バローズとかハワードとか

 だいぶ前に聞いて以来、楽しみにしている、エドガー・ライス・バローズの「火星シリーズ」の映画化。
 監督がロバート・ロドリゲス、ケリー・コンラン、ジョン・ファヴローと二転三転したり、ようやくアンドリュー・スタントンに決まったけど、実写かアニメーションかが明かではないとか、でもメインのキャスティングが発表されてきたとかで、まだけっこう期待していいものやら、身構えておいた方がいいものやら、ちょっとヨーワカランのですが、そんなときに、YouTubeでショッキングな映像を発見。

 げ、あれだけ待たせておいて、このチープさかよ!? と、一瞬アタマがマッシロになりましたが、よく読んだら、B級バッタもんビデオ映画専門のアサイラム制作の別作品(原作は同じだけど)の予告編だった。
 まあ、そーゆーことだったら、これはこれで楽しみです(笑)。ホモ狙いみたいな短髪のジョン・カーターは、けっこう見られる身体してるし、デジャー・ソリスがトレイシー・ローズだってのも、役柄云々は置いといて、彼女自体は個人的に応援したい出自の女優さんだし。
 というわけで、バローズ云々は忘れて、いまどき珍しい新作ソード&サンダル meets Sci-fiもののB級作品として、今から見る気マンマンに(笑)。とりあえず、腰布マッチョもの好きとしては、日本盤DVDが出たら買っちゃいそう(笑)。
 しかし、これでもし本命の劇場版もショボかったら、泣くぞ。
 いっぽう、ロバート・E・ハワードの「ソロモン・ケイン」シリーズの映画版予告編も。

 このシリーズに関しては、邦訳がないのでよく知らないんですけど、予告編の出来は、さっきのアサイラム版火星よりずっとマトモなので、フツーに期待しちゃいますね。
 ただ、監督のマイケル・J・バセットって、『デス・フロント』はそこそこ面白くて好きだったけど、その次の『処刑島』はウンコみたいな出来だったから……そこいらへんが、ちと不安要素。
 ハワードというと、IMDbによると「コナン」の新作も、マーカス・ニスペル監督で進んでいるそうで、画面のムードとかいう点では、これはいいかも。
 正直私は、ジョン・ミリアス版のカラッとした空気感が、あんまりピンとこなかったんで。軽い娯楽に徹しているという点で、まだリチャード・フライシャー版の方が好き。
 ただ、ニスペルはニスペルで、ムードに流れすぎで演出がタルくなる傾向はあるんですが。
 ラルフ・モーラー主演のTV版は……論外(笑)。サブキャラの、口のきけないスキンでヒゲのマッチョなコはカワイかったけど(笑)。

【追記】どっちも日本盤DVD出ました。
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レオ(とパンジャ)は、最初から「白いライオン」だったのだろうか?

 さしあたっての締め切りが片付いたので、先日ここで書いた手塚治虫の『ジャングル大帝 漫画少年版』を、ゆっくりじっくり読んでおります。
 種々のバージョンがあるという同作ですが、私がこれ以外で読んだことがあるのは、講談社の手塚治虫全集版のみ。というわけで、バージョンによる内容の違いは、私が気付いた分も気付かない分も含めて色々あるんでしょうが、私の場合、例によって全集版の本すら実家にあって手元にないので、細かな比較はできず。う〜ん、読み比べのためだけに、また文庫版を買っちゃいそうな自分が怖い(笑)。
 とはいえ、今回このマンガ少年版を読み始めたら、じきに、細かい部分ではなくて、もっと大きな部分に関する素朴な疑問が、頭に一つ浮かびました。
それは、
「レオ(とパンジャ)って、本当に最初から、白いライオンという設定だったの?」
ということ。
 私の記憶にある限り、マンガでもアニメでも、パンジャもレオも「白いライオン」で、その「白い」というのが、キャラクターの外見的特徴として、最大かつ重要な要素だったはず。
 ところが、今回の復刻版を読むと、何故かこの「白い」という要素が、なかなか出てこない。
 第一話で、パンジャの毛皮を欲しがっている黒人酋長が、白人のハンターと組んで罠をしかけるときも、パンジャの形容として、「ジャングルの帝王」や「森の化身」といった言葉は出てくるんですが(1巻・4ページ……以下特記以外は全て1巻)、肝心の「白い獅子(ライオン)」という表現がいっさい見あたらない。
 とはいえ絵を見ると、他の雄ライオンのたてがみは黒く塗られている(5ページ)のに対して、パンジャのたてがみは白いままで、まあ白黒のマンガ画面で見る限りは「白いライオン」に見えるんですけど、セリフのフォローが何もない、特に酋長が、白い毛皮の希少性ゆえにパンジャに執着しているといった内容がいっさいないのは、キャラクターを立てる要因として「白いライオン」というものを設定したのだとしたら、いささか不自然に感じられます。
 そこで、次に気になるのが、目を閉じて堂々と闊歩するパンジャの姿が描かれている、第二話のカラー扉(7ページ)。
 このパンジャは、たてがみと尻尾の房は白く無彩色のままなんですが、他のボディ部分には薄いベージュが塗られています。
 これを見て思い出したのが、ウィキペディアにも載っている有名なエピソード。

「白いライオン(ホワイトライオン)」というアイディアは、手塚がかつて動物の絵本を依頼された際にライオンの絵を白熱灯の下で彩色したところ、電灯の光のために、できあがってみたら色がきわめて薄くて没になった失敗談が発端という。

 これってひょっとして、実はこの扉絵のことなのかしらん、なんて思ったり。
 さて、同話の後半で、いよいよレオが誕生するわけですが、ここでも奇妙なことに、「白いライオンの子が生まれた」という、セリフによる描写がいっさいない。生まれた子供が真っ白だったら、レオの母エライザ(ただし漫画少年版ではこの名は出て来ない)を捕らえているクッター氏にしろ、輸送船の乗組員にしろ、もっと驚いてもよさそうなものだけど、そういったリアクションはいっさいなし。
 それどころか暢気にも、

「ほほう! こりゃあ かわいらしいな 母おや似だな」
「おいおい ライオンはどれだって みんな顔が同じだ」
(15ページ)

なんてセリフのやりとりすらある。
 もし、パンジャは白で、その子どものレオも白という設定が、当初から存在していたのだとしたら、こういう展開にはならないと思うのだが……。
 以降、レオをメインに話は続いていくんですが、相変わらず「白いライオン」という要素は皆無。
 出会った魚も鳥も、別の船の船員もネズミも、人間サイドの主要キャラクターであるケン一やメリイやヒゲオヤジも、レオをネコと間違えることはあっても、誰一人としてレオが白いということに驚かないのだ。
 そんなこんなで、レオの色が白いということに関しては、テキストでは何も触れられないまま話は進み、やがてレオは、ケン一たちと一緒にアフリカに戻り、パンジャの毛皮と出会うのだが、このときも

「ぼくと おなじ におい!」
(43ページ)

というセリフはあれども、毛皮が同じ白だという要素は出て来ず。
 そんな調子で、第四話まで続きます。
 そして、次の第五話。
 ここにいたって、ようやくカラー扉(45ページ)の「前號まで」というあらすじ中に、「白い獅子パンジャは」という一文が初めて出てくる。
 ただし、カラー扉に関しては、レオの姿が初めて描かれた第三話、次の第四話、そしてこの第五話でも、レオの身体の大半は彩色されない白ではあります。血管の赤みと思しき両耳部と、ボディのシャドウと思しき部分等のみに、ほんのり赤褐色系の彩色が施されている。
 しかし奇妙なことに、第五話のカラー扉では、キャプションでは「白い獅子」と名言されているパンジャの毛皮が、絵ではたてがみ部分のみが白く、顔やボディははっきりとしたオレンジ色になっている。
 そして、この第五章でも、本文になりと、やはりレオやパンジャの白さには触れられない。パンジャの毛皮を持ち運ぶレオを見て、ケン一とメリイが交わすセリフも、やはりまた、

「この子は なんてまあ 毛皮を こうもって まわるんだ ろう」
「その毛皮と レオとなにか かんけいがあ るんじゃ ないか」
(49ページ)

という具合で、二者の間の「白い」という共通項は描かれないままだ。
 この調子で、第五話でも、扉以外の本文中では最後まで、レオやパンジャが「白い」と明示するシーンはない。
 ところが、次の第六話になると、様相が一変する。
 まず、カラー扉(55ページ)は、古代エジプトでスフィンクスの前で眠る、レオの先祖の白獅子アンドロクレス(ただし漫画少年版ではこの名は出て来ない)である。
 そして本文に入ると、まず2ページめで、レオの消息を求めるヒゲオヤジが

「雪みたい白い ししのことをきか なかったか」
(57ページ)

と言うのを皮切りに、次のページでは、まるでだめ押しのように

「ワタみたい な白さだよ」
「ケムリ みたいな白さだッ」
「歯の白さ だ、わかるか」
(58ページ)

と続き、以下も

「で、しってるか 白いししを」
「白いしし? そんなもの いるのかい わッははは」
「白いしし! いますとも」
(58ページ)

と、これまで一度もセリフには出て来なかった「白い獅子」が、何と6コマに渡って連発されるのだ。
 更に、7コマめからは、やはり後に主要な役を負うアルベルト少年によって、アフリカ大陸における「白い獅子」の解説が、

「医斈上では シロコという んですよ」
「今からざっと 四千年まえに 『白いしし』がでた というきろくが あります」
(58ページ)

という具合に始まり、以降2ページ半(59〜61ページ)に渡って続く。
 そして、この第六話以降、レオが白いライオンだということが、あらすじや本文中で、折に触れて語られるようになります。
 つまり、私が今回の復刻版を読んで、どう感じたかというと、
「レオもパンジャも、最初は白いライオンという設定ではなかったのでは?
その設定は、第五話から六話の間ぐらいの時期に、後から付け足されたものなのでは?」
という印象を受けたということです。
 ひょっとしたら、こんなことは周知の話なのかも知れないけれど、寡聞にして私自身は、これまでそういった話は読んだことも聞いたこともなかったもので、これが事実だとしたら、ひどくビックリなわけで。
 ホントのところはどうなのかは、私にはこれ以上のことは判りませんが。
 もう一つ、パンジャの色に関しては、実は物語が後半に入ってからも、レオが自分の子どものルネとルッキオに、パンジャの毛皮を見せるシーン(2巻・13ページ)で、たてがみは白だが顔とボディーはオレンジ色をしているのも興味深いところ。
 ひょっとすると、パンジャに関しては、かなり後半になっても、全身が真っ白という設定ではなかったのかも。特典の複製原画にある、学童社版の単行本用表紙原画でも、やはりパンジャの色は、たてがみと尻尾の房のみ白(をイメージさせる薄いブルーのシャドウ)で、顔やボディはベージュ色をしているし。
 更に余談になりますが、もし『ジャングル大帝』の成立に、エドガー・ライス・バロウズの『ターザン』シリーズや、南洋一郎の『バルーバ』シリーズの影響もあったのだとすると、当初のパンジャは両シリーズに出てくるような「金獅子」を想定していて、第一話でたてがみが白いのも、白毛ではなく金毛のつもりだったのかも……なんて、更に妄想も膨らんだりして(笑)。

年末年始に見たDVDあれこれ

3時10分、決断のとき [DVD] 『3時10分、決断のとき』(2007)ジェームズ・マンゴールド]
“3:10 to Yuma” (2007) James Mangold

 ひゃ〜、男泣きの映画だね〜。加えて父子モノでもあるし、ネタ自体でもうストライクでした。
 生真面目な作りで、娯楽モノとしても卒のない完成度。ストーリー自体が面白いので、今度オリジナル版(この映画はリメイクで、オリジナルは57年制作の『決断の3時10分』という映画らしい)も見てみたい。
 ラッセル・クロウ、クリスチャン・ベイル、共に良し。ピーター・フォンダは老けたねぇ(笑)。

決断の3時10分 [DVD] 『決断の3時10分』(1957)デルマー・デイヴィス

群盗、第七章 [DVD] 『群盗、第七章』(1996)オタール・イオセリアーニ
“Brigands, chapitre VII” (1996) Otar Iosseliani

 グルジアの中世〜現代史を、同一俳優が演じる複数の時代のエピソードをカットバックしながら、ユーモアとペーソスたっぷりに描いた作品。
 内容的には、時代のパラダイム・シフトに振り回される市井の人々というものなので、かなりヘビーなネタではあるんですが、ユーモアと人間のバイタリティに満ちた描写のおかげで、驚くほど楽しく見られました。特に、ソヴィエト時代の秘密警察による拷問なんつー暗黒エピソードを、ブラック・ユーモアたっぷりに描くあたりがスゴかった。
 イオセリアーニは、これまで『月曜日に乾杯!』しか見たことなかったけど、もっと見てみよう。

月曜日に乾杯! [DVD] 『月曜日に乾杯!』(2002)オタール・イオセリアーニ

Dvd_flightpanicpersia 『フライト・パニック ペルシア湾上空強行脱出』(2002)エブラヒム・ハタミキア
“Ertefae Past” (2002) Ebrahim Hatamikia

 宣伝には「イラン製の航空パニック映画!」と銘打たれているものの、これは絶対それ系に見せかけているだけで、中身はぜんぜん別モンだろうと睨んだところ、やっぱり大当たり(笑)。
 ストーリーは、かつてイラン・イラク戦争の激戦区だった田舎に住む男が、都会で働きぐちがあるからと、妻や一族郎党を引き連れて飛行機に乗るのだが、実はそのままハイジャックしてドバイに亡命しようとしていた……といったシチュエーションで、飛行機の機内という密室劇を通じて、家族の問題や社会批判といったものを、ユーモアたっぷりに描き出すというもの。
 まあ、とにかく先の展開が読めない面白さがあるし、舞台がほぼ機内だけという状況にも関わらず、いっさいの弛緩が見られない脚本や演出もお見事。
 社会批判やユーモアに関しては、ちょいとイランという国に関する知識がないと、辛いところはあるかも。最初にドバイ行きを聞いたときは、ギャアギャアわめいていた親族たちが、いざ腹をくくって亡命が決定すると、とたんに浮かれ出して(イスラムの戒律が厳しいイラン社会に対して、ドバイは極めて緩やか)、若い娘がチャドル(頭巾)をとってウィッグをつけたりする(イランではチャドルの着用は義務)あたりは、大笑いでした(笑)。
 かなり体制批判的な内容なだけに、ラストがちょいと哲学的かつ寓意的なのは、検閲に対する予防措置的な意味合いもあるのかもしれません。
 というわけで、同種の「航空パニック映画に見せかけてるけど、実はぜんぜん別モノです」なロシア映画『エア・パニック 地震空港大脱出』とかを気に入った人だったら、本作もオススメ。意外な掘り出し物感が味わえます。

エア・パニック -地震空港大脱出- [DVD] 『エア・パニック 地震空港大脱出』(1980)アレクサンドル・ミッタ

薔薇の貴婦人 デジタル・リマスター版 [DVD] 『薔薇の貴婦人』(1984)マウロ・ボロニーニ
“La venexiana” (1986) Mauro Bolognini

 中世のヴェネツィア、外国人旅行者のハンサムな青年が、欲求不満の未亡人と人妻相手に、セックスのアバンチュールを繰り広げる……とゆー、ホントーに「それだけ」の映画(笑)。
 まあ、他愛ないっちゃ他愛ないんですが、ヴェネツィアの風物はたっぷり楽しめるし、美術や衣装も上等だし、映像はキレイで雰囲気も上々なので、たとえ女の裸にあんまり興味がなくっても、けっこう楽しめる内容です。
 主人公の青年役は、ショーン・コネリーの息子ジェイソン・コネリー。その昔、『ネモの不思議な旅/異次元惑星のプリンセスを救え!!』っつービデオスルー映画(実はけっこう好きな映画なんですけど)で見たくらいかな〜、なんて思ってたんですが、チェックしたら、前にここで触れたことのある『ドリームチャイルド』にも出てたんですな、覚えてなかった(笑)。
 まあ、果たしてこの若者が、年増美人を夢中にさせるほどのハンサムかどうかは疑問があるし、若いわりには身体の線がいまいちシャープさに欠ける気もしますけど、尻丸出しの全裸シーンはふんだんにあるし、親父さん譲りの胸毛はステキなんで、まあ良しとしましょう(笑)。
 もちろん、女性のヌード好きだったら、ラウラ・アントネッリやモニカ・グェリトーレの美麗ヌードで、お楽しみどころはイッパイでしょう(笑)。てか、IMDbにはアニー・ベルも出てるって書いてあるけど、どの娘がそうだったんだろ?

ドリームチャイルド [DVD] 『ドリームチャイルド』(1985)ギャヴィン・ミラー

Dvd_taifukennoonnna 『颱風圏の女』(1948)大庭秀雄

 嵐の海に船で逃走したギャング団が、辛うじて孤島に辿り着くと、そこは気象庁の台風観測所で、折しも巨大台風が接近しようとしていた……ってな、アクション・サスペンス・メロドラマ。
 正直なところ、密室サスペンス的にもメロドラマ的にも、さほど面白い出来ではないんですが、原節子の珍しく蓮っ葉な演技が見られるというところが、一番の目玉ではないかと。個人的には、この人は笑顔よりも怒り顔や無表情のときの方が美麗だと思うので、このギャングの情婦役もなかなか美しいです。
 音楽が伊福部昭で、特に冒頭の嵐のシーンが、画面との相乗効果でエラいカッコイイ。
 メロドラマ部分が、かなり唐突に展開する印象があるんですが、ただこれは、映画が制作されたのが48年ということを考えあわせる必要があるのかも。ヒロインの言う「三年前に会いたかった」というセリフが、当時の観客にとっては、現在の我々が見て感じるものとは、おそらく全く違う効果があったんだろうな、ということは想像するに難くありませんから。
 映画の尺が68分という、短くてシンプルな娯楽作でありながら、敗戦というパラダイム・シフトの影響が、作中に自然と刻印されているのを見ると、平穏な時代に生まれ育った自分としては、何だか感慨深いものがありました。

Dvd_yuwaku 『誘惑』(1948) 吉村公三郎

 父親を亡くした女子大生(原節子)が、父親の教え子である妻子ある政治家(佐分利信)の家に引き取られるのだが、二人の間には次第と男女の愛情が芽生えてしまい……といった内容。
 流石に『安城家の舞踏會』と比べてしまうと、かなり落ちる感じはするし、杉村春子が結核を患っている令夫人だというのも、何だか違和感はあります。演出が、ところどころ大時代的な感じがしてしまうのも、仕方ないこととは言え否めない。
 それでもダンスホールのシーンとかで顕著なように、セリフを介さず人物の心情の動きを表現するのは、昨今の「何でもかんでもセリフで説明」な風潮にウンザリ気味の身としては、やはり「表現」というテクニックの巧みさが感じられて、唸らされました。
 けっこうアモラルな設定なのに、ストーリーとしては意外なほどドロドロせずに、逆に清々しいくらい。これは、登場人物が皆「真面目」なせいかしらん。そこいらへんが、ちょっと面白い。
 あと、ラストシーンがトレンディ・ドラマみたいで、うん、なんか微笑ましくてヨロシかったです(笑)。今これをやられちゃったら、安っぽくなって引きまくりだと思うけど、ここいらへんはやっぱ、スターのオーラってぇヤツかも。

安城家の舞踏會 [DVD] 『安城家の舞踏會』(1947)吉村公三郎

つれづれ

 お仕事中。
 今描いているマンガの主人公は、こんな男。
tensyoku_rough
 年末年始にイタリアで開催されるベア・パーティーのご案内を3つほどいただいていたので、せっかくだからご紹介。
 まず、昨日のパーティ。
Layout 1
 次はまだ間に合う、今月5日のパーティ。
subwooferjan2010
 最後は、大晦日にやったパーティ。
bearsinromenewyear2010
 も一つ来た。ジェノバで1月16日ですって。
bearsking2010

ちょっと宣伝、”GOKU”三巻&ボックスセット発売されました

goku3
 元旦早々、年賀状と一緒に、フランスから小包が到着。
 というわけで、年末に発売されたフランス語版『君よ知るや南の獄』の3巻の、著者分刷り見本が届きました。
 これで仏語版”Goku – L’île aux prisonniers”も、無事完結。結局、昨年の1月、6月、12月と、ちょうど一年かけて全巻発売されたことになります。

 この『君よ知るや南の獄』は、一時期はフランス語版はおろか、日本語版の単行本発売も危ぶまれた状況だっただけに、2007年の日本語版発売に引き続き、こうしてフランス語版も無事完全発売されて、嬉しさもひとしおです。何しろ、純粋ポルノグラフィというフォーマットにおけるゲイマンガの、その可能性を徹底的に追求したという意味で、ある意味で自分の作品の集大成的な内容の意欲作だったもので。
 さて、それと一緒に、全3巻がボックスセットになっている「コフレ」も届きました。
 こんな感じ。
goku_all
 日本語版より、すこし本文用紙が厚めのせいもあって、ボックスの幅は6センチあるので、けっこう存在感があります。
 お値段は45ユーロ。日本円にすると、本日のレートで約6000円。
 因みに、一昨昨年に個展でフランスに行ったときのレートで換算すると、45ユーロだと7000円を優に超えていましたから、ユーロもだいぶ安くなりましたね。あのときは、「ひゃ〜、フランスって何て物価が高いの!?」と、かなり蒼ざめたくらいだったから(笑)。

 因みにボックスの装画は、私が本のカバー・イラストを人物ごとにレイヤーで分けて描いたものを、H&Oのデザイナーが新たにボックス用に再構成したもの。
 ぐるっと廻して見ると、登場人物全員集合という感じで、ちょっと面白い雰囲気なので、せっかくだからデザインチェック用に送ってもらっていた、箱を開いた状態の画像もアップしましょうか。
goku_box_open
 なんかいい感じで、気に入っています。

 もひとつオマケ。
 前にちょっと書いたように、今回の”GOKU”は3分冊ということもあり、日本版のように、メイン・キャラクターの椿中尉とハワード少佐を、それぞれメインにして一巻ずつという方法はとれなかった。
 かといって、代表キャラを3名となると、これまたちょっと難しかったので、常に椿中尉をメインにして、背後に他の登場人物を、それぞれのグループずつのセットで配置し、メインの椿中尉の絵を、ストーリーの進行に合わせて、コスチュームなども変化させていくという構成にしました。
 というわけで、3冊の表紙を並べると、こんな感じ。
goku_cover_all
 これまたいい感じで、気に入っています。

 日本語版の装丁もかなりこだわって作りましたし、フランス語版はもうちょっとカジュアルな感じですが、これまたいい感じに仕上がったので、自分の思い入れが深い作品なだけに、それぞれに嬉しい単行本になりました。
 日本語版はもちろん、フランス旅行の際には、ぜひボックスでお求めを(笑)。

謹賀新年

 明けましておめでとうございます。

 元旦に相応しく「越天楽(今様)」の主題をもとに、管弦楽系の変奏曲を作ってみました。
 中央の三角形をクリックすると、音楽の再生が始まります。徒然のお慰みにどうぞ。
 再生用Flash mp3プレイヤーは、 mixwidgetを使用。
 音楽の制作は、基本となる打ち込みをGarageBand、ブラッシュアップとミックスダウンをLogic Expressで制作。
 使用音源は、主にJam Pack Symphony Orchestra(Apple)。部分的に、Miroslav Philharmonik(IK Multimedia)とJam Pack World Music(Apple)を併用。

今年最後の記事は食べ物クイズ

 とーとつですが、クイズです。
 下の写真の食べ物、名前は何というでしょう?
igirisu
 答え。
「イギリス」
 何でも、九州は島原の名物だそうです。
「何故にこれがイギリス?」って思うでしょ、私もそうでした(笑)。

 事の起こりは、こんな感じ。
 相棒(島原出身)と一緒に、近所のスーパーに買い物に行ったとき。そこは小さなお店で、日替わりでレジの横に、おまんじゅうや蒸しパンといったお菓子が置いてあるんですが、その日はちょうど、ヨウカンをカステラで挟んだ「シベリア」が売られていたんです。
 で、私が「あ〜、シベリアだ、懐かしい〜」と言ったら、相棒が「シベリア? 何それ、イギリスなら知ってるけど」とのたまった。
 今度は私が「イギリス? 何それ、シベリアやモンブランなら判るけど、イギリスってどんな食べ物?」と驚く羽目に。
 以来私は、この「謎のイギリス」に、興味津々になりました。
 相棒に、どんな食べ物なのかと聞くと、「寒天みたいのの中に、細切りのニンジンとかが入ってる」という返事。
 どんな味かと聞くと、「う〜ん、味があるような、ないような……」
 美味しいのかと聞くと、「美味しくも不味くもないような……」といった具合で、質問すればするほど、どんな食べ物なのか、さっぱりワケガワカラナクなっていくばかり(笑)。
 具体的なイメージが全く掴めない分、謎がどんどん増していき、ますます私を虜にしていくイギリス(笑)。
 そんな具合で、「いつか見てみたい、食べてみたい」と言い募っていた私を見かねて、相棒が島原の親戚に、イギリスを送ってくれと頼んでくれました。

 それが我が家に届いたのが、最初の写真。
 夕飯時に食してみましたが、うん、確かに味があるような、ないような(笑)。
 お出汁の味はします。あと、おからの炒め物みたいな、お豆腐っぽい味も。でも、何味かって聞かれると、ちょいと説明には困るかなぁ(笑)。私に質問責めされて、返事に窮していた相棒の気持ちが判るような(笑)。
 見た目は素朴だけど、けっこう淡泊で上品な味で、私はけっこう好き。
 でも、何でこれがイギリスなのかは、やっぱり不思議。
 まあ、よく考えるとシベリアだって、何であれがシベリアなんだって気はするんですが(笑)。

 というわけで、珍しげな食べ物だし、日本には私同様、イギリスという食べ物の存在を知らない人も多いかと思って(笑)、自分の「イギリス初体験」記念も兼ねてアップしてみました。
 因みに、私にとってのこの手のご当地食といえば、私が育ったのは主に関東圏なんですけど、父方が島根は出雲のせいもあって、醤油風味の柚子マーマレード的な「ゆこう」とか、名前は知らないんだけど、種を抜いた梅干しを赤紫蘇の葉でくるんで砂糖に漬けたものとか、干したワカメを焼いて食べる「めのは」とか、お雑煮に入れる「うっぷるい海苔」とか、黄金色に透き通った和菓子の「琥珀糖」とかが、懐かしの味です。
 あとは、母方が横浜なので「全機庵」の洋菓子とか、どこのお菓子だったか判らないけど、カボチャの形をした「ポチロン・サブレ」とか、幼少時に短期間だけ大分にいた関係で、和洋折衷なお菓子「さびえる」なんかも、少年時代の想い出の味。

今年のあれこれ

 2009年も残り一日なので、今年のあれこれをちょいと反芻してみたり。

 マンガは、ゲイ雑誌を主軸に一般向けも二つほど(うち一つは、まだ世に出ていませんが)混じって、わりと充実していたかな。『父子地獄』を完結できたのも嬉しい。
 あと、月産ノルマ78ページという月があって、これは自己記録を更新してしまった(笑)。私はアシスタントを使わず一人でやっているので、流石にこれはちょっとキツく、某少年週刊マンガ誌の編集さんにも驚かれました(笑)。
 とはいえ、年間を通しては、そうメチャクチャ忙しかったというわけではなく、10年ほど前の、「バディ」で『銀の華』、「ジーメン」で『PRIDE』を、毎月並行連載しつつ、「ジーメン」では表紙イラストとレギュラー記事も幾つか担当し、合間に挿絵なんかもやりつつ、更には別名義での小説連載までしてた頃にくらべりゃ、ぜんぜん余裕かも。正直、あの当時のことをもう一度やれと言われても、今じゃ体力的にも無理だと思う(笑)。
 マンガ単行本も、日本で一冊、フランスで三冊(まだ最後の一冊は手元に届いていないけど)、イタリアで一冊出せたので、全部併せると例年以上のペースに。
 それと、マンガ関係で今年一番驚いたのが、文化庁メディア芸術祭から、『外道の家』がノミネートされたのでエントリー承諾書にサインしてくれ、という書類が来たこと。まあ、結果はもちろんかすりもしませんでしたが、ゲイ雑誌発のあーゆー作品が、こーゆーのにノミネートされたことだけで、もうビックリでした(笑)。

 一枚絵関係だと、これはやっぱりこのブログで詳細をレポした、フランスでの個展が大きかったですな。セレブにも会えたし(笑)。
 あと、オーストラリアの企画展にも参加したし、銀座の画廊の企画展にも監修で関わったけ。銀座ではトークショーもしましたが、ここんところ毎年、何かしらの形でこのトークショーってぇヤツをやっているような気がする(笑)。
 イギリスとフランスで一冊ずつ、アートブックへの掲載があったのも嬉しい出来事。

 プライベートでは、何よりかにより20年来の念願だった、モロッコ旅行ができたのが嬉しかった。
 アイト・ベ・ハッドゥの景観やメルズーガの大砂丘でのキャンプは忘れがたいし、マラケシュの喧噪も懐かしい。フェズのメディナで道に迷い、加えて暑さでヘロヘロになったのも、今となっては楽しい想い出。人里離れたところにある、ローマ遺跡のヴォルビリウスから、持参した携帯で鎌倉の実家に電話したら、ちゃんと繋がって父親が出たからビックリもしたっけ(笑)。
 タジン(モロッコ料理)も、色んな種類を食べられて美味しかった。個人的には、マトンとプルーンの入ったヤツと、肉団子と卵が入ったヤツが好きだったな。あと、パスティラという、鳩の肉をパイで包み焼きして、上にアーモンドと砂糖がまぶしてある、不思議な料理(笑)。しょっぱいんだか甘いんだか、何とも形容しがたい味なんだけど、でも不思議と美味しいのだ。
 あとはやっぱり、屋台のオレンジ・ジュースですな。生のオレンジを、その場でギュッギュッと幾つか搾って、ガラスのコップに入れてくれるの。疲れて喉が渇いたときには、これが一番でした。イランやパキスタンのザクロ・ジュース以来の、感激の美味しさ(笑)。

 映画は、ブログでもいろいろ書きましたが、輸入DVDで見た未公開映画に、感銘を受けたのが多かったような。
 何だかねー、最近「これは見たい!」って楽しみにしてたヤツが、劇場公開されずってパターンが多くて……。昨年暮れだったかも、ドイツ映画の実写版『クラバート』が、ドイツ映画祭か何かで上映されて、どーしてもスケジュール的に行けなかったんで、いつか一般公開されるんじゃないかと待ちつつも、けっきょくそれっきりでソフト化もされてないみたいだし……。
 そんな中で、『キング・ナレスアン』の日本盤DVDが無事出たのは、もうホント嬉しかったし、この間書いたように、『戦場でワルツを』を無事劇場で見られたのも嬉しかった。
 現在公開中のヤツだと、『監獄島』は、愛しのストーン・コールド・スティーブ・オースチン様主演だから気にはなるんだけど、内容的にどんなものなのか(笑)。ストーン・コールド様だけが目当てだったら、脱ぎっぱなしのプロレスのDVD見てた方がオイシイかも知れないし(笑)。因みに、このストーン・コールド様のプロレスの輸入盤DVD、私の気付かないところでウチの相棒が、ジャケを見てレザー系ゲイAVだと勘違いして、ホクホク喜んで再生し、中身を見てガッカリしたという逸話が、我が家にはあります(笑)。
 あと、映画じゃなくてテレビドラマですが、年末になってNHKの『坂の上の雲』を見たら、思いのほか出来が良くてハマってしまった。このドラマのことを何も知らなかったので、何を見るでもなく漫然とテレビを点けたら、第三話の再放送をしている最中で、軽い気持ちで「お〜、明治ものだ!」と見始めたら、そのまま最後まで目を離せなかった(笑)。
 私は普段、連続テレビドラマを見る習慣が全くないんですが、こればかりは、残り二話もしっかりチェック。放送時間になってテレビの前にやってきた私を見て、相棒が「ひゃ〜、珍しいね!」と驚いてた(笑)。というわけで、気に入ったにも関わらず、一話から三話前半までは未見なので、年明けとかにまた再放送してくれないかしらん。それとも、さっさとDVD出すとか……って、NHKだとDVDも高価そうだけど(笑)。
 それとまあ、こーゆーゲイはけっこう多いんじゃないかと思いますが、広瀬武夫役の藤本隆宏ってイイですね(笑)。相棒も「誰だい、これは?」と目を輝かせていました(笑)。越中褌でのヌードがあったので、今度は六尺姿を希望(笑)。
 昔の東宝の『日本海大海戦』では加山雄三だったけど、あたしゃこっちの藤本氏の方がダンゼン好きだ。しかし、気に入ってしまっただけに、今から「杉野はいずこ」のシーンを見るのが、怖いような楽しみのような……。

 マンガは、ブログで紹介しそびれていたヤツだと、何と言っても吾妻ひでおの『地を這う魚 ひでおの青春日記』が素晴らしかったなぁ。

地を這う魚 ひでおの青春日記 地を這う魚 ひでおの青春日記
価格:¥ 1,029(税込)
発売日:2009-03-09

 何がいいって、面白いとかしみじみするとか、そーゆーのもあるんですけど、何よりかにより作品全体の空気感がタマラナイ。その空気感に浸りたいがために、もう何度読み返したことか。
 自分が入っていきたくなる世界がそこにある、個人的な大傑作。
 最近買ったヤツでは、夢枕獏/伊藤勢『闇狩り師 キマイラ天龍変』1巻。

闇狩り師 キマイラ天龍変 1 (リュウコミックス) 闇狩り師 キマイラ天龍変 1 (リュウコミックス)
価格:¥ 590(税込)
発売日:2009-12-16

 雑誌『リュウ』を、オマケの手ぬぐいとクリアファイルに惹かれて買ったら(って小学生かい)、そこに連載されていたマンガで、絵に勢いがあってカッコイイので、単行本出たら買おうと待ち構えておりました(笑)。
 もともとが小説の外伝的な位置づけらしく、ストーリーの方はちょっとよーワカラン部分もあるんですけど(夢枕氏の小説も、浅学にも私は、20年以上前に『猫弾きのオルオラネ』を読んだっきりだし)、やっぱ勢いのある絵と迫力のある画面構成がカッコイイです。
 しかし、ドーデモイイことなんですけど、この伊藤勢といい、伊藤真美とか伊藤悠とか、伊藤姓のマンガ家さんって、絵に勢いがあって画面構成に迫力のある、カッコイイ作風の方が多くありません?(笑)
 何だか、だんだん「今年を振り返る」じゃなくて、ただの「近況つれづれ」になってきたので、ここいらへんでオシマイ。

マシン・トラブルと新環境

 マンガの締め切り直前に、マシントラブル発生。
 よりによって締め切り直前に……と思いつつ、しかし私の場合、マンガ制作でコンピュータは仕上げに段階でしか使わない、つまりベタ塗りとトーン貼りだけ(「バディ」の原稿に関してはネーム入れも)なので、まあ必然っちゃあ必然か(笑)。

 因みに結論から先に言うと、まあ何とか間に合いました。
 ここ数年はずっと、メインの作業にはMac mini G4 + Pantherっつー、かなりレトロな組み合わせを使っておりまして、もう一台、Intel iMac + Leopardってのもあるんですが、そっちはホビーユースのみで、まだ仕事には殆ど使っていなかったんですな。
 とゆーのも、マンガの仕上げで最もよく使う、PowerToneっつーPhotoshop用のプラグインがネックでして。こいつが、いつまでたってもバージョンアップしてくれないので、Intel Macに入れているPhotoshop CS4に正式対応していない。
 加えてPhotoshop CS4は、スキャナー機器のTWAINにも対応していないし、逆に、Mac mini G4に入っているPhotoshop CS2 + PowerTone 3っつー組み合わせには不満がなかったので、まあ古い環境のままでズルズルきていたわけです。
 ところが、このMac mini G4がイカれやがった。「?」マークが点滅したまま、起動しないんですな。
 いくつか応急処置を試してみたものの、効果なし。これ以上マジで対処していると、締め切りブッチの危機なので、急遽Intel iMacで仕上げをすることに。

 ただ幸いなことに、以前あれこれ調べたときに、Photoshop CS4でもRosettaで起動すれば、PowerTone 3もTWAIN機器も使えるということは判っていた。
 で、その時点で、念のためにIntel iMacにも、PowerTone 3のインストールは済ませていたし、トーンファイルや、スキャナーの初期設定や、Photoshop用のマンガに使うデータ(アクションとかスウォッチとかトーンカーブとかブラシとか、エトセトラ、エトセトラ……)なんかはコピーしていたし、それ以外にも、必要なファイルは常に外付けHDにバックアップをとっているので、まあ要するに、テーブルの上を片付けてマシンの配置を変えて、あとは機械を繋ぎ直しさえすれば、Intel Macでも作業は問題なく出来るというわけ。
 仕事である以上、サブマシンは常に確保していないとね。

 とはいえ、いざ作業を始めると、それでも幾つか小さなトラブルにはぶつかりました。
 例えば、タブレット(Intuos 3)の動作が変。考えてみると、まだIntel iMacには繋いだことがなかったので、急いでWACOMのサイトからドライバをダウンロード。
 ところが、これがヘンに時間がかかって(残り4時間とか表示される)、挙げ句の果てにはタイムアウトしてしまった。しかし、それまで無線LANでネットに繋いでいたIntel iMacを、急遽イーサネット・ケーブルを背面にブッ刺して有線接続にしたら、あっという間に問題解決してダウンロード終了。
 本来ならばここで、無線LANに使っているAir Macのアレコレとかも、再検討しなきゃならないんだろうけれど、そんな余裕はないので後回し(笑)。

 肝心のPowerTone 3の方は、まあ基本的には問題なく作動してくれるんですが、Photoshopのアクションで組んでいるトーン貼り(砂目とかドットとか、貼る面積や場所に左右されないトーンのうち、自分の定番の何種かをアクションに組み込んでいます)を何度か実行すると、「メモリが足りません」というアラートが出て使えなくなったりしました。
 これは、いったんPhotoshopを終了してから再度立ち上げると解決。アクションを使わないトーン貼りのみだと、このアラートも出ず。

 TWAIN機器の方も、問題なく作動してくれたんですが、スキャニング中にTime Machineのバックアップが始まると、何だか挙動不審になるような気配が。
 時間がないので正確な判断ではないですが、とりあえず、マンガの仕上げ作業中は、Time Machineは手動でオフにしておきました。

 あと、慣れの問題もあります。
 Photoshop CS4では、CS2と比べて、手のひらツールでビューを移動すると、ヘンにグニョーンと動いたり、止めたつもりがビミョーに動き続けて気持ち悪かったり、ドキュメントを複数開いたら、デフォルトでタブ表示になっていて使いにくかったりしたんですが、そこいらへんは初期設定をアレコレ切ったら解決。
 CS4から出来るようになったビューの回転は、これはなかなか便利で大歓迎なんですが、前述した初期設定で必要のない項目を切った際に、「OpenGL描画を有効にする」も切っていたら、このビューの回転も使えなくなってしまい、一瞬、原因が判らずに戸惑ったり。

 逆に、良いポイントもいろいろあり。
 まず、何てったって処理スピードの違いが大きい。
 というのも、「バディ」の誌面が大きくなったのを契機に、作業サイズを、それまでのA5原寸/600 dpiから、B5原寸/1200 dpiに変えたんですが、正直なところ以前のMac mini G4 + Photoshop CS2の環境では、かなり重くてストレスでした。

 ちょっと話が逸れますが、何でサイズと一緒に解像度も上げたかというと、掛けアミのツブレ具合とか垂直水平の流線の出具合(特にヌキ部分)で顕著ですが、やはり解像度を上げるとそれなりの効果はあるんですよね。まあこれは、私が最近ペンタッチを変えて、それまでのイリヌキがハッキリした一本線から、よりザクザクとラフに重ねて線を引く度合いが増えたところ、従来の600 dpiでは追っつかない部分が出てきたってこともあります。
 くっきりした線の再現性では、600 dpiでも問題はなかったんですが、「筆勢主体、荒れやかすれも上等!」な線だと、線のニュアンスが失われると、それが「味」ではなく「汚れ」になってしまう。いささか逆説的ではありますが、それが自分なりに得た結論。
 あ、でもこれはあくまでも、白黒二値の場合ですよ。グレースケールやカラー画像だったら、そこまで解像度の影響はないと思います。よく言われるように、350dpiもあれば充分。あと、白黒二値でも、スキャンではなくデジタル描画の場合も、これまた話は別だと思います。

 さて、話を戻しますと、前の環境と比べると、こっちのIntel iMac + Photoshop CS4は、いくらRosettaで起動しているとはいえ、そういったストレスはなく、サクサク作業ができます。
 私の場合、スキャンした線画をクリンナップするのに、アバウトに「サイズ変更>トーンカーブ補正>線画のチャンネル保存>線画のセル化>ゴミ取りを容易にするためのゴミのピックアップ」といった作業をアクションで組み、それを複数ファイルに対してバッチで自動処理しているんですが、以前はそれを始めると「やれやれ、一休みするかい」と、ちょいとベッドにゴロンと横になったりしていたところ、今回は「ちょっと一服……」程度の時間で終わってしまったり(笑)。
 こんな具合で、ファイル一つ開くにも保存するにも、以前よりだんぜん早くなって大助かり。

 あと、ショートカット・キーの扱いが変わったのも、使いやすくなりましたね。
 例えば私の場合、作業中によく使うショートカットで、「鉛筆」や「ブラシ」の「B」や、「バケツ」や「グラデーション」の「G」なんてのがあるんですが、これが複数回押すと、順番にツールが切り替わるようになった。最初はこれ、その仕組みに気付かなくて、「うが〜、さっきまでバケツだったのに、なんで勝手にグラデーションに変わってるんだよ、使えね〜!」とかムカついていたんですが、いったん慣れてしまったら、便利だったらありゃしない(笑)。

 というわけで、このまま新環境でもぜんぜんオッケー、それどころか、おそらく結果としては作業効率も上がって万々歳……と言いたいところなんですが、現実問題として、PowerToneの扱いを考えると、果たしてこれもどこまで保つやら……。
 CELSYSさん、ホント何とかしてよね……と、Mode時代からの付き合いの身としては、声を大にして言いたい。
 Comic Studioもいいソフトだとは思うし、私も部分的には使っているんですが、でも総合的には、私みたいにPC上でのペン入れはせず、仕上げだけをデジタルでやりたい場合は、あんまりアドバンテージないんスよ。
 オンラインストアも閉じてしまい、入手ルートも確保されていない現状では、こんなこと愚痴っても無駄かもしれないけど。

 そんなこんなで、環境移行もしたことだし、前にここで当時のデスクトップ画像を披露しているので、新環境の画像もアップしときます。
imac_desktop
 今度のデスクトップは、前にここここで書いた、ポーランドのTV版『クォ・ヴァディス』で巨人ウルスス役を演じていた、柔道選手ラファウ・クバッキの勇姿。今はもうなくなっちゃったらしい、本人の公式サイトからダウンロードできた壁紙です。
 色だけ、自分でセピアにいじったんだったかな? デスクトップがあんまりカラフルだと、絵を描いたりするには何かと邪魔なので。

プレゼント

 予約していたブツが、クリスマス当日に届きました。
book_jungle1
 キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
 というわけで、小学館クリエイティブの『ジャングル大帝 マンガ少年版 豪華限定版』です。ご覧のように、輸送用のケースに入っております。

 で、それを開けると……
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 チョコレートのギフトボックスみたいな、黄金色の外箱が。前に買った『完全復刻版 新寶島 豪華限定版』と同じパターンですな。

 で、それも開けると……
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 B5版ハードカバーの本2冊と、付属の小冊子、複製原画なんかが出てくる。
 まだパラパラとめくっただけで、きちんと読んではいないんですが、やっぱ大判なのと、カラーや2色ページが再現されてるのは嬉しいなぁ。
book_jungle4
 というわけで、期せずして自分から自分へのクリスマス・プレゼントをゲットしました(笑)。
 実は、「ちぇっ、なかなか届かねェなぁ」なんて思ってたんだけど、こーゆーオチだと、ちょっと嬉しい(笑)。

 そういやこの黄金の外箱って、ガキの頃に良く見かけた、クリスマス用のチョコレート・ギフトを思い出させますね。表面がクリスマス・モチーフのレリーフになっているデッカい板チョコで、付属の小さい金属製のハンマーで砕きながら食べるやつ。
 あれは、外箱のゴージャス感といい、レリーフの物珍しさといい、ハンマーで砕くギミック感といい、少年時代に大好きだったっけ。懐かしい(笑)。
 で、『ジャングル大帝』も、少年時代の記憶と密接に結びついているので……って、流石に私は、このマンガの連載をリアルタイムで知っている年代ではないんですが、テレビアニメと、親に買って貰ったレコード『子どものための交響詩 ジャングル大帝』が大好きだったもんで、ますます懐古的な気分に(笑)。
 自分が使っていた幼児用スプーンも、レオの絵が付いていたし、レオの顔の形をしたお風呂用のスポンジなんてのも使っていた記憶が。確かスリットが入っていて、中に石鹸を入れられるようになっているの(笑)。
 そんなこんなで、ちょいノスタルジー気分の、クリスマス当日でした。
 しかし、こんな気分になってしまうと、頭の切替をしてゲイSMマンガを描く仕事に戻るのが、ちょいと厄介でもあります(笑)。