『エクソシスト ビギニング』

『エクソシスト ビギニング』レニー・ハーリン
“Exorcist: The Beginning” Renny Harlin

 う〜ん、そこそこ楽しめるんだが、これが「エクソシスト」というシリーズの一本だと思うと、どうしても点数は辛くなってしまうなぁ。
 というのも私にとっては、フリードキンの一作目はもちろんのこと、ブアマンの『2』やブラッディの『3』も、同じ設定を使いながら、それぞれ異なるテイスト・異なる考察・異なるヴィジョンを見せてくれた(しかも圧倒的なパワフルさで)、いずれ劣らぬ魅力のある力作揃いだったからだ。

 この『ビギニング』も、一つ一つの発想自体は、決して悪くないと思う。「アフリカ奥地で、キリスト教がまだ到達していなかったはずの時代に建てられた、土に埋もれた謎の教会が見つかった」なんて設定は、なかなかゾクゾクさせられるし、「ナチスによるホロコーストで、一度は信仰を棄ててしまった神父が、いかにして再び信仰を取り戻すか」なんて話も、深く突っ込んでいけば幾らでも面白くなりそう。「この中で悪魔に憑かれているのは誰か?」なんていう、ミステリー的な要素もあるし、冒頭で提示される、聖ペテロ風の逆さ磔の大群のヴィジョンも悪くないし、大量に並ぶ墓の謎なんてのも、イメージとしてもネタとしても美味しい。

 でも残年ながら、それらがことごとく中途半端のまま終わってしまうんだよなぁ。
 教会の発掘作業と並行して怪奇な事件が起きるのに、では完全に掘り起こされたときに何が起きるのかといった要素がないし(つまり発掘途中である意味がない)、信仰を棄てたはずのメリン神父が、再び神の存在を信じるに至るターニング・ポイントも不明だし(これがないと、クライマックスの悪魔祓いが盛り上がらないでしょ)、手のひらサイズのパズズの頭像を探すのが話のツカミなのに、身の丈よりも大きいパズズの全身像なんてのをデ〜ンと出しちゃうのもどうかと思うし(その後で小さな頭像が意味ありげに出てきても、もうインパクト負けでしょ)、謎の墓を暴くのと村の娘の出産を並行して描きながら、それらに因果関係がないってのも……ねぇ??

 つまり「これがこのままいくと、トンデモナイことになっちゃうんじゃないか?」とゆーよーな、伏線の要素が決定的に欠けているので、イベントごとの不気味なムードは盛り上がっても、サスペンスが盛り上がらないのだ。絵作りはなかなか重厚だし(光と影の使い方は良かったなぁ)、役者さんたちもけっこう魅力的だし(メイン・キャスト以外でも、割と最近『炎のランナー』を再見したばっかだったので、ベン・クロスを見て「アラ、お久しぶり」とか思っちゃいました)、一つ一つのイベントの見せ方も悪くないのに(教会の内部に降りていくくだりとか、女医さんを巡るアレコレとか、単体ではけっこう好きなシーン多し)、それらが一本のモノガタリに収束していくというカタルシスがないのだ。エピソードをモノガタリたらしめる軸がない。

 監督交代劇が話題になってたけど、このバラけ具合は、やはりそれが祟ってのことなのかなぁ。となると、NGくらったポール・シュレイダー版ってのが気になってくるけど、私はこの監督は『キャット・ピープル』と『Mishima』を見た限りでは、「意余って力及ばず」なお方だという印象があるんで、どうにも微妙なトコロ(笑)。
 でもまあ、私とは逆に「『2』とか『3』なんてクソつまんねーよ!」ってな方だったら、この『ビギニング』こそ「これぞ元祖『エクソシスト』の純粋な続編だ!」ってカンジかも。一作目の前日譚としての工夫は、私は気付かなかった部分を含めて、何だかイロイロありそうだし。あと、前述したような隙間だらけのオハナシなんで、設定的な思い入れがある方なら、あちこち深読みする楽しみもありそうです。

 あと、蛇足ですが、メリン神父役のステラン・スカルスガルドさん。
 顔も身体もガッチリしてるし、ファッションのせいもあって、何だかインディ・ジョーンズみたいで、まあそれはそれでステキなんですけど、でもどう見たって、年老いてもマックス・フォン・シドーにはなりそうにないな〜(笑)。

“Samson”

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“Samson” (1961) Gianfranco Parolini
またまた輸入DVDのご紹介。ブラッド・ハリス主演のソード&サンダル映画です。
ヤヤコシイことにIMDBを見ると、この”Samson”(伊語原題”Sansone”)の他に、制作年も監督もキャストも全く同じ”The Fury of Hercules”(伊語原題”La Furia di Ercole”)という映画が、別々の作品としてクレジットされている。後者は『ヘラクレスの怒り』というタイトルで日本公開もされているっぽいんですが、果たしてこの二本は同じ映画なのか。配役表を見ると、同じ役者でも役名がそれぞれ違う。ハリスの役名は、前者はサムソンで後者はヘラクレス。共演のやはりマッチョ俳優であるアラン・スティール(珍作だけど責め場はなかなか良い”Hercules Against the Moon Men”の人です)の役名も、前者はマシーニョで後者はカルドス。さらにヤヤコシイことに、前者の仏語版”Samson contre Hercule”では、スティールの役名は更にエルキュール(つまりヘラクレスですな)に変わってたりするんで、あーもうヤヤコシイ(笑)。多分、それぞれ固有名詞を変えているだけで、話や画像自体は同じ作品だと思うんですけど。
話の内容は、とある国(祀っている神がヴォータンだったりするので、イメージとしては北方系? でもヴィジュアルはギリシャ・ローマってカンジだけど)で、悪の女王と腹心の宰相が、本物の女王を地下牢に監禁して、国を乗っ取って支配していると、そこにサムソン(念のため、こーゆー映画の常ですが、旧約聖書のアレとはまったく関係ありません。単に怪力の英雄の名前ってことで。このサムソン君は「ゼウスよ!」なんて言ったりするんで、おそらくギリシャ系なんでしょう)がやってきて、国を本来の女王の手に取り戻す……ってなもの。で、実は悪の女王はサムソンと昔恋仲だったり、侍女は本当は正統の女王の忠臣で、しかもサムソンが偶然出会ったもう一人の怪力男(これがアラン・スティール)の妹だったり……ってなドラマが絡みます。
まあ話自体は、ありきたりとは言えそんなにつまらなくはないんですが、いかんせん演出が悪いんで、どうも全体的にノンベンダラリとした印象。殴り合いのケンカやら、レスリングやら、拷問やら、闘技大会やら、それなりに盛り沢山ではあるんですが、どれもこれも演出にタメがないので緊迫感がない、ワザとらしいコメディー・リリーフのヤセとデブ二人組による、下手なユーモア描写もマイナス要因にしかなってないし、スケール感も乏しく、セット共々このテの映画ではありがちな安さが漂う……ってなわけで、どうにもこれといった見所に乏しい。
ただ、一つヘンな見所(?)はありまして、悪の女王の宰相を演じているのが、何と若かりし頃のセルジュ・ゲーンズブル(!)なのだ。真っ赤なヒラヒラのチュニック着て、鞭を片手にヘンタイっぽい演技。アンタ、こんな仕事やってたのかい(笑)。
ブラッド・ハリスは、ガタイはいいですね〜。筋肉モリモリだし、固そうだし、切れもいい。顔は、まあそんなに好きなタイプじゃないけど、今回はフルフェイスのヒゲが似合ってるのでOK。そういや、ナチ女囚拷問映画『獣人地獄!ナチ女収容所』(トンデモナイ映画なんだけど、実はけっこう好き)で、やはりフルフェイスのおヒゲで神父さん役をやってたときも、けっこうイケたっけ。でも、ヒゲを剃ったら絶対イケないタイプだろうなぁ(笑)。同じ女囚モノの『(秘)ナチス残酷物語/アフリカ拷問収容所』(ホンットーにショーもない映画だけど、実はブラッド・ハリス以外にも、『七人のあばれ者』のリチャード・ハリソンとか、これまた果てしなく安い珍作なんだけど責め場だけはけっこう良い”Giant of Metropolis”のゴードン・ミッチェルといった、往年のマッスル・スターが揃い踏みだったりする)とか、『超人ハルク』で有名なルー・フェリグノの『超人ヘラクレス』(これもアホな映画だけど、実はけっこう好き。DVD化を切に希望)なんかにも出てたみたいだけど、そっちはちっとも記憶にないや。
ハリスとタイマンはるアラン・スティールも、肉体の重量感はバッチリ。ただ、ハリスの筋肉がなんとなく岩っぽいゴツさなのに対して、スティールの筋肉はちょっとお饅頭っぽい丸さ。マーク・フォレストなんかも、このお饅頭系ですな。アタクシはゴツい方が好きなので、ハリスの身体の方が好みでございます。スティールの顔は、何だかジャガイモみたいで可愛いんですが、今回はヒゲがないからな〜……ヒゲフェチの私としては、ちと物足りない。
さて、お楽しみの「責め場」でございます。
まず、サムソンが石牢に閉じこめられ、ハンドルが廻されると、別室の部下二人が手首を鎖で吊り上げられ、同時にサムソンにも鉄のスパイクの生えた石壁が迫ってくる……というシーン。アイデアは悪くないんですが、前述した演出の悪さで緊迫感ゼロ。手首吊りはちっとも辛そうに見えないし、石壁も怪力であっさりクリア。む〜ん、こんなんじゃ物足りんわい。
次に、馬裂きにされそうになる侍女の救出シーン。サムソンが現場に駆けつけ、侍女の手首の縄を握って耐える……と思ったのもつかの間、これもあっさりクリア。物足りなさ×2。
クライマックスの闘技場のシーン、その1。燃える炎を挟んで、サムソンが多勢を相手に鎖で綱引き。じりじり引きずられて、肌が炎に炙られそうになる……なんてオイシイ描写もなく、またまたあっさりクリア。物足りなさ×3。
闘技場、その2。サムソンが目隠しをされて、丸木橋の上に乗せられ、剣で闘わされる。丸木橋の下は、一面の鉄のスパイク。しかも闘う相手は、アラン・スティール演じる朋友! 彼もまた目隠しをされていて、互いに相手が誰だか判らない。闇雲に振り回す二人の剣が触れ合い、丸木橋から落ちそうになり……なんてスリルもそこそこに、相手が「かかってこい!」ってな一声。サムソンは目隠しを外して「お前かぁ!」相手も目隠し外して「サムソン!」あとは二人で力を合わせて悪人退治。ここらへんで、物足りなさは既に臨界点に。
まったくもー、どれもこれも演出が悪すぎ!
ただまあ、「責め場」以外の「肉体の見せ場」は、こちらはそれなりに充実しております。
開始早々、偶然であった半裸のマッチョ二人は、狩りの獲物のイノシシ巡って殴り合い。ガツンと殴られると、相手の強さに感心して「はっはっはっ」と笑い、殴り返す。で、取っ組み合って、投げ合って、ケンカの最中にリンゴ囓って、また殴り合い。う〜ん、体育会系(笑)。重量級二人の筋肉のぶつかり合いを、タップリ堪能できます。
それからも、サムソンが宮殿でレスリングの御前試合したり、酒蔵で再会した怪力男二人が、またまた殴り合ったり、二人で力を合わせて、寺院の石柱を引き倒したり(ここは演出のマズさ=タメがないので、イマイチですが)、まあマッチョ一人より二人の方が二度オイシイってなわけで、肉体美そのものはタップリ拝ませていただけます。
DVDのリージョンはフリー、画像サイズはトリミングされたTVサイズ。字幕・特典共に無し。
画質はかなりボケていて、しかも退色も激しく、全般に赤茶けちゃってます。中の下。
“Samson” DVD (amazon.com)

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で、実はこの映画、PAL版のDVDも出てまして、それがこちらの”Samson contre Hercule”。
フランス盤です。そのせいか、ジャケットにハリスやスティールの名前はなくても、ゲーンズブールの名前だけはしっかり入ってる(笑)。
こちらの画質は、アメリカ盤に比べるとかなり良好。多少はボケてますが、それでもディテールの再現性はアメリカ盤を遙かに凌ぐし、加えて色もビックリするほどキレイで鮮やか。
リージョン・コードは2。画像サイズはノートリミングで、スクィーズなしのレターボックス収録。トリミング版だと避けられない、ワイド画面の構図の狂いがないのは、やっぱ良い。音声は仏語吹き替えのみ。字幕無し。特典は、予告編(ただしオリジナルではなく、同じ会社が発売しているソード&サンダル関係のソフトの画像を、独自に編集したもの)、ハリス、ゲーンズブール、監督のフィルモグラフィー(仏語ですけど)、フォトギャラリー(のふりして、実はスチルではなく、単にビデオのキャプチャー画像を並べただけというインチキもの)。
まあ、とにかく画質で言うなら、こっちの方が断然「勝ち」なので、PALの再生環境をお持ちの方なら、フランス盤の方がオススメです。
あ、でもジャケはちょっといただけないけど(笑)。

“Samson and the Seven Miracles of the World”

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“Samson and the Seven Miracles of the World” (1961) Riccardo Freda
新着輸入DVDのご紹介。ゴードン・スコット主演のソード&サンダル映画です。
タイトルを直訳すると『サムソンと世界の七不思議』だけど、映画のストーリーとはな〜んも関係なし(笑)。舞台はモンゴル民族に征服されていた頃の中国で、圧政に苦しむ人民と、反乱軍と、それを後押ししている僧院、そして中国の正統のプリンセス(ヨーコ・タニ)を、いずこからか遣わされた半裸のマッスル・ヒーローが救う……って、どこが世界の七不思議だ(笑)。
監督は、ジャケではリッカルド・パロティーニとなっていますが、IMDBで調べると、リッカルド・フレーダとクレジットされてます。マッスル系やソード&サンダル系だと、スティーブ・リーブスの『怪傑白魔』や、カーク・モリスの”The Witch’s Curse”、スパルタカスものの”Sins of Rome”、アルゴナウティカものの”The Giants of Thessaly”なんてのを撮った監督さんですな。
で、今回の”Samson and the Seven Miracles of the World”ですが、まあお約束通りの展開とはいえ、途中で飽きさせたり萎えさせたりすることもないし、ロケやセットのスケール感もあるし、全体的にはなかなか堅実な仕上がり。特筆すべきは、ヒーローがチャリオット相手に大立ち回りを演じるアクション・シーン。ここはかなりの迫力で見せます。クライマックスの王宮の崩壊シーンも悪くない。
音楽は、エキゾ系・ラウンジ系で有名なレス・バクスター。いかにもスペクタクル映画然とした音楽に加え、今回は中国が舞台ということもあり、お得意のエキゾものっぽい要素も聞かせてくれて、これはなかなか良いです。

ゴードン・スコットは、こういった神話的なヒーローものを演じるには、正直顔も身体もイマイチ押しが弱いんだけど(美形というよりは人好きのする好青年どまりだし、バルクもさほどない)、ただ、そこいらへんのフツーっぽさに、個人的には何となく色気を感じるので、けっこう好きな役者さんです。言うなれば、ナチュラル・マッチョってカンジでしょうか。
このスコット君、映画の中ではジャケ写のような、徹頭徹尾腰布一丁のお姿なんですが、他の登場人物は、中華ものというせいもあって、皆さんフツーに長袖長ズボンの衣類を着ておられる。で、この着衣の集団の中で、一人だけ半裸ってのが、何だか羞恥プレイみたいで変に面白い。奇妙に歪んだエロスを感じてしまいました(笑)。
ヒロインのヨーコ・タニは、あたしゃこの映画で初めて知りましたが、古い映画ファンなら名前を記憶している、海外で活躍した日本人俳優の草分け的存在らしいです。他にも、悪の一味なんだけどヒーローに心動かされるヴァンプ系美女とか、幼いけど勇気はある王子様など、脇キャラにもけっこう魅力的な顔ぶれ多し。
さて、このテの映画のお約束ア〜ンド個人的なお楽しみの一つ、「ヒーローの責め場」に関してですが、今回スコット君が受ける責めは、壁に開いた細長い穴(棺桶くらいのサイズ)の中に横たえられ、手足を鎖で繋がれて、そのまま蓋をされて生き埋めにされる……ってな、比較的地味なもの。
心理的な圧迫感を考えると、それなりに良いカンジの責めではあるんですが、こーゆーのって、小説ならともかく(バローズのペルシダー・シリーズのどっかで、主人公が真っ暗な穴に監禁されて、精神に異常をきたしていく……ってなシーンがあり、けっこうコーフンした記憶があります。しかもそこに大蛇が入ってきて、裸の肌にウロコが触れ合い……ってな展開もエロかった)、ヴィジュアル的には動きもインパクトもないので、映像としてそれほど面白くはないのは残念。
ただ、その他大勢への責め場も含めると、中華風の板の首枷をはめられて連行されたり、首から上だけ残して身体を土の中に埋められて、チャリオットに付いた刃で首を刈り取られる……なんつーシーンがあります。あと、美女が鞭で打たれるシーンなんてのもございますが、残念ながらアタクシは、そんなもの見ても面白くもなんともございません(笑)。まあ、鞭打った傷を、塩水に浸した羽でなぞって更に苦しめるなんてのは、ネタとしてはよろしゅうございましたが。
DVDのリージョンはフリー。画像サイズはノートリミングで、スクイーズなしのレターボックス。字幕無し。映像特典として予告編を収録。
画質の方は、かなりボケ気味だし、暗部もつぶれちゃってますが、とりあえず色が残っているだけマシ。こういった海外のB級もののソフトとしては、中の上ってトコでしょうか。ヒドいのはホントにヒドい画質ですから。まあ、そもそも定価7ドルもしない廉価盤ですからね。けっこう良い方だと思います。
あ、でも間違っても、日本でフツーに売られているDVDとかと比較しちゃいけません。「なんじゃこの劣悪画質は!」ってコトになります(笑)。
“Samson and the Seven Miracles of the World” DVD (amazon.com)

intuos 3

 ペン・タブレットを買い替えました。Wacomの初代intuosから、新しく出たintuos 3に乗り換え。
 以前、児雷也画伯が「cintiq(液晶タブレット)いいよ〜」とのたまっておられて、そっちにも惹かれるものはあったんですが、intuos 3の売りの一つである、ズームを割り当てられるトラックパッドってのが、やっぱ何とも魅力的でして。
 あと店頭で実物を見て、デザインのスマートさにも一目惚れ(笑)。
 本体の色が二種類あり、ホントはシャンパン・ゴールドみたいな「クリスタル・シルバー」って色の方が気に入ったんですが、残念ながら私が買いたかった入力エリアがA4サイズの、前に使っていたのと同じサイズのヤツだけが、何故か色が「クリスタル・グレー」だけ。これも他のと一緒で、二色用意してくれりゃいいのに……ケチ。
 実際使ってみた感触は、まず私が「絵を描く」のにメインに使っているPainterの場合は、至極快適。私の場合、Painterで使うキーボードのショートカットは限られているので(移動、回転、スポイト、ズーム、ブラシサイズの変更、undoくらいでしょうか)このタブレットのトラックパッドと4つのファンクション・キーを使えば、ほとんどタブレット上だけでサクサク作業が進みます。ただ、回転だけが何故か上手くいかない。何でだろう?? トラックパッドを使ったズーム機能は、なかなか便利です。若干コントロールにコツがいるようで、現時点では一段階ズームするつもりが二段階になっちゃったり(Painter 6なので無段階ズームじゃないんです)、ちょいと戸惑うことも多々ありますが、まあこれは慣れの問題でしょう。
 Photpshopの場合は、私がPhotoshop上でする作業は、絵を描くというより「塗る・貼る・加工する」等の「編集」作業の方が多いせいか、キーボードのショートカットやアクションを振り分けたファンクション・キーの使用頻度も、Painterに比べると段違いに多い。選択範囲関係、ツールの切り替え、クイック・マスクなどなど、とにかくショートカットを良く使うので、とてもじゃないがタブレットだけでOKというわけにはいかず、こちらはさほど恩恵はないかも。
 intuos 3のペン先は、スタンダード、摩擦係数が大きいフェルトタッチ、筆圧でクッションになるストロークと、最初から三種類付属しているのも売りですが、私は今まで普通のペンとストローク・ペンの二刀流だったんで、まさか使い分けるたびにペン先を抜いたり刺したりするわけにもいかず(そんな作業効率の悪いコト、やってられっかい)、結局最初っから別売のペンも一緒に買うことになりました。
 フェルトタッチは、摩擦係数が大きいために「紙と鉛筆」の感触に近いとのことですが、うむむ、これはやはり「紙とインクのかすれたマーカー」の感触です。キュッキュ軋む感がある。短い筆致で描くときは、滑るカンジがなくてなかなかイイ感じなんですが、勢いをつけて長いストロークを描くときは、ちょいとこの軋みが気になる。う〜ん、やっぱりもう一本ペンを買って、三刀流にしようかなぁ……。
 ペン軸の太さが、以前のデフォルトの細いものよりも、別売だったプロフェッショナル・ペンのように太いものになったのは嬉しい。以前の細い軸のストローク・ペンで作業していると、けっこう手が疲れたりしてたもんで。
 実は、ちょっと前にキーボードがイカれちゃって買い換えたばかりでして、そのとき一緒にマウスも調子が悪かったんで買い換えて、そこに今回タブレットも新調したので、図らずも入力デバイスが一挙に一新となりました。これはちょいと気分転換になってヨロシイです。
 来年くらいには、そろそろ本体も買い換えたいなぁ。なにしろ、今使っているPower Mac G4/350Mhzだと、Carrara 2とかIllustlator 10とか重くて重くて。このスペックじゃOS X入れても重そうだし、Poser 5も使えないし、Vue d’Epsritも試してみたいけど無理だし。
 そろそろPainter 9も出るみたいだし、来年あたり作業環境を一気にOS Xに一新したいんだが……う〜ん、ソフトのバージョンアップと周辺機器の買い換えで、いったい幾らかかるのか、考えただけでオソロシイ(笑)。
 あとな〜、Digicomi ToolsがOS Xに対応してくれないかな〜。

最近買ったマンガあれこれ

『水鏡綺譚』近藤ようこ/青林工藝社
 うぎゃ〜っ!!! 完全版なんて、いつの間に出ていたの〜??? い、いや、とにかく嬉しい。未完の長編がついに完結するのだ。これでやっと鏡子は家に帰れるのね? でも、ワタルとはどうなるの? ってな具合で、本屋の店先で狂喜乱舞しちまいました(笑)。
 描き下ろしの完結編を先に読みたい気持ちをグッと抑えて、最初からじっくりと再読。やはりこの、豊かな知識と確かな知性と繊細な感性が、芳醇なモノガタリとして結実する作風は魅力的。絵も大好きで、学生時分に憧れて真似して描いたこともありますが、あの線はとてもじゃないけど再現なんかできませんでした。
 ともあれ、鏡子と一緒に時の狭間に置き去りにされていた私も、これで目出度く「終わり」を迎えることができたということに、何よりも感謝。
『東方機神傳承譚 ボロブドゥール』太田垣康男/双葉社
 これまた、いつの間に出ていたの〜??? と、大喜びで購入。掲載誌休刊で未完だったからなぁ。残念ながら物語自体は、いわば序章が終わったところでジ・エンドとなってしまいますが、それでもこうして一冊にまとまっただけでも嬉しい。
 こういった、マンガでオリジナリティと説得力を持つ壮大な異世界を描こうという試みは、御厨さと美の『惑星ギャラガ』や、谷口ジローの『地球氷解時記』や、白山宣之の『サンドマン』など、とかく未完になりがちなのは残念。やはりこれは、連載という形態の限界なのかなぁ。
『ミカセ』鳩山郁子/青林工藝社
 こちらも待望の、久々の作品集。少女による少年趣味が、情緒や感傷に流れることなく硬質に結晶化していくような、また、趣味性の強いミニアチュールの中にマクロな宇宙を覗くような、そんな作風が大好き。で、また絵が内容に見事に合致して美しいんだよなぁ。初めて読んだときは、何となく鳥図明児さんとかを連想したっけ。
 今回の本は、前の『青い菊』同様、いずれも粒ぞろいの中短編集でしたが、いつかまた『カストラチュラ』のような圧倒的な長編も読みたいものです。
 一緒に並んでいた『スパングル』も、未収録作品を追加ということなので、一緒に購入。
『リボンの騎士 少女クラブ カラー完全版』手塚治虫/ジェネオン・エンタテインメント
 私の生まれる以前のマンガですし、『リボンの騎士』とのファースト・コンタクトはテレビアニメだったせいもあり、実を言うと絵柄自体は、この「少女クラブ版」よりも、後の「なかよし版」の方に馴染みがあったりするんですが(ヘル夫人なんつーオカマウケするキャラや、海賊ブラッドなんつー野郎系キャラも出てくるし)、ともあれ、作品が単行本化される際に、切ったり貼ったり内容を入れ替えたり、何かと手を加えることが多い手塚治虫のこと、ページは雑誌連載時のままカラーページも再現とくれば、こりゃあ買うっきゃないでしょう。
 おかげで、現行の全集版や文庫版では、石にされたまま話から放り出されてしまっていた可哀想なガマーが、ちゃんと後半でも元気な姿を見せてくれたり、フランツ王子の叔父のシャルネ殿下にも、人魚姫との悲恋と哀しい見せ場があることが判ったり、イロイロと嬉しい発見がありました。
『あなたをひとりじめ』内田かおる/竹書房
「コーモンに毛が生えている、ヒゲマッチョ系のボーイズ・ラブ・マンガがある」と聞いて、好奇心で買った『ヘイ・ドクター』でずっぽりハマってしまいました。んで、こちらが待望の新作品集。むか〜し従妹に「りぼん」を借りてコッソリ田淵由美子とかを読んでいたときのような、嬉し恥ずかし少女マンガ気分を満喫しつつ、同時にエロ系も楽しめるっつー、私にとってはダブルでお得な内容。
 いや〜、こーゆーのって自分はゼッタイに描けないから、ちと憧れちゃいます。
 あ〜、今回は何だか少女系に偏ってるなぁ(笑)。

『ヴァン・ヘルシング』

『ヴァン・ヘルシング』スティーヴン・ソマーズ
“Van Helsing” Stephen Sommers
 ユニバーサルのロゴがモノクロになって燃え出し、そのままジェームズ・ホエールの『フランケンシュタイン』のラストシーンへのオマージュへと続く冒頭(ただしフランケンシュタインの怪物の造形は、メル・ブルックスの『ヤング・フランケンシュタイン』に似ていますが)から、もう、飛ばす飛ばす。
 アクションとCGIの派手派手な見せ所でテンコモリ、空いた隙間もコテコテのギャグと小ネタで埋め尽くす、ツッコミどころもまた楽しという、快作『ハムナプトラ』(もっとも『ミイラ再生』のリメイクを期待した方は激怒したとおもうけど)の監督ならではの作風は健在でした。当然、テンコモリすぎていささか胸ヤケを起こすところもおんなじ(笑)。
 ただ『ハムナプトラ』がそういった作風と、登場人物たちの底抜けの脳天気さが見事に噛み合って、すンげー爽快感になっていたのと比べると、この『ヴァン・ヘルシング』は、主人公が影を引きずっていたり謎を帯びているせいか、派手派手演出がいささか空回りしている感もあり。やはり多少なりともシリアスな面も描くのならば、演出にももうちょっと抑制が必要ということか。
 また、こーゆーモンスター・ムービーのファンというのは、基本的に退治する人間より退治されるモンスターに感情移入しちゃうもんなので、主人公のヴァン・ヘルシングの御披露目が、あーゆーハイド氏退治(しかもどういう「悪事」を働いたかは明示されない状態の)で始まると、モンスター好きとしてはどうもハンター側に感情移入しにくい。これだったらパリとバチカンはすっ飛ばして、トランシルバニアの兄妹から話を始めて、打ちひしがれた妹の村に謎のモンスター・ハンターがやってくる導入にしたほうが、感情移入もしやすいんじゃないか……なんて考えたりして。
 でもまあ、ハンター役のヒュー・ジャックマン、馬を駆るときとかに流れる、重厚なストリングスにロマ風のギターがかぶるテーマ曲(?)はエラいカッチョイイし、ちゃ〜んとマッチョなヌードも見せてくれるし、まあ良しとしましょう。クライマックスで服がビリビリに破れて「腰布一丁」みたいな姿になったのを見たときゃ、腰布フェチのあっしとしては「ヒュー・ジャックマン主演でターザン映画を撮ってくれ〜っ!!」と、切に切に思いましたもん(笑)。
 ヒロインのケイト・ベッキンセールも、このまえの『アンダーワールド』に引き続きの美麗っぷり。クルクル巻き毛に赤いコルセットに黒いパンツという姿が、バッチリ決まっておりました。
 デヴィッド「ファラミア」ウェンハムちゃんは、『指輪』のときとの違いにはビックリギョーテンですが(笑)、コメディ・リリーフならもうちょっとはっちゃっけても良かったかも。
 物語的には、ドラキュラとフランケンシュタインを「命」というテーマで括るという視点は、なかなか面白いと思います。ドラキュラと狼男(余談だが、なぜ werewolf に「ウルフマン」なんつー訳を当てはめたのかは理解に苦しむ。フツーに「狼男」や「人狼」でいーじゃん。どこぞのDJじゃあるまいし……)というコンビの関係性への考察があるのも、これまた『アンダーワールド』同様に好印象。また、ドラキュラと400年間闘ってきた一族なんつーネタも、なかなかオイシイ。
 惜しむらくは、ただでさえネタとして過剰気味なところに加えて、それらと話のある意味でのキモでもある、ミルトン的なネタの部分が、完全にミスマッチなところ。物語の背景に壮大な仕掛けがあるというのは好きだけど、この作品に関しては上手くいっているとはちと言い難い。
 物語も演出も共々、「足すばっかりじゃなくて、たまには引くこともしましょーよ」ってなカンジ。
 でもまあ、総合的にはとっても楽しく見れました。
 美術や衣装は凝ってるし、ドラキュラ三人娘の「ヌードに翼→ドレス」のメタモルフォーゼは実に美しかったし、狼男はマッチョでカッコイイし(ちょっとだけ寝てみたい)、フランケンシュタインの怪物はちゃんと火を怖がるし、「フレンド」もあったし、実験室は吹き抜けで被験者も屋上に出てるし(凧があがっていなかったのは、ちと残念)、ドラキュラがオウチではマジモンの蝙蝠よろしく天井からぶら下がってるのにはウケたし、繭からアレが出たときはマジで椅子から飛び上がりそうになったし、「ありえね〜!」アクション・シーンには口元もほころぶし、「縛られた裸の男が悶え苦しむ」シーンもあるし(笑)、二時間ちょい、休む間もなく、でもあくまでもお気楽〜に愉しませていただきました。
 
 さぁて、とりあえずサントラを買いに行くか!

『LOVERS』

『LOVERS』チャン・イーモウ
「十面埋伏」張藝謀
 前作『HERO』は、かなり好きです。で、この『LOVERS』、その二番煎じだったらヤだな、なんて思ってたんですが、見てビックリ。これは似た素材を使いつつ、二番煎じどころか正反対の内容を見せるという、表裏一体の二本じゃないですか。うふふ、こういう仕掛けって大好きです、私。
 例えば『HERO』では、実と思っていたものが次々とひっくり返って虚となり、登場人物に対する思い入れは次々と裏切られ、物語のエモーションは喪われていき、最終的に、個を凌ぐ大義が浮かび上がるという壮大な仕掛けがありました。
 対して『LOVERS』は、人々の関係は最初から偽りに満ちた、相手を騙す物語としてスタートする。そして騙し、騙されの虚々実々の駆け引きが繰り広げられていくうちに、それぞれの登場人物の個性が浮かび上がってきて、それに惹かれる形でエモーションもかき立てられ、最終的に、膨大な偽りの中から一つの真実が浮かび上がる。大義に屈し得なかった、個々の愛という形で。
 いやあ、これには一本取られました。
 こういった対比は、物語以外の要素においても至るところに仕掛けられています。
 例えば美術。同じ美しい画面づくりをしながらも、『HERO』のそれは、色相の統一というアンナチュラルな色彩設計による、異様なまでの人工美。対して『LOVERS』では、計算された配色と自然の色彩を強調することによる、いわば真っ当な美しさ。
 アクションもそうです。同じアクロバティックなワイヤー・アクションでも、『HERO』のそれは、アクションというよりは超現実絵的な舞踏を思わせるものでしたが、『LOVERS』では、まあ超現実的ではあるんですが、それでもあくまでもアクションであり続ける。物語前半で、チャン・ツィイーが舞踏を踊りながら、それがやがて対決としてのアクションへと転化していく様は、『HERO』における、戦いの場として対峙しながらも、それが美しい所作や流麗な動きゆえに、まるで舞踏のように見えてくるのと、実に好対照であるように思います。
 これらの差異によって、『HERO』の持つ観念的でシステマティックな世界と、『LOVERS』の持つ情緒的でオーガニックな世界の違いが、よりくっきりと浮かび上がってくる。これはホント「お見事!」と言うしかありません。
 他にも「男性的と女性的」なんて対比もできそうですが、いちおうジェンダー論議に無縁ではない身なので、安易にそーゆー言葉は使わない方がいいかも(笑)。
 こういった相似形の中での明確な差異というのは、『初恋のきた道』と『あの子を探して』でも同様のことを感じたました。その作風の美しさから、叙情的だったり情緒に訴えかける側面がクローズアップされがちなチャン・イーモウ監督ですが、実のところはかなり理知的な計算に長けた作風の作家だ、なんて今回あらためて思ったりして。
 こういった具合で、この『LOVERS』と『HERO』は、両方を見ることで、それぞれの本質が互いに響き会うような形で、より明瞭に浮かび上がってきます。
 おそらく『HERO』がイマイチだと思った人は、『LOVERS』の方が面白いと思うでしょう。逆に『HERO』が大好きだと、『LOVERS』はイマイチに感じるかも知れません。が、とにかく両方ご覧なさい。これは併せてみる価値のある、いや、併せて見てこそより面白くなる映画ですから。そういう意味では、『キル・ビル』と『キル・ビル vol.2』の関係にも似ているかも。
 まあ、もちろん「どっちも大好き!」って人も、「どっちもつまんねーよ!」って人もいるとは思いますけど(笑)。
 で、私個人の好みはどうかというと、ここは『HERO』を推したいですね。私にとって、あの圧倒的な「虚ろな美」の力は、やはり何にも増して代え難いものなので。
 もちろん、この『LOVERS』も好きです。ただ、私本来のテイストが『HERO』の方に近いということと、『LOVERS』は幕切れのクドさにちょいと閉口しちまいまして、そこで気持ちがサーッと醒めちゃったせいもあります。おかげで、エンディングのキャスリーン・バトルの歌声も、必要以上にクドく感じちゃったりして(笑)。

『デビルズ・バックボーン』

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『デビルズ・バックボーン』ギレルモ・デル・トロ
“El Espinazo Del Diablo” Guillermo Del Toro

 私、この監督かなり好きなんです。少なくとも『クロノス』と『ミミック』は、どっちも「大」が付くくらい好き。『ブレイド2』は、ちょっと乗れない部分もあったんですが(「世界を見せる」とか「怪獣怪物大暴れ」系の特撮モノは大好きなんだけど、実はアクション映画はちょい苦手。肉弾戦にしろ、ガン・アクションにしろ、カンフーにしろ、カー・チェイスにしろ、何か退屈しちゃうんですよ。で、『ブレイド2』はこのアクション比率が高めだったんで……)、でもラストのロマンチックな表現なんかは好きだった。
 で、この映画はそんなデル・トロ監督がスペインで撮った、ちょいアートの香りがするホラーだっつーじゃないですか。かなり期待マンマンで観に行きました。

 内線時代のスペイン、荒野の真ん中に立つ俗界から隔絶された孤児院に、孤児となった少年がやってくる。
 冒頭では幽霊についてのナレーションが語られ、孤児院の中庭には巨大な不発弾が不気味に突き立ち、地下には濁った水をたたえた貯水槽が。片足が義足の初老の女性院長と、医師らしき白髪白髯の老紳士。先輩孤児からの少年へのいじめ。ラム酒に漬けられた奇形児の標本。自分の名を呼ぶ姿なき声。
 そして少年は、自分と同じ歳くらいの少年の幽霊を目撃する。幽霊は、やがて起きるであろう大惨劇を予告する。そして、ついにその日が訪れるが、それはまだ真のクライマックスではなく、その後に予想だにしなかった展開が……!
 とまあ、大筋はこういったところです。面白そうでしょ?

 じっさい物語は、すこぶるつきで面白いです。幽霊話に終始するのではなく、それと並行して、子供たちの間のパワーゲームや、大人たちの野心や愛欲、内戦というバックグラウンドでこの孤児院が抱えている実情、隠された金塊などといった要素が絡み合い、その展開は予断を許しません。
 加えてキャラクター描写が丁寧なので、登場人物それぞれが実に生き生きしている。ある人物には心底憎しみを感じるし、他の人物には同情してホロリとなるし、はたまた複雑な内面に唸ったり。こういった、キャラクターの心理描写が緻密で、かつそれが物語に有機的に絡んでくる魅力というのは、前述した『クロノス』や『ミミック』でも同様でした。
 映像も美しいです。胎児を漬けたラム酒や濁った貯水槽を初めとして、映像の基本的な色調が、冒頭で語られる「琥珀に閉じこめられた虫」という言葉と見事に呼応している。前述の二作でも、バロック絵画を思わせる美しい光の演出や、シンメトリカルで重厚な構図などに、ときおり「はっ」とさせられたけど、そういう映像美や、そこはかとなく画面に漂う品の良さや格調の高さという点では、今回はそれらを凌ぐ出来映え。

 つまりこの映画は、いわゆる「ホラー映画」とは、かなり趣が違う。もちろん幽霊についての物語ではありますが、同時に生きた人間についての物語でもあり、戦争についての物語でもある。しかも、全体的に「怖い」という要素よりも、「面白い」「じーんとくる」「考えさせられる」といった要素が勝っている印象です。ここがこの映画の面白いところであり、同時に残念なところでもあります。つまり、文句なしに面白いし、感動もあるんですが、でも、もうちょっと怖さも欲しかったな〜、というのも正直な印象。
 まあ、必ずしも「幽霊=怖い」である必要はないんですが、少なくとも物語の前半では、主人公は幽霊の影に脅えている以上、やはり観客も相応に怖がらせて欲しい。しかしこの映画は、「主人公が怖がる姿」は描かれているんだけど、観ているこっちはあんまり怖くはないんですよね。
 その理由は幾つか考えられるんですが、一つは、幽霊ってのは実際に出るまで、つまり「出るぞ出るぞ〜」ってな怪しい気配や不可解な現象が怖いんであって、ナマの幽霊(ヘンな言い方だけど)をポンと出されたって、さほど怖くはないってことです。「誰もいない音楽室でピアノが鳴る」のが怖いのは、あくまでもそーゆー不思議な現象が怖いんであって、幽霊がピアノの前に座って本当に弾いている姿なんてのは、考えようによってはユーモラス。でも、この映画だとそういう前振りがあまりなく、幽霊は比較的アッサリ出る。
 もっとも、幽霊を目撃して、なおかつ「怖い」場合もあります。例えば「窓の外に人の顔が浮かぶ」みたいな、「そんなところに人が立てるはずがないのに、でも、いる」場合とか、あるいは、火葬場だの事故現場だのといった、いかにも曰く付きの場所だったり、もしくは最近のホラーでは定番の「わっ!」と脅かすようなショッカー的な出方をしたり。でも、この映画は、そういった要素もあまりない。そこいらへんも、怖さという点では、盛り上がりに欠けてしまった原因かも。
 ただ、その「出た」幽霊の造形はなかなか凝っているし、けっこう斬新だと思います。少なくとも、こういう「死んだときの状況に則ったモノを身の回りに漂わせている(何だか回りくどいですが、まあどんなものかは見てのお楽しみということで)」という表現は、私は過去に見た記憶がない。

 ただ、こういった物足りなさも、あくまでも前半の、いかにもホラー(っつーか怪談といった方がシックリくるかも)然とした部分に関してのみであり、中盤以降の、幽霊が既に単なる恐怖の対象ではなくなって以降(またまた回りくどいですが、これもまた見てのお楽しみ)は、そんな不満はキレイに消し飛びます。特に、後半で出てくる「もう一人の幽霊」の出方なんか、すごく好きです。
 で、もう話は面白くてワクワクするし、どうなっちゃうのか目が離せないし、禍々しくてゾクッとするし、ホロリとくるし、哀切だし……と、見所テンコモリ。観賞後の印象も、ホラー映画というよりは、ちょっと変わった文芸映画を観た味わい。
 俳優陣も、ヘンに可愛くない子役たちといい、女所長のマリサ・パレデスといい(ゲイな私としては『オール・アバウト・マイ・マザー』はもちろん、オカマな私としても『ディープ・クリムゾン 深紅の愛』のスリップにウェディングベールという姿で夜這いをかけるババァ役が忘れがたい)、医師のフェデリコ・ルッピといい(『クロノス』のときは途中でヒゲがなくなってガッカリしたけど、今回はずっとフルフェイスの白ヒゲでモロイケよ)、とっても良うございました。エドゥアルド・ノリエガは実は初めて見たんだけど、いや〜ん、セクシーだわぁ(笑)。その彼女役の美人ちゃんも良かった。
 そんなわけで、全体としては素晴らしく、ぜひオススメしたい映画です。ホント、これであと『チェンジリング』や『たたり』ばりの「怖さ」があれば、個人的にはもう大大大大傑作! だったんだけど。

 しかし良く考えてみると、このデル・トロ監督、ジャンル的にはホラー映画の監督とされているけれど、今まで観た『クロノス』にしろ『ミミック』にしろ、観ていて私が怖かったかというと、実は「否」だったりするんですな。
 確かに『クロノス』は吸血鬼の話だし、『ミミック』はモンスターの話だし、ジャンルはホラーっちゃあホラーなんだけど、改めて良く考えると、私が好きなのはギミックの魅力だったり、老いた夫婦間の愛情や祖父と孫娘との交流の情感溢れる描写だったり、控えめのブラック・ユーモアだったり(以上『クロノス』)、「母」になりたがっている子の出来ない女性が、「子供たち」を救うために禁断を犯して生み出したモンスターがカタストロフを引き起こし、それでもモンスターは彼女にとっての「子」であり、そこにあらかじめ「母」がなく、やがて「父」をも喪ってしまう「子」が現れ、そして「母」と「父」と「子」が……といった構造であったり(以上『ミミック』)、それらが絵画的な色調の重厚で美しい画面で描かれ、そこには常に一抹の哀感が漂っており……といった、ホラー映画というジャンルを越境する魅力だったりするわけで、実はこの監督、恐怖そのものの描出には、それほど長けてはいないのかもしれない。

 あと、根が真面目な「良い人」なのかな〜とも思いますね。この『デビルズ・バックボーン』なんか、設定だけから考えると、ジョン・ソールのホラー小説みたいに、いくらでもドロドロで陰惨にできそうだけど、出来上がった映画では、子供たちのイジメ一つとっても、決して陰湿にはなっていないし。
 また、いわゆる「オタク系」監督らしいけど、他のオタク系の監督と比べて、例えばタランティーノの『キル・ビル』やピーター・ジャクソンの『ブレインデッド』なんかの「流血描写」に見られるような、まるで小学生が「スゲ〜!!!」と喜んでいるような愛すべき稚気は感じられないし、あるいはアルジェントやデ・パルマのようなヘンタイっぽい魅力というのもあまりない。オタクやホラーという括りの中で考えると、良く言えばバランスの良い、悪く言えば暴走をも恐れないパワーには欠ける作家なのかもしれない。それが魅力であり、同時に良い意味での逸脱を阻む限界なのかも。

 でもまあ、そういった部分もひっくるめて、私はこの監督の映画が好きなんだと思います。この映画もDVDが出たら迷わず買いますし、今度の『ヘルボーイ』も楽しみ。
 うわ、もっとアッサリ感想を書くつもりが、えらく長くなっちゃった。ま、これもまた作品と監督に対する愛情の現れってことで(笑)。

Steeleye Span “Below The Salt” & “Please To See The King”

さて、昨日から芋蔓式に続きまして、スティーライ・スパン(Steeleye Span)の初期作というのを探し、件の”Gaudete”が収録されている4thアルバム”Below The Salt”と、ジャケが気に入った2ndアルバム”Please To See The King”を買ってみました。
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“Below The Salt” Steeleye Span
輸入盤CD
まず”Below The Salt”ですが、これは実に好みにドンピシャな内容でした。
全曲トラッドで、エレクトリック・ギターやエレクトリック・ベースは使われているものの、ドラムレスのせいか、ベスト盤に入っていた”All Around My Hat”といった曲ほどロック/ポップスっぽくもない。
“Gaudete”同様の無伴奏コーラス曲の”Rosebud In June”は、やはり文句なしに美しいし、いかにも牧歌的でのどけき雰囲気を感じさせてくれる”Spotted Cow”や”John Barleycorn”といった曲も良いし、”Sheep-Crook And Black Dog”や”King Henry”といった、ちょっと重めで構成や展開に凝った曲も聴き応えがあるし、アルバムのラストを締めくくる”Saucy Saylor”後半のインスト部分なんか、もう文句なしに美麗。他にも捨て曲なしなので、広くオススメできる好盤だと思います。
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“Please To See The Kings” Steeleye Span
輸入盤CD
お次の”Please To See The King”ですが、誤解を恐れずに言うと、これ、かなり「変」で「面白い」です。
いや、内容的には極めて正統派のトラッドだと思うんですよ。”Below The Salt”のようにアレンジに凝ることもなく、もうストイックなまでにシンプルな伴奏に乗せて、マディ・プライヤー(Maddy Prior)嬢の美声を筆頭に、男声ソロ、コーラスなどが、淡々と切々とバラッドを歌い上げる。方法論的にはおそらくアカデミックな古楽に近い、ものすごいオーソドックスなものだと思います。
では、何が奇妙さを感じさせるかというと、エレクトリック楽器を用いた伴奏なんです。いや、エレクトリック・トラッドなんてジャンルがあるくらいですから、伴奏にエレクトリック楽器を使うこと自体は、別に珍しくはない。でも、そーゆーのって概して「ロック/ポップス的な視点でトラッド曲を再構築したもの」であるのに対して、このアルバムは、あくまでも「あくまでもトラッド的なスタンスで楽器だけを置き換えたもの」なので、それが結果として奇妙さを醸し出している。
どう奇妙なのかってぇと、ブン、ブン、ボン、ボンと低音を刻むエレクトリック・ベースに、エレクトリック・ギターやキコキコ泣くフィドルが被さり、それが色気のある展開も見せずに、淡々とリフレインしていくのを聴いていると、何だか次第にサイケデリックな酩酊感のようなものに捉えられていき、もうどの曲がどうだとか、何だかどうでも良くなってくるんですよ。で、何だかサイケデリック・フォークを聴いているような気がしたり、ミニマル・ミュージックのような気がしてきたり、はたまたシタールによるラーガなんか連想したり……という奇妙さ。トラッドものを聴いていて、テリー・ライリーを思い出したなんて、こんなこと初めてです(笑)。
でもまあ、最初はそんな感じでビックリしたものの、改めて落ち着いて聴き直してみると、これはあくまでも、渋くてちょっと暗めのトラッド・アルバム。前述したサイケ感やトランス感といったものは、意図せずに「そこはかとな〜く漂っちゃった」ものでしょうから、あらかじめソッチ系を期待して聴いちゃうと、裏切られると思いますが。
とまあ、あんまり広くオススメできる感じじゃありませんが、変わったもの好き、あるいはサイケ好きの方は、宜しかったお試しあれ。因みに私自身は、かな〜り気に入っちゃいました(笑)。
しかし、こうして聴いてみると、やっぱりマディ・プライヤーの声は魅力的だな〜と、改めて思ったんで、最近のソロ・アルバムの”Arthur The King”や”Gold Frankinsence & Myrrh”を、また聴き直したくなったりして……。
こうして私の芋蔓はズルズル続くわけであります(笑)。

The St Philips Boy’s Choir “Angel Voices 2”

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“Angel Vioces 2” The St Philips Boy’s Choir
輸入盤CD
先日、ヒュー・ハドソン監督の『グレイストーク』のDVDが発売されまして、私この映画大好きなもんで、早速買ってきて観たわけです。んで、やっぱいいよな〜なんて思いつつ、そうしたら同監督の『炎のランナー』も観たくなりまして、ちょいと調べたら廉価盤DVDが出てたんで、またまた買ってきて観たわけです。
で、この『炎のランナー』の中に、ブレイクの詩にパリーが曲を付けた「イェルサレム “Jerusalem”」を歌うシーンがありまして(そんなシーンがあったこと、すっかり忘れてました)、それ観てたら、今度はEL&Pの「聖地エルサレム」(同曲のプログレ風カバー……とでも申しましょうか、実を言うと私、この曲を最初に知ったのは、このEL&Pのバージョンでした)を無性に聴きたくなりまして。でもアナログ盤、それもLIVEの『レディース&ジェントルマン』しか持ってなくて、まあいい機会だからCDを買い直すかと、同曲のスタジオ録音を収録したアルバム『恐怖の頭脳改革』を買ってきたんですよ。
こうしてホクホクしながら、お目当ての「聖地エルサレム」を聴いたんですが、そこでふと、考えてみりゃ私、まだこの曲の「正調」のバージョンをちゃんと聴いたことがないな〜、と気付いた。で、そうなってみると無性に聴いてみたくなりまして、幾つか物色した結果、”The Last Night Of The Proms Collection” BBC Concert Orchestraってのと、この”Angel Vioces 2″ The St Philips Boy’s Choir”の二枚を買ってみたわけです。
ここまでが前振り。芋蔓式に長くてすいません(笑)。
なぜこの”Angel Voices 2″を買ってみたかというと、「イェルサレム」の少年合唱団バージョンを聴いてみたかったのと、他の収録曲に好きな曲、それもかな〜り好きな曲が幾つか含まれていたから。
例えば、フォーレの『レクイエム』から”Pie Jesu”(この『レクイエム』は、私の好きなクラシックのベストテンの一つ。ガキの頃に父親が良く聴いていて耳に馴染みがあるせいもあるんでしょうが、特にアンドレ・クリュイタンス指揮/パリ音楽院管弦楽団のヤツがお気に入り。”Pie Jesu”はヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレスが歌っております)、またリチャード・アダムス原作の英国製の劇場用長編アニメーション『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』の主題歌だった”Bright Eyes”(オリジナルはアート・ガーファンクルが、日本公開版では井上陽水が歌ってました)、それと中世ラテン語の聖歌”Gaudete”(これに関しては後述)。この三つが入っているだけでも、私的にはもう「買い」です。
で、アルバム自体は「天使の声」という謳い文句を裏切らない美しいボーイ・ソプラノを、独唱合唱取り混ぜて、タップリ聴かせてくれます。伴奏は(おそらく)シンセサイザーですが、音の雰囲気はあくまでもナチュラル、アレンジはオーソドックスなクラシック風で、曲によって若干のニューエイジ風味やポップ風味をプラス。まあ、正直なところ私の好みから言うと、ちょいと甘ったるくて苦手な部分もなきにしもあらずですが、それでも演奏自体が控えめで、主役の声を押しのけて目立ったり前面に出たりしないところは好感度大。
収録曲は、前述したものの他に、”All Things Bright And Beautiful”や”Amazing Grace”などの賛美歌やトラッド曲、エンヤの”Evening Falls”、カントルーヴの『オーヴェルーニュの歌』から”Bailero”など、硬軟取り混ぜてイロイロ。メジャーな曲が多いようで、タイトルに見覚えが無くても、曲を聴いたら「ああ、これか!」ってのもけっこうありました。
それ系でちょっと嬉しかったのは、”I Vow To Thee My Country (World In Union)”って曲。曲名には全く馴染みはなかったけど、聴いてみたらホルストの『惑星』の「木星」に歌詞をつけたものでした。つまり平原綾香の「ジュピター」みたいなもんですな……って、ちょっと違うか(笑)。どうやらこっちは、ラグビーのワールドカップ公式ソング(の歌詞)らしいですが、とりあえず原曲が大好きなので嬉しい収穫。でも、考えてみりゃ私、この曲も「イェルサレム」同様に、最初に聴いたのは冨田勲のバージョンだったりするなぁ(笑)。あと、ちょっと面白かったのが、「イェルサレム」目当てで一緒に買った”The Last Night Of The Proms Collection” BBC Concert Orchestraの方にも、聴いてみたら同じ”I Vow To Thee My Country”が入っていてビックリ(笑)。
で、一番のお目当てだったその「イェルサレム」ですが、この雄大で荘厳な曲を少年合唱団で聴くのも、独特の清らかさのようなものがあり、また良きかな。改めて惚れ直しました。加えて、その次の曲が前述のホルストなもんですから、またまた雄大&荘厳つながりで、ここんトコの流れはちょいと感動モン。
まあ、とにかくアルバム全体、ひたすらキレイな曲のオンパレードですし、アレンジも含めて程々にキャッチーで聴きやすく、選曲も含めてなかなか楽しめました。まあ、私の好みから言うと、もうちょっとストイックだったり重かったりする方が好みなんですけど、ポップス感覚やヒーリング/ニューエイジ系の声楽として考えるのなら、文句なしの出来映えでは。実際このグループ、最近では「リベラ」と名前を変えて、私は未聴ですが、そっち系では人気を博しているらしいですし。
さて、このアルバムのラストを締めくくるのが、前述した”Gaudete”なんですが、私がこの曲を初めて知ったのは、イギリスのエレクトリック・トラッド・グループ、スティーライ・スパンのヴァージョンでした。学生時代にトラッド・マニアの友人(私をトラッドの泥沼に引きずり込んだ張本人です)に、ペンタングルとかジョン・レンボーン・グループ(どちらも英国のトラッド系グループです)なんかと一緒に聴かされて、もうすぐにレコ屋に突進したくらい好きになっちゃいまして。
で、この”Angel Voices 2″の”Gaudete”を聴いていたら、無性にまたスティーライ・スパンのヤツを聴きたくてたまらなくなり、早速ベスト盤を引っ張り出してきたわけです。ここで、ふと気が付いた。私、このスティーライ・スパンをベスト盤でしか聴いていない。っつーのも、このベスト盤を買って、お目当てだった”Gaudete”は無伴奏ア・カペラのコーラス曲なんですが、他の曲にはドラムありエレキギターありの、いわゆるトラッドをロック風にアレンジしたものばかりだったんで、あんまり自分の好みじゃなかったんですな。だからアルバム単位で聴いてみようと思わなかった。
でも、今回ふと思い付いてネットで検索してみたら、このスティーライ・スパン、メジャーになった中期以降はロック調になったけれど、初期はもっとストイックなトラッドを演っていた、とあるじゃありませんか。そうなると俄然興味がわいてくる。こりゃ、ぜひ初期のアルバムってヤツを聴いてみなきゃ。
とゆーわけで、今度はスティーライ・スパンの初期作を買いに……ってことで、またまた芋蔓式に「続く」(笑)。