SM&拷問」カテゴリーアーカイブ

つれづれ

 タコシェの中山さんからフランス土産で、毎年発売されているフランスのラグビー選手のヌード・カレンダー、“Dieux Du Stade”の2010年版を戴きました。このブログでも以前に、SMっぽかった2008年版をここで紹介していますが、今回でもう10周年だそうな。
 2010年版のカメラマンは、トニー・デュラン(Tony Duran)という人。コマーシャル・アート全般にイマイチ興味を失ってから久しい私には、ちょっと聞き覚えのない名前だけど、ファッション・フォトグラファーとしては有名なのかも。今度、現役のアート・ディレクターやってる友人に聞いてみよう(笑)。
 写真の方は、極めて口当たりの良いピンナップ系。あまり、これといった特徴は感じられないけど、逆にクセやアクもないので、カレンダーとして壁に掛けておくには、丁度いい内容かも。ひたすら、美しい筋肉を身に纏ったスポーツ選手の、セクシーでキレイなメールヌード写真のオンパレード、といったカンジです。
 ソロやらデュオやらトリオやら、凝ったポーズやら変わったシチュエーションやらもありますが、個人的に最も目を惹かれたのは、ここいらへんの「シンプルなメールヌード+ラグビーボールだけ」というシリーズ。男の裸ってのは、何もせずただそこに在るだけで、それだけで充分美しいもんであります。
 ああ、それと今回は、四つ折りのポスターもオマケで付いてました。ただでさえデカいカレンダーなので、ポスターを拡げるとかなりの迫力。
 日本での入手先は、残念ながらちょっと判らず。
 現在発売中の雑誌『映画秘宝』12月号の、大西祥平さんの連載コーナーで、拙著『髭と肉体』を紹介していただきました。ありがとうございま〜す。
 同誌に載っている大西さんのもう一つの連載「評伝・小池一夫伝説 Returns」も、毎回毎回読むのが楽しみなんですけど、え〜、私まさに、『実験人形ダミー・オスカー』って、絵やシーンは良く覚えているけど、んじゃいったいどーゆー話だったのかが判らない……ってなパターンです(笑)。とゆーわけで、来月の後編が楽しみ!

映画秘宝 2009年 12月号 [雑誌] 映画秘宝 2009年 12月号 [雑誌]
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2009-10-21

 そう言えば、この『ダミー・オスカー』が連載されていた頃の『GORO』に、確か西村寿行の『去りなんいざ狂人の国を』が連載されていたんじゃなかったっけか。オンナノコのヌード写真やフツーのエッチ記事はそっちのけで、この小説でコーフンしまくった記憶があって、しかもそれが西村寿行との初邂逅だったような気が。
 寿行センセなくしては今の田亀源五郎はいない、ってなくらい、私にとっては、セクシュアルな意味でトラウマ級の作家さんなので、この『去りなん…』も、ものごっつうオカズにさせていただきました。
 特に後半の乱痴気パーティーのシーンでの、「マフィアのボスを全裸にして、肛門にローソクを立てて人間燭台にして辱める」とか、「捕らえた刑事二人(だっけか?)に、相互ホモセックスを強要する」シーンなんか、未だに思い出すだけでムラムラくる(笑)。

去りなんいざ狂人の国を (角川文庫)
価格:¥ 652(税込)
発売日:1981-01

 デアゴスティーニの『三代怪獣 地球最大の決戦』購入。
 例によって、隣の相棒の「この人は、往年の大スターだよ」とか「この人は、東映時代劇の悪役ばっか演ってたんだよ」とか「この人は、国策映画で銃後の母を良く演っていたんだよ」とかいったオーディオ・コメンタリー付きで鑑賞(笑)。
 ガキの頃は、とにかく特撮と怪獣プロレスに夢中だったけど、改めて見ると、テレビのチャンネルを変えるために、夏木陽介の身体を跨ぐ(ってか覆い被さる)星由里子……とかゆー、些細な日常リアル演出が良いな〜、なんて感じたりして。
 二号続けて買っちゃったけど、次回の『海底軍艦』は、既にDVDを購入済みなのでスルー。
 いつものようにタバコをカートンで買ったら、こんな箱で渡されてビックリ(笑)。

“Taras Bulba” 『隊長ブーリバ』2009年版

dvd_taras-bulba
“Taras Bulba” (2009) Vladimir Bortko

 前に「気になる」とティーザー・トレイラーを紹介した、ゴーゴリの『隊長ブーリバ(タラス・ブーリバ)』のロシア版新作映画。
 前は「TV映画らしい」と書きましたが、劇場公開作(それもかなりの大作)でした。公式サイト(ロシア語)はこちら
 今回、英語字幕付きロシア盤DVD(米amazonで購入可能を入手したので、目出度く鑑賞(笑)。

 ユル・ブリンナー主演の62年版は、面白いんだけど、実はゴーゴリの原作とはかなりかけ離れた内容(ユル・ブリンナーの映画を先に見た私は、後から原作を読んで、その余りの違いにビックリギョーテンいたしました)だったのに対して、今回のロシア版は、かなり原作通りの内容です。
 原作に忠実ということを基本にして、そこに必要最小限のアレンジやトッピングを加え、それを一大視覚絵巻として見せる……といったスタンスの作品なので、原作既読者ならばお楽しみも倍増でしょう。じっさい私も、映画観賞後に小説を再読してみたら、かなり細かなディテールまでフォローされていて驚きました。

 物語の舞台は、15世紀から17世紀にかけて、ポーランドと戦闘状態にあったウクライナ。
 ウクライナ・コサックの老勇者タラス・ブーリバの家に、キエフの大学で学んでいた二人の息子、オスタップとアンドリイが帰ってくる。立派な若者に成長した息子たちを、更に一人前のコサックにするために、ブーリバは二人をザバロジエ(地名)のセーチ(軍事共同体村落のようなもの)へと連れていく。
 セーチでのコサックたちの荒々しく好戦的で、しかし自由闊達な暮らしぶりが描かれる中、ポーランドのウクライナへの侵攻の報がもたらされる。コサックたちは軍を挙げ、やがてポーランド軍が立てこもるドウブノを包囲する。しかしドウブノには、次男坊アンドリイがキエフ時代に恋に落ちた、ポーランド人の美女がいた。
 こういった状況を背景に、ブーリバと長男オスタップとの親子の絆や、次男アンドリイと敵の美女の恋愛、そしてブーリバとの相剋などが、叙事詩的に描かれます。

 映画としては、ゴーゴリの原作同様に、祖国愛や男の生き様といったテーマをストレートに謳いあげた、極めて力強い作品。
 反面、19世紀中頃に書かれた小説に忠実であるがゆえに、21世紀に制作された映画として見たときには、いささか「問題」が生じている感もあります。その一例として、この映画が「プロパガンダではないか?」という批判が出てしまったようですが、これに関しては後述します。
 まあ、良くも悪くも原作に忠実で、下手に現代的な視点で「解釈」して「翻案」したり、或いは、リスクを恐れて「無難」にしたり、マーケティング的な理由で「迎合」したりといった、「配慮」めいたものが殆ど見られないので、表現手法としては、昨今のロシア製大作映画同様に、ハリウッド的なそれなんですが、内容的には、ハリウッド映画とは違った魅力がタップリ。
 映像的には、エピック的なスケール感がバツグンで、セットもモブも質量ともに充分以上です。
 そもそも風景からして雄大なわけで、そんな地平線を生かしたワイド画面の中を、騎馬のコサックの大群が駆け回る絵面は、もうそれだけでも一見の価値はあり。
 スペクタクル・シーンであるドウブノ攻城戦は、カメラがCGI的なアクロバティックな動きをしないことや、CGIもおそらくほとんど使われていない(使っているのは爆発シーンくらい?)せいもあって、いかにも物量タップリの肉弾戦といった迫力があります。そんな中で、兄オスタップが城壁に引っかけた鉤縄を、弟アンドリイが上から落とされる石をよけながらよじ登り、兄が城壁から落とされてしまったところを、弟が腕を掴んで助ける……なんてドラマが描かれると、もう見ているこっちも燃えまくり(笑)。
 野戦シーンは、徹底してリアリズム準拠の血生臭さ。胸は撃たれるは、喉はかっ切られるは、槍はブッ刺さるは、首は飛ぶは……ってなシーンが、血糊も特殊メイクもふんだんに繰り広げられます。迫力はもちろん、オッカナイや痛いもタップリ。そんな中で、原作準拠の叙事詩的なセリフの様式美も再現されるんですが、ここは嬉しい反面、様式美とリアリズムの間に齟齬も生じている感じ。これに関しても後述。

 血生臭いといえば、後半のワルシャワでコサックたちが処刑されるシーンも、かなりのものです。四肢の切断、鉄釜に入れて焼き殺し、粉砕刑の後に鉄鉤吊るし……といった処刑の数々は、気の弱い人は見ないが吉。責め場っつーより惨殺場なので、見る人を選ぶとは思いますけど、個人的にはかなりの高ポイントです。
dvd_taras-bulba_scene
 で、その中に原作小説でも白眉の感動シーン(本を読んだとき、私はここで泣きそうになった……)があるんですが、映画でも、役者の力強い演技も相まって、オッカナくて痛いながらも、同時にド感動という、メル・ギブソンの『ブレイブハート』もかくやという名場面に。もう一つ、火刑のシーンもありますが(小説をお読みの方なら、どういうシーンだか判るはず)、これまた雄大な風景をたっぷりと生かした絵面といい、交わされるセリフといい、やはりなかなかの感動シーンに。
 なんかね〜、ここいらへんは思っくそツボを突かれてしまった感アリで、もう「ひぃ〜!(怖)」で「おぉ〜!(涙)」で「きゃ〜!(♥)」ってなカンジでした(笑)。視覚的な残酷美というより、状況やセリフも含めた「無惨の美学」に、もう心が鷲掴みに。
 もちろん、ロマンティックだったりビューティフルだったりクワイエットだったりするシーンも多々あるんですが、そっちは割と標準的な出来なので、どうしても激しいシーンの方が印象に残っちゃうかなぁ。

 役者さんは、いずれも好演。
 タラス・ブーリバ役のボグダン・ステュープカは、『ファイアー・アンド・ソード』や、『THE レジェンド 伝説の勇者』などに出ていた人で、どうやらウクライナ人の役者さんらしいです。
 ユル・ブリンナーとは全くイメージが異なりますが、これはそもそもユル・ブリンナー版のタラス・ブーリバが、原作小説とはかけ離れたキャラクターのせいで、このボグダン・ステュープカ演じるタラス・ブーリバは、老いてなお勇猛な肥大漢という、原作通りの人物です。威厳と荒々しさを併せ持ち、時に悲哀も覗かせながら、文句なしの好演。
 オスタップ役のウラジーミル・ウドヴィチェンコフは、『バイオソルジャー』なる映画に出ているようですが、私は今回が初見。男っぽい顔立ちと立派な体格を生かして、これまたかなりの好演。
 アンドリイ役のイゴール・ペトレンコは、『ウルフハウンド 天空の門と魔法の鍵』にも出ていましたが、その後に見た同じニコライ・レペデフ監督の『東部戦線1944』(あんまりな邦題で損をしていますが、なかなか心に染みる佳品。今なら500円DVDで買えるし、恐ろしすぎる名作『炎628』の、あの少年が成長して出演もしているので、ロシア映画好きにはオススメの一本)の方が印象深い。ナイーブさのある二枚目なので、これまた役柄に良く合っていて好演。
 アンドリイが恋に落ちるポーランド美女役は、ポーランド版『クォ・ヴァディス』でヒロインのリギアを演じていたマグダレナ・ミェルツァシュ。8年経って娘らしさは少し消えましたが、相変わらずの「男好きがする」系美人さん。今回はオッパイも披露。
 脇を固める連中も、コサック連中はいかにもそれらしげな、味わい深い顔つきをしたアンチャン、オッサン、ジイチャンが勢揃いで、画面の説得力を高めるのに大いに一役買っております。
 ただ、コサック側にしろポーランド側にしろ、独特のヘアスタイルとヒゲの形の印象がキョーレツ過ぎて、ちょいと誰が誰だか判んなくなるきらいはあり。IMDbを見ると、『パン・タデウシュ物語』と『THE レジェンド 伝説の勇者』で印象深かったダニエル・オルブリフスキーも出てたみたいなんだけど、正直どの役だったか未だに判らない(笑)。

 そんなこんなで、映画(や小説)の軸である「男らしさ」や「○○魂」や「愛国心」に拒否反応がある方や、血や野蛮が苦手な方は、正直なところパスした方がいいと思いますが、個人的には大満足でした。
 YouTubeに新しい予告編があったので、下に貼っておきます。

 日本盤、出るといいなぁ……。

 因みに、原作小説はこちら。

隊長ブーリバ (潮文学ライブラリー) 隊長ブーリバ (潮文学ライブラリー)
価格:¥ 1,000(税込)
発売日:2000-12

 では、後述すると言った二つについて。

 まずはプロパガンダ云々の方。
 じっさいIMDbでも米amazonでも、そういった批判を読むことができますし、結果として評価も、最高点と最低点、共に多い。
 またゴーゴリ自身、ロシア文学の作家として知られてはいるものの、出身はウクライナだということも、ソビエトが崩壊してウクライナが独立した現在、ウクライナ・コサックに題を採りながら、ロシア魂を高らかに謳いあげているこの作品の評価に、影を落としている感じ。
 更にこの映画は、ゴーゴリの生誕200周年の年に、ロシア文化庁の後援によって作られた、ウクライナ映画ではなくロシア映画なので、プーチン政権下の現在だと、なおさら民族統一的なプロパガンダだという批判が起きても、ある意味やむなしといった感はあります。
 とはいえ、指摘されているような「ロシア魂」の強調は、ゴーゴリの原作自体にも色濃く見られる要素ですし、逆に、小説に出てくるポーランド人やユダヤ人への偏見(小説を読んでいると、たまに地の文で「この美人は、ポーランド女のつねで、軽率だった」とか「蛆虫のようにユダヤ人の魂にまつわりついている、黄金に対する不断の妄念」とかいった文章に出くわすので、ギョッとします)は、映画からは排除されています。
 特にポーランドに対しては、映画では小説にはないオリジナル・エピソードを加え、人物像を膨らましていたり、憎み合いから和合への示唆を入れたりしているので、私個人としては、プロパガンダ臭は感じませんでした。
 ただ、被抑圧者としてのコサックという像は、原作より映画の方が強調されており、同時に、コサック自体の残虐さ(原作では、ブーリバは復讐と弔いのために、ポーランド人の女子供まで、残酷な方法で惨殺する)は排除されています。おそらくこれは、政治的な意図というよりマーケティング的な要因だと思われますが、厳密な視点からすると、他であれだけ原作に忠実であるだけに、この変更は、完全にニュートラルな姿勢によるものとは言えない感じはしますね。

 次に、叙事詩的な様式美と映画的リアリズムの齟齬の方。
 映画と小説両方のネタバレを含みますので、お嫌な方は、これ以降はお読みにならないように!
 原作には劣勢に陥ったコサック軍にブーリバが「火薬はまだあるか? サーベルは鋭いか? コサック魂はまだ潰えていないか?」と呼びかけ、それに部下たちが一人ずつ「大丈夫です、コサック魂はまだ潰えておりません!」と答えながら、しかし刃に斃れていき、このやりとりが幾度も繰り返されるという場面があって、ここはかなりグッとくるシーンなんですが、これは映画でもそのまま踏襲されています。
 ただ、文章ならば良いんだけど、リアリズム準拠の映像でこれをやられると、何だか、ブーリバが呼びかけたせいで部下たちの動きが止まってしまい、その隙に殺されてしまうように見えてしまうんですな。
 それと、死んでいく男たちに対して、その一人一人の出自がナレーションで入るんですが、これも原作と同じではあるものの、映画としては、やはり不自然な感は否めない。また、そうやって情緒面を刺激された後、コサックたちが皆「ロシアに栄光あれ!」と言って死んでいくので、これも原作どおりなんですが、そこがよりプロパガンダ的な印象に繋がっている感はあります。
 もちろん、こうした齟齬だけではなく、逆に、原作小説の視覚的なアダプテーションとしては、感心させられる部分も多々あるので、そんなところも映画の大きな見所の一つなんですけど。

『W(ワンダースリー)3』手塚治虫文庫全集版

 本屋に行ったら、手塚治虫文庫全集の第一回配本が並んでいたので、『W(ワンダースリー)3』(以下『W3』)全二巻を購入。

W3(1) (手塚治虫文庫全集 BT 15) W3(2) (手塚治虫文庫全集 BT 16)

 最大のお目当ては、2巻に収録されている「少年マガジン版」の復刻。
 馴染みのない方に簡単に説明しますと、『W3』は最初は「週刊少年マガジン」に連載されていたものの、とあるトラブルによって連載が中断、仕切直しを経て「週刊少年サンデー」で再連載されたという経緯があり(詳しくはWikipediaの「W3事件」でも見てください)、これまで単行本等で読むことができたのは、「少年サンデー版」の方。
 で、今回の文庫では、1巻と2巻の中途まで従来の「少年サンデー版」ベースの全編を収録し、2巻の後半に「少年マガジン版」の雑誌掲載分を復刻、という形になったもんですから、ウホウホ喜んで買ってきたわけで。

 まあ、未収録分を読むというためだけなら、2巻だけを買っても良かったんですけど、私の持っている『W3』の単行本(秋田書店サンデーコミック版)は、何てったって自分が小学生の頃(笑)に買ったものですし、実家に置いてあって手元にはないから、1巻も一緒に買いました。あともう一つ、あんまり大きな声では言えない個人的事情もあるんですが……それは後述(笑)。
 というわけで、「少年マガジン版」を全部読むのはこれが初めて(第一話の冒頭だけ何かで見た記憶あり)なんですが……
 ナルホドねぇ、これまで自分が読んでいた最終版の『W3』では、主人公・真一(および小川村を巡るアレコレ)と、主人公の兄・光一(および秘密組織フェニックスを巡るアレコレ)の間に、どこか微妙に埋まりきらないような齟齬を感じていたんですが(とはいえ、そういった齟齬……具体的に言うと、前近代的な日本の農村風景と、モダンな国際スパイ映画的な世界と、銀河スケールのSFテイストが、ひとかたまりになったストーリー……も、私にとっての『W3』の魅力の一つなんですけど)、当初の「少年マガジン版」では、こういった絡みかたをしていたんですか。これならきちんと繋がるなぁ。納得。

 作劇法の差異も興味深くて、モノガタリ全体の輪郭を最初から露わにしている最終版に対して、「少年マガジン版」は、謎の提示を冒頭に置き、関係の読み取れない複数の事象を並行して進行させ、やがてモノガタリ全体の大きな輪郭が見えてくる……という作りになっていて、これはかなり惹き込まれる。以前どなたかが(確か、みなもと太郎氏だったと思うけど)、「仕切直し後(つまり最終版)の『W3』を読んで、「少年マガジン版」との違いにガッカリした」といったようなことを、書かれているのを読んだ記憶がありますが、なるほど、その気持ちも判ります。
 ただ、作劇が魅力的とはいえ、同時に、光一青年とフェニックスの関わりとかは、今となっては荒唐無稽に過ぎる感もあるので、そこいらへんのディテールを割愛してモノガタリの枠外に置いてしまった最終版の方が、やはり「正解」なのかな、って気はします。それに、真一少年のキャラクターも、「少年マガジン版」のあか抜けたカッコイイ少年よりも、やっぱ最終版の、『無法松の一生』か『けんかえれじい』かってな、不器用で無骨(少年の形容には相応しくない言葉ではありますが)な少年の方が、私にとっては魅力的。

 しかし、改めて読んでみると、小川村のアレコレとか、エンディングのムードとか、ガキの頃に読んだときよりも、大人になった今の方が、ノスタルジーとかいろいろ入り交じって、なんか、しみますね。
 さて……と、前述した「私が1巻も買った大声では言えない理由」ですが……ま、判る方にはお判りですよね(笑)。毎度毎度こんなネタで申し訳ないんですけど、幼心にもアレ的にムズムズしたという意味でも、この『W3』には思い入れがありまして。
 この文庫全集版で言うと、210〜211ページ、285〜288ページあたりがソレなんで、お手持ちの方はご確認あそばせ。二つあわせて見ると、思っくそご納得いただけると思います(笑)。
 しかしまあ、久しぶり(20年ぶりくらい?)に再読したんですけど、我ながらホント、三つ子の魂百までとゆーか、雀百まで踊り忘れずとゆーか、自分の「変わってなさ」に呆れてしまう(笑)。

最近のイロイロ

 最近見たDVDの中から、テーマ別(笑)にイロイロとピックアップ&一口メモ。

復讐無頼~狼たちの荒野 スペシャル・エディション [DVD] 『復讐無頼 狼たちの荒野』ジュリオ・ペトローニ

 最近見た祝日本盤発売。
 映画の内容(……と、責め場)については、前にここでイタリア盤DVDと一緒に紹介済み。
 ちょいと補足しますと、前回「圧制者としての官と自由を求めて闘う農民というシンプルな構図」と書いたんですが、改めて日本語字幕付きで見たら、そういった中にもきちんと、システムのもたらす矛盾や、大義を利用することへの批判とかいった、社会派的に硬派な要素も、サラリとですけど入っていました。英語のヒアリングのみだと、そこまで拾いきれなかった。
 というわけで、初見時よりも後味が更に感動的に。やっぱ革命は燃える(笑)。
 あと、ヘンリー医師役のジョン・スタイナー、前回「『悪魔のホロコースト』と『炎の戦士ストライカー』は見たことあるはずなんだけど、正直ちっとも覚えてない」と書きましたが、今回DVD特典のキャスト解説に、ダリオ・アルジェントの『シャドー』が入っているのを見て、相棒と二人同時に「ああ、あの斧でアタマをカチ割られる!」と叫んでしまった(笑)。

狼の時刻 (特別編) [DVD] 『狼の時刻』イングマール・ベルイマン

 最近見た映像美。
 島暮らしの画家(マックス・ フォン・シドー)が奇怪な城の住人たちと関わりあって、次第に精神に変調をきたしていく様子を、妻(リヴ・ウルマン)の目を通して描いた内容。
 ホラー的な内容ではありますが、モノガタリやロジックからくる恐怖ではなく、映像効果からもたらされる感覚的な「不安感」や「不気味さ」に特化した内容。
 何といっても、後半の城の中を彷徨う、怪奇幻想シーンの美麗さが素晴らしい。その美しさに、見ていてゾクゾクしっぱなしでした。中盤に出てくる、サイレントによる不条理な殺人劇も忘れがたし。
 個人的偏愛映画の殿堂入り、決定。

dvd_Henry8 『キング・オブ・ファイヤー』ピーター・トラヴィス/ピーター・ミドルトン
(『ブリティッシュ・キングダム DVD-BOX』収録)

 最近見た責め場。
 酷い邦題ですが、原題は”Henry VIII”なので、つまりヘンリー八世の生涯を描いた、グラナダTV制作の歴史ドラマ。英国史劇では毎度お馴染みの、カトリックとプロテスタントの確執に加えて、有名な六人の妻も加わるもんだから、ドロドロ模様は更にパワーアップ。
 キャスト良し、美術や衣装良し、内容すこぶる面白くて良し……の、上質なテレビ映画。192分タップリ楽しめるので、歴史好きなら見て損はなし。ヘンリー八世役のレイ・ウィンストンは、見た目も肖像画で周知のイメージに近いし、トンデモナイヤツなのに人間的な魅力も感じさせるあたりは、なかなかのもの。ジャケ写になってるもう一人、ヘレン・ボナム=カーターはアン・ブーリン役。
 責め場は二ヶ所。まず、二枚組の前編。ダンジョンで白髯の老紳士が、上半身裸の両手吊りで焼きゴテ拷問。
henry8_1
 続いて後編。屈強な壮年弁護士(……っても見た目は騎士ですな)が、上半身裸で城門に吊され、三日間死ぬまで晒し者に。こっちは被虐者はショーン・ビーンだし、公開処刑なのでギャラリーもいるし、城門のスケール感(本物の城かな?)も相まって、極めて滋味あり。
henry8_2
 あと、責め場じゃないですが、主演のレイ・ウィンストンが、演技の良さもさることながら、実に量感タップリのオイシソウな肉体で、しかも尻丸出しの全裸シーンもあるので、太目年配系ヒゲ熊好きだったら、眼福間違いなし(笑)。こんなにオイシソウな身体してるんなら、ゼメキス版『ベオウルフ』の全裸戦闘シーンも、3DCGじゃなくてご本人の姿で見たかったぞ(笑)。
 因みに、同DVD-BOX収録の別作品『レジェンド・オブ・サンダー』も、これまた責め場と、あとホモ絡みもあり(笑)。

さよならS(エス) [DVD] 『さよならS』エリック・ゾンカ

 最近見たイラマチオ。
 パン職人見習い生活に嫌気のさした若者が、道を踏み外してギャングの仲間に入るが、やがて抜き差しならない状況になり……という内容。
 ストーリー的にはクライム・ムービーっぽいけど、そのテの話としては、ギャングたちのすることが、さほどダークだったり非情だったりするわけではないので、映画の感触も青春映画っぽい感じです。その分、クライマックスはけっこうショッキングなんですけど、事後の処理が良くて後味は爽やか。短い映画だし(一時間ちょいしかない)小品ではあるけど、好感の持てる佳品でした。
 で、主人公の青年(と言うよりは、少年と青年の中間くらいって感じ)が、ギャングの兄貴分に拳銃突きつけられて、強制フェラチオ(つまりイラマチオ)させられるシーンあり。
 作劇的には「酷いことをされる」シーンなんですが、厄介なことに私の性癖からすると、キズ面ヒゲ面コワモテの粗暴な男に、道具のように手荒く扱われてセックスするってのは、思っくそコーフンするシチュなので、見ていて「酷い」どころか「羨ましい」と思ってしまった(笑)。加えてこの悪役、ルックスがイケるうえに、怪我で片手が不自由というフェチツボも押してくるし……困った困った、私的には監督の意図と正反対の反応しかできないぞ、このシーン(笑)。

最近の責め場

 備忘録を兼ねて、最近見たDVDの中から、責め場があったヤツだけ(笑)をピックアップ。
 映画そのものの感想は、今回は超簡易版で(笑)。

ヒラリー・スワンク IN レッド・ダスト [DVD] 『ヒラリー・スワンク IN レッド・ダスト』

 真面目で社会派で感動的で、しかも考えさせられるという、フツーに良い映画。
 アパルトヘイト下の南アフリカで、主人公の黒人政治犯とその若い友人が、半裸で殴る蹴る&麻袋被せられて水責めの拷問に。フラッシュバックなのでカットは短いですが、残酷度は高し。

アイバンホー [DVD] 『アイバンホー』

 サー・ウォルター・スコット原作、BBC制作の、真面目な中世騎士もの。いささか地味ではありますが、このテのコスチューム・プレイが好きだったら、充分に楽しめる内容。
 しょっぱなからいきなり、髭マッチョ主人公の半裸フロッギング・シーンでスタート。二枚組DVDだったから、再生するディスクを間違えたかと思った(笑)。

地獄で眠れ [DVD] 『地獄で眠れ』

 チャールズ・ブロンソン主演の、モノガタリのディテールが何もない(笑)B級アクション映画。
 これまたしょっぱなっからいきなり、鬼畜医師による拷問の公開デモンストレーションでスタート。細身の髭男が全裸でバーに吊され、血を吐いて死ぬまで電気拷問。このシーン、ちらっとですけど「見え」ます(笑)。

キング・オブ・バイオレンス [DVD] 『キング・オブ・バイオレンス 』

 バイオレンスの連鎖を描いた、シニカルなサスペンス映画。ヘンな話なんだけど、けっこう面白かった(笑)。
 拉致監禁された主人公の青年(なかなかいい身体)が、白ブリーフ一枚で椅子に縛り付けられ、頭にウレタンマットを巻かれ、顔面が変形するまでゴルフクラブでブッ叩かれ続けます。監禁シーンは長く、その間ずっと汚れ下着一枚で虫ケラ扱い。

イラク-狼の谷- [DVD] 『イラク-狼の谷-』

 トルコ人のヒーローが、アメリカ相手に活躍するアクション映画。善悪が紋切り型ではあるけれど、娯楽映画としては手堅い作り。
 アブグレイブ刑務所の囚人虐待を再現。強制脱衣(全裸)や、放水責め、人間ピラミッドなど。被虐者の中には太目白ヒゲ熊オヤジ(これまたちらっと「見え」ます)も。

サーズデイ [DVD] 『サーズデイ』

 足を洗ったワルが、かつての仲間に巻き込まれて、スッタモンダの一日を過ごす、ブラックユーモア満載のクライム映画。
 主人公(『パニッシャー』や『ミスト』のトーマス・ジェーン)が、エロ女に椅子に縛られて逆レイプ(ただし着衣)。その後、髭面の快楽殺人鬼(けっこういい身体)に、電ノコで切り刻まれそうになりますが、こちらは未遂。

レストストップ デッドアヘッド [DVD] 『レストストップ デッドアヘッド 』

 アメリカの田舎で、ドライブ中のカップルが殺人鬼に出くわし、追いつめられたヒロインが逃げまくるとゆー、新味も何もないホラー映画。ヘンに超常っぽい要素も入っているんだけど、新味というより悪あがきとしか(笑)。
 殺人鬼に拉致された青年が、全裸で台上に固定され、カッターで肌を切られたり、ニッパーで舌を切り取られたりという、『ホステル』系の猟奇拷問あり。

レディダルタニアン 新・三銃士<ノーカット完全版> [DVD]” /></a></td>
<td valign=『レディダルタニアン 新・三銃士』

 ダルタニアンと三銃士の子供たちが活躍するとゆー、デュマの二次創作みたいな話。悪役までいちいち、オリジナル版に対応させるようなキャラで揃えていたり、老いたダルタニアン役が、リチャード・レスター版と同じマイケル・ヨークだったりするので、ますます二次創作臭がプンプンと(笑)。でも、罪のない娯楽作としては、気楽に楽しめました。
 捕らえられた若い銃士(なかなかいい身体)が、上半身裸でダンジョンのトーチャー・ラックに。拷問そのものではなく事後シーンのみですが、雰囲気は佳良。

地球外生命体捕獲 [DVD] 『地球外生命体捕獲』

 ヘンな映画(笑)! かつて宇宙人にアブダクションされて、生体実験をされ人生を狂わされた男たちが、逆襲して宇宙人をとっ捕まえて復讐しようとするが……なんてB級臭プンプンの話を、ヘンにもったいぶって描いております。そのもったいぶった部分と、宇宙人の着ぐるみに代表されるミモフタモナサの、アンバランスさがスゴくって、これを真面目に作っているとしたら、かなり「天然系」だと思うぞ(笑)。
 責め場ってのとはちょっと違いますが、ムサい系髭男が、宇宙人に腸を引きずり出されて綱引き状態という、珍シーン(笑)が。あと、髭の巨漢が身体を壁に釘で打ち付けられ、これまた腸を引きずり出されてる(でもまだ生きている)なんてシーンもあるけど、肝心の、アブダクションされて人体実験されてるシーンは皆無。

レックス・バーカー(Lex Barker)版ターザン映画のDVD

dvd_tarzan-lex-barker
 レックス・バーカー主演のターザン映画のDVD(アメリカ盤)が届いたので、ご紹介。
 ラインナップは、以下の5本。
『ターザン 魔法の泉 Tarzan’s Magic Fountain』(1949)
『ターザンと女奴隷 Tarzan and the Slave Girl』(1950)
『ターザンと密林の女王 Tarzan’s Peril』(1951)
『ターザンの憤激 Tarzan’s Savage Fury』(1952)
『ターザンと巨象の襲撃 Tarzan and the She-Devil』(1955)

 今年の3月に米ワーナー・ブラザースが始めた、ワーナー・アーカイブ・コレクションという、オンデマンド・サービスによるDVDです。
 オンデマンドDVDなので、ジャケットはプリンタ出力による簡素なもの。ディスクはDVD-Rで、メニュー画面もいたってシンプル。字幕や音声の切り替え等はなし、チャプターも10分刻みに機械的に入っているだけ。
 ただし、画質は(おそらく)ビデオソフト化時にレストアされたマスターを使っているので、制作年代を考慮しても充分に美麗です。多少のゴミや傷が見られるだけで、ハイライトのトビやシャドウのツブレは皆無、ディテールの再現性も上々。良くあるパブリック・ドメインの廉価DVDと比較すると、雲泥の差と言っても良く、ここらへんは流石に正規盤ならでは。
 ちょっと悔しいのが、米ワーナーのサイトから直接購入すれば、5本パックで買うと半額になる割引サービスがあるのに、日本からの注文は受け付けてくれない(ダウンロード購入なら、直接購入も可能みたいだけど、Macには対応していないみたい)ってトコ。仕方なく、米アマゾンで購入しましたが、そうすると割引サービスはなし。
 まあ、それでも買えるだけマシかな。

 というわけで、とりあえず『ターザン 魔法の泉』を鑑賞。
 秘境に存在する若返りの泉を狙う悪人と、その企みを防ぐターザンのストーリーに、アクション(ターザンの活躍)やスリル(ジェーンのピンチ)や笑い(コミック・リリーフとしてのチータ)が、満遍なく散りばめられる……という、ターザン映画のテンプレート通りの内容ですが、手堅く楽しませてくれました。
 ただ、スペクタクル性には、ちと欠けるかな。猛獣とターザンの取っ組み合いとか、象の大群の大行進とか、秘境にある遺跡のスケール感とか、そういったのもターザン映画のお約束なんですけど、そこいらへんはイマイチ食い足りない感もアリ。良くも悪くも、こぢんまりと纏まった感じはします。
 先代のジョニー・ワイズミューラーからバトンタッチした、10代目ターザン役者のレックス・バーカーは、ルックスはハンサムで、肉体もご立派。
 特に、ボディラインのしなやかな美しさという点では、先代ワイズミューラーや、この後のゴードン・スコットよりも上かも。アスリート系の肉体美好きなら、文句なしの眼福でしょう。何と言っても、徹頭徹尾腰布一丁で、シャツを着るシーンなんて一瞬たりともゴザイマセンので(笑)。
 ジェーン役のブレンダ・ジョイスは……う〜ん、残念ながら、あまり魅力は感じられない。さして美人でもないし、モーリン・オサリヴァンと比べると、かなり落ちるかなぁ。
 チンパンジーのチータは、コミカルなシーンではその芸達者ぶりを存分に見せてくれ、しかも決めるところではちゃんと大活躍。なかなかの名演です。

 さて、ターザン映画というと、ターザンがとっ捕まってふん縛られる……なんてのもお約束のシーンなんですが、そっちもちゃんと(笑)入ってます。
 今回ターザンは、結果として秘境に余所者を招き入れてしまったので、反ターザン派の住人たちは、彼が二度と秘境に来られなくするために、その目を潰してしまおうと企む。
 で、ターザンは、洞窟の岩場に磔に縛られ、目を焼き潰すための二叉の矛状の道具が炎で灼かれ……ってな展開になるんですけど、まあ責め場としてはアッサリめなので、これは残る4本に期待かな(笑)。
tarzan-magic-fountain_scene

『戦場からの脱出』

dvd_rescue_dawn
『戦場からの脱出』(2006) ヴェルナー・ヘルツォーク
“Rescue Dawn” (2006) Werner Herzog

 ヘルツォーク監督作品でクリスチャン・ベイル主演なのに、劇場公開なしのDVDスルーとは悲しいご時世。まあ、DVDで出ただけ良しとしますか。
 B級映画みたいな邦題と一緒に、パッケージにはデカデカと「戦争アクション!!」なんて書いてあります。
 確かに、ストーリーだけ抜き書きすると、ヴェトナム戦争で撃墜された飛行機のパイロットが、拷問されたり捕虜収容所に入れられたりして、とっても辛い目に遭いつつ、何とかそこを脱出するけど、今度は過酷なジャングルを生き抜かなければならず……という具合で、確かにB級アクション映画っぽいんですけどね。
 とはいえ、やっぱりヘルツォーク。
 いくら『コブラ・ヴェルデ』以降、何となくフツーっぽくなった感があるとはいえ、間違ってもコレは「戦争アクション映画」ではない。「戦争映画」ですらないかも。
 というのも、この映画における戦争や国家、政治や思想、敵や戦いといった要素は、単なる状況以上の意味はなく、映画のテーマとは全く関係ないのだ。では、テーマは何かというと、やはりヘルツォーク十八番の、大自然と拮抗しうる力を持つ、人間の狂気なわけです。

 そういうわけで、ヘルツォーク好きなら、見所はイッパイ。
 まず、冒頭のスローモーションによる空爆シーンからして、一気に魅了される。『アギーレ 神の怒り』の登山とか、『緑のアリの夢見るところ』の竜巻同様、「うぉ〜、ヘルツォークの映画だ〜っ!」って感じで、もうそれだけで嬉しくなっちゃう(笑)。
 本編に入っても、美麗で荘厳な自然描写(粛然とした前半も良いけど、やはり後半の圧迫感が、もうヘルツォークならでは)、徹底したリアリズム(捕虜たちの痩せっぷりとか、もうハンパねぇです)、緊張感と詩情の対比(蝶と犬の使い方が良かったなぁ)、等々、やっぱり素晴らしい。
 音楽はクラウス・バデルトなんですが、往年のヘルツォーク組で今は亡きフローリアン・フリッケ(ポポル・ヴー)の曲が、1曲使われていたのも嬉しかったなぁ。
 バデルトのスコアも悪くはないんだけど、例えばラスト・シーンで、余りにも単純な「実話を元にした感動作!」みたいな、いかにも風のテンションを盛り上げるスコアを付けちゃっているあたりは、正直ちょい疑問を感じました。主人公のセリフと暗転後のテロップによって、この映画で描かれているのは、「常軌を逸した生命力を持った人間の凄さ(或いは、異様さ)」だということが明示されるんですけど、この音楽だと「アメリカ万歳!」か「英雄の帰還!」みたいに、テーマをミスリードしてるみたい。

 まあ、この部分の音楽に限らず、全体として瑕瑾がないかというと、残念ながらそうではない印象はあります。
 主人公は、『アギーレ』や『フィッツカラルド』、あるいは『カスパー・ハウザーの謎』の主人公同様に、一般の規範や価値観から完全に逸脱した、常軌を逸した存在なんですが、それが充分に表現されていたかというと、いささか疑問が残る。
 主役のクリスチャン・ベイルは、文句なしに上手いし、役になりきった体当たり演技もあって、狂気と裏腹のエクストリームさもあるんですが、いかんせん、肝心の「生命力」があまり感じられない。キャラクターとしての「強さ」が、いまいち足りていないというか。
 また、前述したように、ストーリーを抜き出すと、シンプルな娯楽作の筋立てに近すぎること(まあ、実話なんだから仕方がないけど)も、結果として、映画の本質を曖昧にしてしまっているような気がします。
 そういう感じで、かつてのヘルツォーク作品を知っていると、共通する要素が多い分、どうしても比較もしてしまって、ちょっと「弱い」感じがしてしまう。『神に選ばれし無敵の男』のときは、逆に共通項が少ない分、問答無用で「傑作!」と思えたんですけど。

 でも、一本の映画として見れば、充分以上に見応えのある佳品なので、ヘルツォークのファンも、そうでない人も、ご覧になる価値は充分以上にあるかと。
『戦場からの脱出』(amazon.co.jp)
 最後に、いつものアレ系(笑)の追補。

 POWの映画なので、いちおう拷問シーン(縛られて牛に引きずられたり、逆さ吊りにされて顔に蟻塚を括り付けられたり)もありますが、リアリティや無惨さはともかくとしても、エロティックな興趣はゼロですので、ソッチ系好きの方は、あまり期待なさらないよう。
 ヴェトナム戦争POWモノの責め場が目当てだったら、『ランボー』シリーズ(スタローンがあんまり好きじゃないので、実は良く知らない)とか、チャック・ノリスの『地獄のヒーロー』シリーズとか(『3』の責め場はお気に入り)、あるいはもっとB級の『炎の戦士ストライカー』だの
cap_striker
『ストライク・コマンドー』だの
cap_strikecommando
『怒りのコマンドー』だの、
cap_ikari
もうちょい映画的にマトモなところでは『ハノイ・ヒルトン』とか
cap_hanoi1
『極秘指令/グリーンベレーを消せ!』とかを、
cap_green
ご覧になった方がヨロシイかと(笑)。

“Der Sohn des Scheichs”

dvd_sohn-des-scheichs
“Der Sohn des Scheichs” (1962) Mario Costa

 ゴードン・スコット主演、アラブを舞台にしたアクション・アドベンチャー映画の、ドイツ盤DVD。伊語原題”Il figlio dello sceicco”、英題”Kerim, Son of the Sheik”。
 イタリア語音声、字幕なしで鑑賞したので、細かな部分は良く判らないんですが、IMDbの解説によると、1860年代の中東で、カリフの座を狙う悪者オマールの陰謀と、オマールに妹を殺された青年カリムが、義賊となりオマールの陰謀に立ち向かう……という内容。

 ゴードン・スコットは、もちろん主人公カリム役。悪のヒロイン役に、毎度お馴染みのモイラ・オルフェイ。あと、スペシャル・ゲスト的な扱いで、ゴードン・ミッチェルもちらっと登場します。
 出ている面子から見ると、イタリア製ソード&サンダル映画(及びその周辺)の中でも、かなり安手な部類に入る感じですけど、この映画の場合は、どうやら全編エジプトロケを敢行しているようで、画面には、このクラスの映画とは思えない、スケール感と厚みがあります。
 まず、モブの人数が多い! ほんのちょっとしたシーンでも、近景から遠景に至るまで、その他大勢の人々がフレームインして蠢いている。
 おそらく、現地の人がエキストラをやっているんでしょうけど、何せ中東が舞台で、しかも制作が60年代初頭ともなると、皆さん普段から民族衣装なわけです。つまり、エキストラ用の衣装を用意する必要がなく、着の身着のままでOK。だから、これだけ大量のモブが調達できたのでは。
 人だけじゃなく、動物も同様。馬やらラクダやらロバやら山羊やら、まあとにかく出るわ出るわ。馬に関しては、軍の協力もあったのかも知れません。騎馬軍団の数も、多い多い。

 セットも、おそらくほとんど使っておらず、クライマックスの砦のシーンはセットだと思いますが、それ以外は、実在のモスクとか宮殿とか遺跡とかで撮っているんだと思います。市場や広場のシーンは、開発以前のカイロ旧市街(オールド・カイロ)っぽいし、オアシスや村落のシーンも、たぶん実在のもの。
 室内シーンも、かなり現地のものをそのまま使っているっぽいです。インテリアから小道具に至るまで、とてもゴードン・スコットやモイラ・オルフェイが出ているクラスの映画とは思えないゴージャスさ。
 また、観客が期待するような、観光映画的な側面も、しっかりぬかりなく抑えており、遠景にギザの三大ピラミッドが見えていたり、更には、サッカラの階段ピラミッドの前を、大量のアラブ騎馬軍団が駆け抜ける……なんて、実に豪華な画面も見せてくれます。
 スペクタクル映画にはつきものの、エキゾチックなダンスシーンも、この映画では3回も出てきます。うち二回は女性のベリーダンスで、残念ながら音楽は映画用の劇伴に差し替えられているんですけど、映像にはしっかり、ウードやカーヌーンやダルブッカといった、アラブの伝統楽器を演奏している姿が映っています。
 残る1回が、男性のダンスなんですが、これがタンヌーラというエジプトの民族舞踊でした。スーフィーの旋回舞踊のエンターテイメント版といった趣で、旋回しながらスカートのような円盤状の布を拡げ、それを身体から抜き取って頭上で廻すという踊りです。以前、エジプト舞踊の専門家の友人に、ビデオを見せて貰ったことがあり、見るのはこれで二回目。かなり印象に残っていた踊りながら、今まで再会の機会がなかったので、これは嬉しかった。加えてありがたいことに、このシーンの音楽は、ちゃんと同時録音(おそらく)されたものを使用。

 こういう具合で、セットや小道具にお金を使わずに済んだのか、メイン・キャラの衣装とか、馬具とか小道具の類とかも、このクラスの映画にしては、実に上質。前述した砦とか、ダンジョンのセットなんかも佳良。
 屋外に出たら出たで、前述した壮麗な建物はあるわ、ナツメヤシが林立するオアシスはあるわ、水平構図を存分に生かした砂漠のパノラマはあるわ。しかもそこを大量の人馬が駆け回るわけで、どのシーンをとっても、画面の重厚感がバツグン!
 よく見ると、オアシスの村が襲撃されるシーンなんて、映画用に設置したと思しきテントが燃えているだけで、あとは回りで人や動物が駆け回っているだけなんですけどね。でも、村の全景自体に説得力があるのと(実在のものだとしたら当然です)、前述したように、モブや動物の物量がタップリなので、ちゃんと一大スペクタクルに見えるわけです。
 いやいやホント、画面を見ているだけでも楽しい映画でした。

 マッスル映画としては、ゴードン・スコットはアラブのシークの息子役なので、当然ごとく着衣なんですけど、それでもしっかり、他はみんな長袖なのに、一人だけフレンチスリーブで太い腕がむき出し。しかも、これまた一人だけ襟ぐりが深く、胸板見せもバッチリという、好サービス具合が嬉しい。
 また、後半、スコット君はとっ捕まって、ダンジョンに入れられて拷問されるんですけど、その時にちゃんと上半身裸になってくれます。で、無粋な(……かどうかは知りませんが)映画だと、ピンチから脱出して逆襲に転じる際、大概また服を着ちゃうもんだから、見ているこっちとしては、「いいよ、服なんか着せなくって!」なんてブーたれたくなったりするんですが、この映画では、脱出しても上半身裸のまんま。
 そしてそのまま、クライマックスの大合戦のときも、悪玉とのタイマン勝負のときも、ヒロインとのハッピーエンドのときも、エンドマークが出るまで、ず〜っと上半身裸。
 いや〜、ファン心理やマニア心理を、良く判っていらっしゃる(笑)。

 そんなこんなで、個人的にはかなりポイント高い映画でした。
 言葉が判らないので、あまり正確なところは言えませんけど、演出のテンポも良さげで、スパスパ楽しく見られる痛快娯楽作といった感じです。
 DVDはドイツ盤なので、当然PAL。リージョンコードは0。音声はドイツ語とイタリア語。字幕なし。
 画面はノートリミングのシネスコで、スクィーズ収録。画質は、ちょっと粒状感があったり、若干の傷やゴミがあったりはしますが、退色は見られず、映画のジャンルと制作年代を考えれば、充分高画質と言えるでしょう。

 では、最後に責め場情報。この映画で、責め場は二ヶ所。

 まず、映画前半。オアシス住まいのスコット君一行が、街にやってくると、広場で公開フロッギングが行われているのを目撃します。
dvd_sohn-des-scheichs_s1
 尺はあまり長くなく、被虐者もさほど印象に残るタイプではないんですが、基本的に公開処刑というのは、それがパブリックな場で行われているというのがキモ。
 で、この映画の場合、前述したように風景のスケール感やモブの物量感がタップリなので、そのぶん公開処刑の趣も引き立ってます。被虐者が豆粒大の引きのある構図から、だんだんとアップに寄っていく見せ方など、シーンとしてはかなり魅力的。

 二つ目の責め場は、お待ちかねのスコット君の拷問。これは、ダンジョンでのフロッギングで、責め自体はいたってシンプル。
dvd_sohn-des-scheichs_s2
 とはいえ、尺がかなり長い上に、アップあり、引きあり、バックあり、フロントあり、ギャラリーあり、ヤメテヤメテと泣き叫ぶ恋人あり……と、ネットリじっくりタップリ見せてくれるので、実にヨロシイ。
 また鞭痕が、安手の映画にありがちな、いかにもペンキなすりました、ってなタイプではなく、ちゃんと皮膚が破れているようなメイクなのも良いですな。
 で、こうしてヒーローがひとしきり鞭打たれたあと、今度はヒロインが、ラックに縛られて引き延ばし責めにあうんですけど、当然のことながら、ヒーローはそれを止めることができないので、怒りに身をよじりながら、何とか縛めから逃れようとする。
 このシーンが、「筋肉美見せ」のシーンになっていまして、ゴードン・スコットは、筋量自体はさほどないので、あまりこういうシーンには向いていないんですけど、この映画では、背筋中心のせいか、なかなか良い絵、良い筋肉美を見せてくれます。ライティングによる陰影の濃さも手伝って、筋肉の塊を蠢かせながら、ミミズ腫れの浮くテカった肌をよじる姿は、ちょいとバロック絵画的な美しさもあって、かなり色っぽい。

 というわけで、責め場も満足の一本でした(笑)。

つれづれ

 締め切りが重なっていた仕事が、先週末に全て無事終了しました。
 月産枚数的としては、別にキツくもなんともなく、逆に楽なくらいの分量だったんですが、Aの締め切りの二日後がBの締め切り……ってな塩梅だったのと、合間にマンガ以外の用件も入っていたせいで、頭の切り替えとかペース配分が、ちょっと難しかった感じ。
 おかげで、実作業以上に「終わった〜!」感が強い。よく考えると、仕事量としては、大したことないんだけど(笑)。

 で、その締め切り明けと前後して、”Gay Pride Sale! Top 10 Deals of the Week”という件名のメールが来ました。
 パッと見、よくあるエロ系の迷惑メールみたいですが、実はそうではなく、アメリカの大手旅行会社ORBITZのメルマガです。
 中身を見ると、「トロントのゲイ・フレンドリーなホテル、30%OFF。トロント映画祭をプラス・アルファでエンジョイしましょう!」とか、「トラベル・オークションを利用すれば、国際便が40%以上OFFになります。収益はLGBTチャリティに寄付されます」とか、「フォート・ローダーデール(何でも『アメリカのベニス』なんですって)とプエルト・バジャルタ(メキシコのリゾート地だそうな)でゲイ・リゾート。5泊以上で100ドルOFF、2泊でも10%OFF!」とか、「スタイリッシュでラグジュアリーでカルチャーでアドベンチャーなゲイ・ツアー、50ドルOFF!」とかいった惹句と一緒に、キャンペーン商品へのリンクが並んでおります。
 で、これを見ていたら、前にも何度か書いたような、「ゲイの存在が日常化した結果、目に見えるオーバーグラウンドな形としてのゲイ・マーケットが確立し、それが一般企業にとっても、収益およびパブリック・イメージの両方において、プラスになると判断されている状況」の、格好のサンプルだなぁ、なんて思い、ちょっと紹介してみました。
 日本でも、JTBとかHISから、こーゆーキャンペーン・メールが来たら、楽しいのにね。
 周囲を見ると、クラブ・イベントで東京や大阪や北海道や博多なんかを頻繁に行き来していたり、定期的に沖縄に行ったりしているゲイがけっこういるので、ビジネスの可能性としては、決してないわけではなさそう。ただ、そういった「ゲイ向け商品」を堂々と買える層が、果たしてどれだけ存在するのか……というのが、毎度ながらネックになるだろうけど。
 あ、でも大手旅行会社という括りを外せば、日本でもこことかここみたいな、ゲイ向けの旅行業そのものは存在します。

dvd_underworld3
 映画は、DVDで『アンダーワールド ビギンズ』を鑑賞。
 吸血鬼と狼男の抗争を描いた『アンダーワールド』シリーズの、れっきとした正統の3作目……なんだけど、ジャケが何だか、レンタル屋に大量に並んでいるバッタモンみたい(笑)。
 1作目は、アイデアや世界設定の背景描写や凝った美術なんかが良くて、けっこうお気に入りでした。対して2作目は、そういった特徴があまり見られず、良くある大味なアクション・アドベンチャーといった感じで、イマイチ好きになれなかったんですけど、この3作目は、内容的には時間を遡り、1作目のプリクエル。
 つまり、1作目で私が魅力を感じていた部分を、クローズアップして膨らませた内容なので、かなり満足しました。ただ、「美人でカッコいいオネエチャンがスタイリッシュに戦うアクション映画」としてのファンにとっては、映画の設定が中世ヨーロッパなのでガン・アクションはないし、ストーリーの主眼が狼男側にあるので、ヒロインがちょいサブ的な存在になっているから、イマイチかも知れません。
 で、これって、いわばホラー風味のダーク・ファンタジーなわけですが、ストーリーとしては「奴隷の反乱」と「種族を越えた禁断の恋」なので、実は吸血鬼と狼男という設定を使わないでも、充分に成り立つ内容ではあります。じっさい、DVD収録のメイキングでも、監督が「『スパルタカス』+『ロミオとジュリエット』」とか言ってましたし。
 というわけで、設定の必然性という意味では、この映画単品で考えると苦しいんですけど、まあ、シリーズものなので、そこいらへんも気にはなりません。

 話そのものは良くできていて、シリーズを見ている人間には、結末がどうなるかは既に判っているんですけど、それを「どう持って行くか?」という点で、最後まで興味を削がない筋運びは、なかなか佳良です。スケール感はさほどありませんが、それでも、こぢんまりした範囲内で必要充分なものだけを描くという、全体的にタイトな構成が小気味よく、エピック・アドベンチャーとしては手堅い出来映え。
 美術は、これはもう大健闘。それほど大予算ではないみたいですが、それでここまでしっかり見せてくれるとは。美しさと説得力の両方を兼ね備えた、文句なしの出来映え。で、メイキング見ていたら、美術監督の顔に見覚えが……『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの人でしたか、ナルホド(笑)。
 訳者さんも、いずれも佳良。シリーズ通して、ちゃんと同じ役を同じ人が演じているのは、やっぱりいいですね。シリーズを見てきた人間にとっては、「あ、あいつがこんなところに!」ってなサービスもある。メイン・キャラの内面描写が掘り下げられて、キャラクター像に深みが出ているのもヨロシイ。
 メイン・キャラの新顔、新ヒロインのロナ・ミトゥラは、前にTV版『スパルタカス』のときに好印象でしたが、今回も同様の感想。ただ、役の上で「前2作のヒロイン(を演じていたケイト・ベッキンセール)に似ている」という設定で、確かに雰囲気は似ているんだけど、個人的にはケイト・ベッキンセールよりも、Gacktに似てるな〜、と思いました(笑)。

 さて、嬉しいことにこの映画、やましい部分のお楽しみ(笑)も、ちゃんとありました。
 まず、映画の設定で、この時代、狼男は奴隷にされてるんですが、狼に変身できないように「内側に銀の鋲が突き出た首輪をされた、髭筋肉長髪濃度濃いめの薄汚い野郎ども」なんですな。で、それが貴族的な吸血鬼にこき使われている。
 ……はい、個人的なフェチアイテムと設定系のSM好き心を、何個もまとめてクリア(笑)。
 で、責め場もあります。主人公の鞭打ち。それも2回。
 1回目は、ウィッピング・ポストに両手を拡げて縛られ、上半身裸の背中を、鉤付きの長鞭でフロッギング。もちろん、背中はズタズタに裂けちゃいます。簡単には死なない狼男という設定を上手く使った、ナイス責め場(笑)。
 2回目は、床に跪かされ、両腕を鎖に繋がれて立ち上がれない状態で、やはり背中をフロッギング。ここではシャツを着てるんですが、鞭打たれてちゃんと破けるのでご安心(笑)あれ。
 まあ、主人公の身体自体は、マッチョと呼ぶには細いんですけど、でもちゃんと撮影用に鍛えてはいるので、ナチュラルな感じの筋肉美はあります。とにかく筋肉量が欲しい御用向きには、1作目にも出ていたサブキャラの黒人さんがスゴい身体なので、そちらをオススメしませう(笑)。
 あとは、狼男なんで、変身が解けて人間の姿に戻ったときには、服は破けてスッポンポンになっているわけで、男のフルヌードが何度も出てきますし(ズボンや下着だけ破け残る……なんて、無粋なこともゴザイマセン)、奴隷なんで、鎖に繋がれてたり牢に入れられてたりするし、人間の姿のまま、けっこうエグめに惨殺されていったりもしますんで、ソッチ系目当てでも、けっこうオススメできる内容でした(笑)。
『アンダーワールド ビギンズ』(amazon.co.jp)

『アポカリプス 黙示録』

dvd_apocalypse
『アポカリプス 黙示録』(2002)ラファエル・メルテス
“San Giovanni – L’apocalisse” (2002) Raffaele Mertes

 DVDのジャケはパニック映画みたいなノリになってますが、実際は地味でマジメな聖書モノ。
 新約聖書の「ヨハネの黙示録」絡みのTV映画なんですが、それをまんま映像化しているというわけでもなく、いちおうメインのストーリーは、別にあります。
 一世紀のローマ帝国、迫害を受けるキリスト教徒を支えていたのは、十二使徒の最後の生き残り、ヨハネからの手紙だった。ローマ側はキリスト教徒の精神的支柱を断つために、キリスト教徒側は救いを求めて、手紙の発信元であるパトモス島の監獄に、それぞれ使者と間者を差し向ける……ってのが、おおまかな流れです。
 で、その合間に、ヨハネが幻視する黙示録の光景や、ローマ人青年とキリスト教徒の娘の恋愛なんかが、描かれていく。

 映画オリジナルのドラマ部分に関しては、キャラクターさばきは上々だし、心理ベースのドラマを上手く使ったり、タイムリミットを使ったイベントで、クライマックスに向けて盛り上げたり……と、作劇的な工夫があって、けっこう面白いです。
 ただ、基本的に「キリスト教のPR映画」もしくは「信徒用の教育映画」なので、どうしても、非キリスト教徒には退屈な部分もあり。
 また、黙示録の視覚化という点では、これは期待しない方が吉。イメージ自体が、可もなく不可もなしといった感じの凡庸さだし、VFXも安っぽい。これだったら、ケン・ラッセルの『アルタード・ステーツ』(黙示録風の幻覚シーンがあります)の方が、ずっと上出来。
 史劇として見ると、話自体がいささか地味に過ぎるものの、セットや衣装、役者さんなどは、そこそこ佳良なので、それなりの雰囲気は味わえます。

 というわけで、まあ特にオススメという程でもないんですが、個人的には、けっこう「ツボ」な要素がありまして、まあ、特定趣味層限定なら、オススメできるかな、と。
 ……はい、もうお判りですね(笑)。

 まずこの映画、ほとんどパトモス島の監獄(っつーか、強制労働キャンプ)の中だけで、話が進むんですな。
 つまり、薄汚れた半裸の男どものが、汗まみれヒゲぼうぼうで、鎖に繋がれてウロウロして、虐待されているシーンが、延々と続く(笑)。
 で、ご期待(誰のだよ)通り、責め場もちゃんとあります。
 フロッギングと
apocalypse_flogging
 ケイニング。
apocalypse_caning
 特に、後者の被虐者はこーゆー感じでツボのタイプなので、かな〜り得した気分(笑)。
apocalypse_sub
 あと、ヨハネが幻視するキリストの笞刑や磔なんかもあるし、
ま、私と同じ趣味をお持ちの方だったら、お楽しみ要素もイロイロあるのではないかと(笑)。
『アポカリプス 黙示録』(amazon.co.jp)