『ドーン・オブ・ザ・デッド』&『テキサス・チェーンソー』

去年見逃しちゃって悔しかったリメイク映画を、二本続けて鑑賞しました。

ドーン・オブ・ザ・デッド ディレクターズ・カット [DVD] 『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004)ザック・スナイダー
“Dawn of the Dead” (2004) Zack Snyder

 中学生のときに見たジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』は、当時えらく恐がりだった自分が初めて劇場で見たホラー映画だったというせいもあって、かなりのトラウマもんでした。劇場ではオッカナイシーンになると目をつぶり、それでも後々まで延々と夢に出てきて、何と社会人になってもゾンビに襲われて喰われる悪夢を見たほどで(笑)。
 因みに当時の自分がどのくらい恐がりだったかというと、映画雑誌で『タワーリング・インフェルノ』や『ジョーズ』の「あらすじ」を読んだけで、もう恐くて恐くて「ゼッタイにこんな映画は見ない!」と決心したほどで、もちろん『エクソシスト』や『サスペリア』なんか、リアルタイムでは論外でした。
 そんな私が、いつの間にかホラー映画大好きで、残酷描写も嬉々として描く作家になってんだから、人間ってホント判んないもんです(笑)。
 で、このリメイクですが、アクション映画的にすこぶる面白くて、特に導入は絶品! 日常から非日常への移行を、もうグググーッと一気に引っ張ってくれて、作品世界に突入させてくれる。一連のシークエンスを経て、カメラが引いて壊滅した街の俯瞰になるあたりなんか、もう拍手モンの素晴らしさ。
 話が本筋に入って以降も、若干盛り込みすぎだったり、キャラクターをさばききれていないきらいはあるものの、見せ場はふんだんにあるし、テンポも良い。全力疾走で追っかけてくるゾンビは「こっわ〜っ!」だけど、食人という要素がなくなっているせいか、神経に障るグロ描写は意外と少ない。人間のイヤ〜な側面描写も控えめだし、これだったらトラウマにはならずに済んだかも。
 反面、終末感や閉塞感や絶望感、あるいは人間という存在に対する根本的な厭世観は乏しい……っつーかほとんどないので、オリジナル版のそーゆー部分が好きな人には物足りないかも。でも、これは正しいリメイク方法だと思いますよ。娯楽作としては文句なしの出来映え。こういう満足感のあるホラー映画って、最近だと『デッドコースター』以来かも。
 まあ、もうちょい悪夢的な要素も欲しい気はしますが、それ以外でこれだけ面白けりゃ、なくっても充分にオッケーでございますよ。
 主演のサラ・ポーリーは、NHKでやってた『アボンリーへの道』しか見てないんで、「おやまあ、大きくなったわねぇ」ってカンジで、すっかり近所のオバサン気分(笑)。
 後は、キャラ的なオイシさと肉体のゴツさが相まって、黒人警官とCJっつー警備員がお気に入り。
 そういや、キャラの中にトランスジェンダーかトランスベスタイトを示唆するようなシーンのある人もいたけど、そこいらへんは面白さよりも、さばききれなさに繋がってしまった印象だなぁ。
 因みに私は、最初に述べたような理由もあって、ゾンビ映画にあんまり愛着はないんですが(笑)、いちおう過去に見たゾンビ映画で一番好きなのは、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 死霊創世紀』(1990)。これまたロメロのオリジナル版ではなく、トム・サビーニのリメイク版の方。この映画のラストシーンは、何だかパゾリーニみたいでマジで好きです。

テキサス・チェーンソー コレクターズ・エディション [DVD] 『テキサス・チェーンソー』(2003)マーカス・ニスペル
“The Texas Chainsaw Massacre” (2003) Marcus Nispel

 こっちのオリジナル版、トビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』は、既にホラー映画好きになった後にビデオで見たんですが、それでも「うわ、なんかマズいもん見ちゃったかな……」っつーよーな、何とも言えない後味でした。スゴいんだけど、人にはこれを好きだと言えないような、そんなカンジ。
 で、「その感じ」はおそらく意図しては出せない類のものだと思うので、リメイクにはあんまり期待してなかったんですよね、正直なトコロ。
 ところが、ネットで予告編を見たら、一気に自分の中で盛り上がっちゃって。っつーのも、タイプがいまして(笑)。汚いブロンドの長髪で、無精髭で、でも良く見ると整った顔で、汗じみたタンクトップで、ガタイも良さそうな若造。こうなると、こいつがどう××されるか楽し……あわわわ(笑)。いや、我ながら業が深いと思いますよ、まったく。
 で、鑑賞したところ、これが意外と良かった。日常から非日常へじっくり時間をかけて移行していく前半は、前述の『ドーン・オブ・ザ・デッド』とは間逆ですが、これまたなかなか佳良。埃っぽい田舎道と照りつける太陽、肌に浮かぶ汗といった空気感のある映像も美麗。若造どものキャラのさばきかたも上手いし、狂気の一家との対比も上手く見せている。オリジナル版とどこをどう変えるかといったヒネリも、上手い具合にブチ壊しにならない範囲で、良く工夫されていたし。ショッカー演出があると同時に、雰囲気でジワジワくる恐怖感がちゃんとあるのも嬉しい。
 それでもまあ、不満点もありますけどね。一家に唯一マトモな子供がいるとか(あたしゃゼッタイに、こいつはマトモそうに見えて、実はヒロインを更にイヤな方向に持っていく罠だと思った)、赤ん坊の救出劇とか(さらった赤ん坊というネタは悪くないんですが)、そこいらへんは「不条理」や「理不尽さ」という魅力を損なってしまっているようで、どうもいただけない。でもまあ、それもメジャー映画の宿命なんでしょうし、そういう部分があるからこそ、ある意味で安心して見られるような(つまり前述の「うわ、なんかマズいもん見ちゃったかな……」っつーよーな後味にはならないような)、そーゆーポジティブな効果もあるわけだし、これはこれで良いのかなぁ。
 あ、あとメタフィクション風味にするのはいいけど、エンド・クレジットにまでも「実話を基にした云々」が入るのは、ちょっとどうかと思ったぞ。この映画とエド・ゲインの事件の、内容的な隔たりを考えると……ね。
 ともあれ、オリジナル版と路線的にさほど異ならない分、逆に比較せざるをえない部分もあり、そーゆー意味ではイロイロと言いたくもなるんだけど、そこさえ気にしなければ、恐いし美しさもあるし見所も一杯の、立派に標準以上の出来映えのホラー映画です。
 で、役者ですが、前述の私のお目当てだった若造クン(マイク・ヴォーゲルというらしい)に関しては、もう「うぉぉぉ、こいつがこの役回りかぁ〜ッ!」ってなカンジで、もう「期待以上だった!」とだけ(笑)。これだけで、もう個人的な偏愛映画に決定であります。
 あ、他の若造どもも、それぞれ好演でした。特にオトコノコ連中は、なかなかのもの。ヒロインに関しては、キャラ立ちや演技云々よりも、オッパイの形の良さの方が印象深いかな(笑)。
 狂気の一家の方は、それぞれ工夫はあるけれど、保安官とオジイチャン以外は、意外と影が薄いような。特にレザーフェイス君、要もう一頑張り。
 で、いきなりですが、これを見ていたら、一つ古〜い映画を思い出しまして。ジェームズ・ランディス監督・アーチ・ホール・Jr主演の『サディスト』(1962)という白黒映画。
 三人の教師が乗った車がドライブ中に故障して、人気のない田舎道の自動車工場で殺人鬼に出会うという話なんですが、これがなかなか見応えのある良い映画でして。炎天下の田舎道の埃っぽさと、そこで繰り広げられる理不尽な殺人劇のコントラストとか、巻き込まれ型の不条理さとか、精神的に追いつめられていくピリピリ感とか、ちょっと『悪魔のいけにえ』や『テキサス・チェーンソー』にも通じる魅力があります。
 因みに私は、リアルタイムで見ていた相棒に教えてもらい(あたしゃ公開時には生まれてすらいないもんね)、輸入DVDを入手して見たら、「おお、掘り出し物!」ってカンジでした。
 機会があったら、ぜひご覧あれ。

『ジーザス』

ジーザス [DVD] ジーザス(1999)ケヴィン・コナー
“Mary, Mother of Jesus” (1999) Kevin Connor

 物語は、イエスの誕生以前から復活に至るまでを、マリアの視点をメインに、一時間半足らずという、ものすごいスピードで展開。
 見所は、特になし(おい)。まあ、洗礼者ヨハネとマグダラのマリアと盗賊バラバを同一シーンに登場させて処理するとか、山上の説教もなしにエルサレム入城してから磔刑までがビックリするほど猛スピードとか、アレンジや省略具合を楽しむといった意味なら、それなりの見所がないわけじゃないけど。
 しかしまあ、そもそもTVムービーだし、お手軽な絵解きやちょっと豪華な再現ドラマだと思えば、それなりに楽しめないわけでもない。固いこと抜きにすれば、ね。
 役者は、イエスがクリスチャン・ベイル。老いてからのマリアがシミ・スカイウォーカー……じゃなくて、ペルニラ・アウグスト。洗礼者ヨハネの母エリザベト役がトーニャ……じゃなくて、ジェラルディン・チャップリン。かつて『クリスタル殺人事件』『愛と哀しみのボレロ』『モダーンズ』あたりで親しんでいたお顔なので、元気でご活躍なだけで何だか嬉しい。
 監督はケヴィン・コナー。……って、どっかで聞いたことあると思ったら、よく考えたらローティーンの頃に見た『恐竜の島』(大好きなE・R・バローズの「キャスパック」シリーズの映画化と聞いて、ヨロコビ勇んで見に行って……ガックシ)、『地底王国』(これまたバローズの、しかも自分が一番好きな「ペルシダー」シリーズの映画化と聞いて……以下同文)の監督じゃんか! うっわ〜、なっつかし〜(笑)! 『アトランティス 七つの海底都市』とか『地獄のモーテル』とか『豪華客船ゴライアス号の奇跡』とかも、この監督だったよな〜。そうと判ると、この『ジーザス』も何となく愛おしくなってくる(笑)。
 で、私がコレを借りたのは、ずばりクリスチャン・ベイルがお目当てでゴザイマス。いや、『サラマンダー』と『リベリオン』で、思いのほか逞しいスジ筋ボディに惚れちゃいましてね(笑)、イエス役なら絶対責め場もあるだろうと、もう下心丸出しで(笑)。
 というわけで、以下は「不謹慎」な感想になりますんで、お嫌な方は読まれないように。
 一番楽しみにしていたのは「笞打ち」なんだけど、これはなくってガッカリ。え〜い、省略すんな!
 でも十字架の道行きは、なかなかグッドです。まず、珍しく上半身裸というスタイルなんですな。おかげで背中の笞跡も鮮やか。お次にこれまた珍しく、十字架を担ぐのではなく、外した横木に両腕を縛られたスタイル。こーゆー姿での引き回しってのは、けっこうマイ・フェイバリットの一つ。とどめは、首に縄を掛けられて、それ持って犬みたいに引きずり回し。いやぁ、こりゃあかな〜りオイシイ。ここだけでも借りた甲斐があった(笑)。この部分の尺が短いのは残念で、この調子で『パッション』みたいに延々とやってくれたら、もうヌレヌレだったのに(どこが?)。
 磔シーンは、特筆するほどのものはないけれど、とりあえず「髭面のクリスチャン・ベイルが腰布一丁で磔にされる」ってだけで、私的には既に目的達成(笑)。流血が控えめなので、無惨味よりは単なるボンデージっぽいですが。
 とゆーわけで、半裸のクリスチャン・ベイルの責め場を見る分には、それなりにお楽しみドコロが。
 こーゆー重厚感や悲壮感のカケラもない、お手軽でスピーディな展開ってのも、罪悪感なく下心に浸りやすいって意味では、あんがい悪くないのかも(笑)。

アメリカの「野郎系パルプ雑誌」のカバー画集2種

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“It’s A Man’s World” A Feral House Book (ISBN 0-922915-81-4)
“Men’s Adventure Magazines” Taschen (ISBN 3-8228-2515-4)
 ここんところ立て続けに、個人的に大好きな昔のアメリカのパルプ雑誌の表紙絵の、それも「実録男性誌」系の表紙絵を集めた画集が、二冊続けて出版されたのでご紹介。

 このテのイラストの、基本は二つ。
 まず、バイオレンス経由のマッチョイズム賛美系。これは、逞しくもむさ苦しい、いわゆるゲイ業界用語(笑)で言うところの「野郎臭い」男が、敵と闘い苦境に陥っている、とゆーパターン。その敵もいろいろで、大西部でネイティブ・アメリカンや無法者と戦ったり、またある時は大自然の中で猛獣や毒虫と戦ったり、更には第二次世界大戦でナチと戦ったり。
 で、逞しい半裸の男たちが、猛獣や猛禽に肉を引き裂かれていたり、南洋の秘境で生贄にされそうになっていたり、捕虜収容所で鞭打たれていたりする光景が、コテコテのアメリカン・リアリズムで描かれる。いや〜、ここいらへんは私的に実にオイシイ(笑)。
 もう一つのパターンは、ズバリSEX&SMで、下着姿の美女が絶叫してるヤツ。これは圧倒的にナチものが多くて、縛り鞭打ちは当たり前。火責め水責め氷責め、生体実験に電気ショック、あげくは溶鉱炉で金の彫像にされたり、壁の中に塗り込められたり。ま、よーするに「ナチ女囚もの映画」のイラスト版。ダイアン・ソーンのファンなら必見(笑)。
 ナチ以外にも、カストロ風の軍服男たちに拷問される美女とか、ヘルスエンジェルスやチャールズ・マンソンみたいなバイカーやヒッピー系に捕まった美女とか、日本軍に襲われるゲイシャガールなんて絵もあり。

 で、そーゆーのを見ていると、「敵」にもインフレや時代の変遷があるようで。
 たとえば大自然アドベンチャー系だと、闘う相手がオオカミやらライオンやらサメやらなら納得もいくんですが、イタチやらセンザンコウやらイグアナやらヤシガニやらを相手に闘っているのを見ると……いや、本当はそーゆーのも危険なのかも知れませんが、絵面的には野郎どもが必死の形相だけに、どーにもマヌケ。まあ、そーゆー「ヘン」さも愛おしいけど(笑)。
 相手が人間になると、これはその時代の「仮想敵」なんでしょうなぁ。前述のナチスやカストロや日本軍の他にも、毛沢東や旧ソ連、クメール・ルージュとかが登場。現在だったら何になるか、これはもう火を見るより明らかで、こういった要素はPCにうるさい人なら、眉をひそめること間違いなし。これも一種のお国柄なのか、それとも人類の持つ普遍的な本質なのか。
 そういや、個人的な話ですが、以前アメリカでゲイSM関係の人と面談したときに、先方から「日本人の残酷性について」話題を振られたことがあり、そのときは「ああ、これも黄禍思想の根深さか」なんて思いましたが、案外こういったパルプ雑誌が、直接的なルーツなのかも。
 表紙に踊るコピーの数々も面白い。
 前述のような野郎野郎した絵や、「悪魔の大蛇との死闘!」とか「俺は地獄の収容所から生還した!」なんていう勇ましいコピーと一緒に、必ず「浮気妻のセックス・ライフ」やら「スクープ! 日本のヌード・マーケット」なんてコピーが(笑)。
 他にも「殺人豚に生きながら喰われる!」とか「俺はセイロンで吸血ヒルと闘った!」とか「人喰いカニが這い寄ってくる!」とか「人喰いネズミの島!」とか、いったいどーゆー記事なのか読んでみたくなるし(笑)。あ、でも前に『風俗奇譚』か何かで、これ系のイラストが載ったや記事を読んだっけ。あれはきっと、このテの雑誌から転載したんだろーな。なーんだ、しっかり読んでたんじゃん、自分(笑)。

 しかしこーやって「野郎ども危機一髪!」みたいな絵を続けざまに見せられると、「こいつらマゾなんじゃないか?」な〜んて思いも頭をよぎる。
 ただこれは、マゾはマゾでも自分を卑しめることに陶酔するマゾではなく、苦難に耐えるカッコイイ自分に酔うという、ナルシシズムとヒロイズムの混じったマゾですな。結局のところ彼らは、こうやって苦境に耐えることで、自らの男性性を再確認しているに過ぎない。これはあくまでも、彼らの思うところの「本物の男」になるためのイニシエーションであって、そこに屈辱や服従の甘美さといったマゾ的な感情はない。彼らが何かと半裸であるのも、肉体美の誇示による男性性の強調でしょう。ビーフケーキの類ですな。つまり、この野郎どもの受難の果ては、あくまでも「英雄として生還」するか「英雄として殉死」するのであって、決して「奴隷の悦びに目覚め」たりはしない。
 で、現実ではこーゆー男ってのは概してホモフォビックなもんですが、じっさい内容紹介で「君のホモ的傾向は?」とか「俺はホモだった!」なんてのがある。彼らが自分をホモセクシュアル、すなわち「彼らが考えるところの、本物の男ではない男」だと、周囲から思われることへの警戒心が強いことが、ここいらへんから伺われます。
 こういうタイプは、現実に身近にいると鬱陶しいし厄介な存在ですが、マイSM的には実にオイシイ被虐者。そーゆー男が、その盲信ゆえの苦難に陥り、抵抗空しく男の矜持を徐々に打ち砕かれていく……ってのが、私の大好きなパターン(笑)。つまり、これらの絵と私のマンガは、方法論的には極めて近しいんですな。ただ、辿り着くべきゴールが違うってだけで。
 また実際のところ、マッチョイズム云々を抜きにしても、図像表現的には立派にノンケの男マゾものとして通用するイラストも少なくない。船乗りが女護ヶ島で縛られて生贄にされそうになっていたり、捕虜が収容所で美人看守から鞭打たれていたり。ハーケンクロイツの烙印を押されていたり、タトゥーの入った生皮を剥がれてランプシェードにされそうになっているなんてゆー、まんまイルゼ・コッホみたいな図もある。
 個人的に特に秀逸だと思ったのは、これは”Men’s Adventure Magazines”の方に載っていたんですが、収容所で男の捕虜二人が、二人の女性兵士に人間馬として騎乗され、鞭打たれながらレースだか騎馬戦だかを競わされているヤツ。ノンケの馬系のマゾ男さんには、ぜひ見ていただきたい逸品。で、これ実は加虐者側が日本軍なんで、私的にはそこいらへんも逆ヤプーみたいで面白さ倍増。

 画集としては、どちらも様々なカバーアートを、フルカラーでたっぷりと見せてくれます。嬉しいことに、どちらも表紙からの複写だけではなく、現存している原画から新たに分解した図版も少なからずあり。リアリズム的に上手い画家が多いので、こうした画質の劣化のない図版の数々は、大いに見応えがあります。上半身裸の兵士が、雄叫びを上げながら銃剣構えて突進してる絵なんて、もう男絵的にすこぶるカッコ良くって、このまま額に入れて飾りたいくらい。
 二冊で重複する表紙絵も多いので、どちらか一冊と言われたら、ページ数や収録図版の数で勝っている”Men’s Adventure Magazines”の方がオススメかな? 版元のTaschenは、日本支社もあるから店頭で見かける機会も多いかも。Taschenのサイトで、ちょっとだけ内容見本も見れます。ただ、ここで見れるサンプルには、私的にオイシイ図版は全く入っていないんだけどね(笑)。
 原画からの図版に関しては(おそらく)ダブりはないので、マニアや好き者だったらぜひ二冊とも揃えたいところ。値段は、”It’s A Man’s World”が$29.95、”Men’s Adventure Magazines”が$39.99と、後者の方が分厚い分10ドルほど高価。造本や印刷クオリティは、どちらも負けず劣らずの高レベル。
 二冊とも、お好きな方には自信を持ってオススメできる画集ですぞ!
“It’s a Man’s World” (amazon.co.jp)
“Men’s Adventure Magazines” (amazon.co.jp)

ソード&サンダル映画ドイツ盤DVDボックスいろいろ

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ソード&サンダル映画のドイツ盤DVDボックスが幾つか溜まってきたので、まとめてご紹介。個々の作品の詳しい感想は、また改めて次の機会に。既に見たことがあるものに関してのみ、簡単な備考を併記しました。
なおこれらのボックス、ほぼ全て単品のバラ売りもあるようです。もし「買ってみようかな〜」なんて酔狂な方がおられましたら、ご参考に。(写真をクリックすれば拡大できます)
左上
Black Hill社“Kino Kolossal”(5枚組)
1)スティーヴ・リーヴス主演 ”Aeneas Held Von Troja”(1962)
伊題” La Leggenda di Enea”・英題”The Avenger”
*アエネイアスを主役にしたトロイア戦争もの『大城砦』(1961)(伊題”La Guerra di Troia”・英題”The Trojan Horse”)の続編。ヴェルギリウスの叙事詩との関係は、未読のため不明。Movies Unlimitedで米盤DVDも売っていますが、画質が粗悪な上にDVD-Rなので要注意。因みに『大城砦』の米盤DVDは、Trimark Home Video社の”The Adventures Of Hercules”ボックスに収録。こっちはトリミング版ではありますが、画質は及第点、英文字幕も付いている佳良品です。
2)ゴードン・ミッチェル主演 ”Achilles Der Zorn Des Kriegers”(1962)
伊題”L’Ira di Achille”、英題”Fury of Achilles”
3)マーク・フォレスト主演 ”Maciste Held Von Sparta”(1964)
伊題”Maciste, gladiatore di Sparta”、英題”The Terror of Rome Against the Son of Hercules”
4)マーク・フォレスト主演『豪勇ゴライアス』 ”Die Rache Des Hercules”(1960)
伊題”La Vendetta di Ercole”、英題”Goliath and the Dragon”
*Something Wired社からノートリミングの米盤DVDが発売されていて、これはオマケも充実した好ソフト。ただし画質は独盤の方が上。
5)エド・フューリー主演『獅子王の逆襲』 ”Ursus Im Tal Der Lowen”(1961)
伊題”Ursus nella valle dei leoni”、英題”Ursus in the Valley of the Lions”
*追記*
全ディスク共通の映像特典として、ソード&サンダル映画の歴史を綴る58分のドキュメンタリーTV番組”Kino kolossal – Herkules, Maciste & Co”(2000)を収録。色々な映画のハイライト・シーンの他に、すっかりお爺ちゃんになったブラッド・ハリスやゴードン・ミッチェルのインタビューが見れます。他にもリッカルド・フレーダやモイラ・オルフェイ、フッテージの流用を含めると、シルヴァ・コシナやセルジオ・コルブッチ、更にはセルジオ・レオーネやらレニ・リーフェンシュタールやらアーノルド・シュワルツェネッガーまで登場。独語オンリーなんで話の内容はワカンナイのが、すっげー悔しい(笑)。
右上
Marketing Film社“Monumentalfilm Box”(3枚組)
1)ブラッド・ハリス主演 ”Die Ruckkehr Der Straksten Gladiatoren Der Welt”(1971)
伊題”Il Ritorno del Gladiatore piu Forte del Mondo”
*内容はここで紹介済み。
2)ゴードン・スコット主演 ”Die Schlacht Der Gladiatoren”(1964)
伊題”Coriolano: eroe senza patria”、英題”Coriolanus: Hero Without a Country”(“Thunder of Battle”)
3)マッシモ・ジロッティ主演 ”Judith Das Schwert Der Rache”(1959)
伊題”Giuditta e Oloferne”、英題”Head of a Tyrant”
*非マッスル系。ユディトとホロフェルネスの話。
左下
e-m-s社“Cinema Colossal 1 – Rome”(3枚組)
1)ブラッド・ハリス主演 ”Die Letzten Stunden Von Ponpeji”(1962)
伊題”Anno 79 : La Distruzione Di Ercolano”
2)マーク・ダモン主演 ”Der Sohn Von Caesar Und Cleopatra”(1964)
伊題”Il Figlio di Cleopatra”、英題”Son of Cleopatra”
*非マッスル系ですが、鞭打ちシーンあり。
3)ベリンダ・リー主演 ”Messalina”(1959)
伊題”Messalina Venere imperatrice”、英題”Messalina”
*メッサリーナの話なんで、当然主演も女性。
右下
e-m-s社“Cinema Colossal 2 – Hero”(3枚組)
1)ブラッド・ハリス主演『ヘラクレスの怒り』 ”Samson, Befreier Der Versklavten”(1962)
伊題”La Furia di Ercole”、英題”The Fury of Hercules”
*今回これを見て、前にここで紹介した”Samson”と、この『ヘラクレスの怒り』は、同じ制作年、同じ監督、同じキャスト、同じセットながら、内容は全く違う別の作品だということが判明。こっちの方がいいです(笑)。
2)ダン・ヴァディス主演 ”Hercules, Der Starkste Mann Der Welt”(1964)
伊題”Il Trionfo di Ercole”、英題”The Triumph of Hercules’
*米盤DVDはTrimark Home Video社の”The Adventures Of Hercules”ボックスに収録。画質は許容範囲内、英文字幕付きの悪くないソフトですが、トリミング版なのが残念。画質も独盤の方が上。
3)アンソニー・クイン主演 『侵略者』(『侵略者アッチラ』) ”Attila, Die Geissel Gottes”(1954)
伊題”Attila” (“Attila, il flagello di Dio”)、英題”Attila”
*非マッスル系ですが、監督は『ヘラクレス』『ヘラクレスの逆襲』のピエトロ・フランシスキ。共演はソフィア・ローレン、イレーネ・パパス。
e-m-s社の”Cinema Colossal”シリーズは、今後も”3 – Saga”、”4 – Eros”、”5 – Mars”と発売が続く予定。
具体的な収録作品はまだ不明ですが、同社のカタログから推察するに、カーク・ダグラス主演の『ユリシーズ』、セルジオ・レオーネ監督の『ロード島の要塞』、リチャード・ハリソン主演の『七人のあばれ者』、カーク・モリス主演のアトランティスもの、レックス・バーカー主演のアラブもの、ロジャー・ムーア主演の『サビーヌの掠奪』なんかが入るんじゃないかと思います。

最近買ったCDあれこれ

John Foxx + Harold Budd “Translucence + Drift Music”
 アンビエント系コンテンポラリーの大御所Harold Buddが、初期のUltravoxのリーダーだったJohn Foxとタッグを組んだ二枚組アルバム。
 Harold Buddは、いつも残響タップリのピアノが物寂しげにポロンポロン鳴り響くとゆー、良く言えば一貫した、意地悪に言えばどれもこれも同じの、キョーフの金太郎飴アーティスト。正直私も、”Lovely Thunder”や”White Arcades”あたりでいい加減に飽きちゃって、以降はあまりちゃんとは聴いていなかったんですが、久々に聞いたこのアルバムは、まあ「相変わらず」ではあるものの、「でもいいじゃん!」って感じでした。
 二枚のうち”Translucence”パートは、ピアノ+残響でメロディを生かしつつも、音に隙間をタップリ残している、比較的シンプルな構成。叙情的でもあり、7曲目の”Here And Now”なんか、ちょい泣ける感じもあり。もう一枚の”Drift Music”パートは、感傷や情緒を刺激するメロディ要素は後退し、空間に隙間なく柔らかな電子音響が満ちているような、よりエアリーで拡がりのある感じ。どちらもそれぞれ気持ち良いですが、今の私の気分だと後者の方がより好みかな。
 過去の作品と比較しても、まあソロの”The Pavilion of Dreams”や、Brian Enoと組んだ”The Plateaux of Mirror”あたりは別格としても、同じくEnoと組んだ”The Pearl”や、Cocteau Twinsと組んだ”The Moon & The Melodies”、ソロ作だと”The Serpent (in Quick Silver) / Abandoned Cities”あたりの良作と比べても、まったく遜色ないです。
 しかし、実は私、John Foxxのソロって”The Garden”くらいしか聞いたことなかったんで、いつの間にこんな「ど・アンビエント」な人になったのかと、ちょっとビックリでした。どうやら”Cathedral Oceans, Vol. 1-2″というソロも本作と似た傾向らしいんで、今度トライしてみようかな。
Harold Budd “La Bella Vista”
 で、こっちは同じHarold Buddから、いつもの残響を取ったらどうなるかという実験作……かどうかは判りませんが、要するに音を加工していないソロ・ピアノ集といった趣です。まあシンプルにして美麗な小品揃いだし、「おや、これがあのHarold Buddかい」という面白さもありますが、ぶっちゃけそれ以上でも以下でもないなぁ。でも、静かでキレイなピアノ・ソロが聞きたくて、しかし情緒を刺激されるのは鬱陶しい……なんて気分のときには重宝するかも。
Focus “Moving Waves”
 これは中高生の頃に良く聞いていたオランダ産のプログレで、久々に聞きたくなったら廉価盤があったので買ってきました。
 このアルバム、良くも悪くも1曲目の”Hocus Pocus”の印象がキョーレツでして、他の曲の印象が薄れちゃっていたんですが、久々に聞いてみると、メロトロンとアコギで「アランフェス」ばりの叙情を聞かせる2曲目”Le Clochard”とか、ほとんどまんまドビュッシーみたいな4曲目”Moving Waves”とか、なかなかの佳曲。アナログ当時にB面1面を占めていた大曲”Eruption”は、23分強という長尺の割りには、なんだかちっとも記憶に残らない曲だったんですが、これは改めて聴き直してみても、まあ所々面白い要素はあるものの、全体としてはやはり散漫でイマイチ。
 因みに「キョーレツな印象」な1曲目”Hocus Pocus”がどんな曲かと言いますと、イントロでエレキギターがギャンギャギャギャンと鳴り響き、そこにズンドコリズムが加わって、更にヨーデルが「ヒャリララヒャリラララッパッパ〜」が高らかに響くとゆー、何だかカッコいいんだか悪いんだかワカンナイ曲(笑)。これに似た曲って、ちょっと他に思い付かないなぁ。大好きだ(笑)。
 そうそう、4曲目の”Focus 2″ですが、昔は別のアルバムに入っていた”Focus 3″が好きだったけど、今になって改めて聞くと、この”2″の方が好きかも。でもチョッピリ、何だか泣き節タップリのフュージョンみたいだな〜なんてことも思いましたが。
 で、同じく昔好きだったフュージョンも聞きたくなり、Chick Koreaの”The Mad Hatter”とかCalderaの”Dreamer”とかのCDがないかな〜と探したんですが……どちらも玉砕。うむむむ。でも、Chick Koreaの”The Leprechaun”と”My Spanish Heart”、Calderaの1st(これは聞いたことないけど)はあったんで、とりあえずそっちを注文。
スパービューティーミカリン+K with キューティーモンすたーズ『O・SU・SO・WA・KE〜プルプルンのキュッのボン!』
 叶美香のマキシ・シングル。正確には友人への誕生日プレゼントとして買ったんですが、何だか昔の歌謡曲ちっくで気に入っちゃいまして。で、気がつくと無意識に鼻歌で歌ってたりするんで、人前でやらかさないように気を付けなきゃ(笑)。
 でも、こーゆーのは『マツケンサンバ2』同様に、やっぱDVD付きで出して欲しかったなぁ。

『さらば美しき人』

さらば美しき人 [DVD] さらば美しき人 (1971) ジュゼッペ・パトローニ・グリッフィ
“Addio, Fratello Crudele” (1971) Giuseppe Patroni Griffi

 個人的なトラウマ&偏愛映画。先日、目出度く国内盤DVDが出たので、早速購入&久々の鑑賞。
 中世イタリア、美しい兄妹の近親相姦と、それが巻き起こす悲劇を描いた物語。
 原作は、シェイクスピアと同時代の劇作家ジョン・フォードの戯曲『あわれ彼女は娼婦』。何でも「裏・ロミオとジュリエット」とも呼ばれるエリザベス朝演劇の名作らしいですが、これって、男優ルパート・エヴェレットの自伝的ゲイ小説『哀れ、ダーリンは娼夫?』のタイトルの元ネタでもあるんですな。
 とにかく、まず絵作りが魅力的。いかにもクラシック然とした古城の佇まいと、そこに配置されたモダン・アートのオブジェを思わせるようなセットの対比は、いま見てもなかなか新鮮。騙し絵のようなベッドの天蓋、砂丘に立ち並ぶ白い旗、水に浮かぶ城、馬を乗せた筏……ちょっとピーター・グリーナウェイの諸作とか、勅使河原宏の『利休』なんかに通じるモノがあります。
 カメラは、一連のベルナルド・ベルトリッチ監督とのコンビを通して、今や完全に名匠として定着した感のあるヴィットリオ・ストラーロ。画面の構成要素が極端に少ないながら、完璧な緊張感を保つコンポジション、光と影を生かした人物の陰影、抑えた色調……ああ、なんて美しいんだ。
 哀感を帯びた古楽のような、美しく魅力的な音楽を付けているのは、エンニオ・モリコーネ。この古典悲劇に重厚さを与えるのに、一役買っています。ところどころ、いささか饒舌に過ぎる感も否めませんが、まあそういう部分もモリコーネの魅力のうちかな。
 監督のジュゼッペ・パトローニ・グリッフィは、他には『スキャンダル 愛の罠』を見た記憶がありますが、これはさほど面白くなかったような……。女が男を監禁する話なんですが、ラウラ・アントネッリが出てたってコトと、ベッドに縛られた男の前で、少女がキーボードを狂ったように弾きまくるってゆー、ヘンなシーンしか覚えていません(笑)。
 さて、映画は前述したような魅力的な世界の中で、近親相姦の悲劇が、ストイックなまでに淡々と、しかし情熱を秘めながら描かれていきます。
 そしてクライマックス、ついにその情熱が爆発……っつーか暴発するんですが、そのコントラストのスゴさといったら! もう私にとってのトラウマ映画となった由縁が、このクライマックスとエンディング。
 興味を削がないように詳述は避けますが、私のマンガがお好きだと言ってくださる方や、残酷美やら鮮血の美学なんて言葉に心惹かれる方、映画の後味が悪くてもぜんぜん平気っていう方だったら、是非ご覧になっていただきたい。
 初見時、タイトルとスチル写真から「ロマンチックでちょっとエッチな悲恋ものかな〜?」なんて軽い気持ちで見ていた私は、このクライマックスで、もう絶句。幕切れの凄まじさにも、ズッシ〜ンと打ちのめされて、以来、忘れじの一作となった次第でして。
 久々に再見したら、最初に見たときほどのダメージはありませんでしたが、それでも今回が初見だった相棒は「……怖すぎ」と申しておりました(笑)。
 悲劇の妹を演じるのは、シャーロット・ランプリング。まだ二十歳ということもあり、透き通るような美しさ。まあ、若いわりには既に口角にシワがあったりしますけど、個人的にご贔屓の女優さんだから気にしないもんね(笑)。いつもと変わらぬ謎めいた魅力も漂わせながら、この作品では、まだ娘っぽい初々しさが残っているのもステキ。
 脇を固める三人の若い男たち、兄役のオリヴァー・トビアスと、結婚相手のファビオ・テスティと、修道士役のアントニオ・ファルジも、それぞれの役割に合った魅力を見せてくれます。特に前者二人はヌード・シーンもあり、カメラの良さも相まって、そのスジ筋ボディが実に美しい。腰布一丁で井戸の底でのたうつオリヴァー・トビアスと、上半身裸にピチピチタイツで裸馬にまたがるファビオ・テスティには、裸身の美しさにフェティッシュな魅力も加わって、共に初見の際にかなりドキドキさせられましたっけ。皆さん、フルフェイスのおヒゲさんってのも、私的には嬉しい限り(笑)。
 父親役のリク・バッタリアは、愛しのスティーヴ・リーブス様と『サンドカン総攻撃』で共演アリってのが、個人的なチェック・ポイント(笑)。
 追記。オリヴァー・トビアスはチ○コも見せてくれます。今回のDVDでは、嬉しいことに無粋なボカシもなし。
 このシーンを偏愛する私は大ヨロコビですが、さて、皆様はどうお感じになられるか、まあ見てのお楽しみということで(笑)。
 もひとつ追記。くれぐれも、同じシャーロット・ランプリング主演の映画『さらば愛しき女(ひと)よ』と、お間違えのなきようにね(笑)。こっちはレイモンド・チャンドラー原作のハードボイルドものですんで。

『スパルタカス』(TV版)

スパルタカス [DVD] 『スパルタカス』(2004)ロバート・ドーンヘルム
“Spartacus” (2004) Robert Dornhelm

『スパルタカス』というと、どうしても1960年版(スタンリー・キューブリック監督作)と比較したくなってしまうのが人の情。でもまあ、TVムービー相手に、それは酷ってもんだよなぁ。
 特にスケールに関しては、1960年版にはあの戦闘シーンがあるからねぇ。丘陵に整然と居並ぶモブのスゴイこと。あれを見たら、この映画に限らず、大概のスペクタクル映画は影が薄くなっちゃう。俳優陣も、あっちは主演のカーク・ダグラスはまあ置いといても(何でじゃ……って、あんまり好きじゃないのよ、私)、他はローレンス・オリヴィエ、チャールズ・ロートン、ピーター・ユスティノフ、ジーン・シモンズなんつー、錚々たる面子だもんなぁ。比べるだけ酷です。
 とはいえ、この2004年版が出来が悪いとか、そーゆーわけでは決してなく、これはこれで充分に楽しませてくれる内容です。
 1960年版は、スケール感のある堂々たる大作ではあるものの、エピック的な単純で骨太な部分と、近代的な人間の内面を描く部分が、いささか乖離を見せいている感が否めない、というのが私的な印象。それに比べると、今回のバージョンは全体的にこぢんまりしている分、逆に人間ドラマ的な部分に焦点がカッチリ合ってる。圧倒的なパースペクティブとか、物量のスゴさといった、スペクタクル映画的な興奮度には欠けるが、その分、ドラマ的な面白さがタップリあります。
 鉱山奴隷だったスパルタカスが剣闘士養成所の所長に目を付けられて買い取られ、剣闘士としての訓練を受けつつ、やがて反乱を起こしてローマに戦いを挑むといった前半の展開は、けっこう細かな部分も含めて1960年版とほぼ同じ。これはきっと、原作としてクレジットされているハワード・ファストの小説が、こういうお話なんでしょうな。
 後半、スパルタカスが反乱軍を興して以降は、若干展開が異なってきます。今回は反乱軍対ローマ軍の細かな戦闘が幾つもあり、そこにローマ側のパワーゲームが絡んできたり、反乱軍の内部も、単細胞のガリア人とか、思慮深いユダヤ人とか、ベビーフェイスだけど脱ぐとスゴいマッチョとか(笑)、キャラが立っているせいもあって、なかなか面白く進めてくれる。ここいらへんは、ちょっと『ブレイブハート』みたいな感じ。
 あとまあ、あんまりネタバレになるのもアレなので詳述は避けますが、ラストもところどころちょっと変わっている。まあ、いきなり三角関係みたいな話になっちゃって「???」となるあたりは同じですが(笑)。冒頭からしつこく出てくるアレは、絶対にラスト・シーンの伏線だと思ったのに、それがなかったのは、ちと拍子抜け。
 全体を通して、当然のことながらクラシック作品と比較すると展開のテンポが早いので、冗長さは全くない。ただ、その反面、悪く言えば重厚さには欠けるので、これはもうどちらが好みに合うか、人それぞれでしょう。
 美術やセットは、TVムービーでこれだけ見せてくれるんだから、これはもう充分以上に合格点。細部の汚し等のリアル感などは、逆に昔の映画では無かった味わいだし、アレコレ重箱の隅つついて文句言う必要もないでしょう。
 
 主演のゴラン・ヴィシュニックは、TVシリーズ『ER』に出てた方らしい(実は『ER』を見たことがない私)です。ルックスの方は、若干鼻の穴が目立つのが気にはなるものの(笑)、まあ「GQ」あたりの表紙を飾りそうな、スーツが似合いそうなフツーにカッコイイお方でした。ただ、正直なところ、こーゆーコスプレは似合わないな〜。特に皮鎧の剣闘士スタイルは、肩幅が足りないせいもあって、もう絶望的なまでに似合わない。その余りの似合わなさに、私同様にカーク・ダグラスがあまり好きではない相棒も「う〜ん、これだったらカーク・ダグラスの方がまだマシかも……」なんて申しておりました(笑)。
 仇役クラッススのアンガス・マクファーデンは、どっかで見た顔だと思ったら、同じくTVムービーの『アルゴノーツ 伝説の冒険者たち』(佳品)でゼウス役を演っていたお方ですな。他にも『ブレイブハート』や『タイタス』なんかでお見かけしました。自信過剰で憎々しいんだけどビミョーに小物でもある感じ、悪くないです。でもこの方、今回初めて知ったけど、首の上と下が「別人?」ってくらい雰囲気が違うのね。顔だけ見ると、さほど太っているようなカンジはしないのに、ヌード・シーンでは見事なまでの太鼓腹。思わず、撫で回したくなります(笑)。
 ヒロインを演じるロナ・ミトゥラも、芯の強さと同時に凛とした気品のようなものも感じさせ、なかなか美しくて良うございました。
 アグリッパ役のアラン・ベイツは、これは流石。単純に悪とも善とも言えない複雑な役どころですが、しっかり魅力的に見せてくれます。特にラスト近辺なんか、この人によって映画全体がかなり救われている印象。ただ、エンドクレジットに Dedicated to … の文字が出て、初めて知ってビックリしたんですが、この方、昨年亡くなられていたんですねぇ。個人的に、ケン・ラッセルの『恋する女たち』で魅せられて以来「出てくると嬉しい俳優さん」のお一人だったし、最近でも『ゴスフォード・パーク』やTVムービーの『アラビアン・ナイト』なんかで再会できて嬉しかっただけに、何とも残念であります。そういえば、その『恋する女たち』で一緒に素っ裸でレスリングを見せてくれたオリバー・リードも、同様の史劇『グラディエーター』が遺作になってしまったっけ。う〜む、ちょっとシンミリ。
 その他、前述の「アタシ、脱ぐとスゴイんです」ベビーフェイス君(このコはかなりカワイイ)や、反乱のきっかけとなる黒人剣闘士、その他モロモロ、マッチョ好きには目のご馳走のお方たちも、まあイロイロよりどりみどり(笑)。
 ああ、そういや『エクソシスト ビギニング』に引き続き、これにもベン・クロスが出てたなぁ。こっちは情けない役だった(笑)。
 え〜、責め場についても書いておきましょうか(笑)。
 まず主演のスパルタカス君、冒頭の鉱山シーンで、タコ殴りに鞭打ちの後、磔姿を見せてくれます。鞭打ちは打撃とシンクロして肌に赤筋が走るし、磔は位置がかなり高いことと、両脚が少し開かされていることもあって、この一連のシークエンスはなかなかヨロシイです。カーク・ダグラスみたいに着衣なんて無粋なこともなく、ちゃんと腰布一枚だし。
 また、羞恥責め系ですが、ユダヤ人奴隷剣闘士が、「え〜、ユダヤ人って割礼するんでしょ〜、アタシ、割礼した○○○って見たことな〜い」とヌカすスケベ女に、腰布解いてソレを見せろと強要されるシーンなんぞもあり。私、けっこう好きです、こーゆーの(笑)。
 あと、放火犯が、見せ物として磔で火炙りにされるシーンなんてのもあったっけ。
 ラストの有名なシーンは、現在の技術を生かしてスゴい画面を見せてくれるかと期待していたんですが、残念ながら比較的アッサリ気味。でもまあ、絵面としては悪くなかったけど。
 責め場らしい責め場はこんなもんですが、まあ奴隷剣闘士の反乱の話ですから、鎖に繋がれたり檻に入れられたり、殺し合いをさせられたりするシーンは枚挙に暇がありませんし、男の半裸もふんだんに出てきますんで、そーゆー意味でのお楽しみは盛り沢山です(笑)。
 もう一つ。
 1960年版では、ホモセクシュアルの要素があったことが有名(そのシーンは長らく削除されていたが、現在販売されている「完全版」DVDでは復元されている)ですが、残念ながら今回のヴァージョンでは、そこいらへんの絡みはハナっからいっさいナシ。ソッチを期待すると肩すかし食らいますんで、ご注意をば。

“Retro Stud”

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“Retro Stud” David Chapman
ここんとこ、続けざまにソード&サンダル映画について書いていたら、タイミング良くこんな本を入手。
副題に Muscle Movie Posters from Around the World とあるように、50’s〜70’sのソード&サンダル(+マッスル)映画のポスターをコレクションした画集です。いや〜ン、欲しかったのよ、こんな本(笑)。
版型は約22×21センチでハードカバー。およそ130ページ弱、フルカラーで、スティーブ・リーブス、ゴードン・スコット、レジ・パーク、マーク・フォレスト、ブラッド・ハリス、アラン・スティール、カーク・モリス、ダン・ヴァディス、ゴードン・ミッチェル、etc、etcの主演映画ポスター画像が、これでもか、これでもかってなくらいに収録されております。
もう、どのページめくっても半裸のマッチョばっかりで、皆さん顔を顰めて歯ァ剥いて、鎖をブン廻したり、人や巨石を持ち上げたり、縛られて悶えたり、スパイクの生えた石壁に押し潰されそうで危機一髪だったり……ああ、暑苦しい(笑)。
Around the World と銘打つだけあって、アメリカ、イタリア、フランスあたりはモチロンのこと、ベルギー、スペイン、メキシコはおろか、トルコのポスターまで収録されているのにはビックリ。
見比べると、いろいろお国柄があって面白いです。イタリアは筋肉描写にリキが入っているのが多く、流石にルネッサンスのお膝元ってカンジだし、フランスは変に色が鮮やかだったり筋肉がアッサリだったりして、ロココか印象派ってカンジ(ホントかよ)。トルコのポスターは、なんかキッチュでかわいいなぁ(笑)。日本のポスターがないのは残念。
印刷・造本等のクォリティはおおむね良好ですが、アップの図版の中には、デジタル製版でモアレを回避する際の弊害なのか、微妙な色ムラや粒状感といったノイズが出ているのものがあるのは残念。
あと、図版の収録数が多い反面、どうしてもサイズが小さくなってしまうものもあり、これは仕方ないこととはいえ、でもやっぱり全部でっかいサイズで見たかった……ってのは、ワガママなファン心理か(笑)。
“Retro Stud” (amazon.co.jp)

『ヘラクレス』&『ヘラクレスの逆襲』

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『ヘラクレス』(1957)+『ヘラクレスの逆襲』(1959)ピエトロ・フランシスキ
“Die unglaublichen Abenteuer des Herkules” (1957) + “Herkules und die Konigin der Amazonen” (1959) Pietro Francisci
(前回の続き)というわけで、こういった映画の元祖にして定番中の定番である、スティーブ・リーブス主演のヘラクレス映画二本(因みに伊語原題はそれぞれ”Le Fatiche di Ercole”と”Ercole e Ia Regina di Lidia”、英題は”Hercules”と”Hercules Unchained”)のドイツ盤DVDを買ってみました。二枚組ワンセットのお買い得盤です。
で、結論から申し上げましょう。このドイツ盤、かなり「当たり」でした。
残念ながら現在販売されている米盤は、『ヘラクレス』は退色してディテールも潰れ、傷やノイズも多く、音声も割れ……と、フィルムの状態がかなり悪い。加えて画面も、トリミングで左右が切れたテレビサイズで、クォリティ的には下の上クラス。『ヘラクレスの逆襲』(以下『逆襲』)は、『ヘラクレス』に比べると若干状態が良いですが、それでも暗部の潰れやディテールの再現性には不満が残るし、やはりトリミング版なので、中の中どまり。
対してドイツ盤(あ、もちろんPALです。リージョンは2)は、まず二作共にノー・トリミング版。『ヘラクレス』はスクィーズなしのビスタのレターボックスですが、『逆襲』はシネスコのスクィーズ収録。
画質もかなり良く、『ヘラクレス』の方がいささか劣り、少々ボケている感はありますが、退色もなく、発色は極めて美麗。上の下クラス。『逆襲』は更に状態が良く、米メジャー作品のDVDと比較しても全く遜色のない(いや、下手なクラシック作品と比べると上回るかも)上の上クラス。
この画質の良さは実にありがたく、特に花や泉や海といったロマンチックな色彩設計のシーンや、また、色照明や凝ったセットによる人工美のシーン(ここいらへんは、この二作で撮影と照明を兼任し、後のイタリアン・ホラー映画で名を馳せるマリオ・バーヴァが、その実力のほどをたっぷりと発揮しています)などでは、その差は歴然とします。ホント、『逆襲』のオンファーレの宮殿なんか、こうやって改めて高画質で見ると、もう溜め息が出るほど美しい。まるで、動く「ピエールとジル」です。
音声も割れやノイズはなく、加えてありがたいことに独語と英語の二カ国語収録。ただこの英語音声は米盤に収録されているものとはまた別のバージョンのようで、役者の声も違うようだし(独盤収録の英語音声は、米盤と比べるとリーブスの声が少し高め)、セリフの内容が変わっている部分もありました。
一つ残念なのは、独盤は米盤よりランニング・タイムが短いこと。
『ヘラクレス』は、米盤が105分なのに対して、独盤は88分と20分近く短い。『逆襲』も、米盤の98分に対して、独盤は90分と、これまた10分近く短い。
どこがどうカットされているのか、厳密に比較していないので詳しくは判りませんが、『ヘラクレス』をざっと見て気付いたところでは、イフィトス(イフィト)がライオンに殺された後ヘラクレスがシビラの元に再度赴くシーンと、アルゴ船の出航前にヘラクレスとイオレ(ヨーレ)が噴水の前で諍うシーンが、丸々カット。特に前者は、雷雨の中でヘラクレスが父ゼウス(ジュピター)に呼びかける、いわば「見得を切る」良いシーンなので、ここがないのはかなり残念。他にも、細かいところであちこちつままれているかも知れません。
また、オープニング・クレジットのデザインも違うし、米盤にはあったエンド・クレジットが、独盤にはない等の違いもありました。もっともこれらはどちらがオリジナルに近いのか、日本公開当時まだ生まれていなかった私には判りませんが……。
まあとにかく、このランニング・タイムの短さという点さえなければ、ほぼ百点満点のソフトなだけに何とも残念です。
映像特典は特になし。映画の予告編が入っていますが、同じメーカーから出ている新作映画(『バレット・モンク』とか『アンダーワールド』とか……)ばかりで、『ヘラクレス』や他のソード&サンダル映画とは何も関係なし。
ただ、『逆襲』の米国版オリジナル・ポスターのレプリカ(ジャケットに使われているのと同じ図柄で、およそB3サイズ)が、オマケに付いていまして、これはちょっと嬉しいかも。折り畳まれて、パッケージの中に入っています。
何だか映画の内容についてはちっとも触れていませんが、とにかく、これらの映画で見せるスティーブ・リーブスの「神のごとき美しさ」は、この後ゾロゾロ出てきた他のフォロワーとは確実に一線を画していますし、現代に至るまで比肩する男優はいない、と、個人的には考えております。動くギリシャ彫刻というものがあるとすれば、それはまさにこのリーブスのことでしょう。
フランシスキ監督の、品格がありつつ同時に程良い俗っぽさもある、娯楽大作のツボを押さえた安定した演出も良い。私はこの監督の作品は、これら以外は”The Queen of Sheba (La Regina di Saba)” (1952) を見ただけですが、そのときも同じ印象を抱きました。前述したような画面づくりの美しさや、あるいは神殿の倒壊や合戦などのスペクタクル・シーンも、大きな見所の一つ。まあ、たまに覗くB級っぽさも、それはそれでご愛敬(笑)。
二作通じてのヒロインであるシルヴァ・コシナの、まだセクシー系になる以前の初々しい白いミニスカ姿を楽しむも良し、『ヘラクレス』のアマゾンの女王や『逆襲』のオンファーレのような、どーみてもドラァグ・クィーンにしか見えないほどのゴージャスなオンナっぷりを楽しむも良し。特にオンファーレは、個人的に「あんた『黒蜥蜴』かいっ?!」ってカンジで、もう大好き(笑)。
あるいは、『ヘラクレス』の若い戦士のトレーニング場のシーンで、仄かに香る「フィジーク・ピクトリアル」的なホモ・エロティシズムや、『逆襲』でのヘラクレスとオデュッセウス(ユリシーズ)の関係に、微かなホモ・セクシュアルの気配を感じるのも、お楽しみの一つかも。
いや、実はこういった関係性の描き方とか、前述したようなゴージャスな画面作りとか、女性キャラの描き方とか、とにかくミョーに「そこはかとなくゲイっぽい」んだよな〜、この二作は(笑)。
で、この二作、実は「責め場」は全くありません。いちおうリーブスは敵にとっ捕まったりしますし、いたるところでその怪力っぷり(という名のもとの筋肉美)を見せてはくれますが、いわゆる拷問されたりはしないんですな。ジャケになってるポスター画像も、実はこんなシーンはどこにもありゃしないし(笑)。
とはいえ、やはりこの二作は、ソード・&サンダル(+マッスル)映画の、マスターピースにしてエバーグリーン。必見の名品です。
なのに、国内ではDVDはおろかビデオも出ていないなんてなぁ……(泣)。

“Die Ruckkehr der Starksten Gladiatoren der Welt”

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“Die Ruckkehr der Starksten Gladiatoren der Welt” (1971) Bitto Albertini
ブラッド・ハリス主演のソード&サンダルもの輸入DVD。ドイツ盤なんで、タイトルも独語。伊語原題は”Il Ritorno del Gladiatore piu Forte del Mondo”っつーらしいんですが、英題や邦題は調べたけど判りませんでした。
オハナシは……すいません、ドイツ語なんてチンプンカンプンなんで、サッパリ判りません(笑)。
ともあれ舞台は、キリスト教が迫害されていた頃のローマ。迫害されるキリスト教徒を庇った軍人(タイトルにはグラディエーターとあるけど、そんなカンジはしなかったなぁ)が、政敵に陥れられて無実の罪を着せられたり、山賊(だと思う)の一人を味方に付けて暴れたり、ローマとゲルマン人(だと思うんだけど)の戦いがあったり……う〜ん、やっぱりよーワカラン(笑)。まあ、とにかくイロイロあって、大戦闘の末に仇敵を倒して、城を落として「いい人たち」を助けて万々歳。
戦闘シーンは、モブも多いしスケールもけっこうでかいし、なかなかの迫力ではありますが、おそらくこれは、他の大作のフッテージの流用だろうなぁ。メイン・キャラとモブが、同一画面で絡まないしね。だから、クライマックスはせっかく大戦闘シーンなのに、カンジンの仇敵を倒す場面は、誰もいない野っぱらでタイマン勝負(笑)。
主演のブラッド・ハリスは、今回はヒゲ全くナシのツルツル顔なんで、案の定、ぜんぜんイケませんでした(笑)。肉体の方も、この間の”Samson”から十年後に撮られた映画のせいか、残年ながらかなり萎んじゃっていて、お肌の方もしなび気味。まあそれでも、マッチョはマッチョなんですけどね。
仇敵を演じるジョン・バラクーダことマッシモ・セラートは、このテのソード&サンダル映画だと、ミッキー・ハージティ&ジェーン・マンスフィールドというオカマウケ必至の夫婦(何故だか判らない方は、ジェーンのことをググって調べてね。その生き様を知ったなら、例え主演映画は一本も見たことなくっても、オカマ心の持ち主ならばファンになること間違いなしだから)が主演した”The Loves of Hercules”(「B級もここまでいけば天晴れ!」ってなカンジの爆笑映画です)の仇役なんかで見覚えがありますが、他にもイロイロ出ているみたいですね。ソード&サンダル以外でも、ニコラス・ローグの『赤い影』(大好き!)に出てたなんて……う〜ん、ちっとも覚えていない(笑)。
さて、お楽しみの責め場の方ですが、この映画では一カ所だけです。
DVDのジャケット(オリジナル・ポスターの図柄らしい)にもなっている、両手首を縄で縛られ、左右から馬に引っ張られる「馬裂き」シーン。まあ、このテの映画では、もう何度見たか判らないくらいお馴染みの責め場ですが、ハリス君、なかなか熱演していてけっこうヨロシイ。筋なんかギンギンに浮かび上がって、表情も苦しそうで迫力あります。
また、このシーンの前には、腰布一丁でセント・アンドリュース・クロス(X字刑架)に磔になっているショットが(短いけど)あるし、馬裂きの後にも、ぐったりとなったハリス君を、兵士たちが左右から押さえて、腹にパンチ、棒きれでタコ殴り、地面に倒れたところを蹴っ飛ばす……なんてシーンが続くのもヨロシイ。
全編通して、ハリス君が肌を見せるのはここオンリーだけど、出し惜しみしただけあって(そうかぁ?)、そう長いシーンではないにも関わらず、満足度はけっこうあります。それをポスターにするんだから、まあ制作者も観客が何を見たがっているのかはお判りのようで。私自身、まんまとそれにつられてジャケ買いしちゃったわけだし(笑)。
ドイツ盤なんで、当然NTSCではなくPALのDVDです。リージョンは2。画像サイズはノートリミングで、スクィーズなしのワイド、レターボックス収録。音声は独語吹き替えのみで、おそらく音楽も差し変わってるっぽい。字幕なし。特典は映画のスチル数点&オリジナル・ポスター画像のスライド・ショー。スチルの方はモアレが出ているので、印刷物からのスキャンっぽいですな。
画質の方は、かなり良いです。色味は若干黄色がかっていますが、退色はそれほど目立たず、充分許容範囲内。ディテールも鮮明で、暗部のツブれもなし。まあ贅沢を言えばきりがないけど、これならほぼ問題なしのクォリティと言えるのでは。上の下ってとこでしょうか。
さて今回の買い物で、「ひょっとしてドイツ盤のソード&サンダル系DVDは、フランス盤同様に、画質的に比較的ハイ・クォリティ揃いかも?」と味をしめたので、今後は集中してドイツ盤をいくつか購入してみる予定。ドイツ語わかんないクセに(笑)。