“Свои (Svoi / Our Own)”

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“Свои (Svoi)” (2004) Dmitri Meskhiyev
(アメリカ盤DVDで鑑賞→amazon.com

 2004年製作のロシア映画。英題”Our Own”。同年のモスクワ国際映画祭で最優秀作品賞を受賞。
 二次大戦の最中、ドイツ占領下のソ連東部で、脱走した3人のロシア人捕虜を巡る男泣き系ドラマ。

 1941年、ドイツ占領下のソ連東部(おそらくウクライナ)、ドイツ軍の捕虜となった大勢のロシア人の中から、初老の司令官、中年の人民委員、青年狙撃兵の3人が脱走し、近在の青年狙撃兵の実家がある村に逃げ込む。
 狙撃兵の父親は3人を納屋に匿うが、しかし既に村にはドイツ軍への内通者がいた。
 3人はまず、自分たちを殺しにきた男を返り討ちにするが、次にドイツ軍のために動いているロシア人の警察隊が、3人を探しに村へやってくる。しかもその長官は、青年狙撃兵とは恋人を巡って争う恋敵の男だった。
 その捜査をやり過ごした3人は、武器を手に入れるために、警邏中のドイツ兵を襲う。しかし、殺したドイツ兵の死体が発見され、犯人を捕らえるために近在の村から人質が集められ、狙撃兵の姉妹も捕らえられてしまう。
 狙撃兵の父親は娘を釈放してくれるよう警察に交渉に行くが、警察長官は彼の息子と恋敵の関係にあるので、他の人質のように賄賂が通用しない。
 父親は息子を守るため、そして娘たちを救うために、3人と共に警察長官を暗殺することを決意するのだが…といった内容。

 ストーリー自体はシンプルで、全体的にも比較的地味な作品ではあるんですが、冒頭、どこか長閑な雰囲気で始まり、それが軍の侵攻で一気に恐ろしい殺戮の場と化すコントラストがスゴい。この場面の容赦ない描写のおかげで、以降の「何が何でも生き延びる!」というストーリーの軸に、ガッチリ芯が通っています。
 そして、こういったストーリーを軸にして動き回るそれぞれのキャラが、決して高潔な英雄とかではなく、殺されないために軍服を脱いで民間人のふりをするわ、納屋に隠れながらも羽目板の隙間から外を覗き見て、女たちの太腿にハアハアするわ、襲撃が成功するとガキみたいにはしゃぎ回るわ、身に危険が迫ると泣いて命乞いをするわ……と、思いっきり生臭い人間たちなのが良い。
 そういった連中たちのサバイバル〜アクション・ドラマで、それがクライマックスに向けて、父子だの仲間だの愛国心だのといった「泣き」系のドラマへと盛り上がっていくので、これはなかなかグッときます。
 ただ愛国心に関しては、これはおそらく現在のロシア人にもアピールするだろうし、前述したモスクワ国際映画祭での受賞の一因という気もするんですが、それをソ連東部を舞台にしてウクライナ人俳優のボグダン・ステュープカを使って語るあたりは、ちと政治的な意図が感じられなくもない……かなぁ?

 配役も実に良いです。
 まず前述したように、狙撃兵の父親に2009年版『隊長ブーリバ』の主役だったボグダン・ステュープカ。司令官は“Край (The Edge)”の主演セルゲイ・ガルマッシュ。人民委員は『ナイト・ウォッチ』『デイ・ウォッチ』『提督の戦艦』の主演コンスタンチン・ハベンスキー。青年狙撃兵は『第九中隊(アフガン)』で(確か)「巨匠」役だったミハイル・エフラノフ。警察長官も同じく『第九中隊(アフガン)』のフョードル・ボンダルチュクという布陣。
 村の女たちも、狙撃兵と恋仲の娘といい、司令官といい仲になる少しトウのたった隣家の娘といい、ちっとも美人じゃないんだけれど、いかにもロシアの農家の女といった土臭さや逞しさがあって説得力大。

 戦時下の男のドラマとはいえ、必ずしも痛快アクション娯楽作というわけではなく、民謡などのうら寂しい音楽も相まって、ペーソスや哀愁なんかも漂っており、長閑な可笑しみもあれば、容赦ない残酷もあり。ここいらへんは好みが分かれるところだとは思いますが、個人的には、渋い小品ながらもなかなかの見応えという印象。
 作品自体のクオリティも高いので、題材に興味のある人なら見て損はないと思います。
 予告編が見つからなかったので、哀愁漂う音楽も魅力的なタイトル・シークエンスのクリップ。