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『幽霊画廊 ~世にも怪異な魂の競作展~』

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 本日から銀座のヴァニラ画廊で始まる企画展、『幽霊画廊 ~世にも怪異な魂の競作展~』に描きおろしの新作一点を出品しております。
 ゲイ・アートの展覧会ではありませんが、実に面白い企画で、参加アーティストも錚々たる面子揃いなので、その中に交じって、私もいささか緊張気味……。
 因みに私の出品作は、もちろんそっち系(笑)。
 幽霊画というテーマと私のテイストである無残絵/残酷画というモチーフをミクスチャーして、更に日本の浮世絵版画的な雰囲気と西洋の「死の舞踏」的なイメージも混在させてみました。

 というわけで、展覧会の詳細はこちら。
会場:ヴァニラ画廊(銀座)
   〒104-0061 東京都中央区銀座 6-10-10第2蒲田ビル4階
   TEL 03-5568-1233
   http://www.vanilla-gallery.com/
会期:2月7日(月)~2月19日(土)
営業時間:平日 12 時~ 19 時
     土曜・祝日 12 時~ 17 時
     日曜休廊
入場料:500円
参加作家:市場大介
     小妻容子
     小山哲生
     三代目彫よし
     沙村広明
     SHIGE
     空山基
     田亀源五郎
     ツバキアンナ
     鳥居椿
     富崎NORI
     ヴァーニャ・ズーラヴィロフ
     福山フキオ
     亡月王
     宮西計三
     山口椿
     (五十音順・敬称略)

柳田國男によれば、神域や死後の国は遠い隔絶された別の世界ではなく、現世の様々な場所に重なるように存在し、「その現世に寄り添うように神々も霊魂も住まう」とされます。この世界が、さまざまな膜が幾重にも重なっている次元の束だとしたら、垂直に進もうとせずにちょっと横を向いただけで、見えないものを見てしまう可能性は常にあります。人間の無意識に潜む死者への畏れと憧れはまた、生きている人々の存在意義を根底から揺るがすのです。我々とその祖先は、何に怯え畏怖し結界をはり祈祷をささげたのか。”死装束の足のない幽霊”から、あらゆる幽霊のかたちを、ヴァニラ画廊に集った珠玉のアーティストが挑戦いたします。

 というわけで、会期中お近くにお越しの際にでも、ぜひ足をお運びくださいませ。
 初日の今日は、私も夕方頃にでも、ちょっと顔を出そうと思っております。

本日より大阪distaにて企画展「HOW TO SEX」スタートです

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 来る10月10日、エイズの予防啓発と陽性者への支援・共生、そしてコミュニティの活性化をテーマとしたお祭り型複合イベント、「PLuS+ FINAL~for the next challenge~」が、大阪で開催されます。
 そして本日10月1日から、その関連イベントとして、大阪のコミュニティスペース「dista」にて、総勢26名の作家たちによるエロティック・アートを展示する一大企画展、「HOW TO SEX」がスタートします。
 とりあえずは展覧会の主旨から(以下プレスリリースからの引用となります)。

会期:2010年10月1日(金)~10月18日(月)
※当日を除く10月1日(金)~10月18日(月)は、17:00~23:00(火曜休み)。
土曜日のカフェイベント開催時は翌朝5時までオープン。
~PLuS+ FINALを飾る特別企画展覧会『HOW TO SEX』~
スペシャルゲストにMULM(ムルム)やADON(アドン)で活躍した倉本彪氏を迎え、総勢26名の作家たちによる大ポルノグラフィカ展がdista-Galleryにて開催。21世紀のエロティックアートをも予言する本展覧会に、どうぞご期待ください!!
出展作家:
倉本彪/田亀源五郎/奥津直道/大黒堂ミロ/
ヴィヴィアン佐藤/市川和秀/松崎司/野原くろ/児雷也/
ハスラーアキラ/moriuo/ロボ美/オナンスペルマーメイド/
龍谷尚樹/犬飼隷二/タカサキケイイチ/関根しりもち/
MASA/サクライケンジ/ノリスケ/TORU/JIRO/犬義/
四聖鰆/悠次郎/tyob
―エロティシズムの境界線は、
付加価値で創られたもの故に非常に曖昧である―
しかしながら、その曖昧さゆえに浮遊し続けるエロティシズムの魔力は、古今東西、ジェンダーやセクシュアリティをものともせず、人々を魅了してやまない。
どれだけ大層なお題目を並べようと、どれだけ高尚な大義名分で飾りたてようと、所詮その根核は卑猥と猥褻と不道徳で出来ている。そこから目をそむけては、エロティシズムの本質に辿り着くことなど到底出来ないのだ。
今ここに、ゲイコマーシャルアートを中心に身を置き、国内外で活躍する26名の作家の同意のもと、PLuS+ FINALに多大なる華を添えるであろう本展覧会が開催される運びとなった。気鋭の作家陣が“淫靡と官能”を最大限にクローズアップし、全霊をかけて描き下ろしたその作品群からは、エロスの海で溺れることの素晴らしさや、いかに卑猥/猥褻が見る者に豊饒の喜びをもたらすものであるかを、改めて私たちに知らしめ教えてくれるに違いない。
大いなる期待を込めて、そして静かに、エロティシズムが持つ夢幻の力を信じて待っていようと思う。
Curator:シモーヌ深雪

 で、この展覧会、私もこのために描きおろした新作で参加しております。
 左上の画像が、その一部分。下の方はイロイロとアレなことになっておりまして、どのくらいアレかというと、和紙に大判でプリントしようと業者さんに依頼したんですが、拒否られちゃったくらいで(笑)。結局自宅のプリンターで可能な範囲内での大判プリントにしましたが、画材用紙に顔料インクでプリントしたので、なかなか良い感じに仕上がったと思います。
 というわけで、錚々たる面子による錚々たる規模の展覧会、こんなチャンスはそうそうないので、皆様、お時間をお繰り合わせの上、ぜひご来場下さいませ。
 会場への行き方など、より詳しい情報は、distaのイベントページでご確認を。
 また「PLuS+ FINAL~for the next challenge~」の方でも、今回私、及ばずながらパンフレット等への応援メッセージを寄せさせていただきました。
 イベントの詳細については、PLus+ FINALのサイトでご確認を。私のメッセージは、上部メニューバーの「メッセージ」から読むことができます。

Rainbow Arts 11th Exhibition 2010のご案内

 毎年恒例、セクシュアル・マイノリティのアートグループRainbow Artsによる夏の作品展が、今年も無事開催されるそうで(何ともう11回目!)、ご案内をいただいたのでご紹介いたします。
 アートを見るのを好きな方も、表現者の方も、これから何かやってみたいという方も、この機会にぜひ足を運ばれてはいかがでしょう?
 以下、いただいたご案内からの引用となります。

Rainbow Arts 11th Exhibition 2010
Rainbow Artsは、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー/トランスセクシュアル)をはじめとするセクシュアル・マイノリティのアートグループです。年1回夏の作品展を中心に、活動をしています。
イラスト、絵画、立体、映像、写真、工芸、音楽、パフォーマンスなど、作品ジャンルもキャリアも多彩なアーティスト達が、自由に参加しています。
LGBTの交流の場としても、出場する人、観に来てくれる人、みんなが楽しめるアートの祭典です。
日時:2010年7月24日(土)〜7月31日(土) 10:00〜20:00
  7月24日は16時開場、オープニングパーティーあり
  7月31日は13時よりクロージングパーティー、17時終了
開場:全労済ホール スペース・ゼロ
  東京都渋谷区代々木2-12-10 全労済会館B1
入場料:無料
WEB:http://www.rainbowarts.info/
出展予定アーティスト(ABC順):
武裸奴、藤島茂雄、月槌と一角、はる、HiDE、日下田治久、Isee.、jiro、楓、加瀬世市、克、Kenji Ishii、KENTO、Кэнъя Симидзу、K.I、小林 世界、kow、正、nama、Noe、Re:Creation 日向燦太、Reo、サトルちゃん、シャム子、SuGuRu、龍谷 尚樹、飛助、鶴羽正高、安貴之、Yosuke、悠、悠次郎、Yuki Nishimura

ちょっと宣伝、アートブック”Hair – Hairy Men in Gay Art”に作品数点掲載されました

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 先頃ドイツの出版社Bruno Gmunderから出た、”Hair – Hairy Men in Gay Art”というアートブックに、作品数点を提供しています。
「ゲイ・アートの中の毛深い男たち」という副題からもお判りのように、体毛(ヒゲも胸毛も腕毛も脛毛も、とにかく全部)の濃い男たちを、写真に撮ったり絵に描いたりしているゲイ・アーティストの作品を集めた写真集&画集です。
 裏表紙はこんな感じで、中身も同様にとにかく毛深い男のオンパレード。
book_hair-cover
写真と絵の比率は、写真の方が多めといったところでしょうか。

 私の絵はこんな感じで、1ページ1点ずつで6ページ。
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 版元のBruno Gmunderのサイトでも、本の詳細やプレスリリースが見られますので、よろしかったらどうぞ。こちら

 収録されているアーティストは、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、オセアニアと広範囲で、日本からは私以外にも、市川和秀先生の作品が掲載されています。
 今回、私が個人的に特にいいな〜と思ったのは、画家では、抜群の技術で太目な熊パパのポートレイトなどを描いているチャーリー・ハンター(イギリス)や、ベアー系好きに幅広く受けそうなディチューイ・ドゥードゥルズ(ニュージーランド)など。
 カメラマンでは、バイカーやトラッシュ、ラフ系のモデルを使って、バイオレンス風味もあるエロティックな写真を撮っているインクド・ケニー(カナダ)、ベア系モデルを使って、凝ったシチュエーションの写真を撮っているベアファイター(ドイツ)、タトゥーやレザーなどのテイストの入った、典型的なアメリカン野郎系といった味わいの写真を撮るマイケル・アラゴ(アメリカ)なんかが収穫。
 他には、まず大御所のトム・オブ・フィンランド、私が面識のあるところで、フランスのグザビエ・ジクウェル、オーストラリアのピーター・スキロウ、アメリカのリック・カストロ、メールなどで知己のあるところで、ザ・ハン(アメリカ)、ロブ・クラーク(アメリカ)、フランツ&アンドレ(イタリア)など。
 前から作品を知っていたり好きだったりというものだと、画家では、ラルフ・コーニッヒ(ドイツ)、マイケル・カーワン(アメリカ)、セップ・オブ・ヴィエナ(オーストリア)、カメラマンでは、ジョー・オッペディサーノ(アメリカ)、デヴィッド・ゴールデンバーグ(イギリス)、トム・ビアンキ(アメリカ)……などなど、総計50名近くの毛深男好きアーティストが集合(笑)。

 というわけで、私の作品が好きだという方はもとより、毛深系、熊系、野郎系などなど好きには、かなり充実した内容のアート・ブックだと思います。少なくとも、凡百のメールヌード本と比べると、テイストがはっきり前に打ち出されている分、好みのあう人にはばっちりマッチするはず。
 本のサイズは18×23.6センチと、 A5より一回り大きめ。しっかりとしたハードカバーで、フルカラー260ページ、厚みも3センチほどあります。各アーティストの顔写真やコンタクト先などのデータも記載。
 残念ながら日本のアマゾンでは扱っていないんですが、アメリカやイギリスのアマゾンで購入可能。とりあえずアメリカに商品リンクを貼っておきます。
“Hair: Hairy Men in Gay Art” (amazon.com)
 というわけで、よろしかったらぜひどうぞ!

ちょっと宣伝、ニューヨークで開催される企画展に作品数点を出します

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 今月25日から7月31日まで、アメリカはニューヨーク、ソーホーにあるギャラリーFeature Inc.で開催される、”Tom of Finland and Then Some”という企画展に、作品を数点出品します。
 もう、急な依頼だったのでドッタバタ(笑)。

 まあこのギャラリーは、もう14年前のことになりますが、”Hung Gurus”という企画展でお付き合いもありますし、オーナーのHudson氏とも面識はあるので、いささか無茶なスケジュールではありましたが、参加させていただくことにしました。額装していない絵をFedExを使って先方のアカウントで送ればいいだけなので、私の方でかかる必要経費は、絵を入れるクリアファイル代くらいのものですし(笑)。
 というわけで、期間中にニューヨークに行かれる方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

 いちおう展示の内容は、トム・オブ・フィンランドのドローイング群がメイン展示で、それに併せて、次世代の作家たちの絵がいろいろと展示される模様で、私もその中に含まれています。
 作家数はかなりの大所帯ですが、私が知っているのは、バスティール、マーティン・オブ・オランダ、ラリー・クラーク、ザ・ハン、レックス……くらいかなぁ。ラリー・クラークだけ異質なので、おそらく私の知らない作家の中には、コンテンポラリー・アート系の人が多いのかも。このギャラリー、普段はゴリゴリの現代美術専門ですから。
 というわけで、以下は英文プレスの内容になります。
TOM OF FINLAND AND THEN SOME
opening reception friday june 25, 6 – 9pm
june 25, 26, 27, friday, saturday, sunday 12 – 6pm
june 29 thru july 31 tuesday – saturday 12 – 6pm
closed july 4 – 10

Tom of Finland and then some
Sketches from the archive of the legendary Tom of Finland will once again – its easily been ten or so years – hang on the walls of Feature Inc. Tom of Finland, the artist who took masculine to macho and big to XXXlarge, clocked the butch gay clone phenomenon at its onset and blew it out. His super hung studs, with more t&a than any cheesecaker could aspire to, are packed for action yet also deliver knowing glances and looks that are full of the camaraderie and humor that his vision of a utopian man to man culture was based on.
Tom of Finland, Touko Laaksonen by birth, was born on the south coast of Finland on May 8, 1920. He trained and worked in design and advertising and in 1973, left his job to work full time on his drawings. Between 1978 and 1988, Tom of Finland split his time between Helsinki and Los Angeles; he died of an emphysema-induced stroke on November 7, 1991. This exhibition is made in cooperation with the Los Angeles based Tom of Finland Foundation.
Partnering Tom of Finland is and then some, sexual imagery by a number of other contemporary artists who frequently use sexual imagery in their work. The range is wide, tho less poser/genital display and more twist. Participating artists are: Richard Kern, Judy Linn, Bastille, Jerry Phillips, Martin of Holland, Joe Brainard, Fred Esher, Larry Clark, Robert W. Richards and Brian Kenny, Sean Landers, Richard Prince, Robert Fontanelli, GB Jones, Jeff Burton, Mie Yim, Raymond Pettibon, Catherine Opie, Carl Ferrero, Kevin Larmon, Jared Buckhiester, Judy Rifka, Jeffrey Pittu, Scooter Laforge, Tyler Ingolia, David Frye, The Hun, Kinke Kooi, Juan Gomez, Rex, Gengoroh Tagame.

奥津直道さんからグループ展のお知らせ

 ゲイ雑誌等でも作品を発表し、先日のシドニーの企画展にも出品されていた奥津直道さんから、グループ展のご案内をいただいたのでご紹介いたします。

6月14日(月)から始まるグループ展に出品いたします。
”同性が描く同性”がテーマの展示で、私の作品は小品2〜3点です。
近くへお出かけの際は、ぜひお立ち寄り下さいませ。(奥津直道)
「男が描く男・女が描く女」
2010.6.14(月)〜6.22(火)
12:00〜19:00まで/日・祝18:00まで/最終日17:00まで
ふと回りを見渡すと世の中は男と女であふれていると今更ながら思う時がある。同性が同性を描くと異性を描く時とは違う視点が生まれると、身近に接する画家たちの作品を見ながら企画した昨年の「男が描く男・女が描く女」展。今展では新しく紹介するメンバーも加え、さらに表現の可能性を探ってみたい。/柴田悦子
出展作家/阿部清子・奥津直道・木村浩之・コヤマイッセー・中千尋・伴清一郎・佛淵静子・平野俊一・松谷千夏子
柴田悦子画廊
〒104-0061 東京都中央区銀座1-5-1第3太陽ビル2F
TEL & FAX / 03-3563-1660
http://www.shibataetsuko.com/

 というわけで、お時間のある皆様は、ぜひどうぞ!

フランク・フラゼッタ逝去

 本日、起きてPCの電源を入れ、Twitterにアクセスしたところ、ショッキングな訃報がTLを駆け巡っていました。
 2010年5月10日、フランク・フラゼッタ逝去。享年82。
 ……これはマジで、ちょっとヘコむ。

 このブログでも、過去の記事でその名前を、何度も引き合いに出してきていることからお判りのように、自分が中学生の頃、雑誌「スターログ」やムック「SFファンタジア」で知って、その重厚な筋肉描写とパワフルな画風に惹かれて以来、ずっと好きな画家だったもので……。
 フラゼッタは、一種ファンタジー・アートの1ジャンルの創始者的な部分があるので(厳密に言うと、圧倒的な個性と存在感のある作品であるとはいえ、その画風のルーツは、フラゼッタの先輩にあたるロイ・クレンケルの作品に見ることができますし、そこから更に前の世代のアレン・セント・ジョンへと遡ることができるので、別に突然変異的に突如出現したというわけではないのだけれど)、以降、その作風は作家の個性から、一つの様式になってしまったという部分があります。
 よって、その後続の中には、単純に描写力とか技術力という面を取り出すと、元祖フラゼッタを凌駕する技能の作家も大勢いるんですが、それでもフラゼッタの作品の持つ圧倒的な力強さは、そういったフォロワーたちを遙かに凌駕する孤高のものであるように、個人的には思っています。
 そこいらへんについては、以前この記事の中盤でちょっと触れていますので、興味がある方はどうぞ。

 ともあれ、私にとっては大いにリスペクトしている現代の巨匠のお一人でした。
 謹んでご冥福をお祈りいたします。

 さて、フラゼッタを知らないとか、知ってるけど画集とかは持っていないという方には、現在市販されている画集で、”ICON”、”LEGACY”、”TESTAMENT”という三冊があるので、そのどれかから始められるのが良いかと思います。
 個人的には、出版順にまず”ICON”からゲットし、次に”LEGACY”、そして”TESTAMENT”という順番が良いかとは思うんですが、残念ながら”ICON”は現在品切れの模様。とはいえ、三冊とも充実した内容で、収録作品の重複もないので、とりあえず目に付いたものから買われても、特に問題はないです。

Icon: A Retrospective by the Grand Master of Fantastic Art Icon: A Retrospective by the Grand Master of Fantastic Art
価格:¥ 2,953(税込)
発売日:2003-10
Legacy: Selected Paintings and Drawings by Frank Frazetta Legacy: Selected Paintings and Drawings by Frank Frazetta
価格:¥ 2,707(税込)
発売日:2008-04-28
Testament: A Celebration of The Life & Art of Frank Frazetta Testament: A Celebration of The Life & Art of Frank Frazetta
価格:¥ 2,953(税込)
発売日:2008-04-28

 既にフラゼッタのファンだよという方には、よりマニア向けの”ROUGH WORKS”もオススメ。
 A5程度の小振りな画集ですが、アイデア・スケッチ、フィギュアのラフ・ドローイング、構図用のサムネイル、ペン入れ途中の原稿、有名な作品のカラー・ラフなど、他の本では見られないものがぎっしり。カラー・ラフを見ると、フラゼッタの油彩画作品の背景で良く見られる、渦巻くような「もやもや」が、決して偶発的なものによる効果ではなく、ラフの段階から計算されているということが判ったりもします。

Rough Work: Concept Art, Doodles, and Sketchbook Drawings (Spectrum Presents) Rough Work: Concept Art, Doodles, and Sketchbook Drawings (Spectrum Presents)
価格:¥ 1,967(税込)
発売日:2007-09-28

 因みにこれらの画集なんですが、私が持っているのは旧判で表紙デザインとかが違うんですよね。
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 欧米では、どうも画集を増刷するという発送がないのか、よくこういった形で表紙もISBNも変えて、でもタイトルとコンテンツだけはそのままの新判を出すようで。
 これ、どういう理由があるんだろう……と、以前からずっと不思議。

今月の『芸術新潮』はマストかも(特集『股間若衆』)

 特集に興味があるときだけ購入している『芸術新潮』ですが、今月号は見逃せない小特集が載っているので、ご紹介します。

芸術新潮 2010年 05月号 [雑誌] 芸術新潮 2010年 05月号 [雑誌]
価格:¥ 1,400(税込)
発売日:2010-04-24

 現在店頭に並んでいる雑誌『芸術新潮』5月号。
 表紙でお判りのように、メインの特集はエドゥアール・マネなんですが、スゴいのは第二特集。
 題して「股間若衆」!
 副題に「日本近代彫刻の男性裸体表現の研究」とあるように、明治以降、日本の作家による西欧的な伝統に基づく写実彫刻において、股間、つまり男性性器はどのように表現(或いは秘匿)されてきたのか、という流れを、豊富な図版と共に論じた内容です。

 特集頭の「曖昧模っ糊り」という章から、ユーモアと皮肉をたっぷり効かせながら、ヌードという「セックス」を含む「芸術表現」に対する日本的な欺瞞を、ものの見事に暴き出してくれていて痛快至極。ここだけでも、表現規制についてアレコレかまびすしい昨今、一読の価値ありです。
 もちろん、メール・ヌード美術全般に興味のある方だったら、その着眼点といい、内容の希少性といい、これはマストだと思うので、激オススメ。

 個人的には、芸術だの隠す隠さないだのといった問題とは無縁の、輸出用に作られた名匠による工芸品としての「生き人形」が、掲載図版の中では最もコンテンポラリー・アート的な印象を受けるのが、何とも興味深かったです。
 つまり、いかなる理由があろうとも、在るべきものを表現しないとか、そこにオブジェ以上の意味を(勝手に)感じて(或いは配慮して)「隠す」という行為には、どうしても「ノイズ」という結果がつきまとってしまい、表現の「純度」を損なうんだな、ということ。そこには、「猥褻を意識するがゆえの猥褻感」が存在してしまう。
 北村西望の『怒濤』なんて、実に日本的なメール・ヌード像としての逸品だと思うんですが、しかし、その奇妙な股間の表現には、どうしてもそういったノイズが感じられてしまう。対して、前述の生き人形には、それがないんですな。
 基本的に、自分が日本人であることには何の不満もないんですけど、こういった明白な事例を見る時ばかりは、「あ〜あ、やっかいな国に生まれちまったなぁ……」と思っちゃう(笑)。

 前述の「アートとしての生き人形」に関して、もう一つ付け加えると、そこには「芸術であらんとしよう」というノイズもない。それゆえにシンプルで純粋であり、だからこそ逆説的に、その「作品」が「芸術的」に感じられる。
 これは、私にとって一つの理想的なありようです。私にとって、それが芸術であるか否かは、制作動機や目的ではなく結果が全てであり、しかもそれは、個の主観による判断に基づくものだ(つまり汎的な芸術というものは存在しえない)、というのが、私自身の考え方なので。
 もし、この特集内で、どれか一点作品を貰えるとしたら(私は良く、展覧会等でもこういった発想で、マイ・フェイバリット・ワンは何かを考えます)、もう問答無用で「農夫全身像/鼠屋伝吉・作」ですね。それから少し離されて、二番目が前出の「怒濤/北村西望」かなぁ……。
 ンなこと考えたって、貰えっこありませんが(笑)。

【2012年4月9日追記】この『股間若衆』、後に掲載された『新股間若衆』や書き下ろし原稿などと共に、目出度く単行本化されました。オススメの一冊。

【追記2】2017年4月には、続編『せいきの大問題:新股間若衆』も出版されました。こちらも是非。

稲垣征次さんが個展開催

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 明日4月9日から18日まで、渋谷「マリアの心臓」で稲垣征次さんの個展「金閣寺」が開催されます。
 場所、開館時間、休館日などの詳細は、こちら
 どんな絵でも、印刷物で見るのとオリジナルの原画で見るのとは、天と地ほどの違いがありますが、ここ数年の稲垣さんの作品は、以前と変わらぬ緻密さに加え、金属系顔料の色鉛筆によるテクスチャー表現など、印刷物では絶対に再現不可能なものです。そういった新作に加えて、「薔薇族」時代のモノクローム鉛筆画も多数ご出展予定とのこと。
 因みに、会場の「マリアの心臓」は人形美術館でもあるので、稲垣さんの耽美でエロティックな作品と同時に、天野可淡や恋月姫といった有名な創作人形作家の作品も、併せてお楽しみになれるはず。
 皆様、この機会に、ぜひお出かけくださいませ。

表現規制を正当化する思想とゲッベルスの演説

 先月、何度かこのブログにエントリーをアップした「非実在青少年」規制問題ですが、残念ながら、現時点では審議続行で結論が先延ばしになっただけであり、まだ根本的な解決はされていません。
 また東京都のみならず、福岡県ではヤクザ漫画の販売規制が始まり、大阪府では女性向けコミック、ボーイズラブ・コミックも含めた規制に向けての動きが、京都府でも現職知事がマニフェストに同種の要項を盛り込むなど、その内容や場所がどんどん拡大しつつあるようです。
(全体の詳細はまとめサイトなどを参考に)
 そんな中で、先日、フリッツ・ラングの映画『怪人マブゼ博士(マブゼ博士の遺言)』のDVD(紀伊國屋書店)に封入されていた解説書を読んだところ、興味深い文章を見つけました。
 1933年3月28日、ナチスの宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスの「ドイツ映画産業会議」における映画改革についての演説内容です。
 現在の日本で進行中の、表現規制に関する動きと比較すると、特にここで書いた記事の後半部や、同記事の最期で引用している規制推進派の発言と読み比べると、その思想的・レトリック的な類似がいよいよ興味深く思われるので、ここに紹介することにしました。

「映画は自由だが、一定の道徳的・社会的見解を考慮する必要はあり、社会の根本的な考えを認めなければならない。映画の危機の原因は道徳的なものにあり、検閲はそういったものに対立する作品に対してである。映画を画一化したり業界を弾圧する意図はなく、逆に業界団体は映画製作に大きな力を持つだろう」
(「運命の映画『怪人マブゼ博士』/小松弘」から筆者による要約)

 比較対象として、より判りやすくするために、前述した以前の記事で引用した発言も、内容の順番を揃えて要約してみます。

「言論や表現の自由は、それが社会のモラルや品格を損なうものであれば、その権利は必ずしも保障されるものではない。規制によって悪質な出版社にペナルティーを科して消していけば、健全な出版社を生かすことになり、出版業界全体のためにもなる」

 規制の内容自体に対する云々も問題ですが、個人的にはそれよりも、こういった規制の根本に潜むロジックの類似にこそ、これまで何度も述べてきたような、行政が「健全な社会」を要求すること(そのために「不健全なフィクション」を排除すること)と、それを社会が無自覚に受け入れてしまうこと(当時のナチスの支持率は50%近くだったそうな)に対する恐ろしさを感じてしまい、危機感がますます募ります。
 というのも、これらのロジックは「健全」「モラル」「道徳」「品格」といった、実態が極めて曖昧ながらも、それを是とするのが「社会通念として正しい」とされているものを利用したものだからです。それはそのまま、無自覚に受け入れられやすいということにつながってしまう。
 更には、それぞれの主張を個々の「人格」にまで拡大解釈されやすい、という側面もあります。規制派からすると、それに反対する「人物」は「不健全」なのだという情報操作もできるし、規制されたくない派にとっても、自分がモラルに欠けている人間とは思われたくないとか、ポルノ好きだとは公言しにくいとかいった、反対するのに及び腰になっても無理からぬポイントがありす。
 だからこそなおさら、「思考」や「表現」といったフィクション世界の問題と、「人格」や「犯罪」といったリアル世界の問題は、はっきりと分離して考えるべきであり、それを無意識に混同してしまう危険性や、意図的に混同しようとする忌まわしさを、私は改めて強調しておきたい。
 因みに、この映画『怪人マブゼ博士(マブゼ博士の遺言)』は、その完成と同じ年にアドルフ・ヒットラーが首相に就任、つまりナチス政権が誕生して上映禁止となり、監督フリッツ・ラングが故国ドイツを捨てて亡命する、そのきっかけとなった作品でもあります。

フリッツ・ラング コレクション 怪人マブゼ博士(マブゼ博士の遺書) [DVD] フリッツ・ラング コレクション 怪人マブゼ博士(マブゼ博士の遺言) [DVD]
価格:¥ 5,670(税込)
発売日:2007-04-28

 解説書によると、上映禁止の理由は「公的な秩序と安全を脅かす」といった曖昧なものであり、当時上映禁止処分になった映画には、こういった理由が不明のものが少なからずあったらしい(記事中ではジュリアン・デュヴィヴィエ監督の『にんじん』が例として挙げられています)です。
 これもまた、私が前にこの記事の後半で述べたような、「曖昧な基準で恣意的に内容を審査できるルール」の「いかがわしさ」を示す実例と言えましょう。