『海賊の王者』

morgan_il_pirata
『海賊の王者』(1961)プリモ・ツェリオ&アンドレ・ド・トス
“Morgan il pirata” (1961) Primo Zeglio & Andre de Toth
 我が愛しのスティーヴ・リーヴス様の海賊映画。そのイタリア盤DVDのご紹介です。因みに英題は “Morgan, the Pirate”。
 イタリア語はさっぱり判らないけど、幸いこれは英語版を見たことがあるし、Goo映画にあらすじ紹介もあるので、内容解説も何とかなりそう(笑)。
 17世紀末、スペイン領パナマ。ヘンリー・モーガン(スティーヴ・リーヴス)は奴隷市場で鞭打たれていたところを、通りがかりの令嬢イネス(ヴァレリー・ラグランジェ)に救われる。しかし、モーガンはイネスの高慢さに反発、何やかんやあって、今度はガレー船の漕ぎ手にされてしまう。が、反乱を起こして船を乗っ取り、海賊として名乗りをあげる。それから海賊モーガンは、他の海賊の捕虜になっていた令嬢イネスを救い出したり、英国の対スペイン戦に協力したり、船を沈められて死んだかと思ったり……などなど、まあ波瀾万丈、恋あり戦いあり女装あり(笑)の、古式ゆかしき痛快冒険活劇モノです。
 監督は二人とも良く知らなかったので調べてみたら、あら、アンドレ・ド・トスって、ヴィンセント・プライス主演のリメイク版『肉の蝋人形』(1953)を撮った人だったのね。(因みにこの『肉の蝋人形』、今年また『蝋人形の館』としてリメイクされましたね。パリス・ヒルトンが出演してるとか、変な方で話題になってたけど)フィルモグラフィーを見る限りでは、西部劇とか冒険モノとか史劇とか戦争モノとか、アクション系の痛快娯楽作を撮った職人監督さんなのかな。プリモ・ツェリオの方も、海賊映画や史劇などの娯楽作を撮った人らしいけど、残念ながら未見のものばかり。
 で、本作ですが、とにかく話がテンポ良くパカパカ進むので、肩の凝らない娯楽作として充分以上に楽しい。戦闘シーンなんかけっこう迫力あるし、セットやモブも貧乏くさくないし、美術や衣装も難点なし。まあ、意外性とか飛び抜けた個性とかはないけど、予定調和的な楽しさはバッチリです。
 意外だったのは、画面構成のスケール感。実は前に見たときは、もっとこぢんまりしたTV映画っぽい画面づくりだったような記憶があったんですが、どうやらそれは、その時のビデオが4:3の画面用に左右がトリミングされていたせいらしい。今回のDVDはノートリミングのシネスコ版なんですが、これで見ると拡がりも奥行きもたっぷりある、実に堂々たる画面構成です。海岸のシーンなんかで、近景で人がゴチャゴチャ動いていて、遠景の青い海には帆船が浮かんでる……ってな構図は、やっぱワクワクさせられますな。パナマの街なんかも、安手の映画にありがちな「狭さ」を感じさせない。そんなこんなで、全体的にかなりいい感じ。
 で、気になって調べてみたら、うわ、撮影のトニーノ・デリ・コリって、ピエル・パオロ・パゾリーニの諸作(『アッカトーネ』『奇跡の丘』『豚小屋』『デカメロン』『カンタベリー物語』『ソドムの市』などなど)や、フェデリコ・フェリーニの『ジンジャーとフレッド』『インテルビスタ』、セルジオ・レオーネの『ウエスタン』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』、ジャン=ジャック・アノーの『薔薇の名前』、最近ではロマン・ポランスキーの『赤い航路』とかロベルト・ベニーニの『ライフ・イズ・ビューティフル』なんかを手掛けている、いわゆる巨匠ってお方じゃないですか! ひゃ〜、ちっとも知らんかった(笑)。
 因みに音楽のフランコ・マンニーノという人も、調べてみたらルキノ・ヴィスコンティの『ルードウィヒ/神々の黄昏』『家族の肖像』『イノセント』なんてのがヒットしてビックリ(笑)。
 主演のスティーヴ・リーヴスは、ヒゲ好きの私としては、ヒゲをたくわえてるシーンは全体の3分の1以下ってのは寂しいし(ヒゲなしのリーヴスって、ハンサムではあるけれど、いまいち個性やオーラには欠ける気が)、ヘラクレスものみたいな終始半裸or諸肌脱ぎってこともないんで、そこいらは残念ではありますが(笑)、それでもいおう奴隷のシーンとか決闘シーンとかで「脱ぎ場」は用意されてます。
 で、この決闘シーン、シャツを脱いだリーヴスの身体にびびって、相手は脱ぎかけたシャツをまた着ちゃうのだ(笑)。あと、最初はちゃんとサーベルで闘っているのに、それが折れちゃって、結局はいつもの半裸レスリングになったり(笑)。
 ヒロインのヴァレリー・ラグランジェは、まあ美しくはありますが、いまいち印象が薄い。さほど清楚というわけでもなく、かといってセクシーなわけでもなく、何となく中途半端なんですな。インパクト的には、恋敵のチェロ・アロンゾの方が上。でも、この人っていつも「エキゾチックでちょっと鉄火肌のオネエチャン」役だよなぁ(笑)。んでもって、必ずダンス・シーンがあるの(笑)。今回もしっかり、夜の海辺で焚き火に照らされながら、エキゾなカリビアン・ダンスを踊ります。
 イタリア盤なので、当然PAL。で、ちょっと良く判らないのが、ジャケには4:3フォーマットと記載されていて、たしかにS-VHS接続で見ると、4:3スクイーズなしのレターボックスなんですが、コンポーネント接続のプログレッシヴ再生で見ると、なぜか16:9スクイーズのレターボックスになる。こんな現象の出るディスク、初めてだ(笑)。
 画質は極めて良好。多少の退色はあるけれど、まあこの程度だったら、メジャーどころのクラシック作品と比較しても遜色がないと言えそう。試しにキャプチャ画像をアップしてみました。こちら。参考までに、米版VHSとも比較。このVHSも、このテのソフトとしては、画質はかなり上等の部類ではあるんですが、やはりディテールの再現性や発色といった点では、今回のDVDの方が段違いに上。あと、こうして比較してみると、トリミングによる構図の狂いというのが、かなり大きく影響を及ぼすというのがお判りいただけるかと。
 音声は伊語のみ、伊語字幕付き。特典は当時のスチル写真を集めたフォト・ギャラリー。あと、なんだかテキストによる解説らしきものが幾つかありましたが、なんせ伊語だから何のことやら(笑)。
 では、恒例の責め場紹介。
 まず冒頭、奴隷市場にて、鎖をブンまわして暴れる上半身裸のリーヴスを、数人がかりでおさえこみ、そのまま裸の胸と腹を何発か鞭打ち。あとは、罪人として木の檻に入れられて馬車で運ばれたり、暗い船倉に半裸で鎖に繋がれたり……なんてシーンもあります。リーヴス以外では、太った半裸のヒゲオヤジが馬裂きの刑にされるシーンもあり。
 まあ、どれも比較的アッサリしているんで、ちょい食い足りないかな(笑)。