アート」カテゴリーアーカイブ

世界のクィア・コミック・アーティストによるセクシー・トランプ発売

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 私も作品を提供している、世界のクィア・コミック・アーティストによるセクシー・ピンナップ・イラストレーションをフィーチャーしたトランプのカードセットが、アメリカで発売されます。5月にニューヨークで行われるLGBTQマンガ家カンファレンス、Queers & Comicsのチャリティー商品で限定品。このカンファレンスには私も参加予定。
 作品を提供している作家リストは、下記の販売ページで確認可能。とりあえず私が個人的に知己があるのは、ジャスティン・ホール、岩田巌、エド・ルース、モーリス・ヴェラクープ……といったところかな?
 只今こちらのページで予約受け付け中。商品の発送は3月からだそうです。
 よろしかったらお買い上げくださいませ。

「現代日本のエロティックアート展Vol,2」凱旋展(@ヴァニラ画廊)のお知らせ

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 以前こちらでお知らせしたように、昨年5月〜10月にかけてフランスはパリのエロティック博物館(Musee de l’Erotisme)で開催された、私も作品を出展した企画展『現代日本のエロティックアート展 Vol.2(Japon Erotica: La Nouvelle Generation Vol.2)』の凱旋展示が、2月9日(月)〜28日(土)まで、東京は銀座(新橋)のヴァニラ画廊で開催されます。
 展示内容は基本的にパリの同展に併せたものですが、私の場合は、外性器が露出している作品の展示にいささか問題ありとのことで、パリ展に出品したものから該当作品を除き、代わりにエロティック表現に問題のない旧作を出させていただく予定です。
 会期中にお時間のある方は、是非おいでください。

「現代日本のエロティックアート展Vol,2」凱旋展
ヴァニラ画廊(展示室A)
入場料/500円
平日/12:00~19:00、金/12:00~20:00、土・祝/12:00~17:00、日/不定休

ヴァニラ画廊は2014年春から6ヶ月にわたり、パリ市の「エロティックミュージアム」(※)にて「現代日本のエロティックアート展vol2」と題して、計32名の作家による日本における「エロティックアート」の現在を紹介しました。
オリジナリティに溢れた32名の作品は、その個々のスタイルから言葉を飛び越えて、新鮮な驚きを人々にもたらしました。この度、世界中のアートファンの心を鷲掴みにした作品群が東京に戻って参ります。 パリでの展覧会を記念して、ヴァニラ画廊では凱旋展を開催いたします。 誇り高い成熟した珠玉の作品群をご期待下さい。

朝倉景龍
荒井良
稲垣征次
沖渉二
笠間しろう
カネオヤサチコ
鏡堂みやび
クロダミサト
小宮山逢邦
小山哲生
Saeborg(サエボーグ)
沙村広明
真珠子
須川まきこ
空山基
多賀新
田亀源五郎
たま
所伸一
中田柾志
野口由里子
林良文
春川ナミオ
泥方陽菜
ぴんから体操
福山フキオ
前田寿安
水元正也
宮西計三
室井亜砂二
森馨
山下昇平

Class Comicsのアンソロジーに作品提供

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 カナダに拠点を置き、英語圏を中心にアメコミスタイルのゲイ・エロティック・コミックを出版している、インディペンデント出版社Class Comicsのアンソロジー”Heroes in Peril”(電子書籍)に、カラーイラスト一点寄稿しました。
 内容は、同社のスーパーヒーローキャラのピンチ場面を、世界中のゲイ・エロティック・アーティスト約60名が、それぞれのテイストを活かしてフルカラーピンナップを描くというもの。

 私は、Deimosという紫色の肌をした悪魔系のキャラを選んで描かせてもらいました。
 というわけで、チラ見せ。海外出版なので、もちろん全体像は完全無修正です。(羨ましい……)
deimos

 他の寄稿作家さんも含めて全体を見ると、ピンチ絵というテーマなので、必然的にSMや凌辱イラストが多くなっています。
 また、アメコミ的世界観なので、職種やら人外やら機械やらの登場頻度も高し。
 電子書籍(PDF)なので、クレジットカードさえあれば日本からもダウンロード購入可能なはず。

 ご購入や、より詳しい寄稿作家リストなどは、下のリンクからどうぞ。
http://www.classcomics.com/ccn/2014/08/heroes-in-peril-volumes-1-and-2-now-available/

 Volume 1と2がありますが、私が乗っているのは、こちらのVolume 2の方です。
http://www.classcomics.com/cart/product.php?productid=333

長谷川サダオ「1978〜1983」展のお知らせ(東京)

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 8月23日〜9月13日まで、東京・九段のギャラリー、成山画廊にて、長谷川サダオ展が開催されます。
 拙著『日本のゲイ・エロティック・アート vol.2』でも書いたように、長谷川サダオは日本のゲイ・アート史上において、最も重要な作家の一人です。
 前世代の作家たちが、主に自分の欲情というメカニズムを忠実に追うことで、結果としてその作品をゲイ・アートたらしめていたのに対して、長谷川サダオは、個人という枠内だけに留まることなくゲイネスという総体も視野に入れ、またプレスリリースにもあるように、アートやファッションといった同時代の潮流にも共鳴しつつ、それらを自作に反映させていきました。
 また作品のフィニッシュワーク(仕上げなどの技術)の完璧さも、見逃すことのできないポイントの1つです。そんな原画の持つ美しさを直に目撃できる個展という貴重なチャンス、ぜひお見逃しなきようオススメいたします。 

【プレスリリースより】
8月の終わりに開催致します長谷川サダオ(1945年生まれ1999年没)は、ゲイアートという閉鎖的な分野で活躍してきた特異なアーティストでありましたが、“1980年代”という時代の再評価やゲイリブの推進によって、解き放されたアーティストのひとりです。現にここ10年でトム・オブ・フィンランド等欧米のゲイアートは大手オークションハウスでも高額で取引されるようになりました。
マイノリティーな性的趣向を秘めつつ描かれる絵画は日常を軽々と飛び越えて、密室特有の幻想を描いており、世界に誇れるビジョナリーアートと申せましょう。
今展では1970年代後半から1980年代前半までの作品に焦点をあて、当時流行したテクノポップスが持つプラスティックなニュアンスが前面に現された作品をご紹介致します。

長谷川サダオ「1978〜1983」展 
2014年8月28日(木曜日)〜9月13日(土曜日)
成山画廊:東京都千代田区九段南2ー2ー8 松岡九段ビル205号室
     TEL&FAX:03ー3264ー4871
E-MAIL:info@gallery-naruyama.com 
ホームページ:http://www.gallery-naruyama.com/
営業時間:月、火、木、金、土曜日  13時から19時まで  
     水、日曜日、祭日      休廊

ゲイ・アート・ブック”Raunch”に作品収録

Raunch cover
 Bruno Gmünder社から出たゲイ・アート・ブック、”Raunch”に作品が収録されました。
 タイトルのRaunchってのは、「卑俗」とか「猥雑」とでも訳せばいいのかな? まぁそんな感じの切り口で、写真やイラストなどのゲイ・アートをまとめたハードカバーのアートブックです。

Gengoroh Tagame
 私の作品は、この1点のみ。昔「薔薇族」に描いたやつです。

 他はいろいろ、世界のあちこちから総勢40名近くのアーティストやスタジオの、Raunchな写真やイラストを収録。
 というわけで、内容を少しご紹介。

Kevin D. Hoover(アメリカ/ニューヨーク)
Kevin D. Hoover
この人の作品が、かなり私のテイストにマッチしていて、しかも収録作品数も多くて嬉しかった。

Inkedkenny(カナダ/トロント)
Inkedkenny
この人も好きなアーティスト。収録作品数も多し。

左/George Towne(アメリカ/ニューヨーク)、右/Jeremy Lucido(アメリカ/ロサンゼルス)
George Towne & Jeremy Lucido

Robert W. Richards(アメリカ/ニューヨーク)
Robert W. Richards

左/Strut Walker(アメリカ/ニューヨーク)、右/Darren Ankenbauer(アメリカ)
Strut Walker & Darren Ankenbauer

Grae(アメリカ/ニューヨーク)
Grae
キャラや状況設定に親近感。趣味が合いそう。

左/Andrea Madalena(イタリア)、右/Bearfighter(ドイツ)
Andrea Madalena & Bearfighter
左のAndreaとは、先日イタリアでボローニャの個展オープニングやベアパーティで会いました。モヒカンで笑顔が可愛いオーランド・ブルームって感じのナイスガイ。
with Andrea

Rubén Gauna(アルゼンチン/ブエノスアイレス)
Rubén Gauna
先日ベルリンで、Bruno Gmünderのスタッフに、この人の絵をプリントしたTシャツを見せて貰いました。同社が制作販売するようなことを言っていましたが、ネット上では情報が発見できず……って、良く考えたらお土産に一枚いただいていたんだっけ(笑)。
tshirts

《書誌データ》
RAUNCH / Various Artists

Photo Book
Pages: 160
Size: 21,5 x 28,5 cm / 8,5 x 11,25 inch
Format: Hardcover with dust jaket
Colour: full colour
ISBN 978-3-86787-664-3
May 2014
29,95 €

 残念ながら日本のアマゾンでは取り扱いなし。ご注文はアメリカやイギリスのアマゾンなどからどうぞ。

パリ開催・現代日本のエロティックアート展 Vol.2に参加させていただきます

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 5月22日から始まる、ヴァニラ画廊企画・フランスはパリのエロティック博物館(Musee de l’Erotisme)で開催される企画展、現代日本のエロティックアート展 Vol.2(Japon Erotica: La Nouvelle Generation Vol.2)に、作品数点を出品します。
 同展は、現代日本の様々なアーティスト、総勢32名によるエロティックアート作品を展示する内容で、私もその末席に加えていただいた次第。出品作家リストは、以下になります。

朝倉景龍/荒井良/稲垣征次/沖渉二/笠間しろう/カネオヤサチコ/鏡堂みやび/クロダミサト/小宮山逢邦/小山哲生/Saeborg(サエボーグ)/沙村広明/真珠子/須川まきこ/空山基/多賀新/田亀源五郎/たま/所伸一/中田柾志/野口由里子/林良文/春川ナミオ/泥方陽菜/ぴんから体操/福山フキオ/前田寿安/水元正也/宮西計三/室井亜砂二/森馨/山下昇平(五十音順・敬称略)

 会期は、2014年5月22日〜10月30日。エロティック博物館の場所等は、同博物館のサイトをご覧ください。こちら
 展示期間が比較的長めなので、パリにお住まいでなくても、会期中に旅行やお仕事等で同地を訪れる機会のある方もいらっしゃるかと思います。その際は、ぜひお立ち寄りください。

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 また、同展の図録も出来上がっており、先日手元に届きました。
 日本国内での印刷のため、残念ながら外性器描写がある作品については、該当部分にマスクが被っていたり、そこを避けたトリミングでの収録となっていますが、カタログ自体は大判のフルカラー、様々なアーティストの美麗で個性的なエロティックアートの数々を、存分にご堪能いただけるかと思います。
 こちらの図録は、おそらく現地での販売の他、銀座にあるヴァニラ画廊さんでも取り扱っていると思います。サイトからの通販もできますので、よろしかったらお買い求めください。
 詳しくはヴァニラ画廊のサイトで。こちら

Mascular Magazineに作品提供

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 ゲイ・アート系のウェブジンMascular Magazineの第8号(フェティッシュ特集号)に、作品を数点提供しました。
 同誌のサイトからPDFを無料でダウンロードできます。
http://www.mascularmagazine.com/
 同号には、世界中から総勢30名ほどのアーティストが参加しており、それぞれ数点ずつ作品を提供。総計260ページ以上、約60MBというヴォリュームなので、お使いの回線状況によって異なりますが、ダウンロードにちょっと時間がかかるかも知れません。
 また、収録作品には外性器の露出やボンデージ、SMなどのアダルト・マテリアルも含まれますので、ダウンロード&閲覧は自己責任でよろしくお願いいたします。

 拙収録作に関しては、自分のフェティシズムが反映された作品を数点セレクト、そこに先方の依頼で、自作品解説を日本語と英語で併記。
 で、この日本語の解説ですが、最初に英文で書いた後、それを再度日本語で書き直すという方法をとったところ(先に日本語で書いちゃうと、それを英訳するのが厄介なので……『あ〜こーゆーの英語で何て言えばいいんだ???』ってことになっちゃうので、最初から英語で考えた方が、自分のボキャブラリのキャパに合った説明だけで留められるから楽w)、そしたらなんか脳味噌の接続が上手くいかずに、直訳調みたいな変に固い日本語になっちゃいました。お前ホントにネイティブかって感じの(笑)。
 まぁ、そこいらへんはご愛敬ってことで、ご寛恕。
 提供作品は基本的に、旧作の中からのセレクトですが、以前企画展用に描いたオリジナル作品(つまりその企画展意外では未発表)を、更にこのMasculine Magazine用に新規着色・デジタル仕上げにしたものが入っています。今のところ、ここ以外では見られない作品なので、宜しかったら是非ご覧あれ。

 前述したように、他の収録アーティストは世界中から総勢約30名と、国籍も作風もバラエティに富んだセレクトとなっています。
 大体が写真作品がメインで、絵画系は私も含めて数人程度。レザーあり縛りあり女装ありコンセプチュアルありと、作品のレンジは色々ですが、野郎系好き&フェティッシュ好きの方なら、かなり面白いラインナップで楽しめるかと思います。

【収録作品例】
Gengoroh Tagame
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Aurelio Monge
aureliomongec

Ron Amato
ronamatoc

Olivier Flandrois
olivierflandroisc

Inked Kenny
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Wim Beullens
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 もちろん各収録作家のプロフィールやサイトリンク等の情報付き。
 前述したようにダウンロード・フリーでもあるので、お時間のあるときにでも是非どうぞ。

ダウンロード・フリーPDFカレンダー、Bears, illustrated 2014

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 世界の熊系キャラを描くゲイ・アーティスト12人がコラボレーションした、PDFカレンダー”Bears, illustrated”の2014年版が、同サイトから無料でダウンロードできます。
http://www.bears-illustrated.com/
 私は1月の絵を担当。
 他にも、カナダのニッキー・チャールズ、ペルーのレオナルド・グティエレス、フランスのオリヴィエ・フランドロワなどが参加。
 カレンダー企画自体は今年で五年目となり、これで総計60名のアーティストが参加したことに。過去のカレンダーもダウンロード可能なので、タイプも国籍も様々なベアー・イラストレーションの数々が楽しめます。

【訃報】不破常次(不破久友/彩文大和)さんが亡くなりました

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 1995年に雑誌「ジーメン」でデビューし、同年、アメリカのトム・オブ・フィンランド・ファウンデーション主催のエロティック・アーティスト・コンテストでも、シングル・フィギュア部門で1位を射止めた《男絵師》不破常次さん(後に不破久友→彩文大和とペンネームを変更)が、7月30日に亡くなられたそうです。直腸癌による失血死。享年60。
 昨日、最後を看取られた方からメールをいただきました。
 故人の交友関係が判らないために、携帯電話にメールアドレスが入っていた、私から周知してくれないかとのことでしたが、作品のファンは日本にも海外にも大勢いると思うので、そういう方々にもネットを通じてお知らせしたいとお願いしたところ、ご快諾いただけたので、こうしてブログで公表させていただきます。

 前述したように不破さんは、創刊当初の「ジーメン」でデビューし、以降、初期の「ジーメン」ではコンスタントにイラストや絵物語などを発表していました。
 その当時、私は既に専業作家として独立しており、同時に、仲間と一緒に新雑誌「ジーメン」を立ち上げ、雑誌全体のコンセプトからアート・ディレクション、企画編集に至るまで深く関わっていましたが、彼の文字通り《魂を込めた》ような重厚に塗り込められた鉛筆画に、あっという間にそんな立場を越えた1ファン、それも熱烈なファンになりました。
 また同時期、ゲイショップ「BIG GYM」の直販オンリーで、『DESIRE』と題された不破さんの複製原画セットも発売され、その序文というか推薦文のようなものも書かせていただいています。
 しかしその後、作品の発表ペースは次第に落ち、私が「ジーメン」と決別した2006年には、ほぼ皆無になっていたような気がします。(その後、再び作品発表があったとの話も聞いた記憶がありますが、2006年4月以降の同誌の内容については、私は全く把握していないので良く判りません)

 不破さんは、あまりご自分のことを語りたがらず、私もプライベートな部分に関しては、正直いまだに何も知らないに等しいです。
 それでも、私が「ジーメン」を立ち上げるずっと前に、不破さんと私のパートナーの間にあれこれ交友があったことなどもあり、そんな親しみもあって、編集部やパーティなどで会うと、良くじゃれあっていましたし、不破さんがウチに遊びに来たこともありました。
 謎めいたところは多い方でしたが、ちょっと構えたシャイなところがあって、でもお酒が入るといきなり気さくになり、更にお酒が進むとガキ大将のようになったり、はたまた野獣のようになったり。とにかくとても魅力的。
 オマケに私の好みにどストライクの、眼光鋭いすこぶるつきのいい男で、でも笑うといきなり少年みたいになって、ガタイも肉厚骨太の筋肉質。酔っぱらって抱きつかれたりすると、嬉しいんだけど、ムラムラしちゃって困ったり(笑)。

 そんな不破さんと久々に再会したのは、私が2010年に銀座のヴァニラ画廊でやった個展「WORKS」会場でした。前にこのブログにアップしていますが、その時に一緒に撮った写真を再掲しておきます。
vanilla_people_saimon
 その際にあれこれ話をした中に(そういえば、私がジーメンから離脱したことは全くご存じなく、かなり驚かれていました)、絵は描きたい、描き続けたいけれど、お仕事の関係か何かで、思うように描ける環境にない……といったような、ちょっと悩み相談的なものもありまして、じゃあ後日改めてゆっくり会いましょうと約束し、互いにメールアドレスを交換しました。
 しかし、お会いしたのはそれが最後になってしまいました。
 後日、幾度かメールのやりとりをしたものの、なかなか互いの都合が合わず、何となく立ち消えに。今となっては、それがとても悔やまれます。

 私の同時代のゲイ作家の中には、上手かったり魅力的だったりする作品を描かれる方は大勢いますが、不破さんの絵の《濃さ》は、ちょっと他に類をみないものだった気がします。
 エロティック・アート全般における、私の基本的な考え方として、作家という《人》のエロティックな指向、嗜好、オブセッションの類が、いかに色濃く表れるか、そしてそれがいかにその他一般の価値観を圧倒して、その作家の作品ならではの《美の姿》となるか、その姿によって《人》の分身となり得るか……というのが、とても大きな命題なのですが、不破さんの作品とは、まさに《それ》を体現するものでした。
 だからこそ、私のところに海外から「Fuwaの原画が手に入らないか」と問い合わせメールが来るように、当時の「ジーメン」購読者以外の、きっとどこかでスキャン画像を見たのであろう、外国の熱烈なファンも獲得できたんだと思います。
 もっともっと、描き続けて欲しかった。
 60で逝っちゃうなんて、早すぎるよ、不破さん……。

(in English)

(8/21:『じょうじ』の字が間違っていたので訂正しました)

“Stripped: A Story of Gay Comics”で紹介&作品掲載

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 ドイツの出版社Bruno Gmünderから出版された、世界のゲイ・コミックスの歴史と作家を紹介したアートブック”Stripped: A Story of Gay Comics”に、紹介&作品掲載されました。取材協力(人を紹介したり、日本のマンガ出版における世紀修正の説明をしたり)もちょっとしています。

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 これ<は、過去発行された様々なゲイコミック本の表紙を集めたページなんですが、私も持っているものがけっこうあったりして、レア度は情報の密度はさほど高くない感じがします。まだきちんとテキストを読んではいないんですが、ゲイ・コミックスの歴史に関しては、さらりと表面を撫でたという感じでしょうか。  ともあれ全般的にテキスト量はあまり多くなく、基本はあくまでも図版を見せるのが中心といった感じの本。  掲載&紹介されている作家は、まず有名なとろこで、もはやクラシックとも言える大御所トム・オブ・フィンランド、 StrippedGayComics_tom
ベテラン作家で同じ版元Bruno Gmünderから作品集が何冊も刊行されているザックことオリバー・フレイ、
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やはりベテランで私も個人的にお付き合いのあるザ・ハンことビル・シメリングなど。
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 こういった作家たちについて、それぞれ冒頭に1見開き分のテキストで紹介&解説が入り、続いて1ページにつき1枚の絵を掲載しながら、それが1作家につき数見開き続く構成になっています。
 というわけで、画集的な見応えは充分以上にあり。

 で、私も12ページほど絵が載っております。
 一番古いもので、日本のゲイマンガの局部修正の例として『嬲り者』から2ページ、そして『ECLOSION』『Der fliegende Holländer』『LOVER BOY』『MISSING』『エンドレス・ゲーム』から、こちらはオリジナル・データのままの無修正版を、それぞれ2ページずつ。
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 二番目の図版は、私という作家紹介&解説ページなんですが、おそらくデザイナーさんが「日本語かっけえ!」って感覚なんでしょうね、我々日本人から見ると、実に珍妙なことになっているのがご愛敬(笑)。

 他の掲載作家さんたちも、ちょいとご紹介しましょう。まず知り合い関係から。

 イタリアのフランツ&アンドレ。このコミックス”Black Wade”は、英語版がこのBruno Gmünderから、フランス語版が拙作の仏語版版元でもあるH&Oから出ています。ちょっとハーレクイン風味のヒストリカル・ゲイ・ロマンスで、個人的にオススメの一作。
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 アメリカ(カナダだったかな?)のパトリック・フィリオン。アメコミ的なスーパーヒーローものを得意とする作家さんで、Class Comicsというインディペンデントのゲイ・コミック出版社もやっており、やはりBruno GmünderとH&Oから、コミック本や画集が多数出ています。
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 やはりアメリカのデイル・ラザロフ。ただし彼はシナリオライターなので、図版の絵は、左がエイミー・コルバーン、右がバスティアン・ジョンソンという作家。また、カラリングは、私の友人でもあるフランス人のヤン・ディミトリが担当しています。デイルの本も、やはりBruno Gmünderから何冊か出ていたはず。また、この《デイル・ラザロフ/バスティアン・ジョンソン/ヤン・ディミトリ》コンビの作品は、これとは別に描きおろし新作もフル・ストーリー掲載あり。
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 知り合い関係を離れたところでは、まずアメリカのミオキ。この本の表紙も、この人の作品。やはり確か、Bruno Gmünderから作品集が出ていた記憶が。「薔薇族」って感じの作風。
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 ドイツのクリスチャン・タルク。カートゥーン調とリアル調のミクスチャーがいい感じ。
StrippedGayComics_turk

 同じくドイツから<トゥリオ・クラップ。バンドデシネっぽい感じ。 StrippedGayComics_krapp

 オランダのフロ。カートゥン系の可愛らしい作風。
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 アメリカのハワード・クルーズは、70年代〜80年代に活動していた作家さんらしいですが、ハワード・クラムなんかと通じる、いかにもアメリカのアングラ・コミックといった感じの作風。
StrippedGayComics_cruse

 こんな感じで、様々な作家の作品を大きく紹介したものが、フルカラーで240ページ近くあるというヴォリュームなので、ゲイ・アート好き、ゲイ・コミック好きなら、まず買って損はない充実の内容。
 本のサイズも約A4と大きめで、ハードカバーで造本もしっかり。
 テキストは英語とドイツ語の併記で、情報の掘り下げ度はそんなに深くない気はしますが、それでも一冊まるまる使って世界のゲイ・コミックを俯瞰しているという点で、あまり類書がない貴重な本だと思います。
 ただ残念ながら、例によって日本のアマゾンでは取り扱いがありません。
 それでも欲しい方は、是非アメリカやイギリスのアマゾンから取り寄せてください。