“Henri 4 (Henry of Navarre)”

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“Henri 4” (2010) Jo Baier
(英盤DVDで鑑賞→amazon.co.uk

 2010年製作のドイツ/フランス/チェコ/スペイン映画。
 ハインリヒ・マン(トーマス・マンの兄)の歴史小説(未読)を原作とした、16世紀フランスのユグノー戦争と、アンリ4世の生涯を描いた史劇。

 ナバラ国(フランスとスペインの境にあった国)王子アンリは、幼少時にノストラダムスから、将来フランス王になると予言される。当時のフランスはカソリックとユグノー(プロテスタント)の争いで内戦状態にあり、アンリもまだ幼いうちからユグノーの盟主として戦場に立つことになる。
 アンリが成長すると、フランス王母后カトリーヌ・ド・メディシスは、カソリックとユグノーの講和のため、アンリと自分の娘マルゴとの婚姻を持ちかける。アンリの母であるナバラ女王ジャンヌ・ダルブレもそれに同意しパリに赴くが、遅れてアンリがパリに入ったときには、母は謎の死をとげていた。
 アンリとマルゴは反発しあいながらも結婚するが、程なくして聖バーソロミューの虐殺(カソリックによるユグノーの虐殺)が起き、アンリは兄弟の身を守るためカソリックに改宗し、そのままルーブル宮に幽閉されてしまう。
 しかし暫くの雌伏を経た後、狩りの際に遁走しユグノーを率いて兵を起こし……とまあ、こういった感じで時系列に準じて歴史が綴られていき、最終的にアンリ4世の死で幕を下ろすという内容。

 宗教戦争と権力闘争が絡み合ったドロドロの内容に、戦闘シーンや愛欲シーンなんかも交えた盛り沢山で面白い内容ではあるんですが、いかんせん、この内容で148分という尺は短すぎ。
 どうしても一つ一つのエピソードや、キャラクターの内面等が掘り下げ不足の感は拭えず、エピソードのつなぎもスポ〜ンと省略されたりするので、面白いんだけど、何だか総集編を見させられているような、ちょっと手応え不足とか味わい不足な印象。
 また、視点があくまでもキャラクター寄りで、全体を俯瞰するマクロなものが出て来ないので、前述したストーリー的なダイジェスト感とも相まって、映像的な物量は決して貧弱ではないのに、意外にスケール感に乏しい。
 とはいえ、これはエピック的な見応えという点に関しての話で、コスチュームものとしての雰囲気や、映像的な説得力自体は佳良。ゴージャス感はさほどないものの、衣装や美術は決して悪くないし、合戦シーンのも見応えもそこそこ。
 雰囲気としては、BBCの歴史ドラマを、ちょい映画寄りにスケールアップしたみたいな感じ。

 表現手法的には、あちこち面白い試みもあり。
 例えば合戦シーンは、ある合戦では戦場での殺し合いを、ダイレクトに血生臭く見せたかと思うと、別の合戦ではテント内で怯える女性の姿と、戦いの物音と天幕に写る影法師だけで描ききったり。
 また、女好きで知られるアンリ4世の話らしく、主人公の濡れ場がけっこう多いんですが、王妃マルゴとの険悪かつ獣的な、挑戦的に互いを貪り合う表現なんかも、なかなか面白かったです。

 というわけで、まああちこち物足りない感はありますし、重要な登場人物の死がセリフでサラッと流されたりして、背景事情に疎いと取り残されてしまう感もありますが、絵解き再現ドラマだと割り切れば、史劇好きならそこそこ楽しめるかと。
 ただし、過大な期待は禁物(笑)。