最近の責め場

 備忘録を兼ねて、最近見たDVDの中から、責め場があったヤツだけ(笑)をピックアップ。
 映画そのものの感想は、今回は超簡易版で(笑)。

ヒラリー・スワンク IN レッド・ダスト [DVD] 『ヒラリー・スワンク IN レッド・ダスト』

 真面目で社会派で感動的で、しかも考えさせられるという、フツーに良い映画。
 アパルトヘイト下の南アフリカで、主人公の黒人政治犯とその若い友人が、半裸で殴る蹴る&麻袋被せられて水責めの拷問に。フラッシュバックなのでカットは短いですが、残酷度は高し。

アイバンホー [DVD] 『アイバンホー』

 サー・ウォルター・スコット原作、BBC制作の、真面目な中世騎士もの。いささか地味ではありますが、このテのコスチューム・プレイが好きだったら、充分に楽しめる内容。
 しょっぱなからいきなり、髭マッチョ主人公の半裸フロッギング・シーンでスタート。二枚組DVDだったから、再生するディスクを間違えたかと思った(笑)。

地獄で眠れ [DVD] 『地獄で眠れ』

 チャールズ・ブロンソン主演の、モノガタリのディテールが何もない(笑)B級アクション映画。
 これまたしょっぱなっからいきなり、鬼畜医師による拷問の公開デモンストレーションでスタート。細身の髭男が全裸でバーに吊され、血を吐いて死ぬまで電気拷問。このシーン、ちらっとですけど「見え」ます(笑)。

キング・オブ・バイオレンス [DVD] 『キング・オブ・バイオレンス 』

 バイオレンスの連鎖を描いた、シニカルなサスペンス映画。ヘンな話なんだけど、けっこう面白かった(笑)。
 拉致監禁された主人公の青年(なかなかいい身体)が、白ブリーフ一枚で椅子に縛り付けられ、頭にウレタンマットを巻かれ、顔面が変形するまでゴルフクラブでブッ叩かれ続けます。監禁シーンは長く、その間ずっと汚れ下着一枚で虫ケラ扱い。

イラク-狼の谷- [DVD] 『イラク-狼の谷-』

 トルコ人のヒーローが、アメリカ相手に活躍するアクション映画。善悪が紋切り型ではあるけれど、娯楽映画としては手堅い作り。
 アブグレイブ刑務所の囚人虐待を再現。強制脱衣(全裸)や、放水責め、人間ピラミッドなど。被虐者の中には太目白ヒゲ熊オヤジ(これまたちらっと「見え」ます)も。

サーズデイ [DVD] 『サーズデイ』

 足を洗ったワルが、かつての仲間に巻き込まれて、スッタモンダの一日を過ごす、ブラックユーモア満載のクライム映画。
 主人公(『パニッシャー』や『ミスト』のトーマス・ジェーン)が、エロ女に椅子に縛られて逆レイプ(ただし着衣)。その後、髭面の快楽殺人鬼(けっこういい身体)に、電ノコで切り刻まれそうになりますが、こちらは未遂。

レストストップ デッドアヘッド [DVD] 『レストストップ デッドアヘッド 』

 アメリカの田舎で、ドライブ中のカップルが殺人鬼に出くわし、追いつめられたヒロインが逃げまくるとゆー、新味も何もないホラー映画。ヘンに超常っぽい要素も入っているんだけど、新味というより悪あがきとしか(笑)。
 殺人鬼に拉致された青年が、全裸で台上に固定され、カッターで肌を切られたり、ニッパーで舌を切り取られたりという、『ホステル』系の猟奇拷問あり。

レディダルタニアン 新・三銃士<ノーカット完全版> [DVD]” /></a></td>
<td valign=『レディダルタニアン 新・三銃士』

 ダルタニアンと三銃士の子供たちが活躍するとゆー、デュマの二次創作みたいな話。悪役までいちいち、オリジナル版に対応させるようなキャラで揃えていたり、老いたダルタニアン役が、リチャード・レスター版と同じマイケル・ヨークだったりするので、ますます二次創作臭がプンプンと(笑)。でも、罪のない娯楽作としては、気楽に楽しめました。
 捕らえられた若い銃士(なかなかいい身体)が、上半身裸でダンジョンのトーチャー・ラックに。拷問そのものではなく事後シーンのみですが、雰囲気は佳良。

地球外生命体捕獲 [DVD] 『地球外生命体捕獲』

 ヘンな映画(笑)! かつて宇宙人にアブダクションされて、生体実験をされ人生を狂わされた男たちが、逆襲して宇宙人をとっ捕まえて復讐しようとするが……なんてB級臭プンプンの話を、ヘンにもったいぶって描いております。そのもったいぶった部分と、宇宙人の着ぐるみに代表されるミモフタモナサの、アンバランスさがスゴくって、これを真面目に作っているとしたら、かなり「天然系」だと思うぞ(笑)。
 責め場ってのとはちょっと違いますが、ムサい系髭男が、宇宙人に腸を引きずり出されて綱引き状態という、珍シーン(笑)が。あと、髭の巨漢が身体を壁に釘で打ち付けられ、これまた腸を引きずり出されてる(でもまだ生きている)なんてシーンもあるけど、肝心の、アブダクションされて人体実験されてるシーンは皆無。

『髭と肉体』カバー絵メイキング

 新刊単行本『髭と肉体』のカバー絵のメイキングです。
 とはいえ、メイキング用に途中経過画像を保存していたわけではないので、残っている素材やレイヤー統合前の画像を使った、簡単なプロセス解説程度ですけど。

 まず最初に、編集さん(&営業さん)のラフチェック用に、スケッチを描きます。
 水色の色鉛筆でアタリをとり、その上から鉛筆で形を描き起こします。
f+b-01a-draft
 ブログ用に、トーンカーブで描線を強調して、アタリ線とフィニッシュ線の関係を見やすいようにしてみました。
f+b-01b-draftdetail

 ラフスケッチができたら、編集さんに見せて確認をとります。
 今回は、あらかじめ表紙デザインのテンプレートをいただいていたので、スケッチと一緒に、アバウトなトリミング案も送りました。引きのA案と、寄りのB案の、二つを提案して、自分はB案の方が良いと思うが、いかがだろうかと付記。
f+b-02-dummy
 結果、図柄は基本的にOK、トリミングはB案で決定。
 ただ、営業サイドから、キャラクターをカメラ目線にしてくれというリクエストあったので、若い方のキャラの目線を、カメラに向けることで対処することにしました。

 本番用の線画を描きます。
 ラフスケッチを、そのまま下絵として使います。下絵をケント紙の下に敷き、ライトボックスで透かしながら、ペンとインクでドローイング。
f+b-03-drawing
 基本的には、マンガと同じタイプの絵ですが、量感は彩色で出すので、陰影系のタッチは入れないことにしました。

 ドクロのタトゥーは、輪郭線を使わないこともあり、Illustratorで作ることにしました。
 下絵をIllustratorに読み込んで、ペン、ライン、ブレンドなどを使って、タトゥーの図柄を描いていきます。カラー・イラスト用ということもあり、マンガ本編で使ったデザインよりも、少々ディテールを増やしてあります。
 判りやすいように、線を赤にして塗りをなしにしてありますが、実際に使ったファイルは、線をなしにして塗りを黒にしたものです。
f+b-04a-tatoo
 タトゥーの図柄を、本番のペン画と位置を併せ、Photoshopに書き出してマスクとして保存します。
f+b-04b-tatoomask

 Painterで背景の壁を描きます。
 描き方は簡単。まず、壁の基本色にグラデーションで明暗を付けた、複数の画像を用意しします。次に、本番画像のクローンソースに、そのグラデーション画像を指定して、カラーをクローンソースにしたスポンジツールで、テキトーにポポポポポンと塗っていけば、この画像の出来上がり。
f+b-05-bg1
 次に、新規レイヤーを作って、壁のひび割れや剥落を描き込みます。それがこの画像。
f+b-06-bg2
 次に、また新規レイヤーを作って、合成モードをフィルタか乗算にして、そこに寒色系で影を描きます。
f+b-07-bg3
 背景はこれでオシマイ。

 Photoshopで、パスを使って彩色用のマスクを作ります。
 使ったパスとマスクの数は、ご覧の通り。
f+b-08-mask&pass

 再びPainterに戻って、さっきの彩色用マスクを選択範囲として読み込みながら、フィギュアを彩色していきます。
f+b-09-fatherskin
f+b-10-sonskin
f+b-11-colorall

 彩色が一通り終わったら、残りの作業はPhotoshopで行います。

 タトゥーを入れます。
 肌のレイヤーを複製して、Illustratorで作ったタトゥーのマスクを選択範囲として呼び出し、選択範囲を反転させた後、タトゥー以外の肌を消去します。
f+b-11a-tatoo01
 そうして作ったタトゥーの肌のベースレイヤーに、レイヤー効果のベベルとエンボスを使って、うっすらと皮膚の盛り上がりを作ります。わざとらしくならないように、最終的に判るか判らないかくらいの、ギリギリのラインを狙います。
f+b-11a-tatoo02
 その上に乗算レイヤーを作り、同じタトゥーの選択範囲を使って、ノイズを加えたダークグレーでタトゥーの色を入れます。
 全体を同じ濃さにしてしまうと、肌の立体感から浮いてしまうので、ライト部とシャドー部ではグレーの濃さを変えます。具体的には、肌レイヤーをグレースケールに変換したものを、マスクおよび選択範囲として使って、肌の明暗とタトゥーの明暗を揃えています。
f+b-11a-tatoo03

 フィギュアの下半分に、新たな乗算レイヤーを使って、シェードを入れます。
f+b-12-shade

 最後に、調整レイヤーを使って、全体の色調を整えます。
 単行本のカバー用イラストなので、ちょっと派手めがいいかと思い、彩度とコントラストを高めにしてみました。
f+b-13-finish

 以上。

ちょっと宣伝、単行本『髭と肉体』発売です

higetonikutai
 明日9月12日、最新マンガ単行本『髭と肉体』が、オークラ出版さんから発売です。
 今回は短編集。主にアンソロジー「肉体派」掲載作を中心に、「G-men」掲載作も一本収録。
 因みに、オフィシャルの英題”FLESH + BEARD”は、1985年制作のオランダ映画”FLESH + BLOOD”(邦題『グレート・ウォリアーズ/欲望の剣』、監督はポール・ヴァーホーヴェン。……お願いだから、どっか日本盤DVDを出して!)のパロディ&オマージュ。

 内容は、かなりバラエティに富んだものになりました。
 どのくらいバラエティに富んでいるかというと、例えばメイン・キャラクターを列記するだけでも、一流企業の重役、イケメンホームレス、明治末期の蛮カラ学生、その後輩の優男、日露戦争時の白ヒゲ将校、馬賊、美形ロシア貴族、中世フランク王国のヒゲ熊騎士、記憶喪失の刑事、ガチムチ巡査長、連続強姦犯のマッチョ囚人、下着女装のサラリーマン、高野聖に鬼に妖怪……といった塩梅。
 ストーリーの方も、ラブあり鬼畜あり、ほのぼのありSM調教あり、現代ものから時代もの、西洋ものから近未来ものまで……といった具合の盛り沢山さ。

 収録タイトルは、『神経性胃炎』『稚児』『長夜莫々』『汗馬疾々』『晒し台』『DISSOLVE 〜ディゾルブ〜』『ECLOSION』『「マゾ」』『雨降りお月さん』の、計9本。
 描き降ろしは、表紙や目次カット等のイラストの他、本編加筆あり、制作裏話アレコレなんかもあり。
 装丁は、ブラックにゴールドを効かせて、カッコ良く作っていただきました。表紙と裏表紙のコントラスト(っつーか、イメージ・ギャップとゆーか)も見所かも。
 本体表紙もゴールド系の特色で、カバーイラストの下絵を使って、これまたカッコ良く仕上げていただいております。ご購入の際には、ぜひ一度カバーを外して、中身もご覧あれ。

 なお、出版社のサイトには、期間限定でここだけでしか見られないメッセージ・カードもアップされていますので、こちらもよろしかったらぜひご覧あれ。

 というわけで皆様、お買いあげ心よりお待ちしております。
『髭と肉体』田亀源五郎(amazon.co.jp)

散歩

 天気が良い日に、友人たちと連れだって、散歩がてらここを見学してきました。
tokyo-mosque
 想像していたより、ずっと大きくて立派。渋谷区内に、こんなところがあるなんて、ビックリ。

最近お気に入りの音楽

 ここんところ教会音楽、特に東方教会のヤツを聴きたいモードに入っておりまして、それ系を集中して購入中。
 というわけで、新規購入したCDの中から、お気に入りを幾つかご紹介。
cd_Chant-de-L'Eglise-de-Rom
“Chant de L’Eglise de Rome” Marcel Peres & Ensemble Organum
 古代ローマの復元聖歌。
 ギリシャ正教のビザンチン聖歌と、グレゴリオ聖歌の中間みたいな感触。プロの歌手によるもので、洗練された技術とゴツゴツした力強い表現を共に併せ持つ、この手の音楽としては理想的なパフォーマンス内容。

cd_Le-Chant-des-Templiers
“Le Chant des Templiers” Marcel Peres & Ensemble Organum
 上のアルバムと同じグループによる、今度はテンプル騎士団によって歌われていた聖歌を復元したもの。
 古代ローマのアルバム同様、力強い声の響きにゾクゾクします。
 映画『キングダム・オブ・ヘブン』やTVドラマ『アイヴァンホー』を見てから、テンプル騎士団は何となく印象が悪くなっていたけど、このCDでそれがちょっと好転した(笑)。

cd_Christmas-in-the-Holy-La
“Christmas in the Holy Land: Ancient Christian Liturgies”
 ローマ・カソリック、ギリシャ正教、エチオピア正教、アルメニア正教、コプト正教、シリア正教などの、クリスマス聖歌を集めたオムニバス。
 ローマ・カソリックとギリシャ正教のパフォーマンス内容は、正直それほど高いとは思えないけれど、東方諸教会の聖歌の数々をまとめて聴ける面白さ(エチオピアやコプトやシリアなんか、何も知らずに耳にしたら、キリスト教の聖歌とは気付かないかもしれないくらいエキゾチック)と、鐘の音に始まり鐘の音に終わるアルバムとしての構成の良さもあって、かなり楽しめる好盤。
 入門盤としては、この中で最適だと思います。

cd_Sacred-Treasures
“Sacred Treasures: Choral Masterworks from Russia”
 ロシア正教のオムニバス。
 これまた、鐘で始まり鐘で終わる構成。伝統的なものから、チャイコフスキーやラフマニノフなどによるものなどまで、満遍なく収録。「癒し系」的なコンセプトのアルバムなので、一曲一曲の尺が短いのが物足りないけど、敬虔で粛々とした美しさは文句なし。
 シリーズ化されたらしく何枚か出ていますが、この無印と”III”と”V”がロシア正教もの。

cd_Rachmaninov--Vespers
“Rachmaninov: Vespers” Alexander Sveshnikov + USSR State Academic Choir
 上のアルバムを聴いて興味を持った、ラフマニノフの『晩祷』。
 ネットで調べたら、このソビエト国立アカデミー・ロシア合唱団による65年盤というのが評判が良かったので購入。

cd_Vassilis-Tsabropoulos-ak
“Akroasis” Vassilis Tsabropoulos
 ジャズ/クラシック系のギリシャ人ピアニスト(らしい)Vassilis Tsabropoulosによる、ビザンチン聖歌を元にしたピアノ・ソロ・アルバム。
 インストゥルメンタルのピアノ・ソロなので、持続低音やメリスマがないせいか、メロディはともかくとして、それ以外ではさほどビザンチン聖歌という感じはしませんでしたが、そんなことを抜きにしても、とにかくストイックで美しい。伝統曲のアレンジ版よりも、オリジナル曲の方がエキゾチックだったりするのが、ちょっと面白かった。
 あと、聴きながら、「前に買って気に入っていた、同じECMの、グルジェフの音楽をピアノとチェロで演ってるヤツと、雰囲気が似ているな〜」なんて思ったんですが、確認したら同じアーティストだった。大ボケ(笑)。

 因みに、今回新たに購入したものではなく、既に持っていたものの中から東方教会系のCDの愛聴盤を選ぶと、以下の如く。どうも、全部廃盤っぽいけど……。

ギリシャ・ビザンツ教会の聖歌 ギリシャ・ビザンツ教会の聖歌
価格:¥ 2,500(税込)
発売日:2001-12-29
Grèce: Les grandes époques du chant sacré byzantin Grèce: Les grandes époques du chant sacré byzantin
価格:¥ 1,838(税込)
発売日:1994-07-05
コプト教会の礼拝 コプト教会の礼拝
価格:¥ 2,500(税込)
発売日:2001-12-29
サカルトベロの奇蹟のポリフォニー / 東西の陸橋カフカズの合唱 サカルトベロの奇蹟のポリフォニー / 東西の陸橋カフカズの合唱
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2000-07-05
Oath at Khidistavi: Heroic Songs & Hymns From Oath at Khidistavi: Heroic Songs & Hymns From
価格:¥ 1,838(税込)
発売日:1998-01-20
Music of Armenia, Vol. 1: Sacred Choral Music Music of Armenia, Vol. 1: Sacred Choral Music
価格:¥ 1,736(税込)
発売日:1995-10-03

つれづれ

higetonikutai_proof
 いよいよ今週末発売になる、新しいマンガ単行本『髭と肉体』ですが、ぼちぼちネットショップとかで、予約可能になっているようです。
 当然のことながら、だいぶ前に無事全て校了済みなので、あとは本が届くのを待つばかり。
 詳しい内容紹介(を兼ねた宣伝)とかは、それから改めてアップしますが、せっかくなので今回は予告を兼ねて、校正紙の画像なんぞを初公開。こんな感じの校正紙の山に、編集さんと協力してそれぞれ赤を入れて、マズい部分を直していくわけであります。
 以前、アクリル絵の具とかで描いたカラーイラストを、原画やポジでアナログ入稿していた頃は、色校正の段階で色調が極端に転んだ(赤味とか黄味とかが、色調がヘンに強く出たり偏ったりすること)りして、「アカ版洗う(マゼンタ版を文字通り「洗って」網点を小さくする=赤味を抑えるということ)」とか、「シアン盛る(印刷時にシアンインクを多めに盛る=青味を強めるということ)」なんていう、今から思うとビックリするくらいアナログな指示入れて戻したりして、それでも直らなくて出来上がりに泣いたりしましたが、デジタル入稿にしてからは、そうそうビックリするような色調の転びとかはなくなったので、それはホントにありがたい。
 というわけで、今回の単行本のカラーも、とってもキレイに出していただきました。

 さて、単行本作業も終わり、雑誌用の原稿もアップしたところで、新規のクライアント(一般系)さんと、近所の茶店で初顔合わせ&打ち合わせしてきました。
 一般系の編集さんとお会いするときは、自分が日頃あまり馴染みのない業界事情とか、大物マンガ家先生の逸話なんかをお聞きできるのが楽しみなんですが、今回もまた、昔から好きだった大物先生の話を聞けて、喜びつつも逸話の破天荒さに目が点。
 どんなお仕事かは、時期が来たときに、また改めてお知らせします。

 その帰り道、本屋に寄って何冊か購入。
 帰宅後、さてどれから読もうかと楽しみに袋を開いたら、買ったのはほとんど資料用のものばかりで、趣味的な本は雑誌『芸術新潮』1冊だけだったことに改めて気付き、ちょいガックリ。
 その『芸術新潮』で、現在パリで「ターザン展」をやっていると知り、うが〜、見に行きたいと地団駄。
 アテネで新装オープンしたという、新アクロポリス博物館にも行きたいなぁ。しかし、パルテノンの破風彫刻、い〜かげんギリシャに返せよな、大英博物館。
 因みに、同じくアテネの国立考古学博物館にある、アルテミシオンのポセイドン像は、私のフェイバリット彫塑作品の一つなので、アテネに行ったとき(これまで3回行ってます)には、かならず「会って」きます(笑)。
 来週から始まるという、「和田三造展」の広告も載っていて、これも行きたいんだけど、う〜ん、姫路市立美術館かぁ……遠いなぁ。因みに和田三造ってのは、ホモならみんな教科書で目が釘付けになったはず(笑)の、あの『南風』の作者です。まあ、『南風』だけ見るんだったら、いつもは上野の国立近代美術館にあるから、東京在住の私には気軽に行けるわけで、そう考えると、姫路が遠いとかヌカしてるのは、ただのゼイタクってもんですね。
 そういえば、昔、晩三吉先生と御一緒して上野に美術展を見に行ったとき、同美術館のミュージアム・ショップで、晩先生がこの『南風』のポストカードを何枚も購入なさっていましたっけ。「そっち系の知り合いに手紙を出すときに使うから、いつも一定枚数ストックしている」んだそうで、それを伺って、「ああ、そーゆーのも粋でいいなぁ」、なんて思ったことを覚えています。

 アート&海外絡みでは、いつものパリのギャラリーから、今度やる企画展用に出品して欲しいとの打診あり。ちょうど条件に合う作品も見つかりそうなので、前向きに検討すると返事。

 もう一件、イギリスから、こっちは出版物用に作品提供の依頼あり。協力すること自体はやぶさかではないんだけど、条件的に合うものがあるかどうか、ちょい微妙なところなので、摺り合わせが必要な感じ。

 海外ネタで、もう一つ。
 前に一度お会いしたことがある、シンガポールのカメラマン、ワイ・テイク氏から、「今年のミスター・シンガポール・ボディビル大会で、85kg級のチャンピオンになったよ」と、YouTubeのアドレス付きでメールがきたので、せっかくだからご紹介。

 こういうバキバキの彼も、もちろんカッコイイんだけど、何てったってご本人がチョーいい男(←もちろん右側の人ですよ)なので、私としては、ご本人が「ちょっとたるんだ」と嫌がるオフのときの方が、やっぱりステキに見えるなぁ(笑)。
with-wai
 まあ、そもそも私は、コンテスト時のパンパンに膨らんだボディビルダーの身体は、ちょっと趣味から外れる部分もありまして。彼と会ったときも、彼が「何でもっと血管を描かないんだ」と聞くから、「ボディビルダーの血管って、何だかキャベツみたいで、あんまりセクシーじゃないから」と答えたら、はたかれそうになりました(笑)。

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 映画は、DVDで『ガンマン大連合』を鑑賞。
 ひゃ〜、チョー面白かった! 燃えるわ、泣けるわ、考えさせられるわ。
 マカロニ・ウェスタンには疎い私は、セルジオ・コルブッチの映画って、ソード&サンダルの『逆襲!大平原』と『闘将スパルタカス』くらいしか見たことなくて、この映画も、フランコ・ネロとトーマス・ミリアンが見られりゃ、それでいいか、ってな軽い気持ちだったんですが……しまったなぁ、こんな面白いヤツ見ちゃうと、ハマってしまいそうだ(笑)。とりあえず、『続・荒野の用心棒』と『殺しが静かにやってくる』にトライかなぁ。
 で、前にブログでも「脱ぎっぷりも責められっぷりもいい」と書いたトーマス・ミリアンですが、やっぱこの映画でも「脱いで責められる」のね(笑)。
 あと、主題歌がチョーかっこよかったので、観賞後は即座にサントラ盤を注文。その主題歌が聴けるイタリア版予告編が、YouTubeにあったので、それも下に貼っときましょう。

 この「♪ヴァモサマタ〜、ヴァモサマタ〜、コンパニェ〜ロ〜!」ってフレーズ(「殺っちまおうぜ、同志!」って意味だそうな)、サイコーです。
 いいかげん長くなったので、最近聴いている他のCDに関しては、また後日まとめて。

レックス・バーカー(Lex Barker)版ターザン映画のDVD

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 レックス・バーカー主演のターザン映画のDVD(アメリカ盤)が届いたので、ご紹介。
 ラインナップは、以下の5本。
『ターザン 魔法の泉 Tarzan’s Magic Fountain』(1949)
『ターザンと女奴隷 Tarzan and the Slave Girl』(1950)
『ターザンと密林の女王 Tarzan’s Peril』(1951)
『ターザンの憤激 Tarzan’s Savage Fury』(1952)
『ターザンと巨象の襲撃 Tarzan and the She-Devil』(1955)

 今年の3月に米ワーナー・ブラザースが始めた、ワーナー・アーカイブ・コレクションという、オンデマンド・サービスによるDVDです。
 オンデマンドDVDなので、ジャケットはプリンタ出力による簡素なもの。ディスクはDVD-Rで、メニュー画面もいたってシンプル。字幕や音声の切り替え等はなし、チャプターも10分刻みに機械的に入っているだけ。
 ただし、画質は(おそらく)ビデオソフト化時にレストアされたマスターを使っているので、制作年代を考慮しても充分に美麗です。多少のゴミや傷が見られるだけで、ハイライトのトビやシャドウのツブレは皆無、ディテールの再現性も上々。良くあるパブリック・ドメインの廉価DVDと比較すると、雲泥の差と言っても良く、ここらへんは流石に正規盤ならでは。
 ちょっと悔しいのが、米ワーナーのサイトから直接購入すれば、5本パックで買うと半額になる割引サービスがあるのに、日本からの注文は受け付けてくれない(ダウンロード購入なら、直接購入も可能みたいだけど、Macには対応していないみたい)ってトコ。仕方なく、米アマゾンで購入しましたが、そうすると割引サービスはなし。
 まあ、それでも買えるだけマシかな。

 というわけで、とりあえず『ターザン 魔法の泉』を鑑賞。
 秘境に存在する若返りの泉を狙う悪人と、その企みを防ぐターザンのストーリーに、アクション(ターザンの活躍)やスリル(ジェーンのピンチ)や笑い(コミック・リリーフとしてのチータ)が、満遍なく散りばめられる……という、ターザン映画のテンプレート通りの内容ですが、手堅く楽しませてくれました。
 ただ、スペクタクル性には、ちと欠けるかな。猛獣とターザンの取っ組み合いとか、象の大群の大行進とか、秘境にある遺跡のスケール感とか、そういったのもターザン映画のお約束なんですけど、そこいらへんはイマイチ食い足りない感もアリ。良くも悪くも、こぢんまりと纏まった感じはします。
 先代のジョニー・ワイズミューラーからバトンタッチした、10代目ターザン役者のレックス・バーカーは、ルックスはハンサムで、肉体もご立派。
 特に、ボディラインのしなやかな美しさという点では、先代ワイズミューラーや、この後のゴードン・スコットよりも上かも。アスリート系の肉体美好きなら、文句なしの眼福でしょう。何と言っても、徹頭徹尾腰布一丁で、シャツを着るシーンなんて一瞬たりともゴザイマセンので(笑)。
 ジェーン役のブレンダ・ジョイスは……う〜ん、残念ながら、あまり魅力は感じられない。さして美人でもないし、モーリン・オサリヴァンと比べると、かなり落ちるかなぁ。
 チンパンジーのチータは、コミカルなシーンではその芸達者ぶりを存分に見せてくれ、しかも決めるところではちゃんと大活躍。なかなかの名演です。

 さて、ターザン映画というと、ターザンがとっ捕まってふん縛られる……なんてのもお約束のシーンなんですが、そっちもちゃんと(笑)入ってます。
 今回ターザンは、結果として秘境に余所者を招き入れてしまったので、反ターザン派の住人たちは、彼が二度と秘境に来られなくするために、その目を潰してしまおうと企む。
 で、ターザンは、洞窟の岩場に磔に縛られ、目を焼き潰すための二叉の矛状の道具が炎で灼かれ……ってな展開になるんですけど、まあ責め場としてはアッサリめなので、これは残る4本に期待かな(笑)。
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ダニエル・レンツ(Daniel Lentz)

 前回、ダニエル・レンツを引き合いに出したので、ついでにレンツのアルバムの中から、お気に入りのものをご紹介。
cd_daniel-lentz-missa
“Missa Umbrarum”
 アンビエント好きにオススメしたい一枚。
 1曲目”O-KE-WA”は、低くゆったりと刻まれる微かなドラムや、繊細な音響効果に乗せて、12声のコーラスが、テキストを詠唱のように歌いあげる、ちょっと東洋的な雰囲気のある曲。とても瞑想的で心地よい。
 2曲目”Missa Umbrarum”(影のミサ)は、「キリエ・エレイソン」といったミサの典礼文を、音節ごとに分断・解体・再構成しながら歌う8声と、ワイングラスを使った様々な音響(鐘のようだったり、鈴のようだったり、ヒスノイズのようだったり、言われなければワイングラスだとは判らないような、不思議な音)と、それらの互いの干渉による118の音響効果(作曲者はSonic Shadows〜音の影と呼んでいる)からなる大曲。繊細で複雑な響きを持ち、なおかつ極めて美しい音楽。必聴。
 3曲目”Postludium”は、グラスハープによる幽玄なドローンの合間に、コーラスが浮かんでは消え浮かんでは消えする、これまた瞑想的な雰囲気を持つ曲。
 4曲目”Lascaux”は、まるでシタールのようなグラスハープのドローンの合間に、”Missa Umbrarum”でも聴かれた鐘のようなワイングラスの音響効果が絡む、アンビエントとして聴いても極上の逸品。
 このアルバムは、とにかくひたすら静謐で美しいので、ブライアン・イーノやハロルド・バッドが好きだったら、絶対に聴いて損はなし。

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“b.e.comings”
 表題曲”b.e.comings”は、様々な楽器による単音とテキストの断片が、マルチトラックのデジタル・レコーダーで、目まぐるしく複雑に組み合わされていく作品。
 他の4曲、”Song(s) of the Sirens”、”Midnight White”、”Slow Motion Mirror”、”Butterfly Blood”は、音節で分断されたテキストが、テープ・ディレイによって次第に再構成されていき、最終的にテキストの原型に戻って完成するという作品。
 前者には、ミニマル的な陶酔感や高揚感があり、後者には、美しく幽玄な雰囲気があります。それと同時に、どちらも分解されたテキストが、次第に組み合わさって文学的な詩として完成していくという、プロセスの面白さも味わえる。
 このCDでは、まず最初の5トラックで、最終的に完成形されたサイクル部分のみを聴かせ、残りの5トラックで、それらの曲を改めて、最初のサイクルから完成するまで、完全に収録する……という、ちょっと変な構成になっています。曲をシステマティックに「理解」するためなんでしょうけど、正直、個人的には余計なお世話という感じがします。
 でも、そういったロジカルな要素を抜きにしても、純粋に音楽として美しいというのが、レンツの音楽の良いところ。

cd_daniel-lentz-leopard
“On the Leopard Altar”
 ミニマル・ミュージック好き、テクノ好き、エレクトロニカ好きにオススメしたい一枚。
 1曲目”Is It Love”は、シンセサイザーのスピーディーなアルペジオと、細かく分断されたコーラスが、複雑に絡み合いながら、幻惑的に展開していきます。目眩くような中にポップ感もあるのがいい。80年代のニューウェーブを好きな方なんかにもオススメ。
 2曲目”Lascaux”は、前述のアルバム”Missa Umbrarum”に収録されている曲と同じ。極上アンビエント。
 3曲目”On The Leopard Alter”は、ピアノの演奏やシンセサイザーの音響をバックに、ヴォーカルが牧歌的なメロディーを穏やかに歌うという、かなりフォーク〜ポップス風の感触の曲。ちょっと、ヴァージニア・アストレイ、ケイト・セント・ジョン、ヒューゴ・ラルゴなんかを思い出しました。
 4曲目”Wolf Is Dead…”は、”Is It Love”と同様の構成。
 5曲目”Requiem”は、キラキラしたシンセサイザーのアルペジオに、低い鐘のような音響と低音域のコーラスがゆったりと寄り添う、内省的な雰囲気が漂う小品。
 全体的に聴きやすいアルバムです。
 オマケ。
 1986年、バンクーバー万博用に制作されたという、映像作品”Luminare”。音楽がダニエル・レンツ。前述のアルバム”On The Leopard Altar”に収録の”Is It Love”です。

ジョン・マクガイア(John McGuire)

 最近知ってお気に入りになった、アメリカのミニマル・ミュージック(米Wikipediaによれば、ポスト・ミニマル世代に属するらしい)の作曲家による、お気に入りのアルバム二つ(まだそれだけしか見つけられない)をご紹介。

cd_john-mcguire-pulsemusic3
“Pulse Music III / Vanishing Points / A Cappella” John McGuire
 電子音のミニマル・ミュージック。
 とにかく、1曲目の”Pulse Music III”が気持ちいい! キラキラした電子音が光の粒のように空間を飛び交い、反復とズレを繰り返しながら、綾織りのように楽曲を埋め尽くしていく。
 現代音楽好きのみならず、テクノやエレクトロニカ好き、古いところだとクラウト・ロック好きにも、ぜひオススメしたい逸品。
 2曲目の”Vanishing Point”は、同じ電子音ながら”Pulse Music III”とはうって変わって、音の間合いをたっぷりとった導入から始まり、その隙間をアルペジオがスピードを変えながら埋めていく。ちょっと、ダニエル・レンツを思い出させる雰囲気で、これまたかなりキモチイイ。
 3曲目”A Cappella”は、サンプリングされループする人声に、ソプラノのヴォカリーズが寄り添う、これまたちょっとダニエル・レンツっぽい美曲。レンツの”Missa Umbrarum”がお好きな方、せひお試しあれ。
 CDは、アマゾンだとプレミア付いてるのか、スゴい値段になっちゃってるので、リンク先は私も利用したMeditationsのサイト。試聴もできる親切設計です。

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“Works for Instruments” John McGuire
 上のアルバムがすっかり気に入ったので、他にはないかと探して見つけた、二枚組CD。今度は、アコースティックの管弦楽曲集です。
 1枚目の1曲目、28分近い”Cadence Music”は、スティーヴ・ライヒの直系といった感じの、陶酔的で楽曲としても美しい、21の楽器による堂々たる管弦楽曲。演奏もアンサンブル・モデルンなので、極めて高品質。ちょい、バロック的な典雅さも感じられるあたりは、マイケル・ナイマンに似た感触も。
 2曲目”Exchanges”は、弦楽四重奏とソプラノのヴォカリーズによる16分半の曲で、さながら、先の”Vanishing Point”や”A Cappella”の人力版といった趣。目まぐるしくテンポを変えながら、掛け合いのように繰り返される演奏が、かなり聴き応えあり。
 2枚目の1曲目”Decay”は、8つの金管楽器のための楽曲で、不協和音を多用した、ちょっと不穏な感じがする曲。
 2曲目の”Frieze”は、4台のピアノのための曲。曲調は前の”Decay”と似た感じで、さながら人力サンプリング・ループといった味わいも。この二曲は実験性が前に出ている感じ。
 3曲目の”Music for Horns, Pianos and Cymbals”は、いや〜、これは素晴らしい! 先の”Exchanges”同様に、シンプルなフレーズが、掛け合いのように絡み合いながら展開していくんですが、その酩酊感と高揚感が実に美しく、かつドラマチック。かなり感動しました!
 そんなこんなで、こちらもまた、ミニマル・ミュージック好きだったら聴いて損はない内容です。上のリンク先はMeditationsの商品ページですが、日本のアマゾンでも入手可能。

『戦場からの脱出』

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『戦場からの脱出』(2006) ヴェルナー・ヘルツォーク
“Rescue Dawn” (2006) Werner Herzog

 ヘルツォーク監督作品でクリスチャン・ベイル主演なのに、劇場公開なしのDVDスルーとは悲しいご時世。まあ、DVDで出ただけ良しとしますか。
 B級映画みたいな邦題と一緒に、パッケージにはデカデカと「戦争アクション!!」なんて書いてあります。
 確かに、ストーリーだけ抜き書きすると、ヴェトナム戦争で撃墜された飛行機のパイロットが、拷問されたり捕虜収容所に入れられたりして、とっても辛い目に遭いつつ、何とかそこを脱出するけど、今度は過酷なジャングルを生き抜かなければならず……という具合で、確かにB級アクション映画っぽいんですけどね。
 とはいえ、やっぱりヘルツォーク。
 いくら『コブラ・ヴェルデ』以降、何となくフツーっぽくなった感があるとはいえ、間違ってもコレは「戦争アクション映画」ではない。「戦争映画」ですらないかも。
 というのも、この映画における戦争や国家、政治や思想、敵や戦いといった要素は、単なる状況以上の意味はなく、映画のテーマとは全く関係ないのだ。では、テーマは何かというと、やはりヘルツォーク十八番の、大自然と拮抗しうる力を持つ、人間の狂気なわけです。

 そういうわけで、ヘルツォーク好きなら、見所はイッパイ。
 まず、冒頭のスローモーションによる空爆シーンからして、一気に魅了される。『アギーレ 神の怒り』の登山とか、『緑のアリの夢見るところ』の竜巻同様、「うぉ〜、ヘルツォークの映画だ〜っ!」って感じで、もうそれだけで嬉しくなっちゃう(笑)。
 本編に入っても、美麗で荘厳な自然描写(粛然とした前半も良いけど、やはり後半の圧迫感が、もうヘルツォークならでは)、徹底したリアリズム(捕虜たちの痩せっぷりとか、もうハンパねぇです)、緊張感と詩情の対比(蝶と犬の使い方が良かったなぁ)、等々、やっぱり素晴らしい。
 音楽はクラウス・バデルトなんですが、往年のヘルツォーク組で今は亡きフローリアン・フリッケ(ポポル・ヴー)の曲が、1曲使われていたのも嬉しかったなぁ。
 バデルトのスコアも悪くはないんだけど、例えばラスト・シーンで、余りにも単純な「実話を元にした感動作!」みたいな、いかにも風のテンションを盛り上げるスコアを付けちゃっているあたりは、正直ちょい疑問を感じました。主人公のセリフと暗転後のテロップによって、この映画で描かれているのは、「常軌を逸した生命力を持った人間の凄さ(或いは、異様さ)」だということが明示されるんですけど、この音楽だと「アメリカ万歳!」か「英雄の帰還!」みたいに、テーマをミスリードしてるみたい。

 まあ、この部分の音楽に限らず、全体として瑕瑾がないかというと、残念ながらそうではない印象はあります。
 主人公は、『アギーレ』や『フィッツカラルド』、あるいは『カスパー・ハウザーの謎』の主人公同様に、一般の規範や価値観から完全に逸脱した、常軌を逸した存在なんですが、それが充分に表現されていたかというと、いささか疑問が残る。
 主役のクリスチャン・ベイルは、文句なしに上手いし、役になりきった体当たり演技もあって、狂気と裏腹のエクストリームさもあるんですが、いかんせん、肝心の「生命力」があまり感じられない。キャラクターとしての「強さ」が、いまいち足りていないというか。
 また、前述したように、ストーリーを抜き出すと、シンプルな娯楽作の筋立てに近すぎること(まあ、実話なんだから仕方がないけど)も、結果として、映画の本質を曖昧にしてしまっているような気がします。
 そういう感じで、かつてのヘルツォーク作品を知っていると、共通する要素が多い分、どうしても比較もしてしまって、ちょっと「弱い」感じがしてしまう。『神に選ばれし無敵の男』のときは、逆に共通項が少ない分、問答無用で「傑作!」と思えたんですけど。

 でも、一本の映画として見れば、充分以上に見応えのある佳品なので、ヘルツォークのファンも、そうでない人も、ご覧になる価値は充分以上にあるかと。
『戦場からの脱出』(amazon.co.jp)
 最後に、いつものアレ系(笑)の追補。

 POWの映画なので、いちおう拷問シーン(縛られて牛に引きずられたり、逆さ吊りにされて顔に蟻塚を括り付けられたり)もありますが、リアリティや無惨さはともかくとしても、エロティックな興趣はゼロですので、ソッチ系好きの方は、あまり期待なさらないよう。
 ヴェトナム戦争POWモノの責め場が目当てだったら、『ランボー』シリーズ(スタローンがあんまり好きじゃないので、実は良く知らない)とか、チャック・ノリスの『地獄のヒーロー』シリーズとか(『3』の責め場はお気に入り)、あるいはもっとB級の『炎の戦士ストライカー』だの
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『ストライク・コマンドー』だの
cap_strikecommando
『怒りのコマンドー』だの、
cap_ikari
もうちょい映画的にマトモなところでは『ハノイ・ヒルトン』とか
cap_hanoi1
『極秘指令/グリーンベレーを消せ!』とかを、
cap_green
ご覧になった方がヨロシイかと(笑)。