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ちょっと宣伝、”GOKU”三巻&ボックスセット発売されました

goku3
 元旦早々、年賀状と一緒に、フランスから小包が到着。
 というわけで、年末に発売されたフランス語版『君よ知るや南の獄』の3巻の、著者分刷り見本が届きました。
 これで仏語版”Goku – L’île aux prisonniers”も、無事完結。結局、昨年の1月、6月、12月と、ちょうど一年かけて全巻発売されたことになります。

 この『君よ知るや南の獄』は、一時期はフランス語版はおろか、日本語版の単行本発売も危ぶまれた状況だっただけに、2007年の日本語版発売に引き続き、こうしてフランス語版も無事完全発売されて、嬉しさもひとしおです。何しろ、純粋ポルノグラフィというフォーマットにおけるゲイマンガの、その可能性を徹底的に追求したという意味で、ある意味で自分の作品の集大成的な内容の意欲作だったもので。
 さて、それと一緒に、全3巻がボックスセットになっている「コフレ」も届きました。
 こんな感じ。
goku_all
 日本語版より、すこし本文用紙が厚めのせいもあって、ボックスの幅は6センチあるので、けっこう存在感があります。
 お値段は45ユーロ。日本円にすると、本日のレートで約6000円。
 因みに、一昨昨年に個展でフランスに行ったときのレートで換算すると、45ユーロだと7000円を優に超えていましたから、ユーロもだいぶ安くなりましたね。あのときは、「ひゃ〜、フランスって何て物価が高いの!?」と、かなり蒼ざめたくらいだったから(笑)。

 因みにボックスの装画は、私が本のカバー・イラストを人物ごとにレイヤーで分けて描いたものを、H&Oのデザイナーが新たにボックス用に再構成したもの。
 ぐるっと廻して見ると、登場人物全員集合という感じで、ちょっと面白い雰囲気なので、せっかくだからデザインチェック用に送ってもらっていた、箱を開いた状態の画像もアップしましょうか。
goku_box_open
 なんかいい感じで、気に入っています。

 もひとつオマケ。
 前にちょっと書いたように、今回の”GOKU”は3分冊ということもあり、日本版のように、メイン・キャラクターの椿中尉とハワード少佐を、それぞれメインにして一巻ずつという方法はとれなかった。
 かといって、代表キャラを3名となると、これまたちょっと難しかったので、常に椿中尉をメインにして、背後に他の登場人物を、それぞれのグループずつのセットで配置し、メインの椿中尉の絵を、ストーリーの進行に合わせて、コスチュームなども変化させていくという構成にしました。
 というわけで、3冊の表紙を並べると、こんな感じ。
goku_cover_all
 これまたいい感じで、気に入っています。

 日本語版の装丁もかなりこだわって作りましたし、フランス語版はもうちょっとカジュアルな感じですが、これまたいい感じに仕上がったので、自分の思い入れが深い作品なだけに、それぞれに嬉しい単行本になりました。
 日本語版はもちろん、フランス旅行の際には、ぜひボックスでお求めを(笑)。

『映画秘宝』とか

映画秘宝 2010年 02月号 [雑誌] 映画秘宝 2010年 02月号

 現在発売中の雑誌『映画秘宝』2月号で、特集「ゼロ年代ベストテン!!」に、アンケートおよびコメントが掲載されております。
 どーゆー特集かというと、2000年から2009年までの、いわゆる「ゼロ年代」に制作・公開された映画のなかから、個人的なベストテン作品と、ベストワン男優、ベストワン女優、ベストワン監督、ベストワンシーンなどを選出し、その理由などのコメントを添えるというものです。
 評論家、ライター、タレント、漫画家、小説家、映画監督……などなど、カルトでゴージャスな皆様に混じって、私のベスト&コメントも載っておりますので、よろしかったらぜひお読みくださいませ。

ちょっと宣伝、BIG GYMさんの2010年度カレンダー企画に参加しております

 昨日12/1から、池袋と上野と新橋にあるゲイショップ、BIG GYMさんの店頭で買い物をすると、12名のゲイ作家による描き下ろしオリジナル・イラストが入った、2010年度版の卓上カレンダーを、一ヶ月分ずつマンスリーで貰える、というキャンペーンが始まりました。
  で、この企画、私も参加しております。ただ、何月を担当したかは、サプライズ企画ということで、まだ内緒。情報解禁になったら、改めてお知らせします。
 今月配布の2010年1月分は、児雷也画伯のイラスト入り。コンプリート用の卓上ケースも付いているそうな。というわけで、「これはコンプを目指したい!」という方は、ぜひ最寄りのBIG GYMさんでお買い物をどうぞ。なくなり次第終了だそうです。
 ただ、東京以外の方には申し訳ないんですが、通販ではこのキャンペーンはやっていないそうです。
 キャンペーンの詳細はこちら
 店舗の場所など、BIG GYMさんのサイトはこちら

ちょっと宣伝、マンガ『LOVER BOY』後編です

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 21日発売の「バディ」1月号に、マンガ『LOVER BOY(後編)』掲載です。
 因みに、前編の情報はこちら
 フツーのエロマンガを描きたいな〜、ってんで始めたヤツなんで、後編も、ヘンタイっつーよりインランっつー感じで、エロエロ度はますますパワーアップ。ノンケのイケメンが、オモチャにされて乱れまくります(笑)。
 この話、同じシチュエーションを使っても、幾らでもダークな方向に持っていくことはできるんだけど(普段の私だと、そっち方面に持っていくことの方が多い)、今回はちょっと目先を変えて、基本的に明るくて軽いノリに徹してみました。結果、けっこうキャラが良く動いてくれたので、なかなか楽しく描けた感じ。
 というわけで、青年キャラ好きの方は、どうぞお見逃しなく(笑)。

Badi (バディ) 2010年 01月号 [雑誌] Badi (バディ) 2010年 01月号 [雑誌]
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2009-11-21

 さて、この「バディ」ですが、次の12月発売の2月号は、マンガはお休みさせていただきます。
 次の登場は、来年1月発売の3月号になる予定。

ちょっと宣伝、時代マンガ描きました

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 11/18発売の「肉体派 vol.15 歴史漢全攻略」に、24ページの読み切りマンガを描きました。
 今回は特集が「歴史」ということで、日本の戦国時代(厳密な設定はしていませんけど)を舞台に、サディズム(嗜虐性)とアルゴフィリア(苦痛愛好)を巡るストーリーを描いています。タイトルは『鬼祓え(おにはらえ)』。
 私の描く時代SMというと、けっこうエグいのを期待される向きもあるかもしれませんが、今回は、まあ多少は「痛い」描写もありますが、読後感はけっこう「しみじみ」系なのではないかと。
 発想の根っことしては、南條範夫さんの影響が色濃いかな? フォーカスを行為そのものよりメンタル面に置き、サディズムの扱いを普段と少し変えて、それと同時に、マゾヒズムもしっかりおさえるという作り方をしてみました。
 そんなこんなで、「読ませる」と「抜かせる」、どちらもしっかり頑張りましたので(笑)、よろしかったら是非お読み下さいませ。

肉体派 VOL.15 歴史漢全攻略 (アクアコミックス) 肉体派 VOL.15 歴史漢全攻略 (アクアコミックス)
価格:¥ 920(税込)
発売日:2009-11-18

つれづれ

 タコシェの中山さんからフランス土産で、毎年発売されているフランスのラグビー選手のヌード・カレンダー、“Dieux Du Stade”の2010年版を戴きました。このブログでも以前に、SMっぽかった2008年版をここで紹介していますが、今回でもう10周年だそうな。
 2010年版のカメラマンは、トニー・デュラン(Tony Duran)という人。コマーシャル・アート全般にイマイチ興味を失ってから久しい私には、ちょっと聞き覚えのない名前だけど、ファッション・フォトグラファーとしては有名なのかも。今度、現役のアート・ディレクターやってる友人に聞いてみよう(笑)。
 写真の方は、極めて口当たりの良いピンナップ系。あまり、これといった特徴は感じられないけど、逆にクセやアクもないので、カレンダーとして壁に掛けておくには、丁度いい内容かも。ひたすら、美しい筋肉を身に纏ったスポーツ選手の、セクシーでキレイなメールヌード写真のオンパレード、といったカンジです。
 ソロやらデュオやらトリオやら、凝ったポーズやら変わったシチュエーションやらもありますが、個人的に最も目を惹かれたのは、ここいらへんの「シンプルなメールヌード+ラグビーボールだけ」というシリーズ。男の裸ってのは、何もせずただそこに在るだけで、それだけで充分美しいもんであります。
 ああ、それと今回は、四つ折りのポスターもオマケで付いてました。ただでさえデカいカレンダーなので、ポスターを拡げるとかなりの迫力。
 日本での入手先は、残念ながらちょっと判らず。
 現在発売中の雑誌『映画秘宝』12月号の、大西祥平さんの連載コーナーで、拙著『髭と肉体』を紹介していただきました。ありがとうございま〜す。
 同誌に載っている大西さんのもう一つの連載「評伝・小池一夫伝説 Returns」も、毎回毎回読むのが楽しみなんですけど、え〜、私まさに、『実験人形ダミー・オスカー』って、絵やシーンは良く覚えているけど、んじゃいったいどーゆー話だったのかが判らない……ってなパターンです(笑)。とゆーわけで、来月の後編が楽しみ!

映画秘宝 2009年 12月号 [雑誌] 映画秘宝 2009年 12月号 [雑誌]
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2009-10-21

 そう言えば、この『ダミー・オスカー』が連載されていた頃の『GORO』に、確か西村寿行の『去りなんいざ狂人の国を』が連載されていたんじゃなかったっけか。オンナノコのヌード写真やフツーのエッチ記事はそっちのけで、この小説でコーフンしまくった記憶があって、しかもそれが西村寿行との初邂逅だったような気が。
 寿行センセなくしては今の田亀源五郎はいない、ってなくらい、私にとっては、セクシュアルな意味でトラウマ級の作家さんなので、この『去りなん…』も、ものごっつうオカズにさせていただきました。
 特に後半の乱痴気パーティーのシーンでの、「マフィアのボスを全裸にして、肛門にローソクを立てて人間燭台にして辱める」とか、「捕らえた刑事二人(だっけか?)に、相互ホモセックスを強要する」シーンなんか、未だに思い出すだけでムラムラくる(笑)。

去りなんいざ狂人の国を (角川文庫)
価格:¥ 652(税込)
発売日:1981-01

 デアゴスティーニの『三代怪獣 地球最大の決戦』購入。
 例によって、隣の相棒の「この人は、往年の大スターだよ」とか「この人は、東映時代劇の悪役ばっか演ってたんだよ」とか「この人は、国策映画で銃後の母を良く演っていたんだよ」とかいったオーディオ・コメンタリー付きで鑑賞(笑)。
 ガキの頃は、とにかく特撮と怪獣プロレスに夢中だったけど、改めて見ると、テレビのチャンネルを変えるために、夏木陽介の身体を跨ぐ(ってか覆い被さる)星由里子……とかゆー、些細な日常リアル演出が良いな〜、なんて感じたりして。
 二号続けて買っちゃったけど、次回の『海底軍艦』は、既にDVDを購入済みなのでスルー。
 いつものようにタバコをカートンで買ったら、こんな箱で渡されてビックリ(笑)。

ちょっと宣伝、青年系マンガ描きました

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 今月21日発売の「バディ」12月号に、マンガ『LOVER BOY(前編)』描きました。
 先月号まで描いていたヤツが、どマニアックなネタだったので、その反動か、フツーのエロマンガを描きたくなりました。
 とゆーわけで、キャラもご覧のようにフツーのタイプ。メガネのリーマンと、カッコイイ系の男子。
 ヤってることも、凌辱やSMではなくフツーな感じ。でも、エロエロ(笑)。

 この号ではマンガだけではなく、付録DVDでも、顔出しトークなんぞを披露しております。
 この付録DVD用に、今年の夏、都内のフリースペースで収録したもので、内容は本邦初公開。
 トークのお相手は、竜超さん。氏が「バディ」に連載しているコラム『現代狂養講座』に連動して、「”ゲイコミック”の明日はどっちだ!?」というテーマで、自分のこととか、ゲイコミックの現状とか、今後の展望とか、あれこれ喋っています。
Badi (バディ) 2009年 12月号 (amazon.co.jp)
 というわけで、マンガとトークとダブルで楽しめる(はず)なので、よろしかったらお買い求めください。
 トークの方は「立ち読み」もできないしね(笑)。

ちょっと宣伝、イタリア語版単行本、発売されました

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 前にここで、私のイタリア語版マンガ単行本・第一弾が先々週発売されたとお伝えしましたが、昨日、見本が届きました。
 本のタイトルは”RACCONTI ESTREMI”。英語だとextreme storyという意味だそうな。
 ただ、本を開くと1ページ目に、”Kinjiki”というタイトルがあって、一瞬この『禁色』が副題かと思って、「ひぇ〜、そんなおこがましい、ヤメテクレ〜!」とか思ったんですが、奥付を確認すると、下記の記載を発見。
RACCONTI ESTREMI
di Gengoroh Tagame
collana Kinjiki
volume 1, autunno 2009
 collanaというのは「ネックレス」とか「叢書」とかいった意味らしい。というわけで、これは「禁色叢書・第一巻」なんですな。
 シリーズ全体の名前と判って、ホッとしました(笑)。

 本全体の造りは、サイズはA5、カバー付きのペーパーバック。
 総ページ数は、200ページ強、価格は15ユーロ。
 カバーは、左上の書影だと判らないんですが、葡萄茶色の地色と角版のイラスト部分がツヤのないマットPPで、黒の地紋と白のアルファベット部分のみ、ツヤのあるグロス加工になっています。
 とってもキレイで品の良い装丁。気に入りました。
 内容は、短編マンガ8本に加え、巻末には、私のインタビュー、ラフスケッチ数点、各作品に関する注記、擬音に関する解説なども収録されています。
 綴じは、日本と同じ右開きで、巻末のテキストページだけ左開き。というわけで、マンガの絵も逆版にはなっていないので、ホッと一安心。なぜ安心かというと、絵を描く人なら判るはず(笑)。
 紙質も印刷も上々だし、丁寧に作ってもらえたようだし、嬉しいなぁ。こうなると、解説とかを読めないのがクヤシイ(笑)。

 具体的な収録作品リスト(とイタリア語題)は、以下の如く。
・MASOCHISTA(「マゾ」)
・PATRIOTTISMO – L’ESERCITO DEI VOLONTARI DELLE LACRIME(哀酷義勇軍)
・GIGOLO(ジゴロ)
・BURATTINAIO(傀儡廻)
・GASTRITE DA STRESS NERVOSO(神経性胃炎)
・PATIBOLO(晒し台)
・CHIGO(稚児)
・CONFESSIONE(告白)
racconti-estremi-aracconti-estremi-b
 作品をセレクトしたのは先方で、「未単行本化のものを」とリクエストされたので、当時まだ雑誌掲載のみだったマンガのコピーを渡して、その中から選んでもらいました。
 ただ、契約が締結してからこうして本が出るまでに、例によってけっこう時間がかかったので、その間に日本で出た『髭と肉体』と、収録作品が4本かぶってます。残りの4本は、今回が初単行本化。
 ちょっととりとめのないラインナップのような気もしていましたが、こうして並んでみると、さほど案ずるほどでもないかな。最後を『告白』で締めてくれているあたりも、なかなかいい感じです。
 ただ、イタリア初上陸にしては、巻頭に「ヒゲなし若め主人公」ばっか4本並んでいるのが、ちょいと誤解を招くかもしれないなぁ(笑)。私の十八番の「ヒゲ熊拷問」が、一本しかないし(笑)。

 内容をじっくり見ていると、細かなところも神経が行き届いています。
 例えば各作品のタイトルですが、まず作品のアタマに、本の表紙と同じ地紋を用いた新規の章扉があり、そこにイタリア語のタイトルが書いている。その章扉をめくると、白ページ(つまり章扉の裏は白紙になっている)を挟んでマンガが始まるんですが、マンガの元々タイトルが入っていた場所に、今度はローマ字表記の日本語タイトルが入っている。
 また、マンガに出てくる、ポスターや看板の文字の処理を見ると、例えば『哀酷義勇軍』だと、義勇軍募集のポスターは日本語のままで、欄外に意味を説明した注がある。かと思えば、適性検査の結果が出た掲示板は、これは画面でもイタリア語に翻訳されていて、ちゃんと文字に掲示板に合わせたパースもついている。
 些細なことではありますが、こういったのを見ると、「ああ、丁寧に作ってくれているなぁ」って感じで、生みの親(笑)として実に嬉しい。

 因みにフランス語版では、擬音もフランス語に置き換わっていましたが、このイタリア語版では、日本語の擬音がそのままになっています。どうしてかというと、「そのままにして欲しい」と言われたからで、理由を聞いたら「カッコイイから」なんだそうな(笑)。
 ここいらへんの感覚は、国や個人によってまちまちのようで、スペインの出版社(契約済み)は「置き換えたい」派でした。ちょっと前に会って話したアメリカ人も、「置き換えたい」派。でも、長い付き合いのあるアメリカ人のファンは「英語の擬音は表現力に乏しいから、日本語のまま残して欲しい」派。
 まるで、映画の字幕派と吹き替え派みたいなので、いっそ、擬音の切り替えができる電子書籍版とか作ったら面白いかも(笑)。

『ゲイエロ3』打ち合わせ

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 前回の続き。
 上の図版は、『日本のゲイ・エロティック・アート vol.3』収録予定作家のお一人、高蔵大介さんの作品(『さぶ』1996年7月号より)。

 というわけで、『さぶ』の発掘作業も完了したので、セレクトした分をポットさんに持参して(って、実際は持ち歩ける量ではないので、宅急便で送ったんですけど)、『日本のゲイ・エロティック・アート vol.3』の打ち合わせをしてきました。
 とりあえず現状の進捗状況は、収録図版の粗セレクトが完了した状態。
 集めることのできた全ての図版の中から、最終的に収録できる点数の数倍に相当する量をセレクトした、いわば「一次選考」が終わった状態です。
 これで、本の全体像が朧に見えてきた(つまり、出来ることの可能性と限界を、同時に把握できた)ので、それを踏まえて、最終的にどういった構成にするかを話し合います。
 今回、作品の収集をしている段階で、過去の既刊二冊とは異なった構成にしたい部分が出てきたので、予算や技術も踏まえて相談したり、本のサブタイトルをどうするか検討したり。
 サブタイトルに関しては、自分独りでずっと考えていたときには、かなり煮詰まってしまっていたんですが、今日の打ち合わせで担当編集者さん二人を交えて話し合っていたら、ビックリするほどスンナリと結論を出せました。「うわ〜、やっぱブレーンストーミングって大事!」と、改めて感心したり。

 また、実はこのシリーズ、限られた予算内で最良の結果を出すために、画集としては(おそらく)イレギュラーなページ構成になっています。
 そのこともあって、今回も、制作費の見積もりを作るために、ラフな台割り(本全体のページ構成を決める表のこと)を用意して、「この折り(一般的に、本は16ページ分を一枚の大きな紙に印刷して、それを折りたたんで裁断して作るので、この16ページを一単位にしたものを『折り』といいます)は、表を四色(カラー)裏を一色(モノクロ)でいきます」とか、「こっちの折りは、両面一色でいけます」とか、説明しながら細部を詰めていきました。
 さて、これで最終的に収録可能な図版点数の、ガイドラインができました。
 ここまでが、今日の成果です。

 この後、仮決定したページ構成を踏まえて、粗セレクトした作品の中から、最終的な掲載作品を絞り込んでいきます。これがまた、楽しくも辛い作業。というのも、どうしても「涙をのんで収録を断念せざるをえない」作品が、多々でてくるので。
 掲載作品が決定したら、次は文章原稿の執筆に取りかかります。これがまた、調べ物とか取材とかが必要になるし、そもそも文章書きの専門ではない私にとっては、なかなか厄介な作業です。
 文章ができたら、次は翻訳(このシリーズは、日本のゲイ・アートをより海外にも喧伝するために、全テキストを日本語と英語で併記しています)して、これでようやく本に必要な原稿が全て揃うわけです。
 こういった一連の作業を、集中して一気呵成に出来ればいいんですが、残念ながら他の仕事の都合もあるので、その合間合間に長いスパンで進めていかなければなりません。事実、今月はもう、これ以上の時間的な余裕がないので、最終的な掲載作品の絞り込みを始められるのは、来月上旬以降になるでしょう。

 本の完成までには、まだ時間がかかりそうです。
 とはいえ、一番メインの図版収集作業が完了したので、ちょっと一安心。

『さぶ』の山

sabu
 ここ数日、『日本のゲイ・エロティック・アート vol.3』の準備で、『さぶ』の山と格闘中。
 メインの目的は、高蔵大介さんのイラストのセレクトなんですが、それ以外にも、初期に活躍していらした鈴木節さんの作品とか、幾つか抑えておきたいものがあるので、古くは昭和50年代年代初頭のバックナンバーから紐解いております。
 というわけで、薄い中綴じの頃から、平綴じになったけれどまだ薄い頃、厚みを増していった頃、表紙絵が三島剛さんから木村べんさんに変わった頃、本文印刷が活版からオフセットに変わり用紙も変わった頃……と、歴代の『さぶ』を、開いては閉じ、付箋を貼っては積み重ね……といった作業の繰り返し。

 しかし、改めて創刊当初の『さぶ』を見ると、ゲイ雑誌誕生以前の「よろず変態雑誌」の頃の香り、つまり『風俗奇譚』とかと同種のテイストが、まだけっこう残っていますね。
 最初期の『さぶ』で小説挿絵を描かれている「風間俊一」という人は、おそらく、『日本のゲイ・エロティック・アート vol.1』で採り上げた江戸川重郎や、『vol.2』の天堂寺慎などと同様に、ヘテロ雑誌に描かれていた職業イラストレーターでしょう。イラストレーション的に手慣れたテクニックと、男性のエロティシズムをフェミニンに描写しているという特徴が、全く共通しています。
 また、『風俗奇譚』などでは良く見られるものの、私がリアルタイムに親しんだ80年代以降の『さぶ』では全く見られなくなっていた、素人女装の投稿告白などという記事も、この頃の『さぶ』には、まだ僅かながら載っていますし、アメリカのフィジーク誌から転載したと思しき、ブルース・オブ・ロサンジェルスの写真や、エチエンヌやトム・オブ・フィンランドのイラストレーションが載っているのも、やはり『風俗奇譚』と同じです。
 とはいえ、そういった記事と並行して、日本のゲイ・エロティック・アーティストたちも、『vol.1』で採り上げた三島剛は、もちろん創刊号から参加していますし(三島剛さんは『さぶ』という誌名の名付け親でもあります)、『vol.2』の林月光、遠山実、児夢(GYM)といった面々も、すぐに誌面に登場します。
 また、長らく『さぶ』の名物コーナーだった読者の投稿写真ページ「俺のはだか」や、森本浩史さんの「縄と男たち」なども、中綴じの頃から既にスタートしているし、小説執筆陣にも、花田勇三さん、土師志述さん、愛場幹夫さん、いけはらやすあき&でぶプロさん、真須好雄さん……といった、平綴じになってからの『さぶ』でも見覚えのある名前が、既に登場しています。
 こういうのを見ていると、それからおよそ十年後、私がデビューした頃の『さぶ』とも、シームレスな繋がりを感じられて、ちょっと嬉しい気分になりますね。まるで、両親や親戚の若い頃の写真アルバムを見ている気分。

 中綴じ時代の『さぶ』は、総ページ数が160ページ程度と、薄い本ですが、中身の方は、本の厚さと反比例するかのように、実に濃厚な印象。
 というのも、まず、イラストレーションの扱いが大きい。カラーやモノクロのグラビアページを使って、前述したような錚々たる作家陣が、その腕と妄想力をふんだんに発揮してくれている。
 例えば、昭和53年8月号を例にとると、この号だけで、三島剛さんの褌テーマの巻頭カラー口絵4ページ、林月光さんの巻末カラー絵物語「月光・仮面劇場」4ページ、児夢さんの学ランテーマのモノクロ連作口絵4ページ、水影鐐司さんのラグビー部テーマのモノクロ連作口絵4ページというゴージャスさ。
 更に、児夢さんと水影さんのカラーイラストも1ページずつ。小説挿絵では、三島さん、林さん、水影さんの他に、前述した『vol.3』収録予定の鈴木節さん、更には吉田光彦さんや渡辺和博さんといった『ガロ』系の方々まで。
 男絵好きにとっては、これはもうたまらなく魅力的な誌面。
 また、本文に情報ページや広告ページが殆どなく(メイトルームの数も、まだ200そこそこと、決して多くない)、読み物ページは主に小説に占められ、加えて、その小説のラインナップが「濃い」のも、雑誌全体の充実感に繋がっているようです。
 この頃の『さぶ』には、現代物の恋愛小説とか、エロな体験告白といった、昨今でも良く見かける「身近」な設定の小説も、もちろんあるんですが、それと同じくらい、いや、ひょっとしたらそれより多いくらいの比率で、時代物、任侠物、軍隊物……といった、今どきでは殆ど見られなくなった、フィクション性の強い設定の小説が掲載されている。中には、時代物伝奇小説の連載まであったり。
 これらの小説は、ポルノ的なエロ描写そのものに限って言えば、今読むと実に「大人しい」ものなんですが、反面、情景描写や情緒表現を含めて、しっかり「小説」にしようという心意気の感じられるものが多く、即物的なポルノグラフィーとはまた違った味わいがあります。

 そんなこんなで、今回の目的は、あくまでもイラストレーションのセレクトだけのはずなのに、ついつい文章も読みたくなっちゃって、難儀しております。読み始めたらきっと止まらなくなって、作業がぜんぜん進まなくなっちゃいますから、もう、我慢我慢の日々(笑)。
 それでもやっぱり、花田勇三さん(叙情的な筆致でホモソーシャル的な世界を薫り高く描いた、「男と男の叙情誌」という『さぶ』のキャッチフレーズを体現するような作家)とか、渚剣さん(任侠や軍隊といった男っぽい世界を舞台に、凌辱・拷問・切腹といった男責め小説を描いた作家)の小説が出てくると、「ちょっと休憩がてら……」とイイワケして、一、二編、読んじゃったり(笑)。
 あ〜、作業がはかどらない(笑)。