2010年下半期に見て印象的だった未公開映画あれこれ

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“Janosik: prawaziwa historia” (2009) Kasia Adamik, Agnieszka Holland
 ポーランド映画。ポーランド盤DVD(英語字幕付き)で鑑賞。
(ドイツamazon)

 タイトルの意味は「ヤノーシク 真実の物語」ということらしい。仮に「ヤノーシク」と書いたけど、耳で聞いた感じだと「ヤヌーシェク」の方が近いかな?
 18世紀初頭の、ポーランド/スロバキア/ハンガリーの国境あたりで活躍した、ロビン・フッドや石川五右衛門のような義賊伝説を、リアルな史劇として再構成した、といった感じの映画(らしい)。
 主人公は元々「反乱軍」に属していたのが「皇帝軍」に編入されてしまい、やがてそこからも抜けて、アウトローたちの集う「山賊」の仲間に入り、やがてその首魁になり、富裕層から奪った金品を貧しい人々に与えることで英雄視しされ、やがて伝説化していくのだが…といったのがメインのストーリー。
 そんな中には民族的な対立とか、政治的なアレコレなんかも含まれているようなんですが、固有名詞が多い上に歴史的な知識も乏しいので、私の英語力ではかなりフォローしきれなかった部分が多々あり。「ロビン・フッド」というよりは「ブレイブハート」みたいな感じも。

 とにかくカメラワークが素晴らしい。臨場感主体のグラグラ動く系なのだが、それがめいっぱい動いてクラクラっとしてきた瞬間、ふっと抜けたりケレン味たっぷりの構図になったりと、これはかなり魅せられます。
 また、古い時代の生命力というかバイタリティというか、そういったディテールをふんだんに盛り込んだ展開も魅力。結婚や夏至祭や葬儀といったシーンは、フォークロリックな物珍しさと力強さで溢れていて、生も死も性も真正面から力強く描写されます。そういう意味では、かなりアダルトな味わい。
 特に性の描写が、互いの手に絡め合った蜂蜜を舐めるクローズアップとか、唾で作った泡を舌先で弄び、それを相手の口中に飛ばすとか、かなり触感的でフェティッシュな面白さあり。死の方も、見ていてかなり「ひえ〜!」な直接描写。
 キャラクター・ドラマも、家族愛、男女の愛、親子愛などで、エモーショナルにいろいろと盛り上げてくれます。群像劇的に、複数のキャラクターにそれぞれ見せ場があるのも良い。
 特にやっぱり個人的には、ご贔屓のミハウ・ジェブロフスキーが、ヒゲモジャ木訥キャラだってのは大きい感じ ^^;
 というわけで、全体的な印象は実にヨロシイので、何とかちゃんと理解できる日本語字幕付きで見たいところです (´・ω・`)

 責め場としては、冒頭「捕まった捕虜が全裸で整列させられ、中の一人がナイフで腹を割かれて、呑み込んでいた貴金属を腸から取り出される」シーンや、クライマックスに「脇腹に鉄鉤を突き刺して吊す処刑」なんてシーンがあり。
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【追記】2012年5月2日に『バンディット 前編:義賊ヤノシークの誕生』『後編 : 英雄の最期』の邦題で日本盤DVD発売。

バンディット 前編:義賊ヤノシークの誕生 [DVD] バンディット 前編:義賊ヤノシークの誕生 [DVD]
価格:¥ 4,935(税込)
発売日:2012-05-02
バンディット 後編:英雄の最期 [DVD] バンディット 後編:英雄の最期 [DVD]
価格:¥ 4,935(税込)
発売日:2012-05-02

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“Bronson” (2008) Nicolas Winding Refn
 イギリス映画。アメリカ盤Blu-rayで鑑賞。
(アメリカamazon)

 自らを「チャールズ・ブロンソン」と名乗る、イギリスで最も凶暴な囚人という実在の人物を、スタイリッシュな映像と80’sポップス+オペラ音楽に乗せて描いた作品。
 主人公のブロンソンことマイケル・ピーターソンを演じるトム・ハーディが、実にチャーミング ^^
 しょっぱなっからいきなり、主人公が独房の中でチ×コ丸出しの全裸でトレーニングに勤しんでいると、看守たちが乱入してきてタコ殴りとゆー、萌えるイントロにワクワクw
 映像は、ミニマリズム的なシンメトリーとか、劇中劇的なパフォーマンスとか、アニメーションとかも用いていて、かなり凝っています。

 ただ実際の内容は、どんだけブルータルなのかと身構えていたら、それほどでもなくいささか拍子抜け。ストーリーもけっこう淡々としていて、良くも悪くもスノビッシュ。
 そんなこんなで肝心のブロンソン君が、暴れん坊だけどけっこう小物に見えてしまうのだが、これは計算されてのことなのか、それともミステイクなのか、ちょっと判断に苦しむところ。
 まあ、私は基本的にブロンソン君が「か〜わいい」とゆー感じなので楽しかったんですが、一般的にはどうなのか…w
 まあ、いささか虻蜂取らずで食い足りない感は否めないけれど、主人公のチャーミングさと、凝った画面構成の面白さと、オフビートなユーモア感の楽しさで、個人的にはけっこう楽しめました ^^
 ブロンソン君、すぐ全裸になってチ×コぶらぶらさせてるしwww

【追記】2012年12月5日に目出度く日本盤DVD発売。

ブロンソン [DVD] ブロンソン [DVD]
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2012-12-05

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“Царь (Tsar)” (2009) Pavel Lungin
 ロシア映画。ロシア盤DVD(英語字幕付き)で鑑賞。
(アメリカamazon)

 監督は「ラフマニノフ ある愛の調べ」のパーヴェル・ルンギン。タイトルの意味は「ツァーリ」、つまりロシア皇帝で、具体的にはイヴァン雷帝の物語。
 ストーリーの軸は、国の平安と敵の排除、そして狂信的なまでの宗教心に突き動かされるイヴァン雷帝が、その恐怖政治をどんどんエスカレートさせていく様子と、何とかそれを止めようとする大司教フィリップとの対立という形になっています。
 ただし、映画の主眼は「何がどうしてこうなった」系の叙事ではなく、「ツァーリの祈り」「ツァーリの戦争」「ツァーリの喜び」といった章立て形式で、事件のあらましを語るのではなく、それを通じてイヴァン雷帝の内面を描き出していくという形式。加えて、宗教的要素が極めて濃厚。
 ロシア史の知識に加えて、頻繁に引用される聖書のモチーフに対する理解も要求されるので、これはかなり手強い内容 ^^;
 歴史物やエピックものというよりは、それに題を採った文芸作品といった味わいで、見応えはあったけれど、どこまで理解できたかは、ちと自信なし (´・ω・`)

 全体のムードは、ひたすら暗くて重くて、なんか久々にロシア映画らしいロシア映画を見た気分。
 ただし映像は、寒々とした暗さがメインですが、実に美麗。
 また、セットや衣装の素晴らしさ、緊張感のある構図、役者さんたちの鬼気迫る演技…等々、いずれも重厚感タップリで、映像的な見所は多し。宗教的な「奇跡」がそのまま描かれるあたりは、イマドキの映画としては逆に視点が新鮮な感じも。
 そんなこんなで、手強い内容ではありますけれど、モチーフに興味のある方だったら、まず見て損はないです。娯楽性はホント皆無ですけど ^^;
 映像が素晴らしいんで、できればDVDじゃなくBlu-rayで見たかったな〜 (´・ω・`) ま、英語字幕盤ゲットできただけ幸せか。

 責め場情報。
 恐怖政治なので牢獄で鞭打ちとか焼き鏝とかはあるわ、公衆の面前で熊に喰い殺されるわ、公開で吊り責め拷問にかけられるわ、僧侶は建物ごと焼き殺されるわ…と、ダークムードでいっぱい。
 ただ、表現自体は最近の映画の中では、それほどエグくもない方。
 …でも「エグくない」ってのは比較の問題かも。熊がハラワタをズルズルっとか、手のひらを釘でガンガンなんてシーンもありますので、残酷描写が苦手な人だったら、やっぱ要注意かも。
 因みに、個人的に一番「ぎゃ〜!」ってなったのは、人じゃなくてニワトリが、何羽も首を切られてバタ狂うシーンでした… (´・ω・`)

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“The Human Centipede” (2009) Tom Six
 オランダ映画。アメリカ盤Blu-rayで鑑賞。
(アメリカamazon)

 マッド・サイエンティストに捕まった若者三人が、口と肛門を数珠つなぎに手術で連結されてしまい、ムカデ状のフリークスに改造されてしまうというホラー映画。
 夕張ファンタスティック映画祭で、『ムカデ人間』のタイトルで上映されているそうです。
 いや〜、予告編を見た段階から、ヘンタイ映画の予感がビンビンだったんですが、実際見てどうだったかというと……
 ヘ ン タ イ !www
 懺悔します、ちょっとボッキしました ^^; いや〜、好きだわこれ。
 ホラーっつうか綺想モノというか、そういうのってシュールとギャグのスレスレ紙一重みたいなところがありますが、この映画はモロにそんな感じ。
「人間が手術でムカデ状に連結改造されてしまう」という、そんな綺想がズッド〜ンとぶっとく1本あるだけで、他は何もない話。もう清々しいくらい、なんっっっにもなくて、その潔さには拍手喝采!
 もう、こうなるとアート映画って感じ。

 じっさいクリアで寒々しい絵面は美麗だし、クールな悪夢を見ているよう。
 さほど直截的な描写もなく、ショッカー演出もなく、ひたすら静かな展開ながら、緊張感を保つ演出力はなかなかのもの。まあ、ホラーっつうか、綺想SM映画って感じもしますが ^^;
 で、マッドサイエンティストの博士がサイコー!
 立ってるだけで怖いし、顔のアップだけで怖い。素晴らしい存在感。
 内容が内容なので、はて、恐ろしがっていいものやら、笑っていいものやら…なストーリーを、前述した画面や演出の良さと、あとこの博士の存在感がアンカーになって、恐怖方向に引き留めている感じ。
 ムカデの先頭にされちゃうのが、日本人ヤクザのアンチャンってのも、なかなかヨロシイ。欲を言えば、三人全員男だともっと嬉しい(実際は後の二人は女)んだけど、ま、贅沢は言うまい(笑)。
 でもって、人間ムカデに改造したあと、博士が何をするのかというと、「よ〜しよし、こっちまで歩いてきてごらん、ホラいちに、いちに!」とか、「言うこときかんのかい!」と鞭でビシバシ……って、ただのSMやんwww

 そんなこんなで、タップリ楽しませていただきました ^^
 見る前は「伊藤潤二さんのマンガみたいなのかな〜」と思ったけど、見終わってみると、どっちかっつーと三条友美さんのホラー漫画っぽいかも ^^ 「少女菜美」とかじゃなくて「犬になりたい」とかの方ね ^^;
 ………しかし、これに続編って(連結される人間の数が増えるらしいw)………やめたほうがいいと思うんだが……… ^^;
 因みに、一緒に見ていた相棒は、エンドクレジットが始まった瞬間、しばし絶句した後ゲラゲラ笑い出して、私に「これ好きでしょう!」と言いましたw
 はい、大当たり、大好きです ^^;

【追記】『ムカデ人間』の邦題で劇場公開&DVD発売されました。

ムカデ人間 [DVD] ムカデ人間 [DVD]
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2012-02-03

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“Край (Kray / The Edge)” (2010) Aleksei Uchitel
 ロシア映画。ロシア盤DVD(英語字幕付き)で鑑賞。
(russianDVD.com)

 2010年の米アカデミー外国語映画賞にノミネートされた作品らしいです。
 舞台はシベリア。第二次大戦終結直後、タイガ(針葉樹林)にある、政治犯やバルト三国人を収容した労働キャンプの周辺組織(どうも準ラーゲリのような場所らしい)に、前線で戦った英雄という男が、蒸気機関車の機関士として赴任してくる。
 彼は傷痍軍人らしくときおり脳震盪を起こす。この男を主人公に、機関士の座や女を巡っての争いが描かれ、やがてライバルの企みで機関士の座を喪うのだが、キャンプに出入りするよろず屋の男から、そこから少し離れた島に、橋が落ちたので動かせなくなった蒸気機関車が放置されているという情報を得る。
 その機関車を得るために島に渡った彼は、朽ちた機関車の中に隠れ住んでいた、若い娘と出会う。彼女は、独ソ不可侵条約時期に架橋工事のためソ連にやってきた、ドイツ人技師一家の生き残りで、その機関車を殺された恋人の名で呼びながら、大戦のことも知らずに今まで生きてきたのだ。
 主人公と娘は強力して、橋を修理して機関車でキャンプに戻る。しかし、それによってキャンプ内には不穏な空気が漂い始め、主人公と娘は次第に孤立していき、やがて娘の存在は上層部にも知れることとなり…といった内容。

 ストーリーとしては、閉鎖状況下でのアクション・サスペンスといった趣もあるんですが、それと同時に、外側からは判らない登場人物の秘められた事情が、ストーリーの進行と共に徐々に明かされていくことで、スターリン体制や戦争のもたらした人間性の歪みが浮かびあがっていく。
 更に、蒸気機関車や巨大な熊といったモチーフにも、一種の象徴的な意味合いが与えられているので、ストーリー自体は平明なんですが、その内容はかなり複雑で多層的。ディテールのあれこれを楽しみながら、それが何を意味しているのか行間を読み解いていく必要がある系の内容でした。
 最大の見所としては、やはり蒸気機関車の存在そのもの。白煙を吐きながらタイガを疾走する蒸気機関車なんてのは、それだけでもカッコいい絵になるのに、それが複数台競争したり、森の中で蔦まみれになっていたり、もうひたすらインパクトのあるヴィジュアルのオンパレードで、蒸気機関車好きなら必見!
 そういったスケール感のある部分の魅力に加え、人間ドラマといったディテールの方が、これまた良い。そんな感じで、人間も蒸気機関車も大自然も、全てが映画の登場人物という味わい。素晴らしく繊細かつパワフルな表現になっています。映画好きなら見て損はなし!

 ただ、前述したように多層的な内容ですし、時代背景に関する知識も要求される(いちいち丁寧に説明しれくれず、ちょっとした言葉やエピソードを使って、判る人には判るでしょといった感じの表現なので)系ではあります。私、思わず2度繰り返して見てしまったんですが、まだ100%理解には足りないw
 そんなこんなで、これはぜひ日本語字幕付きで見てみたいので、お願いだからどっか買い付けて出してくださいな (´・ω・`)
 予告編見て「良さそう!」と思ったロシア映画好きなら、もう間違いなく楽しめるかと ^^

【追記】『爆走機関車 シベリア・デッドヒート』の邦題で、日本盤DVD出ました。

爆走機関車 シベリア・デッドヒート[DVD] 爆走機関車 シベリア・デッドヒート[DVD]
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2013-12-15

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“9 Рота (9 Rota/The 9th Company)” (2005) Fyodor Bondarchuk
 ロシア映画。アメリカ盤Blu-rayで鑑賞。
(アメリカamazon)

 ソ連のアフガン侵攻末期、戦場に赴いた若者達の姿を描いた、2005年製作のロシア映画。監督はフョードル・ボンダルチュク(セルゲイ・ボンダルチュクの息子)。
 良いという風評は聞いていたけれど、実に見応えのある映画。
 戦争を俯瞰的に捉えたものではなく、あくまでも目線は身の丈レベル。新兵として鍛えられ戦地に赴いた兵士達の日常を、ディテール豊かに描いていくことで、個がシステムにスポイルされていく姿を描いたもの。
 日常描写の繊細さと同時に、戦争映画的なスペクタキュラーな見所もいっぱい。特にクライマックスの戦闘は、戦争という人間同士の殺し合いの姿をしっかり描いているという点で特筆もの。ド迫力の中にふっと挿入される詩的な瞬間や、エモーショナルにもグイグイ訴えかけてきて、もう圧倒の一言。

 ボンダルチュク息子の演出は、お父さんほど映像派ではないにせよ、今様のテンポの良い演出を基調に、前述したような静的な要素を挟む緩急も上手く、とても初監督作とは思えないほど。
 特に、内地から外地への兵士達の輸送を、飛行機のボルトに上空の寒気で霜が降り、それが溶けて水になるというクローズアップのワンショットで表現する感覚には、もう拍手喝采。暑く乾燥した空気感とか、肌を伝う汗のシズル感なども素晴らしい。アフガニスタンの雄大な風景もたっぷり堪能。

 俳優さんもいずれも佳良。メインの二人は「ナイト・ウォッチ」シリーズの隣人の吸血鬼青年と、「1612」の主人公の3の線の相棒役。他にも先日の「The Edge」のよろず屋オジサンとか、アレクセイ・クラフチェンコこと「炎628」の主役の少年(が成長した中年)など、見た顔がちらほら。
 ロシア製「コマンドー」こと「コマンドーR」で、一部のガチムチおやじ好きゲイを虜にしたミハイル・ポレチェンコフが、新兵教育の鬼軍曹(だけど実はけっこういい人)という役で出ていたのも得した気分 ^^ 相変わらずオイシソウなお肉でゴザイましたw
 そういやフョードル・ボンダルチュクは、この映画に出演もしているらしく、これに限らず、私はこの人が俳優として出ている映画を何本かは見ているはずなんだけど、いまだにどの人なのか判らない ^^; でも、さっきФёдор Бондарчу́кで画像検索したら、第9中隊の軍曹さん?

【追記】この”9 Рота (9 Rota/The 9th Company)”は『アフガン』という邦題で日本盤DVDが出ました。

アフガン [DVD] アフガン [DVD]
価格:¥ 5,040(税込)
発売日:2011-06-03

First-on-the-Moon
“Первые на луне (Pervye na Lune/First on the Moon)” (2005) Aleksei Fedorchenko
 ロシア映画。公式サイトのストリーミングで鑑賞。
(http://www.1moon.ru/)

 ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ・ドキュメンタリー賞受賞作だというので、最初はてっきり、ソ連の宇宙開発の歴史を描いた、純然たるドキュメンタリー映画だと思って見ていました(ロシア語音声のみなので、言葉の意味が全く判らなかったもんで)。
 しかし見ていくうちに、それにしてはいくら何でも、カッコいい絵面が多すぎだろう……と思ったら、「実は1930年代にソ連のロケットが月に到着していた!」っつ〜モキュメンタリー(フェイク・ドキュメンタリー)でした。
 というわけで、二台の蒸気機関車が雪原の中を月ロケットと発射台を牽引&設置! なんつ〜、身震いするほどカッコいい映像が続々と。
 言葉が判らないので詳細は良く判らないんですが、おそらくソ連時代、それも第二次世界大戦前に、ソ連には月ロケット開発計画があり、ペレストロイカ後になって、その極秘計画がどのようなものだったのか追跡調査、発見された記録フィルムや生存している関係者の証言を集めて、その全貌を明らかにしていく……という形式のモキュメンタリーのようです。
で、これが言葉が全く判らないにも関わらず、グイグイ引き込まれて、ついつい最後まで一気に鑑賞、しかもラストは感動してしまった……という次第。
 こりゃひょっとしてスゲ〜映画かも知れません。これなら英語字幕なしでもDVD欲しいと思って探したんですが、残念ながら唯一出ていたロシア盤も既に廃盤のようでガックシ。

【追記】後日、廃盤だったロシア版DVDを無事入手。
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しかし残念ながら英語字幕等はついていませんでした。

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“Les 7 jours du talion (7 days)” (2010) Daniel Grou
 カナダ/ケベック映画。米盤DVDで鑑賞。
(アメリカamazon)

 見る前は、てっきりホラー/サスペンス系かと思っていたんですが、いざ見てみたら、重〜〜〜い社会派シリアス系でした……。
 8歳の娘を強姦殺人された父親(外科医)が、犯人を誘拐監禁し、復讐として様々に拷問する。主人公(父親)は単独行動で、妻は夫の行動を是としない。警察は監禁場所を掴めずにいるが、果たして幼女強姦犯を救う意義があるのかという声も起きる。
 捜査の主任刑事は、自分も妻をコンビニ強盗に殺されたという経緯があり、更に拷問中に犯人が自白した余罪を、主人公はマスコミに公表し、その行為の是非を巡って世間にも波紋が起きる。主人公は七日後の娘の誕生日に、娘を強姦殺害した犯人を殺すつもりなのだが、果たして…という内容。

 娯楽作品的な粉飾は、ほぼ皆無。無彩色に近い寒々しい映像で、音楽もなく現実音のみ。見せ方も直截的で、殺された少女の遺体も、拷問される犯人の肉体も、象徴的な鹿の死体も、淡々と、しかし剥きだしに見せつけられる。
 いちおう、主人公の居所探しとか、他の犠牲者の母親が登場するとか、ドラマ的な起伏はありますが、主眼はそういったストーリーではなく、そんな中で、登場人物が抱く「気持ちは判るけど…でも…」という煩悶を描き、主人公も自問自答し、それらがそのまま鑑賞者にも突きつけられるというもの。
 拷問シーンはスゴいし、ホラーやスプラッタ絡みでオススメ商品とかにも出てきますが、そういう興味で手を出すと、大いに裏切られると思います。

 正直、かなりキツい内容。
 描写は生々しくはあるものの、スキャンダラスな見せ方ではないので、なんかもう逃げ場がない感じがするんですな。映画が突きつけてくる、何ともやりきれないものに、真面目に向き合うしかないという感じで。
 また、情緒が入り込む隙間がないところも、見ていてしんどい。これで絵的に美しくなければ、こっちも一種突き放して見られるんだけれど、下手に映像が美しい分、なのに情緒は拒否されるのが、自分的にはキツかったなぁ……。
 テーマ的には掘り下げ不足な気がするけれども、おそらく掘り下げる意図が最初からないんでしょう。事象だけを提示して、後は観客それぞれに考えさせようというタイプ。
 私の趣味から言えば。こういったテーマをシリアスに扱うのであれば、どこかもう1つ突き抜けたパワーが欲しい気はしますが、作品としてのクオリティは高いと思うので、興味がある人なら見て損はなし。

 ただし、真面目な部分を離れて、単に責め場だけ目当てで見るのであれば、これはけっこうキてます。
 なにしろ誘拐監禁拘束された後、被虐者は徹頭徹尾スッポンポン、一誌も纏わぬ丸裸で、アレもブラブラさせ放題。
 でもって、ハンマーで膝を砕かれ、片脚しか使えなくなったところで、ワイヤーで天井から首つり、不自由な片脚でヨロヨロしながら、喉元にワイヤーが食い込みグエッ、両手吊りで跪かせられて、太いチェーンで身体をメッタ打ち、麻酔かけられて強制手術……ってな具合の拷問の数々を、もうダイレクトに即物的に見せつけてきます。
 残酷男責め好きの方なら、それだけ目当てでも充分以上に見所はあるかと。

【追記】『7デイズ リベンジ』の邦題で日本盤DVD出ました。

7 DAYS リベンジ [DVD] 7 DAYS リベンジ [DVD]
価格:¥ 4,935(税込)
発売日:2013-05-02

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“Pręgi (The Welts)” (2004) Magdalena Piekorz
 ポーランド映画。ポーランド盤DVD(英語字幕付き)で鑑賞。
(イギリスamazon)

 ご贔屓、ミハウ・ジェブロフスキー主演の、父と子の確執を描いたヒューマンドラマ。
 主人公のヴォイチェクは、厳格な父親に男手1つで育てられたが、第二次性徴が訪れた13歳の頃、父親およびカソリックの抑圧に耐えかねて家を飛び出す。20年後、大人になった彼は、洞窟探検のインストラクターになっているが、抑圧の影響で偏屈な人間嫌いの潔癖症になっている。
 そんな彼に興味を示し、積極的にアプローチしてくる女性が現れ、彼も戸惑いつつも受け入れるようになるのだが、それでもやはり彼は父親の影から逃れることができず、女性との仲にも仕事相手との関係にも亀裂が入ってしまう。そんな中、20年間連絡を絶っていた父親が亡くなったとの報が入る。
 父の死を知り、そして遺言としてカセットテープに吹き込まれた父の告白を聞き、彼は初めて父親が自分を深く愛し、そして自分もまた父親を愛していたことを悟る。そして恋人から、妊娠したかもしれないと言われ…といった内容。

 映画前半は思春期の回想、後半が現在という構成で、情感豊かにストーリーが紡がれていく。彩度を抑えた色調の、しっとりとした柔らかな映像も効果的。説明的な要素はギリギリまで削ぎおとされ、尺も90分弱とコンパクトなので、テーマの割には実に見やすい仕上がり。
 父親と息子という関係に、当然のように神と人の関係が重ね合わされているあたりは、流石に敬虔なカソリックが多いポーランド映画といった感じ。主人公が洞窟内で腹ばいになって進む姿を、祈りの姿勢と重ね合わせるあたりも興味深し。反面、いささかサラッとし過ぎて、もうちょい突っ込んで欲しい気も。
 でも個人的には、お目当てのミハウ・ジェブロフスキーがやはり実に良かったのと、オチに相当するちょっとした仕掛けによるエンディングが、地味ながらも何ともしみじみ感動的だったので、大いに満足。滋味のある佳品 ^^
 あと私としては、こういった自分が周囲に溶け込めないという悩みとか、いい大人の男がぐだぐだのたうち回る姿とか、どちらも大いに惹かれるモチーフであり、しかも演じるのがご贔屓の男優ということもあって、ポイントが更に加算された感じです ^^;