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またAnime Studioとか

 二つめ。
 いろいろいじって遊んでいる最中に、ふと思いついて、架空の映画会社のカンパニー・クレジットみたいなものを、急遽でっち上げてみました。
 今度はちょっと長くしました。
 ……でも、9秒(笑)。

Anime Studioとか

 前にここで「興味シンシン」と書いた、アメリカ産のAnime Studioというアニメーション制作用ソフト(ぜんまいハウスのソフトAnimeStudioや、アガツマの玩具アニメスタジオとは別物)ですが、先日Version 6が発売され、content paradiseで今月いっぱいまでの値引きセール($199.99が$169.99に)もやっていたので、思い切って購入してみました。
 う〜む、興味を持ってから購入するまで、三年もかかってしまった(笑)。
 で、このAnime Studioってのは、2Dイメージ(ベクターとビットマップの両方とも取り扱い可能)にボーンを仕込んで動かしたり、キーフレームを使ってイメージの変形をアニメートできたり、2Dデータを3D的に配置して動かせたり……といったソフトなんですが、いや、なかなか楽しい。
 アニメーション制作用に特化しているので、前に似たようなことをFlashでやったことがありますが、それと比べると、だんぜん作業が楽で作りやすいです。

 で、最初はプリセットで付いているデータを、色々いじって動かしたりして遊んでいたんですが、すぐに自分の絵を動かしたくなったので、ちょいと試しに作ってみました。
 そんなこんなで、私の作った初Anime Studio動画が、これ。
 チョ〜短いです、何と二秒(笑)。

 Anime Studioでは、画像データの中にボーンを入れて、その親子関係や影響範囲を調整することによって、イメージを直接歪ませながら動かすことも出来るんですが、私が試してみたかったのは「切り絵アニメーション風」だったので、画像データは可動パーツごとにレイヤーで分け、イメージ自体は変形させずに、関節を使って動かしてみました。
animestudio_bone
 上の画像が、その作業画面。
 具体的には、腰、腹、胸、左右の上腕、左右の下腕、左右の手、首、頭と、11枚のレイヤーに分け、それを一つのボーン・レイヤーで制御しています。ボーン・レイヤーには、パーツの数だけボーンを作り、その親子関係(『親←子』で説明すると、『腰←腹←胸←首←頭』、『胸←上腕←下腕←手』という具合に)を設定した上で、各ボーンの影響範囲を、Bind Layerツールを使って、各該当パーツのレイヤーに限定しています。
 ズーム・インやカメラの回転に見えるのは、今回はカメラの機能は使わずに、ボーン・レイヤーを拡大・回転させて表現してみました。ボーン・レイヤーの下位には各パーツのレイヤーがグルーピングされているので、それでフィギュア全体の移動や変形を、まとめて制御できるというわけ。
 背景は、別レイヤーにドローツールを使ってベクター画像を描き、それをハンドルを使って変形させながら、キーフレームを使ってアニメートしてます。

 Anime Studioには描画ツールがあるので、動かす画像をアプリケーション上で直接作画することもできるんですが、私の場合、それにまだ不慣れなのと、インポート機能のテストも兼ねて、Adobe Illustratorで作った画像を読み込んでみました。
trojan_illustrator
 上の画像が、そのIllustratorファイル。
 テストしてみて最初に判ったのは、残念ながらAnime Studioは、Illustratorのレイヤー情報は引き継いでくれない、ということ。Illustratorでレイヤーに分けていた画像も、Anime Studioに読み込むと、一つのレイヤーに纏められた状態になってしまう。
 仕方がないので、いったんIllustratorでレイヤーごとに別々のファイルで保存してから、それを一枚ずつAnime Studioに読み込んでみましたが、すると今度は、読み込み時にサイズや位置が自動調整(スクリーンいっぱいの大きさで、場所は真ん中に)されてしまって、サイズや位置関係がメチャクチャに。
 はて、困ったわい、と思ったけど、これは案外すぐに解決策が見つかりました。
 Illustoratorファイルに、全ての画像より一回り大きいサイズのガイドを作成しておくと、Anime Studioではそのガイドを基準に、読み込んだ画像のサイズや位置を自動調整する。しかもIllustrator同様に、Anime Studioでもガイドは表示のみで実際の描画はされない。
 つまり、Illustrator上で全てのパーツに共通のガイドを付けておけば、Anime Studioで機械的に読み込んでいっても、サイズや位置関係は自動的にIllustrator上と同じ状態を再現できます。
 あと、読み込み時のトラブルというと、Illustratorデータからシェイプと塗りの情報は、ほぼ問題なくインポートできたんですが、ポイント指定していた線幅の情報は引き継がれず、かなりメチャクチャな状態になりました。ただ今回は、そもそも線に関しては、Illustratorでは単純なベクター情報として作っておくだけにして、線幅の調整、線の消し、入り抜きの作成などは、最終的にはAnime Studio上でやろうと考えていたので、それほど大きなダメージではなかった。
 おそらく、Illustrator上で線画をきっちり作り込んで、それを「分割・拡張」して塗りに変換しておけば、Anime Studioにもそのまま引き継がれるんでしょうけど、そうするとデータが重くなるし、後から変更や微調整が出来なくなることも考えると、ちょっと非実用的な気がしますね。

 まあ、そんなこんなで作った二秒(笑)の動画ですが、「紙と鉛筆でキャラクターの下絵作成」「Illustratorで描画」「ちょい試行錯誤を経てAnime Studioにインポート」「ボーンの設定と背景の作成」「アニメート」「サウンド入れ(ホルンの音はGarageBandでテキトーに打ち込み、SEはAnime Studioのライブラリにあった音)」「QuickTimeで書き出して確認」「YouTubeにアップロード」とゆ〜、一連の工程が、ひと晩で出来ました。
 日本語版が出ていないのは残念ですけど、それでもなかなか楽しいソフトなので、興味のある方にはオススメです。

マニア向け500円DVD、二本立て

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本屋やディスカウントショップで良く見かける500円DVDで、『空軍大作戦』を購入。プロパガンダ・アニメーションだというから、何となく面白そうだと思ったんだけど、再生してみたら、ディズニーの『空軍力の勝利 (Victory Through Air Power)』でした。
 オリジナルはカラー作品ですが、このDVDはモノクロ版。とはいえ、おそらく制作の時点で、カラーとモノクロ両方の上映を前提にしているんでしょうね。明度設計がしっかりしているので、モノクロ映画として見ても、特に違和感はありませんでした。ただ、YouTubeにあるカラー版の予告編を見ると、やはり色が付くと、画面の力がまたいっそう増しているのが判りますし、アメリカではカラー版DVDも出ているみたいです。
 内容はともかくとして、表現面だけに絞って言えば、飛行機の歴史をカートゥーン調で判りやすく、かつ楽しく説明してくれる前半部分、第二次世界大戦(つまり制作当時)の世界情勢や軍事戦略を、三次元的なデザイン表現で見せる中盤、戦争に勝利するための方針提案を、まるで「空想化学兵器大図解」といった味わいで見せる後半、そしてクライマックス、日章旗が化けた大ダコ(つまり日本) VS 白頭鷲(つまりアメリカ)の「怪獣大決戦」と、大いに面白く見応えあり。
 内容的には、所詮プロパガンダ映画なので、それ相応の不快さがあります。こういった思想の上に、無差別爆撃や原爆の使用が正当化されたのかと思うと、それはそれで興味深いことではありますけれどね。
 ただ、ドラマ仕立てではなく、ドキュメンタリー的&データ的な見せ方の作品なので、プロパガンダにしては、まだ客観性がある方かもしれません。戦意昂揚を煽る要素はあっても、情緒面を刺激して戦争を正当化したり、正義や悪といった概念があまり目立たっていないのが救いでした。
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 このテのワンコインDVDといえば、以前雑誌の編集後記とかで紹介したことのある、個人的にけっこう好きな映画『地下拷問室』が、いつのまにか500円DVDで出ていました。
 映画の内容は、女が男を地下室に監禁して、パンツ一丁の裸で椅子に縛り付け、延々拷問するってだけの話です。
 ものすごく低予算……ってか、ほとんど自主制作映画という感じなので、過度の期待は禁物ですけど、トイレに行かせてもらえない男が、パンツ越しに失禁しちゃうシーンとか、ケツにむりやりディルドを突っ込まれて、強姦被害者の気持ちを体験させられるシーンとか、目隠しをされてスプーンで口に入れられたものを当てるゲーム(SM好きなら御期待どおりのモノを、いろいろ喰わされる)とか、個人的にはけっこうそそられるシーンがあるんですよね(笑)。
 後半は、猟奇風味が増していくんですけど、そちらもアイデア的には、なかなか面白いもの多し。ただ、前述したような低予算モノなので、見せ物としてのスゴさは期待しちゃダメ。そーゆーダイレクトな過激さをお望みなら、素直に『SAW』シリーズとかをご覧になった方がヨロシイかと。
 男責め的な見所以外では、全編に漂うイカニモ実験映画風のアングラ臭とか、観念的な展開とか、ほんのチョイ役でパム・ホッグが出てるとか、好きな人だったら、そこそこツボを刺激される要素もあり。
 この紹介文を読んで、惹かれるモノがある方だったら、500円だし、けっこうお得だと思いますよ。なんせ、前に私がコレ買ったときには、4935円もしたんだから(笑)。

たまにはゲイ系YouTube映像とか

 YouTubeにあるゲイ系映像のお気に入りを幾つか。
 あ、あらかじめ言っときますけど、エロいのはないですよ(笑)。
 MySpaceで知り合った、フランスの映像作家tom de pekinの、”jean, paulo, erik, riton”という、ジャン・ジュネをモチーフにしたアニメーション作品。

 毒を含んだキュートなポップさ、パタパタ動くちょいガロ系な感じのドローイングと、BGMに使われているMikadoを彷彿とさせるエレポップのマッチング、ってなところが好き。
 気に入ったら、同じ作者による、ピエール・モリニエをモチーフにした同傾向作品、“molinier is my revolution”も、ぜひどうぞ。
 Tomboyのゲイ・アンセム・ソング、”Its O.K. 2 b gay”(「ゲイでいいんだよ」ってとこでしょうか)のPV。

 ハッピーなダンス・チューンで、過剰さや人工性や祝祭性といった、いわゆるゲイ・テイストを前面に出した典型的な例。
 クローゼットにかかったチェーンを切るシーンから始まり、最後は「このビデオの制作にあたって、ストレートを虐待していません」というエンド・クレジット(ハリウッド映画の最後に出てくる「動物は虐待していません」のパロディね)で締めるといった、洒落っ気もステキ(笑)。
 アルゼンチン出身の映像作家Javier Pratoのショートフィルム、” Jesus Will Survive – Jesus Christ! The Musical”。

 一発ネタみたいな内容ですが、初見時のショーゲキがスゴかった(笑)。作家ご本人がゲイかどうかは不明だけど、曲のセレクトからしてゲイゲイしいです。
 ただし、マジメなクリスチャンの方は、見ない方が吉かも。
 オランダの熊系アイドル・グループ(?)、Bearforce1(オフィシャル・サイトによれば、「世界初、”真のベア・バンド”だそうな)の”Shake That Thing”のPV。

 テイストが、日本の野郎系ゲイ・ナイトとかで見られるパフォーマンスに近いので、何となく親近感が(笑)。必要以上のナルシシズムや露悪趣味がない、自然体な感じがするのが好き。
 今年のアムステルダム・ゲイ・プライドのライブ映像もありますが、さすがアムステルダム、船で運河をパレードしてます(笑)。

『ペルセポリス』

『ペルセポリス』(2007)マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー
“Persepolis” (2007) Marjane Satrapi, Vincent Paronnaud

 フランス在住のイラン人女性が描いた自伝マンガを、自らが監督してアニメーション映画にした作品。
 いや、お見事!
 ユーモアを交えたモノガタリの語り口の面白さ、映像表現としての美しさや力強さ、作品の持つ普遍性や社会的な意義、と、三拍子揃った充実した見応えの作品でした。

 モノガタリの内容は、少女から成人した女性に至る一人の人間のいわば個人史なのだが、それを語る視点が、情緒に偏ることなく客観的なものなので、個人を通じて世界のドラマを見るという、多層性を持ったものとなっている。結果としてこの映画は、子供たちの世界を見るというジュブナイル的な楽しみ方もできるし、或いは、ガール・ポップ的なキャラクター・アニメーションや、女性映画や、時代背景や政治状況を知るといった具合に、様々な視点での鑑賞が可能になっている。
 表現面も素晴らしく、例えばメインのスタイルは、いささか素っ気なくぶっきらぼうなデザインのキャラクター(因みに一緒に見た熊は「LUMINEのルミ姉みたい」と言っていたし、私はちょっと「ナニワ金融道みたい」だと思った)が、フラットな画面の中で動き回り、悲喜こもごものドラマをユーモア混じりに演じるという、いわば「ちびまる子ちゃん」的なものなの。何の変哲もないカートゥーン的なスタイルだが、モノガタリの持つ重さや暗さを緩和する効果があるし、これによってリアリズム的なエモーションが抑制されていることよって、前述したような、情緒に偏らない客観的な視点といった印象にも繋がっている。
 また、この基本スタイルを軸に、語られるエピソードに併せて、様々なスタイルが自在に使われるのだが、そのどれもが見応えがある。例えば、昔語りが始まると、それに併せてフォーク・アートがそのまま動き出したかのようなスタイルに代わり、或いはシルエットを大胆に使って社会不安や戦争を表出したり、ギャグ的なメタモルフォーゼが出てきたり……といった具合に、各々が表現したいものに対して、最も効果的な見せ方、演出がなされるのだ。しかも、そのどれもが美しい。実写ではない、アニメーションという媒体ならではの醍醐味が、ふんだんに味わえる。
 そんなこんなで、ものすごく見応えがあり、観賞後は満足感でおなか一杯。

 以下、ちょっと個人的にあれこれ面白かった要素。

 時代背景について。
 自分はこれまで、イランにおけるイスラム革命というのは、国王の専政政治に対してイスラム保守派が起こしたものだとばかり思っていたんだけれど、そんな単純なものではなかったんですね。
 パーレビ(パフラヴィー)王朝自体が、二十世紀に入ってから軍事クーデターによって生まれたものであったことや、パーレビ時代に弾圧されていたコミュニストたちが、反政府勢力として革命に関わりつつも、革命後のイスラム体制下で、再び投獄・処刑されていたことなど、この映画で初めて知りました。
 勉強になりました。

 ゴジラについて。
 みんなが映画館でゴジラ映画を見るシーンがありましたが、私自身も1990年にイランを旅行したとき、イスファハンの映画館で『ゴジラ対ビオランテ』を上映していたのを思い出して、懐かしい気持ちになりました。泊まっていたムサッファルカーネ(イランの安宿)で同室だったイラン人たちが、私が日本人だと知ると、「ビオランテを見たか?」と聞いてきましたっけ(笑)。
 余談ですが、イランを旅する前から、かの地で『おしん』が人気だったとかいうのは聞いていたんですが、じっさいイスファハンのバザールで、ひらがなで「おしん」と書かれている真っ赤なバッグを見たときには、かなりビックリしました(笑)。あと、シラーズだったかケルマーンだったか、宿のフロントのオヤジが、夕方になるとテレビで見る『一休さん』のアニメを楽しみにしていたり、テヘランでズボンを買いに入ったブティックの名前が「TOKYO」だったり、イランにはいろいろ愉快な思い出があります(笑)。

 ジャスミンについて。
 自分がブラジャーをしていないことを残念に思ったのは、生まれて初めてです。う〜、真似してみたかったのに……(笑)。
 なんのことかって? それは映画を見てのお楽しみ(笑)。

 サントラについて。
 映画の主人公はロックやパンクに傾倒しているけれど、サウンドトラックの方はあまりそういった要素はなく、どちらかというと室内楽風味の瀟洒なアヴァン・ポップといった風情がメイン。親しみやすくてかわいいメロディーを、ユーモアを効かせた品のいいアレンジで楽しませてくれます。
 監督の言によると、ワールド・ミュージック風味は省いているとのことですが、私が聴くと、確かに伝統音楽的な要素はないものの、メロディーに懐メロ系のオリエント歌謡風情だったりして、けっこうエキゾ風味に感じられます。
「ペルセポリス」サントラ (amazon.co.jp)
 試聴ができる輸入盤のページにリンクを貼ってみました。
 私の一番のお気に入りは、オリエント歌謡 meets トイポップといった風情の21曲目”Teheran”。かわいくて優美な1曲目 “Persepolis theme”、フランス近代を思わせる3曲目” Tout ce qui est a vous m’appartient”なんかも、かなり好き。全体的に佳品揃いで、アヴァン・ポップ好きなら、サントラの枠を越えてもかなり楽しめる一枚です。
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“Achilles”

Achilles_scene
“Achilles” (1996) Barry Purves
 私の好きなアニメーション作家で、バリー・パーヴスというイギリス人がいます。
 リアル系の人形アニメーションで、初めて見たのは『ネクスト』(1989)という作品でした。シェイクスピアをネタにした5分の短編なんですが、人形の表情も含めたアニメーションの精緻さと、古典趣味に基づく豪華絢爛な美術、そして、舞台劇風の様式美に満ちた演出が、もう何から何までツボだったので、びっくり仰天&驚喜乱舞したもんです。
 そして、次に見たのが『スクリーン・プレイ』(1993)。中世日本を舞台に、タカコとナオキという若い男女の悲恋を歌舞伎風に描いた、11分の短編。これまた演出の様式美が素晴らしくって、更にグラン・ギニョール的な残酷趣味も加味されていて、再びすっかり虜になりました。
 以来、「もっと作品を見たい、見たい、見たい!」と切望していたんですが、なかなかその機会に恵まれませんでした。特に、何年か前に出たアート・アニメーション系のムックで、この人のフィルモグラフィーが載っていて、その中に”Achilles”という作品名を見つけたときには、こりゃもう間違いなくギリシャ神話やホメロスネタだろうと、もう見たくて見たくてたまらなくなったもんです。
 で、つい先日のこと。ちょっとしたきっかけで、この”Achilles”が、実はゲイ・アニメーションだと知りました。
 もう驚いたのなんのって! だって、良く知らないまま、想像だけで恋い焦がれていた映画の内容が、よりによってゲイものだったなんて……もう、「丘の上の王子様の正体はアルバート様だった!」みたいなもんで(笑)。
 そうと知ったからには、これはもう何としてでも見なければ! ……と決意して調べていたら、割とすんなりアメリカ盤DVDを見つけることができました。
Achilles
 DVDのメインは、Neil HunterとTom Hunsingerという監督の、”Boyfriends”(1996)というゲイ映画なんですけど、そのオマケとして”Achilles”が収録されています。もう、とりあえず”Boyfriends”は放っておいて、届いたその日に”Achilles”を鑑賞。
 内容は、もうそのものズバリのイーリアスネタで、トロイア戦争を背景に、アキレウスとパトロクロスの同性愛関係を描いたもの。
 アキレウスとパトロクロスは、大理石か石膏っぽいイメージの白いフィギュアで、アキレウスはヒゲモジャのマッチョ、パトロクロスはアポロン型美青年という造形になっています。その他のモブは、テラコッタっぽい赤茶のフィギュアで、シークエンスに合わせて、ギリシャ悲劇風の仮面や動物の頭の形の兜などをかぶっている。
 これらの人形が、いかにもバリー・パーヴスらしい舞台劇風の様式的な演出で、アキレウスの誕生からヘレネー誘拐などのトロイア戦争のあらましを語り、その随所に絡めて、アキレウスとパトロクロスの同性愛関係のもつれが描かれます。
 ナレーションは、イギリスの名優デレク・ジャコビ。ゲイ的には、フランシス・ベーコンを演じた『愛の悪魔』が忘れがたいですね。
 ゲイ映画としての内容は、アキレウスとパトロクロスの間の、まだホモセクシュアルを無自覚の、ホモソーシャル的なリレーションシップに、ホモセクシュアル的な欲求が絡んでくることによって、その関係性に軋みが生じる、という構造になっています。
 次の段、ちょいと実例を挙げての解説になるので、ネタバレがお嫌な方は飛ばしてください。
 アキレウスとパトロクロスは、最初は子供がじゃれるように、無邪気に湯船で戯れたりしているんですが、二人の間に愛情や肉欲が目覚めていくに従い、次第に関係性がぎこちなくなっていきます。
 例えば、二人は戯れあいの延長として性行為に及びそうになるんですが、アキレウスは寸前で拒否してしまう。そんな二人でも、仮面をつけてパリスとヘレネーを演じることによって、愛を交わすことも性交もできるようになる。しかし、行為の最中に仮面が外れてしまうと、やはりそれ以上は続かない。この演出は、ヘテロセクシュアル的な価値体系から脱却できずに、自己の性的指向を受容できずにいるホモセクシュアルの姿を、端的かつ象徴的に描いていて秀逸でした。
 やがてアキレウスは、パトロクロスの眼前でブリュセイスを犯す、つまり、アキレウスが己はヘテロセクシュアルであると、自分自身にもパトロクロスに対しても証明しようとする。しかしこの強姦劇も、その目的は達しえない、つまり、アキレウスは女性相手の性交を貫徹できずに終わってしまう。
 興味深いのは、この場面では上述した要素と並行して、ブリュセイスを演じているのも、実は仮面をつけた男性であるという仕掛けがあることです。つまり、モノガタリ上ではヘテロセクシュアル的な行為なんですが、その更に外枠、つまりモノガタリの外側から見れば、それが男性同士によって演じられるヘテロセクシュアルのパロディという、実にゲイ的なものになる。
 こういった、同一の事象であるにも関わらず、それを捉える視点の位置によって、その意味性が逆転するという面白さは、人形アニメーションによる舞台劇という、その構造自体に二重の虚構性が含まれている、バリー・パーヴスの作風ならではの効果ですね。
 さて、話を戻しますと、こうしてブリュセイスはアガメムノンの手に渡ってしまい、屈辱に打ちひしがれたアキレウスに、パトロクロスが手を差し出す。しかしアキレウスは、相変わらずそれを拒否して、孤独とコンプレックスを癒すために酒に溺れていく。
 酔ったアキレウスは、自慰をして、逞しい男たちが現れる淫夢に襲われ、自分を心配して訪れたパトロクロスに襲いかかる。パトロクロスは、強姦者のようにのしかかり、泣きながら自分を打擲するアキレウスに、優しく口づけをする。こうして二人は、ようやく性交に至ります。
 こういった具合で、セクシュアリティの目覚めによるアイデンティティの揺らぎとか、自己自認を拒むことを原因としたゲイのホモフォビアなど、ゲイ映画として見ても、テーマがしっかりとしていて硬派な味わいです。加えてこれらは、私自身が自作でよく取り扱うテーマでもあるので、親近感もわいてくる。
 たったの11分という短編なのに、これだけの内容の濃さで、しかも、人形アニメーションとしてもハイ・クオリティで、ゲイ映画としても秀逸。これは、かなり凄い作品ですぞ。
 エロティック作品としても、もちろんハードコア的な直截さはありませんが、ギリシャ彫刻的なセクシーな造形の人形たちが、まるで生きているようように互いの身体に触れあい、睦みあう姿は、必要十分なエロティシズムに溢れています。
 DVDは、字幕こそないものの、ありがたいことにリージョン・フリーですので、興味のある方はぜひどうぞ。激オススメ。米amazonで検索する場合は、”Achilles”だとヒットしないので、”Boyfriends”で探すのが吉。
 あと、バリー・パーヴスのオフィシャル・サイトのギャラリー・ページにも、スチル写真がありますので、そちらもどうぞ。
“Boyfriends (+ Achilles)” DVD (amazon.com)
 あと、前述の『ネクスト』と『スクリーン・プレイ』は、それぞれ日本版DVDも出ています。
 『ネクスト』はこちら、『スクリーン・プレイ』はこちら
 ついでにもう一つ、バリー・パーヴスがヴェルディのオペラ『リゴレット』を人形アニメーションに仕立てたものがこちら

夏の予定、いろいろ

 7月と8月、私が関っているイベントが幾つかありますので、まとめてご紹介。

Bannerkqff
7/20(金)〜24(火)「関西 Queer Film Festival
 私が自主制作している3DCGアニメーション"Desert Dungeon (act 1 ~ 9)"が、
映画祭初日の7/20(金)、オープニング・プログラム<タイヘン×ヘンタイ>(19:30〜)で上映されます。
 初公開パートも含まれていますし、でっかい画面で見られる貴重なチャンスですので、ぜひご覧くださいませ。

Tagamemanga
8/9(木)「トークセッション・田亀マンガとゲイシーン
 7/15(日)〜8/31(火)の期間、ジュンク堂書店新宿店で開催される「パレード応援ブックフェア」の一環として、8/9(木)にジュンク堂書店新宿店・8F喫茶室にて、トークショーに出演します。トークのお相手は、ドラァグ・クイーンのエスムラルダさん
 入場料1000円(ドリンク付き)、定員30名、電話予約可。トークの後は、サイン会の時間もあるそうです。
 皆様、お誘い合わせのうえ、お出でくださいませ。

Tpp2007
8/11(土)「第六回東京プライドパレード
 代々木公園イベント広場で開催される「東京プライドパレード(旧・東京レスビアン&ゲイ・パレード)」、今年も公式缶バッジのイラストで参加させていただきました。
 グッズの売り上げは、貴重な運営資金。ささやかな応援の気持ちを込めて、ぜひお一つ……と言わず、じゃかすか買ってくださいな。

Bannerindpanda_1
8/8(水)〜29(水)「3rd InDPanda international short film festival
 香港で開催される、国際短編映画祭"InDPanda"(「インディペンデント」と「パンダ」を引っかけたネーミングですな)の、<4 Enigmas Among Boyz>というプログラムで、拙作"Desert Dungeon (act 1 ~ 9)"が上映されます。8/14(火)と8/23(木)の二回。パンフレットを見ると、中国語題名は「沙漠土牢」となってます。……まんまですな(笑)。
 まあ、さすがにこれは、ぜひ来てくださいとは言いづらいですけど、もし機会がある方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いします。
 ちなみにこれはゲイ映画祭ではないので、上映される作品のジャンルも本数も半端じゃなく多いですが、ゲイ関係だと、私も去年イベントで上映した「巨根伝説・美しき謎」と「愛の処刑」が、<三島先生、これ貴方でしょ?>っつープログラムで上映されるらしくて、ビックリ(笑)。

関西クィア映画祭で”Desert Dungeon”上映

Bannerkqff
 前にここここで書いた、趣味でシコシコ自主制作している3DCGアニメーション "Desert Dungeon" が、7月20日から24日まで大阪で開催される関西クィア映画祭で、上映されることになりました。
 日時は7月20日(金)19:30から、同映画祭のオープニング・プログラム「タイヘン×ヘンタイ」の中で上映されます。チケットや場所等の詳細は、関西クィア映画祭の公式サイトをご覧ください。前売りは6/10(日)から発売開始だそうです。

 この "Desert Dungeon"、昨年11月にも渋谷のアップリンク・ファクトリーにて、『日本のゲイ・エロティック・アート vol.2』刊行記念イベントの一環として上映されました。そのときのバージョンは、act 1から6までの合計約20分でしたが、今回の関西クィア映画祭では、それに未発表分も含めた act 7から9までを追加した、約30分バージョンでの上映になります。
 基本的にひたすら趣味で制作して、自分のサイトで公開してきたシリーズですが、容量の問題から小さいサイズでの公開でしたし、しかもサーバ負荷の問題から、過去のactは順次公開終了せざるをえない状況。こうしてパブリックな場での上映機会をいただけるのは、本当に嬉しい限り。お招きくださった同映画祭スタッフの方には、感謝感激であります。
 で、この作品、実は現在もう一つ、海外のインディペンデント映画祭からもお誘いを受けております。まだ調整中でどうなるか判りませんが、これも実現してほしいもの。

 で、お話しをいただいたときに「予告編とかはありますか?」とのお問い合わせがありまして、そんなものはなかったんですけど、せっかくだからいい機会なので作ってみました。

 例によってiMovieで制作したもの。YouTubeの規制に引っかからないよう、念のためにマスクをかけました。BGMは、前に作った "Memnon" という自作曲を、尺に合わせてエディット。

 そんなこんなで皆様、よろしかったらぜひご来場くださいませ。
 あ、それと映画祭ではボランティア・スタッフの募集もしているそうです。
 どんなイベントでも、人手不足や資金難はつきもの。更にこーゆーイベントって、スタッフとして参加すると、お客さん視点とはまた違った楽しさがあるものです。興味のある方は、尻込みしていないで、じゃんじゃんお手伝いしちゃいましょう。

AnimeStudio II とかアニメーションとか

farruca
 先日のFLASHのハナシに引き続き、趣味でシコシコ作ってみたアニメーションの話なんぞを。
 今年の春頃、大きな仕事が一段落したときに、ふと「そういえば、Painterのムービー機能って、一度も使ったことがないなぁ」と思い、ちょいと何か作ってみようかと思ったのが最初のきっかけ。思い立ったが吉日で、幸い時間もあるし、さっそくPainterのマニュアル片手に作業を開始。
 前にも書いたように、切り絵風なら比較的手早くできそうだったので、レイヤーをセル代わりに使って制作開始。しかし、Painterのムービー機能はけっこう制限が多く、動きの仕上がりをテストしたりとか、一度作ってからタイムラインを遡って修正したりとか、そういった細かな調整ができない。
 そんなこんなで、頑張って全体の3/4くらいまでは作ったものの、そこで挫折しちゃいました。
 で、何かアニメーション制作に特化した手頃なものがないかと、探して行き当たったのがぜんまいハウスの AnimeStudio というソフト。これを使えば、やってみたいことは一通りできそうだったので、思い切って購入してみました。
 このAnimeStudioは、パソコン上でセル・アニメーションを制作するためのソフトで、ワークフローも一般的なセル・アニメーションの手順に準拠しています。つまり、動画用のセルを用意して、それをタップにセットし、カメラで撮影するという概念。
 単純な歩行アニメーションを例にとると、まずPhotoshopのレイヤーを使って、歩行の動作に必要な枚数の画像を用意して、それをAnimeStudioにセルとして読み込む。で、タイムラインに沿って、一つのタップ上に各々のセルの表示順番を割り振れば、同一地点で動き続ける基本的な歩行モーションになる。で、その歩行モーションを、セルをセットしたタップごと左に動かせば、キャラクターが画面右から左へ歩行する……ってなわけです。
 後はこの応用で、セルやタップやカメラを必要なだけ追加して、それぞれ目的に従った別々のモーションを振り分けていけばよろしい。セル・アニメーションの概念を把握していれば、ソフトの機能の把握や操作自体は、かなり簡単で馴染みやすい。また、マルチ撮影みたいにフォーカスを外したり、透過光合成なんかもできるし、乗算やスクリーンなどPhotoshopでお馴染みの合成モードもあります。
 また、ムービーファイルを読み込むことも可能なので、単純なセル・アニメーションだけではなく、例えば実写のムービー上にキャラクターを合成して動かすなんてこともできます。インポートやエクスポートも、標準的なフォーマットはカバーしているし、別アプリケーションへのデータの受け渡しも問題なし。因みに私の場合、iMovieでは合成機能が足りない場合、FinalCutを購入するかわりにAnimeStudioを使ったりしてます(笑)。
 このソフト、かなり気に入りました。
ぜんまいハウス AnimeStudio(amazon.co.jp)
 そして、中断していたアニメーション制作を、AnimeStudioを使って再開、残りの1/4を仕上げました。あと、Painterで作ったものの、イマイチ納得がいかなかったカットを、AnimeStudioで手直ししたり作り直したり。
 そんなこんなで、できあがったアニメーションがこれ。
QuickTime版
WindowsMedia版
 長さは5分54秒、秒5コマ(笑)くらいの、パタパタ切り絵アニメーション。
 QuickTimeはバージョン7。WindowsMedia版は、それ用のデータを作るのは初めてで、しかもWindowsマシンがなくて動作確認ができないので、もし上手く再生できなかったらゴメンナサイ。
 ところで、最近になって、アメリカで同じAnime Studioという名前のソフトがあることを知りました。
 もとは「モーホ」とかゆーちょっとイヤな(笑)名前のフリーソフトらしいんですが、これが2Dにボーンを仕込んで動かせるらしく、「あらやだ、じゃあ切り絵アニメにはうってつけ?」と興味シンシン。
 リリース元は米 e frontier なんだけど、イーフロから日本語版も出るのかなぁ?

『日本のゲイ・エロティック・アート vol.2』刊行記念イベント、開催決定

『日本のゲイ・エロティック・アート vol.2』の刊行を記念して、11月23日(木曜・祝日)に渋谷にあるアップリンク・ファクトリーさんで、イベントが開催されることになりました。
 イベントの内容は、原画展、トークショー、フィルム上映の三部になります。

 原画展はもちろん、『日本のゲイ・エロティック・アート vol.2』に収録された、長谷川サダオ、林月光(石原豪人)、木村べん、児夢(GYM)、遠山実、倉本彪の、貴重で美麗な原画を展示。印刷物では味わえない、生の迫力を味わえる、またとないチャンスです。入場無料。

 トークショーは、日本の現代美術を代表するアーティストである村上隆さんと、わたくし田亀源五郎の取り合わせでお送りいたします。どんなお話が飛び出しますか、私自身も今から楽しみです。……ちょっと緊張もしてますが(笑)。入場料は1000円。

 フィルム上映は、日本のゲイ・ポルノ映画の黎明期である80年代の作品から一本、アメリカのゲイ・ポルノ映画の黄金期である70年代の作品から一本、そして、ゲイ・エロティック・アーティストのプライベート・フィルムということで、私自身の映像作品の、計三本をデジタル上映します。
 日米ゲイ・ポルノ映画は、まだ選考段階で上映作の最終決定はしていませんが、昨今のゲイAVとは、ひと味もふた味も違うヴィンテージ・ポルノ映画になるはずです。どうぞお楽しみに。……あ、でもお願いだから、会場でハッテンはしないでね(笑)。
 私の作品は、趣味で制作してウェブ上で公開している3DCGアニメーションの"Desert Dungeon"です。既に公開終了しているパートはもちろん、未公開新作部分も含めたロング・バージョン。でっかいスクリーンで見られるのは、ひょっとして最初で最後のチャンスかも(笑)。
 入場料は一本につき400円。

 より詳しい情報は、ポット出版のサイトでどうぞ。
 トークショー及びフィルム上映は、先着順で各回定員70名になりますが、11/1から同サイトで予約の受付もスタートするそうです。

 で、昨日はポット出版さんとアップリンクさんを交えて、上映するフィルムの選考会をしてきました。入手が間に合わなかったものもあり、まだ完全決定には至りませんでしたが、大まかなアウトラインと候補は絞ることができて、一安心。
 今回は残念ながら上映を見送ることにしたフィルムの中にも、佳品あり珍作ありの充実したラインナップでした。まさか、日本のゲイ・ポルノ映画で、パゾリーニのパロディ(それも、すご〜くマニアックな内容)にお目にかかるとは……(笑)。
 そんなこんなで面白かったんですが、とはいえさすがに、ゲイ・ポルノ映画を続けて何本も見たら、流石に疲れました(笑)。しかも、男女入り交じってゲイ・ポルノ映画鑑賞って……何だか貴重な体験をしてしまったような気もしますが、でも、イベント当日はそれが70人規模になるんですね。楽しみ(笑)。

 かくの如き斬新な(?)イベントですので、性別もセクシュアリティも関係なく、皆様、どうぞふるってご参加ください。
 もちろん私も、当日は一日中会場に詰める予定です。特にサイン会等の時間は設けませんが、ご希望の方は、私本人かスタッフに、お気軽にお声をお掛けくださいませ。