『怪奇な恋の物語』


『怪奇な恋の物語』(1969)エリオ・ペトリ
“Un tranquillo posto di campagna” (1969) Elio Petri

 先日、雑誌で「フランコ・ネロとヴァネッサ・レッドグレーヴが去年結婚した」という記事を読んで、相棒と二人で「え〜っ、なんで今になって?」とビックリしてしまいました。
 だって、この二人が付き合ってたのって、1967年の『キャメロット』で共演したとき。その頃に同棲して、間に子供もできたけど、けっきょく結婚はしなかった。それが30年後に、あらためて結婚したってんだから、まあビックリもしますわなぁ。でもまあ、二人とも好きな俳優さんなので、何となく嬉しい気もします。
 で、そんなこんなでビックリしていたら、久々に見たくなったのが、二人が共演した、この『怪奇な恋の物語』という映画。
 私が、フランコ・ネロの何が好きかっていうと、ぶっちゃけ「顔」です(笑)。
 周囲に言わせると、私はメンクイなんだそうですが(……まあ、否定はしません)、でも、いわゆるツルッとした二枚目ってのはあまり好きじゃない。王子様系とかサワヤカ系には、全く興味なし。メンクイなんだけど、「ちょいワイルド系入ってます」とか、「ハンサムだけど薄汚れてます」とか、「顔は整ってるんだけどギラギラしてる」とか、そんなタイプが好きなんですな。フランコ・ネロは、そこいらへんのツボをモロに押される(笑)。

 で、この『怪奇な恋の物語』なんですが、実はこれは私にとって、長いこと「見たいのに、すっごく見たいのに、それでも見る機会がなかった」幻の映画でした。何でそんなに見たかったのかというと、その昔、芳賀書店から出ていたシネアルバムという本のせいでして。
 このシネアルバムってのは、いわばスターの写真集&フィルモグラフィーみたいなシリーズなんですけど、その、フランコ・ネロ編に載っていたこの映画のスチル写真が、彼が「フルフェイスのヒゲ&パンツ一丁で、椅子に縛られている」とこと、「首にギプスをして車椅子に乗っている」とこと、「ナイフを突きつけられている」とこだったんですな。
 これが男子中学生の股間を直撃しちゃいまして(笑)。覚えたての劣情が刺激されまくり、「死ぬまでにゼッタイに見たい映画リスト」のトップに入っちゃった(笑)。
 上の画像は、そのスチルとは違うんですけど、同じシーンの撮影風景です。……ね、筋肉とかはあんまりないけど、ヒゲモジャ&体毛ボワボワ&ボンデージで、私の描く絵みたいでしょ(笑)。
 でも、なかなか見る機会がなくて、それから20年後くらいに、ようやく覚えたてのインターネット通販で、アメリカ版VHSビデオを発見。大喜びしてそれを注文購入し、念願叶ってようやく見られた……ってないきさつががあります。

 映画の内容は、前衛芸術家が田舎の屋敷をアトリエに借りると、それが幽霊屋敷で、現実と幻想が交錯していく……ってなサスペンス・ミステリー。
 現代的な(あ、当時における、ね)アヴァンギャルド・アートと、古色蒼然としたゴシック・ロマンっつー、いっけん相反するような要素が絡み合い、独特な雰囲気を醸しだしているのが面白い。制作年代を反映して、ちょいとサイケなムードがあるのもいい感じ。音楽も、これまた現代音楽的な前衛系と、スキャットを使ったサイケ・ムードが混在しててステキ。後年、サントラCDを見つけて購入したんですが、その時になって初めて、エンニオ・モリコーネだったと知った(笑)。
 で、目当てのスチル写真のシーンですが、「いつ出てくるんだろ〜?」とワクワクして見ていたら、映画の冒頭、十分足らずのところで、もう「パンツ一丁ボンデージ」は出てきてしまって、ちょいと拍子抜け(笑)。メイン・ディッシュのつもりが、アペタイザーだった、みたいな(笑)。
 でもまあ、そんな下半身絡みは抜きにしても、印象的で好きなタイプの映画です。今回、改めて調べてみたら、イタリア盤DVDが出ているのを発見したので、買おうかどうか思案中。
 ホントはね、日本盤が出てくれりゃ一番いいんだけど、こういうカルトというにはイマイチ地味な、マイナー系のヨーロッパ映画って、なかなかそういう可能性も少ないし……ね。

 あ、しまった、ヴァネッサ・レッドグレーヴについて何も書いてねぇや(笑)。
 とりあえず『肉体の悪魔』と『ジュリア』と『ダロウェイ夫人』の日本盤DVDの発売を祈願。
 あ、ついでに『トロイアの女』も。なんでついでかっつーと、この映画ではヴァネッサ・レッドグレーヴよりも、キャサリン・ヘップバーンとイレーネ・パパスの方がスゴかったから(笑)。