お正月に見たDVDとか

Dvd_newyear2009『明治一代女』伊藤大輔
 伊藤大輔監督は良く知らなくて、映画を見るのも、たぶんこれで三本目くらいだと思うけれど、そのたびに「上手いな〜」と感心させられます。
 今回は殺人劇のシーンで、橋を挟んだ向こう側とこちら側という状況を使い、ドラマとしてのモノガタリを見せると同時に、明治という時代状況そのものも表現してみせるあたりに、ひたすら感嘆。
 メインのドラマや役者さんの演技という本筋以外にも、生活風俗の描写などディテールの見所も多く、大満足の一本。あ〜、『銀の華』を描く前に、これを見ておきたかったなぁ(笑)。
明治一代女 (amazon.co.jp)
『ミツバチのささやき』ビクトル・エリセ
 前に出たBOXを持っていたので、再購入するかどうか散々迷ったんですけど、画質向上や初収録作品や特典の魅力に負けて、けっきょく買っちゃいました。
 とりあえず、一枚だけ見ましたが、画質に関しては、前のがちょっとアレだったせいもあって、この新盤は佳良だったので一安心。特典等は、まだ未見。
 実は、ビクトル・エリセ作品で一番好きなのは『エル・スール』なんですけど、それを見るのは、次の仕事明けのお楽しみに……と、とってあります(笑)。
ビクトル・エリセ DVD-BOX(amazon.co.jp)
『トゥルーへの手紙』ブルース・ウェーバー
 私、犬好きなもので(笑)。それに、カメラマンとしてのブルース・ウェーバーは、大学生の頃に憧れのマエストロの一人でした。
 一緒に見ていた熊が「スクラップ・ブックみたいな映画だ」と言いましたが、様々な素材をコラージュすることによって、テーマやメッセージが浮かびあがっていくという手法が、ドキュメンタリー映画に詩情を加味するという点や、映像表現の方法論として、興味深くて好きなポイント。
 でも、いちばんビックリしたのは、今回は再見だったにもかかわらず、ウチの相棒が、前に一緒に見たのをすっかり忘れていたこと(笑)。
 あ、これだけゲイ関係(監督がゲイ)だな。
トゥルーへの手紙(amazon.co.jp)
『ロードキラー』ジョン・ダール
 主演のポール・ウォーカーは、最近の若手(っても、もう三十代なのね)の中では、けっこうお気に入りの一人。
 まぁ、流石に八年前の映画ともなると、まだちょっと若くて甘チャン過ぎて、さほどツボは押されなかったけれど、それでも謎の犯人に強要されて、馬鹿兄貴(スティーブ・ザーン)と二人一緒に、全裸でドライブインに入って食べ物をオーダーさせられる……なんて展開は、はっきり言って私にしてみりゃ、下手なポルノよりよっぽどエロかった(笑)。
 因みに、そーゆーこと抜きにしても、ホラー風味のサスペンスとして、立派に水準以上に楽しめる良作。
 でも、やっぱポール・ウォーカーだけに限って言えば、ひたすら脱ぎっぱなしの『イントゥ・ザ・ブルー』や、映画の出来はともかくとしても、アイドル映画的なコスプレが楽しかった『ボビーZ』の方がいいなぁ(笑)。
ロードキラー(amazon.co.jp)
『スパルタクス』ワージム・デルベニョフ&ユーリー・グリゴローヴィチ
 アラム・ハチャトゥリアンのバレエを、ボリショイ・バレエが踊ったものを、モスフィルムが映像化した77年度作品。
 舞台の記録という枠組みを逸脱せず、なおかつ映画的な醍醐味も存分に感じさせてくれる逸品でした。華美な装飾や少女趣味的なロマンティシズムを廃した、ストイックなまでの美術や衣装や、モノトーンを基調にして、ポイントカラーに赤だけを使うといった色彩設計も素晴らしい。
 バレエのことは良く知りませんけれど、スパルタクス役のウラジミール・ワシリーエフの踊りは、ダイナミズムと繊細な表現力を共に兼ね備えた感じで、実にお見事。他の踊り手も、メインの数人から一糸乱れぬ群舞も含めて、隅から隅まで修練と高い技術力を感じさせて、ひたすら感心。男性的で力強いコレオグラフも、私好み。クライマックスのケレン味から荘厳な幕切れに至る流れも、実に感動的。
スパルタクス(amazon.co.jp)
“1612: Khroniki smutnogo vremeni” Vladimir Khotinenko
 前にここで予告編を紹介したロシア映画ですけど、我慢しきれなくて、ロシア語オンリー字幕なしにも関わらず、ロシア盤DVDを買ってしまった(笑)。
 てなわけで、内容の方はナニガナンダカサッパリワカラナイんですけど(笑)、クライマックスのモスクワ攻城戦はマジでスゴい! ここは、セリフはわかんなくても、迫力や展開の面白さに、マジで目が釘付けになる。スペクタクル以外も、衣装や美術などステキ映像テンコモリ。
 え〜、因みに、責め場(フロッギング)もこんな感じでかなり痛々しく、やっぱり目が釘付けに(笑)。
 ご贔屓のミハウ・ジェブロフスキーは、悪役だし、剃髪するとちょっとお鉢がデコボコなのが目立ったりはしましたが(笑)、でも出番はいっぱいあった(笑)。これで再び惚れ直したので、その勢いで『ファイヤー・アンド・ソード』『コンクエスタドール』『THE レジェンド 伝説の勇者』『パン・タデウシュ物語』を再鑑賞(『パン・タデウシュ』だけ日本盤DVDが出ていないので、英語字幕付きのポーランド盤で)。それでもまだ治まらないので、『コンクエスタドール(Wiedzmin)』の長尺版VCD(字幕なし)を、思い切ってポーランドに注文しようかどうしようか、悩み中(笑)。
『キング・ナレスワン 序章~アユタヤの若き英雄誕生~』『キング・ナレスワン ~アユタヤの勝利と栄光~』チャートリーチャルーム・ユコーン
 バンコク在住の友人に、「『スリヨータイ』の監督の新作だよ」と教えてもらい、ネットで予告編を見てビックリ。「これは見ねば!」と思っていたら、何と、去年の夏に東京や大阪でイベント上映されていたと、後から知ってもうガックシ。
 で、我慢できなくて、これまたタイ語オンリー字幕なしにも関わらず、タイ盤DVDを購入(笑)。
 もう、スケールがトンデモナイ。戦闘シーンの物量がスゴくて、それだけでも一見の価値アリではあるんですが、それ以上に、日常シーンのスゴさにビックリ。映画のために町一個まるまる作っちゃったそうだけど、そうしただけあって、近景のドラマだけではなく、遠景でも絶えず人が何かしら動いているのだ。まるで、タイムトラベルしてロケしてきたみたいな映像。もちろん、衣装から小道具からセットから、その充実っぷりはハンパじゃなく、徹頭徹尾とてつもなく贅沢な映像。
 まあ、論より証拠、公式サイトへどうぞ。
 ネットで予習してから見たので、粗筋程度は把握できましたが、やっぱディテールが全く判らないのは残念。特に『序章』は、王の幼年時代を描いた、ジュヴナイル的なキャラクター・ドラマだし、大河ドラマ的伏線らしき描写も、そこかしこで見られるので、いつかはセリフをきちんと理解しながら見たいもの。
 第二部の方は、とにかく成長したナレスワン王が、カッコよすぎてウットリです(笑)。この方、現役の軍人さんなんだそうですが、ハンサムな上に所作はキレ良くきびきびと、背筋はすっと伸びて風格あり、更に、脱いだら脱いだで、いかにも自然な筋肉美。ついでに、脇の連中もなかなか魅力的で、更に、セリフも役名もなさそうなその他大勢でも、ついつい、こんなのとかこんなのとかこんなのに、目が奪われてしまったり(笑)。
 全部で三部作らしいですが、完結編である第三部の完成が遅れているらしいのが、ちょっと心配です。
 いちおうここを見ると、この二作の日本盤DVDが、2009年12月31日に発売ってなってますけど、ホントかしらん。だったら嬉しいけど、でもやっぱ劇場でも見たいなぁ。

謹賀新年

 明けましておめでとうございます。
 今年も、国内国外取り混ぜて、いろいろやることになると思いますので、よろしくお付き合い願えれば幸いです。
 とりあえず、近いところでいうと、先日お知らせしたように、明日から30日まで上野NETYさんで開催される年賀状展に、小品ですが一点出展しています。また、二月には、オーストラリアで開催される、日本のゲイ・アーティストを集めた企画展に、数点を出品予定です。
 私自身のお正月はというと、初詣は済ませましたが、年明け一番の締め切りがあるので、あとはどこにも出掛けずに仕事オンリー。因みに、おみくじは末吉でした。ちょっとイマイチ(笑)。
Yearofthedog さて、新年早々に他人様の絵で申し訳ないんですが、アメリカのアーティスト、ロブ・クラーク(Rob Clarke)から、今年のカレンダー(とりあえず前半六ヶ月分)をいただきました。
 題して”Year of the Dog Calendar”。ロブは大の「犬男フェチ」なので、「今年が戌年じゃないのは判っているけど、待ちきれなかったんだ!」そうな。
 で、この犬男のキャラクターは、「去年の夏、地下鉄で見かけたモヒカン男へのオマージュ」なんだそうですが……オマージュがこれかい(笑)。ま、私も「いい男」と思うと、縛り絵や責め絵を描きたくなるタチなので、人のことは言えませんけど(笑)。
 ロブのサイトから、印刷対応のPDF版がダウンロードできますので、犬男好きの方はぜひ、ロブの描くキュートでセクシーな犬男カレンダーで部屋を飾ってはいかが?
 後半六ヶ月分も、後日公開予定だそうです。
 因みに、私自身の年賀絵は、前述のNETYさんでソフト版を、スケッチブログ”Limbo”(パスワード制)でハード版を公開しております。よろしかったら、そちらもどうぞ。

NETYさんの年賀状展

2009_new_year 上野NETYさんで2009年1月2日〜30日開催の「貴方だけの年賀状展」に、オリジナル年賀状を一点出展します。
 今年はシンプルなポートレイトがいいかな、なんて考えてあれこれ描いていたら、何故かできあがったものは「プリズン・ブレイクのアニメ版スチル(そんなもの実在しないけど)」みたいになりました(笑)。仕事ではあまり使ったことがないスタイルなので、ちょっと新鮮かも。
 他にもいろいろな作家さんが出展しておられますし、ギャラリー・スペースは入場無料のはずなので、よろしかったらお立ち寄りくださいませ。会場でアンケートに答えると、期間終了後に展示作品が当たるプレゼントもあるそうです。
 それでは皆様、良いお年を。

シャワールームで石鹸を落としてはいけないということ

 ……どーでもいいことだけど、このタイトルって、何だか『今昔物語』や『宇治拾遺物語』の章題みたいね(笑)。
 さて、英語の慣用句なのか、定番ジョークなのか知りませんが、”Don’t drop the soap(石鹸を落とすな)”ってのがあるようです。
 どういうことかというと、これは刑務所ネタなんですな。
 刑務所に入れられて、もしシャワー室で石鹸を落としてしまい、それを拾うために屈んだら、つまり、素っ裸で膝を曲げて尻を突き出す格好になると、それを見た周囲の囚人どもが欲情して、そのままレイプされちゃうぞ、ってことなんだそうな。
 で、この警句(?)は、メジャーなものらしく、ひょんなことからYouTubeでそれ関係のクリップを見つけたら、まあ芋づる式に出るわ出るわ(笑)。
 だいたいはジョークなんですけど、いかんせん、どれもこれも、デカい強面ども(しかもたいていマッチョ)の集団がシャワーをあびていると、そこにレイプの予兆が……ってな展開なもんだから、私なんかは、笑うより先に欲情しちゃいます(笑)。
 というわけで、そんな「野郎系凌辱モノ好き」にはタマランワイな、”Don’t drop the soap”映像を、まとめてご紹介。
 どうやら、液体石鹸のCMらしいです。

 お次は、何かのコメディ映画からのワンシーンっぽいんですが、詳細は不明。誰か知ってたら、教えてください(笑)。これは刑務所じゃないですね。体育会系?

 追記。さっそく情報をいただきました(「まこと」さん、ありがとうございます)。これは、”Now I Pronounce You Chuck and Larry”という映画だそうです。何でも、二人の消防士が家族のためにゲイとして偽装結婚するコメディだそうな。う〜ん、消防士かぁ、エロいぞ(笑)。
 も一つ追記、邦題は『チャックとラリー おかしな偽装結婚!?』だそうです(「武士」さん、ありがとうございます)。DVD出てたんですね、面白そうだから今度見てみよう(笑)。
 しかし、ノンケどもが相手がゲイだと知ると、勝手に「襲われる!」と怯えるのは、洋の東西を問わず一緒なんだなぁ。私も、かれこれウン十年前、新入社員のとき上司と二人で飲み屋に行き、ガールフレンドの話題を振られたときに、自分はゲイだと言ったら、ビビッて椅子一つ飛び退かれました(笑)。ったく、誰もテメエのケツなんか狙ってねーっつーの(笑)。で、翌朝出社したら、私がゲイだと、もうフロア中に知れ渡ってた(笑)。
 次は、ビールのCM。スペイン語かな? これも刑務所じゃないけど、ラグビー・チームってとこが、またエロい(笑)。

 最後は、アニメーション版。ぱっと見、日本のアニメかと思いましたが、アメリカの風刺漫画『ブーンドックス』のアニメ版でした。

 いかがでござんしょ、欲情しました?(笑)探せば、他にもまだありますよ。
 因みに私はこれを見て、プリズン・レイプのマンガを描きたくてたまらなくなった(笑)。

画集の在庫情報とか

 フランスで出版された私の画集”The Art of Gengoroh Tagame”ですが、日本で輸入販売をしてくださっているタコシェさんが追加注文をしたところ、フランスの版元でも品切れになっているそうです。
 というわけで、タコシェさんには、まだ少し在庫があるそうですが、それがなくなれば、入荷は当分見込めないだろう、とのことです。また、このまま再刷がかからなければ、そのまま入手不可能ということになります。
 もし、欲しいとは思っていたんだけど買いそびれていた、という方がいらっしゃいましたら、お早めにご入手なさる方がよろしいかも知れません。
 タコシェさんのネットショップへは、右側のリンク集からどうぞ。
 なお、やはりタコシェさんで扱っていただいていた、フランス語版マンガ単行本二種のうち、”Gunji”がフランスの版元で品切れ状態だそうです。こちらは、タコシェさんにも在庫がないので、再刷がない限り、このまま入手不可能となります。
 ”Arena”の方は、そういった情報は入ってきていないので、そのうち再入荷すると思います。
 それと、ちょっと前にお伝えした、『外道の家・上巻』が在庫切れになったという件ですが、こちらは再刷されたらしく、現在では、タコシェさん、各ゲイショップさん、版元のバディJPさんなどで、取り扱いが再開されています。
 ただし、流通コードの関係で、一般書店やネット書店では取り扱いがないのは変わりませんので、ご注意ください。
 また、一時期在庫薄になっていた『田亀源五郎[禁断]作品集』も、先日第三刷が出来上がったとご連絡をいただきました。今なら、お待たせすることなくお買い求めいただけます。
 こちらは、タコシェさん、各ゲイショップさん他、一般書店でも取り扱いがあります。
 さて、そんなこんなでタコシェの中山さんとメールをやりとりしていたんですが、その中で、先日の箱根の話絡みで「原宿でもお休み中のサンタさんを発見!」と、写真を送ってくれました。
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 ……う〜ん、やっぱり不気味(笑)。
 中山さん曰く「ちょっとお歳暮のハムみたい」確かに(笑)。それも昔風の、外側が赤いヤツ(笑)。
 まったく、日本中でサンタクロースが、いったい何人このパターンで寝ているんだ。不気味だから、やめなさいって(笑)。

ちょっと宣伝、『父子地獄』第二話掲載です

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 12月20日発売の雑誌「バディ 2月号」に、短期連載マンガ『父子(おやこ)地獄』第二話が掲載されます。
 ショタ責めと熊オヤジ責めが、ダブルでお楽しみいただけるという、一粒で二度美味しい凌辱マンガ。左のサンプル画像をご覧いただければお判りのように、鬼畜度も一段とアップ。へへへ、このまま突っ走りますぜい(笑)。
 というわけで、よろしかったら第一話と併せて、ぜひお読みくださいませ。
バディ 2009年 02月号(amazon.co.jp)

カートゥーン調とか

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 カートゥーン調のデフォルメでラクガキをしていたら、興が乗ってきたので、彩色してみることにしました。
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 ボールペンで描いたラクガキを、スキャンしてPCに取り込み、表示を薄くして下絵にします。
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 下絵をPainterで開き、新規レイヤーを作成します。そこにテキトーな色で、肌からペン入れしていきます。ツールは「先丸ペン10」を使用。
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 肌のペン入れが終わったら、再度新規レイヤーを作成して、髪・ヒゲ・眉毛・体毛のペン入れ。終わったら、また新規レイヤーを作成して、今度は目をペン入れ。
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 こんな調子で、一つのパーツにつきレイヤーを一つずつ使って、ペン入れしていきます。作業上の判りやすさ優先で、それぞれの色を決めているので、こんなギンギラギンの色遣いになりました(笑)。
 全部ペン入れできたら、PSDで保存してPainterを終了。
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 ペン入れした画像をPhotoshopで開き、まず全体のシルエットのマスクを作ります。シンプルな線画だったので、背景部分を自動選択し、それを3ピクセルほど拡張してから、選択範囲を反転させるだけで済みました。
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 線画と背景の間に新規レイヤーを作成し、そこにさっきのマスクを使って、シルエット全体を肌色でベタ塗りします。とりあえずテキトーな色で塗りつぶしてから、「イメージ>色調補正>色相・彩度」で調整すると楽。
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 肌の色が決まったら、肌の線画レイヤーを選択して、やはり「イメージ>色調補正>色相・彩度」を使って、線画の色を肌の色に合ったものに変えます。
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 次に、肌の色レイヤーの上に、髪・ヒゲ・眉の彩色用の新規レイヤーを作成し、パスで選択範囲をとって塗りつぶします。カートゥーンのイメージなので、金髪っぽく黄色にしてみました。色が決まったら、それに合わせて線画の色も変更。
 同じ手順で、白目、黒目、乳首と、着色していきます。
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 全体の着色が終わったら、こんな感じに。昔のアメコミのヒーローっぽい配色にしてみました。
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 黄色のパーツに、ゴールドをイメージした「照り」を入れてみます。黄色パーツの色レイヤーの上に、乗算モードで新規レイヤーを作成し、エアブラシツールでシャドウを入れます。
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 次に、一番上にスクリーンモードで新規レイヤーを作成し、やはりエアブラシでハイライトを入れます。何で一番上かというと、ハイライトは黄色のパーツの線画にも乗せたいので。
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 ちょっと画面が淋しいので、シャドウも入れます。
 一番上に乗算モードで新規レイヤーを作成し、彩度の低い薄紫色で、全体にまとめてシャドウを入れます。パスで形をとって塗りつぶし、ガウスぼかしでボケ足を作ってから、不要な部分を消しただけという簡単手法(笑)。
 これで終わり。
 狙い通りカートゥーンっぽくなったかな?
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 因みに、色替えも簡単です(笑)。

デカい面

 前にここここで書いた、次のフランス語版マンガ単行本ですが、第一巻の発売日(今回は全三巻の予定なのだ)が、今月22日に決定したみたいです。
 で、版元のH&Oのサイトのトップページが、私のイラストに変わったんですが……おいお前、脇役のクセに、そんなところで何デカい面してんだよ(笑)。
 そんだけ(笑)。

『アラトリステ』

『アラトリステ』(2006)アグスティン・ディアス・ヤネス
“Alatriste” (2006) Agustín Díaz Yanes
 17世紀スペイン支配下のヨーロッパを舞台に繰り広げられる、孤高の剣士の生涯を描いた歴史ロマン……という設定からは、つい、アクション・アドベンチャー系のヒーローものを期待してしまいますが、そんな単純なものではありませんでした。
 以前、英語字幕付きの輸入盤DVDを見たとき、私の語学力ではハードルが高すぎて、どーもヨーワカラン部分が多々あったんですが、今回、日本語字幕で鑑賞して納得。これだけ複雑でブンガク的な内容だと、こりゃあ私の英語力じゃ太刀打ちできないわけだ(笑)。
 まず、時代背景と、それに絡まるパワーバランスからして、複雑なんですな。
 当時のスペイン王国とその周辺諸国の衝突だけではなく、カソリックとプロテスタント(やユダヤ教)の対立や異端審問、スペイン内部の傀儡政権を巡るパワーゲーム、当時のスペインにおける貴族と平民の関係、エトセトラ、エトセトラが、当然既知のものとして、解説らしい解説もなく次々と繰り広げられるので、キャラクターの所属を把握するだけでも一苦労。
 加えて、複数巻に渡る大河小説を、二時間半近くあるとはいえ、一本の映画に納めているせいもあり、どうしてもエピソードがブツ切りなダイジェスト感は否めないし、前述した状況設定の複雑さゆえに、誰が何のために何をしているのかといった、モチベーション的なものも掴みにくい。
 とりあえず、劇場で販売されているパンフレットに、原作小説の訳者さんによる、平明でコンパクトな解説や年表が載っているので、映画が始まる前に、ざっと目を通して予習しておくことをオススメします。私は、映画を見終わってから読んだんですけど、「しまった、先に読んでおけばよかった!」と、思っくそ後悔しました(笑)。
 とはいえ、じゃあナニガナンダカワカンナイ映画だったり、つまらない映画なのかと言うと、それが全くそうではないのが面白い。
 というのも、この映画は歴史上の様々な出来事を描きながらも、そのプロセスを説明するのではなく、そういった時代背景の中で、主人公を始めとする様々な人々が、いったいどのように生きたか、ということに、焦点を絞って描いているからです。
 一例を挙げると、例えば都市の攻略戦一つを描くにしても、どんな作戦がどう功を奏して、主人公がどんな活躍をするのか……といった、叙事的な要素は全くと言っていいほど描かれません。対して、そんな時代状況の中、歴史上は名もない歩兵たちが、どのように戦いどのように死に、何を考え何を感じていたか、それが身の丈の視点から、徹底したリアリズムで描かれます。
 その結果、昔も今も変わらぬ、我々の生きる現実世界の矛盾が浮かびあがり、交わされるセリフも、モノガタリの説明や推進のためとしてのそれよりは、世界のあり方や人の生き方を問いかけるような色合いが濃い(ここいらへんが、ブンガク的と感じた由縁)。そういった、人間や世界を描くという点では、ものすごく惹き込まれる要素が多々あり、それが実に魅力的。
 私は個人的に、世界とは決して美しくもなければ優しくもないと思っているので、そんな世界に生を受けつつ(主人公の言を借りると「人生はクソ」なのだ)、欲や損得に流されることなく、かといって盲目的な大義に身を委ねるわけでもなく、地を這いずりながらも、あくまでも自分の信念を曲げないことに徹するという、主人公の生き方のカッコヨサや気高さには、もう、ものごっつう感動してしまいました。
 ラストシーン、最後のカットの鮮やかさと同時に、完璧なタイミングでティンパニが鳴り響き、続いて勇壮なブラスに導かれてエンド・クレジットが始った瞬間、「もう一度最初から見たい!」と思ったくらい。
 とはいえ、正直なところ、私個人のポリシーとして、娯楽と芸術、大衆性と文学性といったものは、決して二項対立するものではなく、モノガタリというものは、そういった要素を多層的に包含しうるシステムだと考えています。
 そういった意味では、もうちょっとやりようがあったのではないか、ちょっと惜しいな、とも思います。
 映像美や映像表現の力強さも、大きな見所。
 映像美では、ベラスケスの名画の活人画的再現を筆頭に、バロック期のスペイン絵画やフランドル絵画やネーデルランド絵画の名品もかくやという、美麗極まりない光と陰影表現や、堅牢な構図の数々が、ふんだんに目を楽しませてくれます。
 ディエゴ・ベラスケス、バルトロメ・エステバン・ムリーリョ、ホセ・リベーラ等の、特に風俗画や肖像画が好きな人だったら必見。小道具の壷や衣服の破れ目一つ見ても、嬉しくなっちゃうこと請け合いですぞ(笑)。
 表現の力強さという点では、前述した戦闘シーンや、暗殺のシーンなどで見られる、もう「純粋な殺し合い」としか言いようのない、身の丈サイズのリアリズムがスゴイ。
 斬る、刺すなんて当たり前。それどころか、ブスブス刺す、刺してグリグリえぐる、衝突した槍ぶすまをかいくぐり、這いずり、取っ組み合いながら殺し合う、凍える、噎せる、窒息する……と、残酷美すら介在しない容赦ないリアリズムで、ああ、実際こうだったんだろうなぁ、という、説得力や生々しさが素晴らしい。
 かと思えば、剣士が登場するシーンとかになると、今度は、鍔広の帽子や長いマントといった衣装の効果も相まって、これがまた実にケレン味があってカッコいい。何だかまるで、フラメンコ舞踏の決めポーズみたいに見えてくる。
 衣装や小道具、美術方面の質の高さも素晴らしい。実に渋くて、重厚な味わいです。
 役者さんは、主演のヴィゴ・モーテンセンを筆頭に、男優さんは皆さん実にカッコイイ。ま、男はヒゲ面ばっかで、しかも薄汚いのも多いという、私の個人的な趣味もありますけど(笑)。
 ただ、キャラクターとしては、前述したようなダイジェスト感があるせいで、もうちょっと脇の面々も突っ込んで描いて欲しいという、食い足りなさは残ります。登場人物が、離れては出会い、出会っては離れ……という、大河ドラマ形式なのに、個々のキャラクター描写が不足しているので、そういった運命の変転に際して、湧いてしかるべきエモーションが、もうひとつ足りないのは惜しかった。
 あと、個人的な意見ですけど、少年から青年に成長する副主人公のイニゴが、少年時代はけっこうな美少年だったのに、青年に育ったら、何だか下ぶくれの、美青年でも何でもない顔になっちゃって、ちょっと「……え?」って感じ(笑)。
 女優さんは……う〜ん、メインのお二人は、もうちょっと美人にして欲しかったかな(笑)。ただ、演技は良いし、キャラクターとしても胸に迫るものがありました。
 さて、最後にオマケの責め場情報(笑)。
 流血残酷はふんだんにあるものの、いわゆる責め場はなし。個人的には、悪名高いスペイン宗教裁判の拷問が見たかったんだけどな〜(笑)。
 とはいえ、罪人がガレー船の漕ぎ手にされるシーンがあったのが、ちょっと嬉しかった。ま、17世紀のスペインのガレー船でも、やっていることは、ローマ時代のそれと同じなんですけどね。漕ぎ手のリズムを取るのが、太鼓からホイッスルに変わっているくらいで。

アラトリステ スペシャル・エディション [DVD] アラトリステ スペシャル・エディション [DVD]
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2009-07-17