“Мольба (Molba / ვედრება / Vedreba / The Plea / 祈り)”

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“ვედრება / Vedreba” (1967) თენგიზ აბულაძე / Tengiz Abuladze
(ロシア盤DVDで鑑賞、米アマゾンのマーケットプレイスで入手可能→amazon.com

 ソ連/グルジア映画、テンギス・アブラゼ監督作品。露題”Мольба (Molba)”、英題”The Plea”、邦題は『祈り』と『嘆願』と二例確認。
 グルジアの詩人ヴァジャ・プシャヴェラ(Vazha Pshavela)の詩をベースにしたもので、アブラゼ監督作品としては、これと1977年制作の『希望の樹(幸せの樹)』(未見)、1984年制作の『懺悔』で、三部作となっているらしいです。
 内容は、中世(?)のコーカサス(カフカーズ)で対立している2つの部族にまつわる、叙事詩的な悲劇的エピソード2つと、いつともいずことも知れない廃墟のような古城で、巡礼と天使と悪魔が信仰や欲望について語る言葉や、様々な象徴的なイメージを織り交ぜながら、劇映画的な台詞ではなく、詩の朗読を主体として綴ったもの。
 今回は各々のストーリーを最後まで解説してしまうので、ネタバレ等がお嫌な方は、次の段は飛ばしてください。

 叙事詩的な挿話は、共にコーカサス山中の村を舞台にしており、一つめはムスリムと敵対しているキリスト教徒の村が舞台。
 そこでは、打ち負かした敵の右手を切り取って持ち帰り、それを城壁に晒すのが慣習なのだが、敵に敬意を払った一人の勇者は、それをせず、更に斃した敵のために生け贄を捧げて祈る。
 このことが長老を初め他の村人たちの反感を買い、勇者は家を焼かれ、家族共々村から追放されてしまう。雪原を彷徨う彼は、故郷と信仰に別れを告げる。
 二つめの挿話は、ムスリムとキリスト教徒、二人の狩人が山中で出会うことから始まります。
 獲物は一つしかなく、ムスリムの狩人は獲物を半分に分け、更に家路から遠く離れているキリスト教徒の狩人を、自分の家に客として泊めようと提案する。こうして二人はムスリムの村へ行くが、長年敵対しあっていた二つの部族だけに、周囲の村人はそれを是としない。
 敵であっても、掟に従って客としてもてなすべきだという主張は、親類縁者を殺された村人たちによって退けられ、敵部族の狩人は捕らえられ、祖霊を慰めるための生け贄として殺されてしまう。それを見た村の娘は、残されるであろう彼の妻のことを思い、涙する。
 残る一つのエピソードが、巡礼と天使と悪魔の話です。
 いずことも知れぬ廃墟のような古城で、神と善を求める巡礼に対して、悪魔は人間の欲望について語る。天使は人間に寄り添うものの、多くの人間はその姿を見ることがない。巡礼は人の世の苦しみを嘆くが、やがて悪魔は天使と婚礼をあげ、天使は母となり子供を抱くが、それは人間の赤ん坊ではなく猿だった。
 周囲では家屋が燃やされ、盲目の乞食の群れが騎兵に蹴散らされ、大勢の人々が見渡す限りの墓穴を掘り続ける。その光景に巡礼は、「もう墓穴は見たくない、もっと幸せな良いものを見せてくれ、私は世界を見たくない」と神に祈る。
 しかし天使は絞首刑に処され、人々は無表情にそれを見上げる。そして祈りの言葉ともに、映画は幕を降ろす。

 う〜ん、これは手強かった。私の知識と語学力では、半分も理解できたかどうか……。詩の朗読がメインなので、見慣れない古風な単語が山ほど出てくるし、固有名詞もそれが何なのか判らないことが多くて……見終わってから調べましたが、《Kistin (キスト人)》なんて言葉、初めて聞きました。
 コーカサス地方には、そういった少数部族がいろいろあるらしく、いちおうこの映画で出てくる二つは、キリスト教側が《Khevsur》(参考) 、ムスリム側が《Kistin (キスト人)》(参考)のようです。
 そんなこんなで、良く判らないことが多々あったとんですが、まあそのそもがストーリーを追うタイプの作品ではないし、何と言ってもモノクロの映像がものごっつう魅力的なもんだから、見ていてちっとも退屈ではなかったり。

 全体の雰囲気は、パゾリーニとタルコフスキーとパラジャーノフを足して三で割ったみたいな感じ。
 とにかく、登場人物の顔だけでも何とも味わいがあって魅力的だし、衣装や風景(鑑賞後にあれこれググっていたら、例えばこことか、劇中で見覚えのある光景が出てきたので、出てくる建物とかもどうやらセットではなく、実際に存在するものを使っている模様。)や、スチル的な映像感覚も素晴らしく好みでした。
  おそらく、ちゃんと理解しながら読み解けば、もっと色々と意味が見つかるんでしょうが(この監督の『懺悔』はそういう作品でしたし)、画面をボェ〜っと見てるだけでも充分幸福。
 というわけで、理解できたかできないかは脇に置いておいて……って、それでいいのかって気もしますけど(笑)、好きか嫌いかで言えば、問答無用で「好き!」です、この映画。

 以下、幾つかクリップを貼っておきますが、これらを見て「ぐっときた!」という方だったら、おそらくワケワカンナクても見て損はなし(笑)。
 敵の右手を切り落とさなかった勇者のエピソードから、冒頭〜決闘〜村への帰還部分のシークエンス。

 二人の狩人のエピソードから、墓所での生け贄のシークエンス。