『ウォーリアー (Warrior)』(2011)ギャヴィン・オコナー

Blu-ray_warrior
“Warrior” (2011) Gavin O’Connor
(アメリカ盤Blu-rayで鑑賞→amazon.com

 総合格闘技の世界に身を投じた兄弟とその父親を通じて、闘い、確執と許し、そして再生を描く、エモーショナルなヒューマン感動作。
 2011年制作のアメリカ映画。ギャヴィン・オコナー監督、出演トム・ハーディ、ジョエル・エドガートン、ニック・ノルティ。

 元海兵隊員のトミーが、長く離れていた故郷に戻り父親を訪ねる。
 アルコール依存から立ち直ろうとしている父親ポップは、息子との再会を喜ぶが、過去の確執と母親の死のせいでトミーは冷たく当たる。
 トミーは格闘技のジムに行き、そこののスター選手の練習相手として自分を売り込み、あっという間に相手を倒してしまう。実はトミーは幼い頃から、父ポップからレスリングの英才教育を受けた元選手だったのだ。
 一方、トミーの兄でありながら彼とは長く疎遠であり、父のポップとも彼のアルコール依存が原因で絶縁しているブレンダンは、これまた元は総合格闘技の選手だったが、今は引退して高校の物理の教師をしている。妻と二人の娘もいて幸せだったが、娘の心臓手術の費用を工面するために、家を失う危機に直面していた。
 ブレンダンは収入を増やすために、ストリップクラブの駐車場で開催されているアマチュアの格闘技大会に参戦して賞金を得るが、それが学校で問題となり停職処分になってしまう。
 そんな中《スパルタ》という名の総合格闘技大会の開催が決まる。世界中から強豪が集まり、優勝賞金は5百万ドル。トミーはそれに出場するために父にコーチを頼む。しかしそれはあくまでも選手とコーチというビジネスライクな関係であり、父と子の絆とは無縁のものだった。
 一方のブレンダンも、手術費用のために《スパルタ》に参戦し、兄弟は久々に再会するが、トミーは過去の確執から兄のことも父のことも、肉親の絆は冷酷なまでに拒否し続け……という内容。

 いや、これは感動的でした。
 全体的にとても丁寧な作りで、最初はちょっと「う〜ん、丁寧なのはいいけど、ちょっと勿体ぶりすぎじゃない?」って感はしたんですが、もう中盤以降の吸引力がスゴいのなんのって……。
 様々な愛憎が交錯する人間ドラマ部分もエモーショナルならば、迫力タップリの試合シーンもエモーショナル。そして、そんな二つのエモーションが、並行して徐々に進行しながら、クライマックスで一つに重なるもんだから、もう熱いのなんのって……目頭熱くなります。
 ストーリー的にはけっこう多層的な構造で、現代アメリカの抱える様々な問題を盛り込みながら、家族の崩壊と再生を描き、それをド迫力な格闘技モノという要素に重ねつつ、更にメルヴィル『白鯨』の引用や、トミーの《贖罪》がキリストにダブるようなイメージもあって、娯楽なんだけれど文学的でもあるような味わい。

 それぞれのキャラも良ければ、役者も良し。
 トミー役のトム・ハーディ(私の目当ての一つ)も良いんですが、それ以上にブレンダン役のジョエル・エドガートンが素晴らしい。息子たちから愛を拒否されるニック・ノルティの哀れさも良し、ブレンダンの妻やコーチ、その他のちょっとしたキャラも全て良し。
 しかしやっぱり、何と言ってもトム・ハーディとジョエル・エドガートン。二人とも、とても役者とは思えない……ってか総合格闘技の選手にしか見えない。試合相手は本職の格闘家さんたちらしいんですが、肉体的にも存在感的にも、彼らと並んで全くひけをとらない役作り。もう驚嘆の一言。
 マーク・アイシャムのスコアも良ければ、クライマックスで流れるThe Nationalというバンドの”About Today”という歌も、ちょいとベタな感じはしますが、それでも特に後半、ポストロック風の展開部分と映像のマッチングによる高揚感なんか、もうたまらないです。
 ポスターもムチャクチャかっこいい。

  というわけで、格闘技映画としても面白く、感動的なヒューマンドラマとしても面白いので、見てるこっちも思わず拳を握りしめてしまうといった具合。
 男の映画&熱い映画&感動的な映画が好きな方だったら、文句なしのオススメ作。いや〜、えがった!
 これは何とかして日本公開、それが無理ならせめて国内盤でのソフト化を望みたいところ。

 で、前述したようにこの映画、主演二人の肉体作りがすさまじいんですが、その二人および映画に出演している本物の格闘家たちの肉体を捉えた、”The Men of Warrior”という写真集も出ています。
book_TheMenOfWarrior_cover
 これまたなかなか良い写真集で、内容のサンプルはこちら(水色帯のBEGIN SLIDESHOWをクリック)。他にも、こんな感じや
book_TheMenOfWarrior_1
こんな感じの、
book_TheMenOfWarrior_2
バイオレントでスタイリッシュな写真もあり。
 カメラマンはティム・パレンという人。
 本のサイズも大判ですし、映画から離れた単独写真集としても見応えありなので(実は私、この写真集の方を先に購入していました)、「おっ」と思った方にはオススメです。

The Men of Warrior The Men of Warrior
価格:¥ 2,488(税込)
発売日:2011-08-09

 マーク・アイシャムのサントラも、もちろん購入。

Warrior Warrior
価格:¥ 1,574(税込)
発売日:2011-09-13

 マーク・アイシャムによる”Warrior”サントラ、スライドショー付きのオフィシャル・サンプル・クリップ。

【追記】めでたく日本盤ソフト発売されました。劇場での限定公開も。
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