑑賞、米アマゾンで購入可能→amazon.com

 2010年のトルコ映画。1960年代のキプロスでの、ギリシャ系とトルコ系住民の民族紛争という悲劇を、トルコの伝統的な影絵劇(カラギョズ)に絡めて描いたもの。タイトルの意味は、Shadows and Faces。
 Derviş Zaim監督によるトルコ伝統芸術三部作の一本で、細密画をテーマにした“Cenneti beklerken (Waiting for Heaven)”(2006)、カリグラフィーをテーマにした”Nokta (Dot)”(2008)に続く、第三作目。

 1963年。キプロス独立後に起きた、ギリシャ系住民とトルコ系住民の間の民族紛争により、故郷の村を追われたトルコ系の影絵師は、娘を連れて別の村に住む弟のところに身を寄せる。しかしその村でも水面下で対立感情が高まっており、数の少ないトルコ系住民は危機感を感じていた。
 影絵師は糖尿病だったが、村を追われる際にインシュリンを持ち出すことができなかった。街に行けば手に入るが、村の近隣の道はギリシャ系の警察に封鎖されており、トルコ系の住民は自由に往来できないために、影絵師の弟は、親しい隣家のギリシャ系夫人に、兄と姪を街の病院まで送ってくれと頼む。
 夫人の息子は反トルコ感情が強く、それに反対するが、夫人はそれを押し切って、影絵師と娘を車で街まで送ろうとする。しかしその路上、検問所で警官たちがトルコ人を袋叩きにしているところに出くわしてしまう。夫人は急いで二人を逃がし、自分は彼らがトルコ人だとは知らなかったと白をきる。
 警察から逃れた影絵師と娘は洞窟に隠れるが、影絵師は娘を洞窟に残して外の様子を見に行ったきり、戻ってこなかった。娘は仕方なく叔父の家に戻り、叔父とギリシャ系夫人の二人を「あなたたちのせいで父が行方不明になった」と責める。
 影絵師の行方が判らないまま、やがて村のギリシャ人とトルコ人の間、特に血気盛んな若い男たちの間に、いよいよ緊張が高まっていく。トルコ人の叔父とギリシャ人の夫人は、それぞれ何とか若い者たちをなだめて大事に至らないよう努力する。
 数では負けるトルコ人たちは、いざというときの自衛のために銃の練習をし、また、自分たちには実は味方が大勢いるのだと見せかけたりするが、それは逆にギリシャ人たちの間に、トルコ人が民兵を組織して反撃にかかるのではないかという疑いを招いてしまう。
 そんな中、不足している灯油を買いに一人で何とか街に行った娘は、不確かながらも父親が亡くなったらしいという情報を得る。村に戻った娘は、遺品となった影絵人形を父の希望通りに埋葬しようとする。
 しかし、それを見た隣家のギリシャ人の若者が、武器を埋めていると勘違いしてしまい、それが切っ掛けとなって悲劇の幕が……という内容。

 この、Derviş Zaim監督のトルコ伝統芸術三部作は、以前に前述の細密画をモチーフとした
“Cenneti beklerken (Waiting for Heaven)”を見て感銘を受けたので、よって今回の”Gölgeler ve Suretler (Shadows and Faces)”も楽しみにしていました(残念ながら”Nokta (Dot)”は、英語字幕付きDVDが出ていないので未見)。
 重いモチーフながらも、全体的には激しさよりも、穏やかな哀しみを湛えた雰囲気で、ある意味で淡々とした作風。後半の悲劇的な展開も、どこか無常観が漂うような、人の世の哀しさを諦念して見つめているような気配が漂っています。
 とはいえ、いわゆる芸術映画一本槍という感じでもなく、起伏のあるストーリーやエモーショナルな展開、スリリングな緊迫感や銃撃戦などもあり、娯楽的な要素もしっかりあって、見応えは十分以上にあり。
 映像も美しく、まず風景や撮影自体が美しいのに加えて、いかにも影絵劇というモチーフらしく、実際の影絵劇以外にも、光と影を活かした演出、シルエットを効果的に使った画面、実景が写真になる凝った場面転換など、表現面での見所も多々あり。
 こういった美点は、前述の”Cenneti beklerken (Waiting for Heaven)”と同じで、しっかり期待通りだったという感じ。

 ラスト、作品(と登場人物)に仄かな救いを与えることによって、それまで語られてきたような、社会的でシリアスな内容の作品全体が、一瞬にして、まるで影絵で演じられる民話のような雰囲気に転じる効果があるんですが、ここはちょっと好みが分かれるところかも。
 個人的には、こういう手法自体はとても好きなんですが、この映画の場合は、モチーフ自体の重さに負けてしまっているかな……という感あり。それによって後味は良くなる反面、ちょっと甘さも感じてしまったのは否めない。
 また、キャラクターの過去のエピソードなど、その造形に深みを与えていると同時に、いささか盛り込みすぎという感もあるし、影絵というモチーフと民族紛争の悲劇というドラマが、必ずしもしっくりと噛み合ってはいない感もあります。
 とはいえ、前述したように見所はたっぷりですし、役者さんも押し並べて良く、美しくてちょっと感傷的な音楽も素晴らしい。

 もう一つ、意余って力及ばずという感もありますが、しかしクオリティは高く見応えも十分。
 モチーフに興味がある方や、ミニシアター系の作品が好きな方ならたっぷり楽しめそうな、大いに魅力的な一本でした。

電子書籍『田亀源五郎小説作品集SINGLE 工事現場の夜』発売です

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 電子書籍(アマゾンKindle)第2弾『田亀源五郎小説作品集SINGLE 工事現場の夜』を発売しました。
 Kindle端末の他、iPhone、iPad、タブレットやスマホのAndroid端末などでも、Kindleアプリ(無料)をインストールすればお読みいただけます。

 第1弾『デカとヤクザとニンジンと 田亀源五郎小説作品集』は、およそ文庫本1冊分の分量を目安に、複数の作品を纏めた作品集にしましたが、第2弾の今回は「手軽に買えてサクッと読める」をモットーに、短編1本を安価でというシングル仕様にしてみました。iTunesとかで、アルバム全体ではなく1曲だけダウンロード購入するみたいなイメージ。
 せっかくKindle出版自体が手軽にできるので、ここは既存の形に捕らわれず、色々なパターンを試してみようかと。

 内容は、1995年に「G-men」創刊号(誕生号)に鬼頭大吾名義で発表した小説に、加筆訂正を加えたものです。
 肉体労働者同士のプレイ系SM+ロマンス風味のホモソーシャルといった官能小説で、濡れ場はがっつりゲイ向けエロ、ただし雰囲気は「肉体派」とかで描いていたような感じにも近いかも。
 というわけで、よろしかったら是非お買い上げくださいませ。

 さて、Kindleの電子書籍というのがどういうものなのか、ちょっとまだ馴染みがない方もおられるかと思うので、購入&購読手順も含めて、ちょっと簡単に解説してみます。
 まず前述したように本の購読は、Kindle端末(Kindle Paper White、Kindle Fire)の他、iPhone、iPad、iPod touchなどのIOS端末、その他のタブレットやスマホのAndroid端末などでも読むことが出来ます。
 Kindle端末以外での購読手順は、まず端末に無料のKindleアプリをインストールして、いつも自分が使っているアマゾンのアカウントを登録します。
 次にアマゾンのサイトで、目的のKindle本を購入します。すると本のデータがアマゾンのクラウドに保存され、同時に自動的にKndleアプリをインストールした端末にダウンロードされます。
 あとは、再び端末のKindleアプリを開けば、もうダウンロードされた本を読めます。私の出しているものは今のところ全てテキスト本なので、ダウンロード時間もほとんどかからないはず。
 購入した本のデータは、アマゾンのクラウドにも保存されているので(そのクラウドから端末にデータをダウンロードして読む仕組み)、端末のデータを消してもクラウドのデータは残っていますし、複数の端末に同時にダウンロードすることも可能です。
 複数の端末に同じ本をそれぞれダウンロードした場合、そのデータは互いに情報を共有しているので、例えばiPhoneで途中まで読んだ続きを、今度はiPadで読むなんてことも可能。
 まぁ論より証拠、やってみると実に簡単なので、スマホやタブレットをお持ちの方は、とりあえずKindleアプリをインストールして、アマゾンから無料サンプルをダウンロードするところから始めてみてください。

 さて今回の本も、販売用のEPUBデータは、ひまつぶし雑記帳(doncha.net)様の「EPUB3::かんたん電子書籍作成(縦書き小説)」を利用して作らせていただきました。
 これもまた、とにかく気軽にがモットーとのことで、簡単至極に作成できます。興味のある方は是非どうぞ。
 また、前回のエントリーでも軽く触れさせていただいた、やはりKindleでゲイ小説を出版されている小玉オサムさんのインタビューが、きんどるどうでしょう【KDP最前線】男同士の真剣な恋「弁護士 隈吉源三」を執筆した”小玉オサム”さんにインタビューで読むことができるので、よろしかったらそちらも是非。

ちょっと宣伝、新連載『転落の契約』スタートです

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 2月21日発売、月刊「バディ」4月号から、新しい短期集中連載マンガ『転落の契約』スタートです。
 前の『エンドレス・ゲーム』を終えた際に、「『SM抜きのエロマンガ』というテーマで描いていた反動もあり、そろそろガッツリSMを描きたいという欲求がムクムクと(笑)」と書きましたが、その通りの内容になりました。
 まぁ私のマンガとしては、いわば王道パターン(笑)。
 全4回という短めの連載予定なので、マッチョ+ヒゲ+体毛の奴隷系SMがお好きな方は、どうかよろしくお付き合いくださいませ。

Badi (バディ) 2013年 04月号 [雑誌] Badi (バディ) 2013年 04月号 [雑誌]
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2013-02-21

“Stripped: A Story of Gay Comics”で紹介&作品掲載

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 ドイツの出版社Bruno Gmünderから出版された、世界のゲイ・コミックスの歴史と作家を紹介したアートブック”Stripped: A Story of Gay Comics”に、紹介&作品掲載されました。取材協力(人を紹介したり、日本のマンガ出版における世紀修正の説明をしたり)もちょっとしています。

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 これ<は、過去発行された様々なゲイコミック本の表紙を集めたページなんですが、私も持っているものがけっこうあったりして、レア度は情報の密度はさほど高くない感じがします。まだきちんとテキストを読んではいないんですが、ゲイ・コミックスの歴史に関しては、さらりと表面を撫でたという感じでしょうか。  ともあれ全般的にテキスト量はあまり多くなく、基本はあくまでも図版を見せるのが中心といった感じの本。  掲載&紹介されている作家は、まず有名なとろこで、もはやクラシックとも言える大御所トム・オブ・フィンランド、 StrippedGayComics_tom
ベテラン作家で同じ版元Bruno Gmünderから作品集が何冊も刊行されているザックことオリバー・フレイ、
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やはりベテランで私も個人的にお付き合いのあるザ・ハンことビル・シメリングなど。
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 こういった作家たちについて、それぞれ冒頭に1見開き分のテキストで紹介&解説が入り、続いて1ページにつき1枚の絵を掲載しながら、それが1作家につき数見開き続く構成になっています。
 というわけで、画集的な見応えは充分以上にあり。

 で、私も12ページほど絵が載っております。
 一番古いもので、日本のゲイマンガの局部修正の例として『嬲り者』から2ページ、そして『ECLOSION』『Der fliegende Holländer』『LOVER BOY』『MISSING』『エンドレス・ゲーム』から、こちらはオリジナル・データのままの無修正版を、それぞれ2ページずつ。
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 二番目の図版は、私という作家紹介&解説ページなんですが、おそらくデザイナーさんが「日本語かっけえ!」って感覚なんでしょうね、我々日本人から見ると、実に珍妙なことになっているのがご愛敬(笑)。

 他の掲載作家さんたちも、ちょいとご紹介しましょう。まず知り合い関係から。

 イタリアのフランツ&アンドレ。このコミックス”Black Wade”は、英語版がこのBruno Gmünderから、フランス語版が拙作の仏語版版元でもあるH&Oから出ています。ちょっとハーレクイン風味のヒストリカル・ゲイ・ロマンスで、個人的にオススメの一作。
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 アメリカ(カナダだったかな?)のパトリック・フィリオン。アメコミ的なスーパーヒーローものを得意とする作家さんで、Class Comicsというインディペンデントのゲイ・コミック出版社もやっており、やはりBruno GmünderとH&Oから、コミック本や画集が多数出ています。
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 やはりアメリカのデイル・ラザロフ。ただし彼はシナリオライターなので、図版の絵は、左がエイミー・コルバーン、右がバスティアン・ジョンソンという作家。また、カラリングは、私の友人でもあるフランス人のヤン・ディミトリが担当しています。デイルの本も、やはりBruno Gmünderから何冊か出ていたはず。また、この《デイル・ラザロフ/バスティアン・ジョンソン/ヤン・ディミトリ》コンビの作品は、これとは別に描きおろし新作もフル・ストーリー掲載あり。
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 知り合い関係を離れたところでは、まずアメリカのミオキ。この本の表紙も、この人の作品。やはり確か、Bruno Gmünderから作品集が出ていた記憶が。「薔薇族」って感じの作風。
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 ドイツのクリスチャン・タルク。カートゥーン調とリアル調のミクスチャーがいい感じ。
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 同じくドイツから<トゥリオ・クラップ。バンドデシネっぽい感じ。 StrippedGayComics_krapp

 オランダのフロ。カートゥン系の可愛らしい作風。
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 アメリカのハワード・クルーズは、70年代〜80年代に活動していた作家さんらしいですが、ハワード・クラムなんかと通じる、いかにもアメリカのアングラ・コミックといった感じの作風。
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 こんな感じで、様々な作家の作品を大きく紹介したものが、フルカラーで240ページ近くあるというヴォリュームなので、ゲイ・アート好き、ゲイ・コミック好きなら、まず買って損はない充実の内容。
 本のサイズも約A4と大きめで、ハードカバーで造本もしっかり。
 テキストは英語とドイツ語の併記で、情報の掘り下げ度はそんなに深くない気はしますが、それでも一冊まるまる使って世界のゲイ・コミックを俯瞰しているという点で、あまり類書がない貴重な本だと思います。
 ただ残念ながら、例によって日本のアマゾンでは取り扱いがありません。
 それでも欲しい方は、是非アメリカやイギリスのアマゾンから取り寄せてください。

フランスの企画展“AMOUR ÉGALITÉ LÉGALITÉ”に参加

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 フランス、パリで開催される企画展“AMOUR ÉGALITÉ LÉGALITÉ: Exposition d’oeuvres d’art pour la liberté d’aimer”に、描きおろし新作1点と旧作数点を出品します。
 企画展タイトルの意味は『愛・平等・合法』で、同性婚合法化を控えたフランスで、最近では反対活動なども活発化している、marriage equality(婚姻の権利の平等)をテーマにした内容となっています。

 参加作家は私の他、私が知己があったり作品を知っている作家では、キャプテンベアー(コスプレの人なのでおそらく写真かと)、アレックス・クレスタ(写真家)、フル・マノ(刺繍でゲイ・アートを制作する作家)、ニコラ・マーラウィ(私が見たことある彼の作品はアブストラクトなペインティング)など。
 他にゴロヴァック(?)、シロンブリア(?)といった名前が挙がっていますが、ちょっと判らず。
 場所は私がいつもパリで個展をしているArtMenParis
 会期は2月5日〜12日。ドア・オープンは14:00〜18:00(要予約)。オープニング・パーティは5日の16:00〜22:00。
 この企画展のFacebookイベントページはこちら

 私自身は、新作を送る&預けてある旧作を展示という形の参加なので、残念ながら現地へは行けませんが、パリおよびフランス在住の方、期間中に訪仏の方など、いらっしゃいましたら是非足をお運びくださいませ。
 出品する新作は、こちらになります。
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“Amour Égalité Légalité” (2013) 〜楮和紙に毛筆と墨、朱墨、金色墨汁、銀色墨汁

『映画秘宝』2012年度ベスト&トホホ10

 本日発売『映画秘宝』3月号の「爆選! 2012年度ベスト&トホホ10」で、投票&コメントで参加させていただいております。
 まぁ去年の私のベスト1は、これはもうぶっちぎりで《これ》でした。何というかね、映画にしろマンガにしろ小説にしろ、良いと感じる判断基準は自分の中にも色々ありますけれど、最終的には「どれだけそれを愛せるか」ということに尽きるので(例えそれが偏愛の類であったとしても)、去年はもう「ようやく見られた!」しかも「ある意味で期待も上回ってくれた!」という多幸感にひたすら酔い痴れた、この一本に即決でした。
 5位以降はけっこう悩みに悩みまして、ジャック・オーディアールの『預言者』やヌリ・ビルゲ・ジェイランの『Once Upon a Time in Anatolia (昔々、アナトリアで/Bir Zamanlar Anadolu’da)』は泣く泣く落としたし、マーカス・ニスペル&ジェイソン・モモアの『コナン・ザ・バーバリアン』は個人的に擁護したいのでランク入りさせたかったとか、『アイアンクラッド』も入れるべきだったかしらとか、まぁ色々と(笑)。
 というわけで、宜しかったら是非お買い求めくださいませ。

映画秘宝 2013年 03月号 [雑誌] 映画秘宝 2013年 03月号 [雑誌]
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2013-01-21

電子書籍『デカとヤクザとニンジンと 田亀源五郎小説作品集』発売です

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 電子書籍(アマゾンKindle)で『デカとヤクザとニンジンと 田亀源五郎小説作品集』を発売しました。
 Kindle端末の他、iPhone、iPad、タブレットやスマホのAndroid端末などでも、Kindleアプリ(無料)をインストールすればお読みいただけます。
https://amzn.to/4cXaObR

 副題にもありますように、内容は小説作品集です。
 1988〜96年にかけて、ゲイ雑誌「さぶ」や「G-men」に《田亀源五郎/城戸呉八/鬼頭大吾》各名義で発表した、官能ゲイ小説の中から、ハードコアからラブストーリーまで厳選4本をセレクトしました。
 ヴォリュームは文庫本換算で約280ページ(換算基準は後述)。

*収録作
『デカとヤクザとニンジンと』
 95年、「さぶ」に城戸呉八名義で発表したもの。中年ヤクザとマル暴デカの、エロ&ラブ・ストーリー。
『無情の皿』
 96年、「G-men」に鬼頭大吾名義で発表したもの。壮年の板前を主人公にした、和風SM。いわゆる《抜ける系》ゲイポルノ。一部加筆。
『竹の家』
 88年、「さぶ」に田亀源五郎名義で発表したもの。後に「ロマンJune」「Super SM-Z」にも再録。18歳の青年が叔父に奴隷調教されていく、一人称小説。
『檻穽の獣』
 93年、「さぶ」に城戸呉八名義で発表したもの。後に「ロマンJune」にも再録。90年代初頭の東京の風俗を織り込んだ、ミステリー&ハードロマン仕立てのゲイSMもの。
『あとがき』
 各作品の内容や、執筆当時の背景などについて、簡単に解説。

 過去にゲイ雑誌では、マンガやイラストレーションの他、《田亀源五郎/城戸呉八/鬼頭大吾》のペンネームを用いて、それなりの量の小説も発表してきましたが(一部は本家ウェブサイトでも公開)、このままハードディスクのこやしにしておくのも勿体ないので、今回Kindleを使って電子書籍化してみました。
 まだまだストックはありますので、機会を見て出来ればまた続きを出していきたいと思っておりますが、とりあえずこれが第1弾。
 私の書く小説をご存じの方も、そうでない方も、よろしければ是非一度お試しください。
 試し読みも可能で、アマゾンの商品ページにある《今すぐ無料サンプルを送信》ボタンを使って、表題作『デカとヤクザとニンジンと』の冒頭かなりの部分をお読みいただけます。
 文庫本換算の基準は、元となったテキストファイル(強制改ページ含まず)を、Adobe InDesignで《43字×15行》のフォーマットに、自動流し込みした際の総ページ数を基準に算出しています。

 実際の表示例は、こちら。
《Kindle Paper Whiteの場合》
(Kindle Previewerでシミュレート)
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《Kindle for iPhoneでの表示》
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 電子書籍ファイル(EPUB)の作成にあたっては、ひまつぶし雑記帳(doncha.net)様の「EPUB3::かんたん電子書籍作成(縦書き小説)」に大いにお世話になりました。謹んでここに御礼申し上げます。
 ワークフローとしては、まず上記の「かんたん電子書籍作成」のガイドラインに沿った形で、コンテンツを収録したプレーンテキストファイルを作成、EPUB3に変換。
 それを、フリーののEPUBファイル編集ソフトSigilを使って、細かなところを自分好みの形に整えてから、アマゾンが配布しているKindle用の確認ソフト、Kindle Previewerで仕上がりをチェック。
 こうして出来上がったEPUBファイルを、KDP(Kindle Direct Publishing)にアップロードして出版しています。
 Sigilで成形する部分は、これは私の好みの問題なので、別にそのパートはなくても問題ありません。ある程度のHTMLの知識があれば、それを使って見た目の細部を整えることができるといった程度の作業です。
 単純な小説本を出す限りでは、やり方は極めて簡単なので、こんな感じで、かつてゲイ雑誌に小説を書いていらした方々が、それぞれ過去の埋もれた作品とかを電子化して出版していただけると、楽しいんだがなぁ……などと妄想中。

 実際に自分が出版するにあたって、ちょいとアマゾンのKindleストアを調べてみたところ、小玉オサム先生が幾つか御自作をKindleで出していらしたので、早速私も購入してみました。

 電子化にあたって判らないところなどありましたら、訊いて下されば出来る範囲内で個別にお手伝いもいたしますので、ゲイ小説を書いていらした皆様、Kindle出版はいかがですか?
 こんな感じで、僅かながらでも日本のゲイ・アダルト・エンターテイメント文化が、また盛り上がっていくと楽しいかなぁ……なんて妄想しております。
 ま、そのためにも、何はともあれ、拙著『デカとヤクザとニンジンと』、お買い上げ下さいまし(笑)。

“La Mission”

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“La Mission” (2009) Peter Bratt
(米盤Blu-rayで鑑賞→amazon.com

 2009年のアメリカ映画。サンフランシスコのミッション地区に住む男根主義的なチカーノの父親と、高校生でゲイの息子の確執を、音楽たっぷりに描いたヒューマン・ドラマ。
 監督ピーター・ブラット、主演ベンジャミン・ブラット。

 サンフランシスコのミッション地区に住むメキシコ系移民チェは、かつてはアルコール依存症だったが現在は社会復帰し、トロリーバスの運転手をしている。彼は地域で一目置かれる親分的存在で、週末は仲間と一緒に、リストアして飾り立ててたローライダー車を連ねて街を流すのが習慣だった。
 チェの妻は早くに亡くなっていたが、一人息子で今は高校生のジェスがいて、真面目で成績も良い息子のことをチェは誇りに思っていた。しかしジェスは実はゲイで、同年代で富裕層の白人のボーイフレンドと付き合っていた。
 とある週末、チェはいつものように仲間と街を流しに行き、その間ジェスはBFと一緒にカストロ地区のゲイクラブへと踊りに行く。しかし翌朝、ゲイクラブで記念に撮られたジェスのポラロイド写真を、チェが見つけてしまう。
 チェはジェスを殴りつけ、そのまま殴り合いになったところを、隣人でウーマン・シェルターに勤務している黒人女性がようやく取りなす。しかしチェはジェスに「家から出て行け!」と怒鳴り、ジェスはそのまま叔父夫妻の家に身を寄せることになる。
 やがて弟(ジェスの叔父)や黒人女性の説得もあり、チェはジェスを再び家に迎え入れ、息子の同性愛についても何とか理解しようとするのだが、自身が敬虔なカトリックということもあり、どうしてもそれを受け入れることができない。
 そんな中、ジェスと同じ高校に通うチカーノ・ギャングの男子学生が、かつてチェにトロリーバス内でマナーを咎められたことを根にもって、ジェスがゲイであることを学校内で言いふらす。
 ジェスは、友人のサポートもあってそれに絶えるのだが、父親との関係は依然ぎくしゃくしたままで、そこにやがてある事件が起き……といった内容。

 なかなか丁寧に撮られた作品。
 キャラクターの心情を生活感のある細かなエピソードで、1つ1つじっくりと描いて積み重ねていき、それが同時にチカーノ・コミュニティ内の風俗描写ともなり、更にソウル、ファンク、ヒップホップ、メキシコ先住民音楽から、インドの瞑想音楽まで、様々な音楽が劇中でふんだんに流れるというもの。
 ただ、丁寧に撮られている反面、いささか冗長な感はなきにしもあらずで、このモチーフで2時間近くというのは、正直ちょっと長すぎの感はあり。出来事を最初から順番に追っていく撮り方なのだが、ここはもうちょっと構成に工夫して、全体をタイトに引き締めた方が良かったんじゃないかなぁ。
 とはいえ、ストーリーや描かれるエピソード自体が面白いので、見ていて退屈するということは全くなく、またローライダー改造車を巡る文化とか、メキシコ先住民文化を受け継ぐ民間信仰的な宗教描写とか、目新しいものがあれこれ見られるので、全体的にはとても楽しめる出来。

 ゲイ描写に関しては、あくまでもフォーカスは息子がゲイであることを受け入れられない父親の方にあるので、ゲイ文化自体に関してはさほど描写はなし。
 しかし、自分がゲイであることを受け入れてくれない父親との確執や決断、愛するBFとの関係描写、周囲の人々によるサポートといった、息子を軸としたゲイ回りのドラマも、前述したようなディテール描写の豊かさもあって、やはり見ていて面白いし描かれ方も気持ち良い。
 また、単にゲイという要素だけではなく、そこに人種や格差の問題が絡んでくる(つまりワーキングクラスのチカーノであるチェやジェスに対して、ジェスのBFはアッパークラスの白人なので、それが尚更チェを意固地にしてしまう側面がある)のも、ドラマの要素として興味深くて佳良。

 役者陣も、メキシカンなヒゲにスジ筋ボディ&全身刺青というチェを演じるベンジャミン・ブラットと、大きな黒目が印象的なジェスを演じるジェレミー・レイ・バルデスの二人を筆頭に、隣人の黒人女性、チェの弟とその美人妻、ローライダー車の仲間たち、ジェスの友人である太っちょのネイティブ・アメリカン青年など、メインから脇に至るまで実に魅力的な面々が揃っている。
 映像的には、音楽(や歌詞の内容)を上手く使った印象的なシーンが多々あり、ここも大きな見所の1つ。
 エンディングの余韻も心地よい。

 こういう感じで、モチーフに興味のある方だったら、まず見て損はない内容かと。
 男根主義の父親とゲイの息子の確執というテーマに興味がある方にはもちろん、チカーノ文化に興味がある方や音楽好きの方にもオススメの一本。

“Vampires: Brighter in Darkness”

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“Vampires: Brighter in Darkness” (2011) Jason Davitt
(アメリカ盤DVDで鑑賞→amazon.com、イギリス盤もあり→amazon.co.uk

 2011年制作のイギリス製テレフィーチャー。マッチョ系ゲイ・ヴァンパイアもので、いちおうシリーズ化の予定らしく、続編は”Vampires: Lucas Rising”となる模様。
 どんな内容かというと、一言で言えば……すっげー中二病でした(笑)。

 紀元500頃、古代ローマの軍人ルーカスは仲間と共に、永遠の命を求めて東欧の某所を訪れる。そしてそこでヴァンパイアの女王と出会い、首尾良く自分もヴァンパイアになる。
 それから1500年後、イギリスに住むゲイの青年トビー(美味しそうな身体+タトゥーの、犬系カワイコちゃん、ヒゲ付き)は、姉のシャーロットが仕掛けたブラインド・デートに出掛けるが、その相手がヴァンパイアのルーカス(ハンサム&ノーブル系、ちとワイルド、身体良し、ヒゲ付き)だった。
 トビーは自分のためにレストランを丸ごと貸し切りにしたルーカスにちょっと引きつつ、それでも彼に惹かれるが、「ホテルの部屋に来ないか」というお誘いは、今日のところは淑女らしくお断りする(ゲイだったら、ここは直行すると思うけどw)。
 またの再会を約束してルーカスと別れたトビーだったが、自宅の前まできたところに、シュッと目にもとまらぬ早業でルーカスが現れる。どうしてここにいるのとうろたえるトビーに、文字通り目を光らせて「君が好きだ、中に入れてくれ」と迫るルーカス。
 催眠術にかかったように(って実際に術にかかってるわけですが)ルーカスを家に入れてしまうトビー。そこでまた目を光らせてトビーに迫るルーカス。最初は嫌々していたトビーも「俺が欲しいんだろ?」と迫られ、結局「欲しい」と返事。お互いのシャツを激しく剥ぎ合い、ソファーに倒れ込み、荒々しく互いの身体をまさぐるうちに、ルーカスが「シャーッ!」と牙を剥きだして、トビーの首筋にガブリ。哀れ血を吸われて意識朦朧となるトビー。
 そこにドアを激しく叩く音。何とそこには、もう一人のルーカスがいた! どーゆーこと???
 実はトビーの血を吸っていたのは、ルーカスに化けた仲間の吸血鬼アンソニーだったのだ! 玄関で「僕を招きいれてくれ、トビー!」と叫ぶルーカス。朦朧としながら「入っていいよ」と答えるトビー。途端、ルーカスは部屋内に突入、トビーからアンソニーを引きはがす。
 しかし血を吸われたトビーは哀れ虫の息。そんなトビーの命を助けるために、ルーカスは自分の血を飲ませる。邪魔をされたアンソニーは逃走。やがて意識が戻ってパニックるトビーに、ルーカスは全て説明する(…ってもヴァンパイアの血を飲めば、その主のライフ・ヒストリーが判るという便利な設定なんですがw)
 トビーは自分がヴァンパイアになっちゃったことにショックを受けるが、でもまあルーカスのことを愛しているし(いつから???)すぐ興奮して牙出して「シャーッ!」ってやっちゃうけど、でも空中浮揚とかもできるようになったし、これはこれで悪くないかな、と納得(いいのか?)。
 というわけで、二人はもっとカジュアルでオシャレな服に着替えて(さすがゲイ)、夜の街にデートに繰り出す。デートといってもゲイクラブに行くとかじゃなく、超人的な身体能力を活かして屋根の上をピョンピョン、満月の下でロマンティックにキスといった塩梅。
 しかしその頃、ルーカスが仲間の承諾なしに勝手にトビーをヴァンパイアにしたことを、アンソニーやもう一人の仲間マーカスは問題視していた。更に彼らヴァンパイアの元祖である女王は、地獄(だか何だか)の扉を開けて、世界を破滅させヴァンパイア天国にしようとしていた!
 ここはお約束通り、世界破滅計画には荷担しないことにしたルーカス。ヴァンパイアの女王は招集を拒否したルーカスを裏切り者と決定。一方トビーは、ヴァンパイア化して数時間にも関わらず、恐るべき潜在能力を発揮。
 果たして世界は滅亡から救われるのか? ……ってな内容。

 実はこの後まだまだ、ルーカスが飛行機の屋根に乗ってエジプトへ行き、古代エジプトの元祖ヴァンパイア(神殿に鎮座しアヌビス神を侍らせながらも、なぜかイヤホンでヒップホップを聴いているというモダンっ子)に指導を仰ぎに行くとか、トビーの元彼が彼のことを忘れられず、家に強引に押しかけたときにアンソニーに攫われてしまい、そして結局その元彼もヴァンパイア化し、クライマックス直前あたりでは、もうゲイのヴァンパイアたちの痴話喧嘩の様相を呈してきたり、何の伏線もなく「古の錬金術師が作った《生きていて血を滴らせる石・ブラッドストーン》」だの、強大な力を持つ偉大な魔女だの、女神ヘカテだの、巨大サソリだの、トビーとルーカス危機一髪の時に唐突に昔なじみのサキュバスが現れて加勢するだの、もうトンデモ展開の目白押し(笑)。
 そんなこんなでツッコミ出すときりがない、全編通じて中2病フルスロットル!
 もちろん「実は××が巨大な力を秘めていて、後になって覚醒する」という定番展開なんかももありましてよ!
 いやぁ、笑った笑った(笑)

 とはいえ、なんか作り手の《愛と情熱》を激しく感じるので、ひどい出来っちゃあそうなんだけど、個人的にはかなり好きです。低予算なのは丸わかりだけど、でもその中で頑張っているのは伝わってくるし。
 あと男優陣(基本的に全員ヴァンパイア)が、なかなか上玉を揃えていて、演技力はともかくルックは全員悪くない。ちゃんとトビーは可愛く、ルーカスは格好良く見えるし、体育会系のアンソニーもなかなか。
 反面、女優はひどいんですけど(笑)。やっぱゲイが作ってるから、女はどうでもいいのかしら(笑)。
 ゲイ的にセクシーなシーンだと、トビーとルーカスが一緒にシャワーを浴びながら、互いにガブガブ噛み合い(笑)、肌を伝う血を舐め合うなんてのは、けっこう上手く撮られていて、あー基本的にはここが撮りたかったんだろうなぁという感じ。だったら下手な色気ださずに、もっとこぢんまりした話にすりゃいいのに……という気もしますが(笑)。ヴァンパイアの女王の世界征服のせいで、話がシッチャカメッチャカになっちゃってるので(笑)。
 あと、とにかく考えなし&唐突に話がどんどん進んでいくので、2時間もあるのに余分なことをしている余裕がなく、結果的に展開が早くなっているのも佳良。正直、演出自体(撮影もね)はへっっったくそなんだけど、でも飽きはしないという。
 特撮系も、この手の作品にしては頑張っている方で、クリーチャーも何種類か出てくるし(とはいっても俳優と絡んでアクションとかは殆どないんですが)、デジタル合成なんかも駆使していたり。
 まぁ、牙が突き出たヴァンパイヤ入れ歯のせいで、役者さんの滑舌が悪くなっちゃって、なんか喋りがモゴモゴしてヒアリングするのが大変だったとか、あと何かっつーとヴァンパイア同士が、その牙を剥き出して「シャーッ!」「シャーッ!」と威嚇し合うのが、なんかネコの喧嘩を見てるみたいで、その度に笑っちゃったりはするんですけど(笑)。

 というわけで、作品の出来自体は決して褒められたもんではないにも関わらず、それでも変なDVDスルー映画やVシネの「たりぃ〜、まだやってんの〜、さっさと終わんねぇかな〜」とは無縁で、ぶっちゃけ個人的にはかなり楽しめました。続編を作る気マンマンで、唐突に《引き》で終わるラストも爆笑だったし(笑)。
 そんなこんなで、好きだわぁ、これ! でも、トラッシュ趣味のない相棒は、横で退屈して居眠りこいてましたし、万人にはオススメいたしかねますが、予告編でピンときた人なら、タップリ楽しめるはずです。