『アイアンクラッド (Ironclad)』

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“Ironclad” (2011) Jonathan English
(米盤Blu-rayで鑑賞→amazon.com

 2011年製作の英・米・独映画。
 13世紀初頭のイングランド、マグナ・カルタ調印後に掌を返し、賛同者を弾圧していくジョン王と、それに抵抗して篭城した地方豪族やテンプル騎士の戦いを、正史から消された逸話として描いた、アクション史劇。
 主演ジェームズ・ピュアフォイ、共演ポール・ジアマッティ、ブライアン・コックス、デレク・ジャコビ。

 13世紀初頭イングランド、ジョン王(ポール・ジアマッティ)はマグナ・カルタに調印したものの、これで内戦が終わったと油断した諸侯たちを、デーン人の助力を得て片端から惨殺していく。
 主人公のテンプル騎士マーシャル(ジェームズ・ピュアフォイ)はそれに巻き込まれ、護衛していた主である僧侶と、仲間の騎士たちを、ジョン王率いるデーン軍に殺される。独りカンタベリーに辿りついたマーシャルは、ジョン王に抵抗中のアルバニー公(ブライアン・コックス)と出会う。
 アルバニー公は、カンタベリー大司教がフランスのルイ王太子に応援を頼む間、堅牢な砦であるロチェスター城でジョン王の軍を迎え撃ち、時間を稼ごうとし、マーシャルもそれに同行する。ロチェスターに向かう道中、アルバニー公は顔なじみの共に戦う戦士たちを集める。
 ロチェスター城主(デレク・ジャコビ)は一行を歓迎しないが、時既に遅くジョン王の大軍が城外に迫っていた。主人公たちは城門を閉ざし抗戦するが、相手の大軍に対して味方はたったの20人程度。
 激しい攻城戦が繰り返される中、やがて食糧も欠乏していき、果たして彼らはフランスからの援軍が来るまで持ちこたえられるのか、そもそも援軍は本当に来るのか、そしてこの戦いの意味とは…? ってな内容です。

 ジョン王の手によって正史から消された…という設定であるように、歴史物としては決して正しい内容とは言えないそうで、what ifものとして見た方が良さそうですが、そこさえ気にならなければ、これはなかなか面白く見られました。少なくとも、娯楽性と迫力はタップリ。
 映像的にもストーリー的にも、スケール感はさほどありませんが、状況を篭城&攻城戦のみに絞ってあるのが功を奏していて、それによるデメリットはほとんどなし。逆にドラマとしては、フォーカスが散らずに上手く絞られているという印象にも。
 特に映像面では、下手に舞台を拡げていない分、ストーリーの殆どが城の中だけで展開するので、変に安っぽい映像になって白けたりしないのがいいです。とは言え移動中の点景に、《カワウソ漁をしている(?)漁師》みたいな《それっぽい》絵がちらりと挟んだりして、上手いことムードを盛り上げてくれている印象。
 血飛沫と人体破壊がバンバン出てくる血生臭い戦闘場面は、手持ちカメラ風の画面の迫力もあって、かなりの見応え。ただ、かなりゴアです。コスチューム劇としてはかなり過激な描写で、スプラッター・ホラー並の描写もあるので、そういうのが苦手な方には、正直ちょっとキツいかも。
 そんなアクションの合間合間には、登場人物それぞれのドラマがあれこれ挟まります。で、上手い具合にクリシェを使って、キャラクターが立って適度に感動移入もした頃に、再びオッソロシイ戦闘シーンになるもんだから、けっこうハラハラして「うぉ〜! 危ね〜! 死ぬな〜!」ってな感じにエモーションも揺さぶられたり。

 加えて役者もそれぞれ良く、まず主演のジェームズ・ピュアフォイですが、まぁ地味きわまりないムサいオッサンではあるんですが、それが真面目で無骨で寡黙な役柄に良く合っています。
 脇を固めるブライアン・コックス、ポール・ジアマッティ、デレク・ジャコビは、安心の存在感と演技力で、ストーリー全体をがっちりサポート。
 仲間の戦士たちは、見覚えがあるのはジェイソン・フレミング(怒りっぽく女好きというキャラ)くらいでしたが、ルックス的にも特徴的にも上手くキャラが立っているので、アンサンブルとして実に良い雰囲気。
 あと、音楽もなかなか佳良。古楽風味、教会声楽風味、エピック風味、泣き節、etc.…の要素を、上手い配分で織り交ぜられている感じで、ぶっちゃけ高級感は映画の出来以上かも(笑)。
 Blu-rayのパッケージには「七人の侍+ブレイブハート」なんて書いてあり、実際テーマや見所としては、アバウトに言えばそんな感じです。決してそれらと比肩するような傑作というわけではないけれど、でも肩の凝らない娯楽アクション作としては、充分に佳良な出来だと思います。
 こういったジャンルが好きで、でも歴史云々を筆頭に細かいことをあまり気にせず、そして血まみれゴア描写も大丈夫という方だったら、まず見て損はないかと。

 まぁ個人的には、この監督が前に撮った『ミノタウロス』(2006)というヤツが、何つーかそのお世辞にも良いとは言えないシロモノだったので、正直この”Ironclad”には全く期待していなかったところ、思いの外良い出来だったというのも印象の良さにつながっているかも知れません(笑)。

 あとゴア描写に関しては、残酷描写だけ集めたファンメイドのクリップがYouTubeにあったので、リンクを貼っておきます。誰がどういう具合に死ぬという意味でネタバレを含みますが、興味のある方はどうぞ。こちら

 余談。
 リドリー・スコット版『ロビン・フッド』と続けて見ると、けっこう面白いかも知れません。キャラクターやテーマ的に、けっこうアレの後日譚的にも見られるので。
 内容的にも、ロマンと現実の間で引き裂かれて、結局どっちつかずになってしまっていた感のある『ロビン・フッド』に対して、テーマをロマンに絞って上手い具合にコンパクトに纏めた本作と、対照的な見比べが出来るのが、個人的には面白かったり。
【追記】
『アイアンクラッド』の邦題で、2012年6月9日から日本公開→公式サイト
【追記2】
 日本盤DVD出ました。

アイアンクラッド [DVD] アイアンクラッド [DVD]
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2012-09-05