『紀元前1万年』

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『紀元前1万年』(2008)ローランド・エメリッヒ
“10,000 BC” (2008) Roland Emmerich
 この監督のことだから、きっと視覚的な見所は色々あるけど、大味な作品なんだろうな〜、と予想していたら……案の定その通り。う〜ん、ちょっとは裏切って欲しいもんだ(笑)。
 まあ、とにかく話の作りが大ざっぱ。
 伏線があっという間に回収されちゃって拍子抜けしたり、かと思えば、延々引っ張るなぁと思っていたら大した意味もなかったり。モノガタリの基本的な構造は、アクション・アドベンチャー系娯楽作品の王道的なものなので、それはそれで好きな系統なんですけど、ここまで細部がアバウトだと、いくら好きでも流石にかばいきれないものがある(笑)。
 あと、途中から話が、個人的に苦手なエーリッヒ・デニケン系にいきそうで、ちょっとビクビクしてたんですが、何とそれについては、オチや種明かしそのものがなかったからビックリ(笑)。
 更にクライマックスの、(ネタバレなので白文字で)死んだヒロインの復活劇の強引さには、もっとビックリ……ってか、愕然。「え〜っと、ここって感動しなきゃいけないシーンなんだろうか???」なんて思いが、つい頭を駆けめぐりました(笑)。
 オマケにトドメが、(またネタバレ)「そして彼らは故郷への長い旅路に云々」とかゆーナレーションの、次のシーンでは、もう故郷に着いちゃうとこ。思わず、一緒に見ていた相棒と同時に、「ええ〜っ、もう???」とスットンキョウな声を上げてしまった(笑)。
 演出は、まあ下手じゃないし、よく言えばテンポが良いんですが、反面、つらつら流れていくだけで、味わいもなければ感動もない(笑)。
 ただ、それでも以前は、もうちょっと映像的なハッタリが効いていたと思うんだけどなぁ。今回のマンモスの暴走とか巨大ピラミッドとかは、別に悪くはないんだけど、それでも『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』や『アポカリプト』を体験した後だと、どうしてもインパクト負けしてしまうのが残念です。
 でも、風景など実に壮大なパノラマを見せてくれますし、砂漠を流れる川面に浮かぶ帆船団とかは、なかなか美しい絵面だった。目で見る異世界という点に限って言えば、充分以上にハイクオリティ。クリーチャー系のVFXも佳良。
 あと、私は「原始人(野蛮人)萌え」属性の持ち主なので、アレコレ文句を言いつつも、実はとっても楽し〜く見られたりして(笑)。
 とにかく、主人公の男がヨロシイ(笑)。ハンサムだけど、ちょいとヘナチョコな香りも漂う好みの顔立ち。ヒゲ付き長髪付き。身体はナチュラル・マッチョ系で、映画後半はほぼ上半身裸。衣装はもちろん、獣皮の腰布……とくりゃ、もうフェチ的な意味でタマリマセン(笑)。
 あ〜あ、これで下手クソなオリジナル・ストーリーなんかじゃなく、このキャラとVFXを使った、エドガー・ライス・バローズの映画化だったら良かったのに。
 ヒロインもなかなか可愛いし、他の仲間キャラも敵キャラも、皆さん外見的には何ら問題なし。内面はカラッポだけど(笑)。
 というわけで、まあ何というか、類型的かつ記号的なキャラが繰り広げる、娯楽アクション・アドベンチャー&スペクタクルという意味では、往年のソード&サンダル映画と同じ香りもあります。
 つまり、ぶーぶー言いつつも、実はけっこう好きです、この映画(笑)。
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