『サウナのあるところ』”Miesten vuoro (Steam of Life)”

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“Miesten vuoro” (2010) Joonas Berghäll & Mika Hotakainen
(フィンランド盤DVDで鑑賞、英アマゾンで英語字幕付きDVD入手可能→amazon.co.uk

 2010年製作のフィンランド映画。英題”Steam of Life”。
 サウナで身も心も解きほぐされた男たちが、悲喜こもごもの様々な個人史を率直に語る様子を、美麗な自然描写を交えて描いたドキュメンタリーで、同年のアメリカのアカデミー賞、外国語映画賞フィンランド代表作品。

 サウナ発祥の地フィンランド。我々日本人の感覚からは想像もつかないほど、いたるところにサウナがあり人々の生活に密着している。
 そんな同地で、工場労働者、林業従事者、高齢者、元犯罪者、軍人、ホームレス、等々、様々な男たちが、自分の気持ちや過去を赤裸々に語る。それぞれのエピソードの合間には、フィンランドの美しい自然や、同国の各地で見られる様々な仰天サウナの光景などが挿入される。
 そして男たちの語る悲喜こもごもの話は、やがて汎的な人生哲学へと繋がり、そして感動的なエンディングに……といった内容。

 いや、これはいい!
 サウナ風呂の中で裸の男たちが思い出話をするという、ホントそれだけの映画なんですが、ラストはもうウルウルに……。
 テーマとしてはおそらく、サウナの持つ人の精神を解放する力。よって語られる話も、家族の喪失や人生の挫折等、かなりシビアだったり重かったりする内容が多め。しかし同時に絶妙なユーモアも随所に挟まれ、加えて映像は実に美麗で、特に自然描写が詩情たっぷりの仕上がり。
 そんな中から、次第に「面白うてやがて悲しき」人の世の常々が浮かびあがってきて、そしてラストで一気に感動で揺さぶられて泣かされる。
 いや、いいわ、これ!

 ただ大きなクセがありまして、「サウナに入る男たち」という題材なので、当然のことながら裸の男のオン・パレード。映画の場面の8割方は、サウナに入っているマッパの男。3、4歳の幼児から70、80のオジイチャンまでいますが、とにかくこんなに大量に男の裸が出てくる映画も珍しいかも(笑)。
 でもって大らかな欧州人のことなので、当然ブラブラと丸出しなわけで、うむむむ、素晴らしい映画なので是非日本公開して欲しいけれど、こーゆーのって無修正で公開できるのかしらん……。
 ぶっちゃけ私は、そもそもはスケベ心で注目した映画でして(笑)、感動すると同時に、しっかりソッチの好奇心も満たされました(笑)。

 でも、スケベ心抜きにしても、ホントいい映画。
 前述の感動に加えて、面白場面やユーモアもアレコレ。畑をコンバインが走っていると思ったらサウナだったとか、「孤児を引き取って云々…」とか語っていたオジサンの話が実は……とか、何度かぷっと吹き出しました。
 というわけで、実に静かで内容も地味極まりないドキュメンタリー映画ですけど、感動あり笑いあり詩情ありで、しみじみ良い映画でした。『歌え!フィッシャーマン』とか好きな方だったらマストかと。

 映像の美麗さと、いかに男の裸しか出て来ない映画か(笑)ということは、下に貼った予告編からもお判りかと。
 いや〜、ホント良かったぁ……ラスト、マジで感動します。

 放送コードか何かの関係か、局部に修正が施されたバージョンの予告編も貼っておきます。 先に貼ったオリジナル版と見比べると、修正というノイズが美的効果に及ぼす影響について、その比較ができて興味深し。

《追記》『サウナのあるところ』の邦題で2019年9月14日から日本公開。