『アバター・オブ・マーズ』

アバター・オブ・マーズ [DVD]
『アバター・オブ・マーズ』(2009) マーク・アトキンス
“Princess of Mars” (2009) Mark Atkins

 前に予告編を紹介した、エドガー・ライス・バローズの古典SF「火星シリーズ」の第一作、『火星のプリンセス』のアメリカ製Vシネ版。
 ヒット作『アバター』のバッタモンっぽい邦題になっていますが、実際『アバター』のイメージソースにはバローズ作品があるそうで(肝心の『アバター』見てないんで、よーワカランのですが)、この邦題もそこそこ理由はあるんだとか(笑)。

 で、前にも書いたように制作が、B級バッタもんビデオ映画専門のアサイラムだっつーんで、かなりオッカナビックリだったんですが……意外とマトモでした。
 原作では、主人公のジョン・カーターは南北戦争の南軍の士官で、ちょっとスピリチュアルな感じの精神移動で火星へ行くんですが、それを現在の中東で闘っているアメリカ人兵士という設定に変え、精神移動も一応科学っぽいガジェットを噛ませつつ、行き先も我々のいる太陽系の火星ではなく、もっと遠くの別の太陽系の「火星(マーズ)」にアレンジしてあります。
 火星に移動した後のストーリー展開は、基本的には原作を踏襲。まあ、かなり大幅に省略されて刈り込まれていますし、一つ原作にない大ネタもあるんですが、それでもまあ、全体としては原作に沿っていると言って差し支えない範囲ではないかと。

 はい、褒められる要素ここまで!
 いくら「マトモ」だっても、それは単に比較論の問題で……ぶっちゃけ映画の出来の方はというと……いやそのなんだ、まあ予測通りの安さと言うか酷さというか……(笑)。
 とにかく、よっぽどバローズ愛や腰布男愛に溢れている方でもないと、マトモには見ていられないかと(笑)。

 演出はというと、背景やセットがいらないバストアップと、粗の見えにくい超ロングのCG切り返しだけで進む、94分が3時間にも感じられるタルッタルのシロモノだし、火星一の美姫デジャー・ソリスは、プロポーションはともかくとしても、アップになると薹が立ちすぎて肌の弛みが目立ちまくりだし、4本の腕を持つ巨体のはずの緑色人は、フツーに人間サイズで腕も二本、露手している顔だけが特殊メイクで、あとは腕の先から爪先まで衣装でしっかりカバーされてるし……。
 でも、そーゆーのをニッコリ笑って許せる方なら、もう大丈夫!
 火星の住人が全部合わせても20人もいなさそうだとか、ただの窪地を闘技場だと言い張る強気さとか、火星の大気製造工場の内部が、どっかの浄水場か廃工場にしか見えないとか、マヨネーズの容器ですかってな虫とか、「もう、何が出てもぜんぜん気にしないもんね、私の心は宇宙より広い!」ってな気分にさせてくれます(笑)。
 因みに、一緒に鑑賞していた、バローズ愛も腰布男愛も持ち合わせていない相棒は、もう退屈さに死にそうになってました。

 主演の腰布男は、アントニオ・サバト・Jr。名のある俳優さんのご子息らしい(相棒がそんなこと言ってました)んですが、私は浅学にしてお父君のことはよく知らず。
 まあ、マスクも身体も、そう悪くはないです。肌のタトゥーが変に悪目立ちしてますが、まあ今どきのアメリカ兵なら、それもリアルってもんだし。
 火星に着いたときには全裸で、それから腰布一枚で、首輪はめられて鎖で引きずり回されるあたりは、そこそこそそる感じなんですけど、残念ながらわりとすぐ服を着てしまうし、それ以上の責め場とかもなし。
 
 ま、そーゆーわけなんで、私同様に物好きな方のみ、どうぞ(笑)。