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仏リベラシオン紙に書評とイラスト掲載

Liberation 先日、サイト宛に「自分はフランスの新聞 "Liberation" の記者で、今度あなたのフランス語版『闘技場〜アリーナ』のレビューを書きたいんだが、誌面にあなたのサイトにある "Parasite" って絵を使いたい。印刷用の高解像度データを送ってくれないか?」という英文メールを貰いました。
 で、はて「リベラシオン」って、どっかで聞いたような……とか考えて、思い出してビックリ。リベラシオン紙って、有名なフランスの左派系新聞じゃないっスか! しかも、確か創刊時にはサルトルが関わっていたんじゃなかったっけ?
 ひぃ、なぜそんな新聞に私のマンガの紹介が……ひょっとして、フランスには同姓同名……じゃなくって、同じ名前のゲイ向けのフリーペーパーかなんかがあるんじゃない? そーいや手塚治虫の『W3』に、田舎のオバチャンたちが、舟木一夫ならぬ舟本一夫ショーってのに騙されて、ドサまわりの無名歌手にキャーキャー言うシーンがあったような……とか、いらんことまで思い出しちまったりして(笑)。
 でもまあ、一般の新聞だろうがゲイ雑誌だろうが、マンガを紹介してくれるのはありがたいんで、「いいけどちゃんとコピーを一部送ってね」と返信したわけです。サイトにアップしている "Parasite" はラフ画だったから、着色して完成したバージョンと二点送って、「好きな方を使っていいよ」とも書き添えました。

 で、数日前、フランスから大きな紙封筒が届きました。開けてみたら、新聞が入ってた。見覚えのあるロゴ。やっぱり、あのリベラシオン紙。2007年1月25日号。うむむむ、半信半疑だったから、けっこうビックリ(笑)。
 で、例の記事はどこじゃらほいと探して、見つけて更にビックリ。
 うん、確かにフランスのH&Oから出ている "Arena" のレビューらしき記事と、私が送った完成版の "Parasite" が載っているんですが……あたしゃてっきり、絵の一部だけを使うとかだと思ってたんですが、ノートリミングの無修正で、しかもけっこうデカデカと載っている。(左上の画像参照。クリックするとデカくなります)
 あの……この絵、チンチンもキンタマもモロ出しで、包皮のシワから血管までクッキリ描いているんですけど……オマケにアヌスもこじ開けられていて、直腸の内側の肉ヒダまで描いているんですけど……。
 日本の新聞だと、私の本の書評が載ることすら考えられないのに、書評はおろか、この絵がフルカラーでデカデカと掲載されるとは……。う〜ん、ここ数年フランスとのご縁が多くて、何かとリベラルな国だなぁとは思っていたけど、ここまでリベラルだったとは。想像を上回る自由さに、正直ビックリです。
 いいなぁフランス。もう二十年も日本の法律や出版社の自主規制のおかげで、絵画における性器の露出やら表現のタブーやら、創作上の制約のアレコレに悩まされてきた身なので、なんだかフランスに移住したくなってきた(笑)。

 まあ、例によってテキストの方はフランス語なんでチンプンカンプンなんですが、大見出しはどうやら「とってもスゴいSM」とゆーことらしい(笑)。え〜、小見出しは「全ての男が凌辱されるX指定マンガ」ってこと(笑)?
 本文は、どうやらあらすじを紹介しているらしい部分以外は全く判らないんですが、「マルキ・ド・サドのジュスチーヌのように」ってのだけは判って、何か嬉しい(笑)。前に、やはりフランスのアート誌に、これまたH&Oから出た "Gunji" のレビューが載った際、文中にマルセル・プルーストやロマン・ロランの名前を見つけて、「いったい何がどーゆー文脈で、こんな名前が出てくるの?」と、目が点になってしまったことがありますが、マルキ・ド・サドなら納得です(笑)。
 ま、サドの小説そのものは、あたしゃジュスチーヌが主役の『美徳の不幸』より、姉のジュリエットが主役の『悪徳の栄え』の方が好きなんですけど(笑)。同作に出てくる食人鬼ミンスキーと、『ソドムの百二十日』に出てくるブランジ公爵と強蔵エルキュールのカップルが、私が十三歳の頃のアイドル兼オナペットでした(笑)。

 因みにこの号のリベラシオン紙は、書評がBD(バンド・デシネ=マンガのこと)スペシャルらしく、十ページに渡ってマンガ単行本が二十冊ほど紹介されています。日本のマンガを集中してレビューしてあるページもあって、丸尾末広さん、近藤聡乃さん、福山庸治さん、阿部慎一さん、水木しげるさんの、仏語版単行本が紹介されています。
 私のマンガは、それとは別の、ゲイ・マンガ(もしくはゲイ・テイストなマンガ)コーナーでの紹介。ここに掲載されている作家で私が知っていたのは、Ralf Konig だけでしたが、Lepage という作家さんの "Muchacho" というマンガは、ちょっと絵がステキなので気になります。amazonかどっかで、探してみようかな。
 で、このゲイ・マンガ・コーナーが、マンガ・スペシャルのトップ記事なもんですから、う〜ん、つくづくリベラルな新聞。……あ、そもそも紙名からして「リベラシオン」だっけ(笑)。
 さて、こーなると次に目指すは「ル・モンド」と「フィガロ」ね! ……って、ないない(笑)。

イベントのご案内/伏見憲明さんがゲイバーのママに!?

 評論家&作家の伏見憲明さんが、リアルゲイバァを開店することになったそうです。
 とはいえこれは、伏見さんの新刊『欲望問題』の刊行記念イベントとして、2月の週末にゲイバー「アイランド」さんのパーティルームを借りての、述べ5日だけ営業だそうです。
 では、以下はいただいたメールからの引用。
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●伏見憲明が二丁目でゲイバーを開店!?
 新刊『欲望問題』(ポット出版)の刊行を記念して伏見憲明が2月、新宿で「昭和のゲイバァ」を臨時開店します。新宿3丁目のゲイバー、アイランドの4Fを借りた週末のみの営業ですが、伏見ママとお酒を呑みながらおしゃべりしたい人は、老若男女どなたでも大歓迎! 一見さんウェルカム!
 古式ゆかしいゲイバーにちなんで、営業ポリシーは「毒舌」「くっつけ」「エロ」の三本柱。昭和の気分を存分に味わってもらいます。
 今回は「昭和」をコンセプトに、店内にはまだゲイがアンダーグラウンドだった時代をなつかしむ品々が展示されます。
「薔薇族」以前に一部で流通していた「アドニス」「薔薇」「同行」などのミニコミ誌、初期の「薔薇族」や「青年画報」、伝説のゲイカルチャー誌「MLMW」などの雑誌類、初期のホモ単行本、新聞記事、三島剛などの絵画、地下でやり取りされていたエロ写真、スライドなど、レアなゲイカルチャーを取り揃えた、回顧展でもあります。
 伏見憲明が「ゲイの考古学」を執筆するにあたって収拾したものを初公開。温故知新、ぼくらがどこから来たのか、に興味がある人にはうってつけのイベントでもあります。
日時:オープニングパーティ 2/2(金曜日)
以後、2/3(土)、2/10(土)、2/17(土)、2/24(土)
20:00〜
場所:ゲイバー、アイランドのパーティルーム(4F)
03−3359−0540
http://www3.alpha-net.ne.jp/users/islands/
料金:3000円(焼酎割り・ソフトドリンク飲み放題)
*食べ物持ち込みOK
*先着順に古いゲイビデオのプレゼントもあります!
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 ……ってな感じらしいですが、ノリエ姐さんの色白で柔和な顔に似合わない毒舌シャワーを浴びたい方はもちろん、個人的にはやはり展示物の数々が気になるところ。「アドニス」や「薔薇」や「同行」の現物を見る機会なんて、そうそうあるもんじゃないですよ。
 また、伏見さんご所蔵のアンダーグラウンドな写真など、過去のゲイ・エロティック・アートは、私はそのごく一部を拝見させていただく機会がありましたが、これまた時の流れに埋もれてしまった貴重な資料です。過去の日本のゲイ文化史に興味のある方は、足をお運びになってはいかがでしょう?
 さて、このイベントのきっかけとなった、伏見さんの新刊『欲望問題』とは何か、というと、これまた頂いたメールから以下引用させていただきます。
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●『欲望問題』専用サイト、「欲望問題プロジェクト」が始動
伏見憲明著『欲望問題』の刊行に合わせて、ポット出版のサイト内で「欲望問題プロジェクト」が公開になります。
『欲望問題』の書評が一ヶ月、毎日アップされていくという、出版界はじまって以来の企画です! 書評執筆者も、中村うさぎ(作家)、遥洋子(タレン ト)、黒川創(作家)、永江朗(ライター)、加藤秀一(社会学者)、橋爪大三郎(社会学者)、藤本由香里(評論家)氏など40名以上の錚々たるメンバー が予定されていて、そこでいったいどんな議論が巻き起こるのかに注目が集まっています。
また「欲望問題プロジェクト」の一環で、すでに伏見憲明サイトなどでネット向けのCMもオンエアされています。
「欲望問題プロジェクト」 2月1日より公開
http://yokuboumondai.pot.co.jp/
伏見憲明サイト
http://www.pot.co.jp/fushimi/
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 というわけで、こちらもよろしく。
『欲望問題』伏見憲明(amazon.co.jp)

『300(スリーハンドレッド)』日本語サイトオープン

300_desktop 前にここで、「もうガチで楽しみにしてるんだが……ちゃんと公開してくれるんでしょうね?」と書いた、フランク・ミラー原作、ザック・スナイダー監督、ジェラルド・バトラー主演の『300』ですが、無事に「2007年初夏ロードショー!」とのことで、日本語サイトがオープンしていました。
 これでホッと一安心(笑)。
 さっそくサイトからステキ壁紙をダウンロードして、デスクトップ・ピクチャに設定してみました。左上の画像がそれ。クリックすると、ちょっと大きくなります。
 ……うふん、なかなかいい感じ。いつものスティーヴ・リーヴス様には少しお休みいただいて、しばらくこっちに浮気しようかな(笑)。
 テルモピュライの戦いの映画というと、過去にも『スパルタ総攻撃』(”The 300 Spartans”/1962年/ルドルフ・マテ監督)があります。
 これは私も、ちょっと前に日本盤DVDが出て初めて見たんですが、いささか地味ではあるものの、真面目に作られた佳品という印象でした。
 正直、俳優にはあまり華はないし、スパルタ軍の格好とかも、古代ギリシャというよりはローマ風に見えるとか、気になる部分もあるんですけどね。でも、風景のスケール感や軍勢の物量感なんかは決して悪くないし、舞台やタイムスパンを拡げすぎないモノガタリは、娯楽作的に骨太で手堅い。マノス・ハジダキスによるちょっとエキゾチックなスコアも、ムード演出に一役買っている感じ。
 史劇好き、男のドラマ好きなら、見て損はないと思うので、よろしかったらご覧あれ。
『スパルタ総攻撃』DVD(amazon.co.jp)
 さて、今度の『300』は、どんな感じになるのかな。
 予告編を見る限りでは、けっこうパンキッシュな感じですけどね、楽しみ楽しみ。

『敵中横断三百里』

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『日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里』(1957)森一生

 ここんところ何故か「古い邦画が見たい」モードに取り憑かれていて、レンタル屋に行っては「あ、これ見たことねーや」ってヤツを借りてきては見ているんですが、これもその中の一本。

 原作は、戦前の「少年倶楽部」誌で連載され絶大な人気を誇った、山中峯太郎の軍次冒険小説。
 山中峯太郎という名前には、私は過去二度ほど出会っていて、まずは中高生の頃にSFや秘境探検小説などに熱中していたときに、日本の冒険小説史の一環として、南洋一郎なんかと一緒に知ったのが最初。次に、大学から社会人にかけて、日本の過去の挿絵文化に熱中していたときに、樺島勝一や伊藤彦造なんかと一緒に知ったのが二度目。以来、この作家の作品には、何となく憧れがあります。
 しかし、似たようなパターンで興味を持った、久生十蘭や橘外男や香山滋や小栗虫太郎なんかは、割とすぐに文庫本やら選集やらを見つけて読むことができたんですが、この山中峯太郎は、少年小説ということが災いしてか、入手しやすい形での復刊等に出会えず、未だに読む機会を逸したままで、これは南洋一郎も同様です。加えて山中峯太郎の場合、代表作とされる『敵中横断三百里』や『亜細亜の曙』といった小説が、第二次世界大戦後のパラダイム・シフトによって、ニュートラルに評価されることが難しくなったせいもあるのかな、なんて、未読ながら勝手に想像してたり。『亜細亜の曙』なんて、森川久美の『蘇州夜曲』の元ネタがこれだなんて聞いた覚えがあるので、特に読んでみたいんですけどね。
 そんなこんなでこの『敵中横断三百里』は、自分にとって「名のみぞ知る名作」だったので、ホクホクと喜んで借りてきた次第。因みにこれ、脚本が黒澤明で、DVDのパッケージ表面には監督の名前も主演俳優の名前も入っていないのに、「黒澤明 脚本」って文字は大きく入っていて、レンタル屋の棚でも黒澤明のコーナーにありました(笑)。

 お話は日露戦争末期、兵力が限界にきていた日本軍の、起死回生の総攻撃を勝利に導くに至った、六人の斥候兵の物語。彼らは、ロシア軍の集結地がいずこかをさぐるため、全員の無事生還は難しいことを覚悟の上で、敵の陣中深く騎馬で潜入する。なるほど、戦前の少年が熱狂しただけあって、モノガタリはすこぶるつきで面白い。アクションありサスペンスありの冒険譚が、時に静かで情緒的な情景も挟みながら、よどみなく手堅い演出で進行していく。うん、こりゃあ、少年の夢であるヒロイズムは擽られるわな。
 ただ、手堅すぎるような面もあって、もうちょっとエモーショナルな部分があってもいいかな、とも思います。絶望的な包囲網から、隊を分散して突破するあたりはすごく良いんだけど、その後の敵陣突破から帰投に至るくだりは、もう少し高揚感が欲しかった。あと、締めに入る奉天の会戦のシーンも、見せ方がスペクタクル的に中途半端なので、映画としての幕切れが、いまいち締まりが悪い感じがして残念。反面、感傷や悲壮感が過度に強調されることがないのは、これはなかなか好ましいんですけどね。情緒過多の戦争映画は、個人的に好きではないので。

 画面づくりの方は、北海道ロケをしたという風景のスケール感とか、ワイド画面を存分に生かしていて、文句なしに素晴らしいです。広大な雪原を騎馬で失踪する斥候隊なんて、それだけでも絵になるカッコ良さ。セットや美術も良く、日本軍の司令部も馬賊のアジトも田舎の農村も、全景から細部に至るまで見応え充分。ロシア軍の鉄道拠点である鉄嶺の全景とかも、雰囲気もスケール感もたっぷりで目を見張らされたし、敵軍の騎馬隊などの物量感も、なかなかもの。
 ただ、尺が83分と決して長くないので、進行はスムーズでスピーディな反面、ちょいと溜めが乏しいし、深みにも欠けるという物足りなさもあり。画面に物量感やスケール感があるわりには、映画自体には意外と大作感がないんですな。小粒な娯楽作ってのもいいけど、題材の面白さと魅力的な絵作りゆえに、どうせなら2時間くらい使って、もっとじっくり見せて欲しかったという気はします。

 役者さんは、女性は一人も出てこないという潔さで、登場人物はいかつい(もしくはむさい)軍人ばっかなんですが、まあ皆さん背筋がビシッと伸びて姿勢も良く、所作もキビキビとカッコイイこと! それと、明治時代の軍人さんですから、おヒゲさんが多いのも私的には嬉しい(笑)。
 あと、セリフがいかにも軍人っぽい文語調や漢語調で、これまたカッコ良さにシビれちゃいます(笑)。「君を鞭撻せんがための一言と察してくれ!」なんてセリフ、一度でいいから、日常生活で使ってみたいもんです。……って、いつどこで誰に言うんだよ、って感じですが(笑)。
 斥候隊の六人の俳優さんは、正直なところ私にはあまり馴染みがない面々で、見覚えがあるのは高松英郎くらいでしたが、ここいらへんはこういった映画にリアルタイムで親しんできた相棒が、「この人は、若尾文子の相手役とかを良くやってたんだよ」とか「この人は元水泳選手で、和製ターザンもやったんだよ」とか、横でオーディオ・コメンタリーしてくれました(笑)。
 菅原謙二演ずる主人公の建川斥候隊長は、いかにも少年小説の主人公に相応しく、冷静沈着、文武両道、中国語にもロシア語にも堪能なスーパー・ヒーローなんですが、ちょいとスーパーぶりが災いして、キャラクターとしては影が薄い感もあり。
 五人の隊員たちは、隊長の右腕で自分の馬をこよなく愛する豊吉隊員(北原義郎)と、隊長を心から慕う新兵の沼田上等兵(石井竜一)は、けっこう印象に残るしキャラも良く立っているんですが、その他の三人の影が薄い。いちおうそれぞれ、連隊一の乗馬の名手とか連隊一の食いしん坊とか、キャラクター付けはされているんですが、いまいちそれが生きていない。もっと、各人満遍なく見せ所があれば良かったのに。他の登場人物も、前半に登場する馬賊の首領(に収まっている日本軍人)とかは良いんだけど、斥候隊の消息を案じる本部の人々とかは、キャラクターの役割としての魅力はあるものの、プラスアルファの人間的魅力までには至らない感じ。
 ここいらへんも、やはり前述した尺の短さの弊害のような気がするので、やっぱりここはもっと長くして欲しかったなぁ。

 とはいうものの、そういった無い物ねだりを除けば、前述のように内容的にも絵的にも魅力タップリだし、あちこち私の好みのツボは押されまくりだったので、個人的にはかなり気に入っちゃいました、この映画。
 『日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里』DVD(amazon.co.jp)

 さて、ちょっと余談。

 この映画で描かれているような、男だけの社会における男同士の友愛、すなわち、ホモソーシャル的なリレーションシップに対しては、私自身はそれほどファンタジーを抱いていないつもりでした。それどころか、そういったホモソーシャル関係の延長線上に、ホモセクシュアルを位置付けるタイプの発想、一例を挙げると、「この、女性が入り込む余地のない男同士の親密な友情には、どこかホモセクシュアルめいた危うい匂いが……云々」とかいった論調には、私は否定的です。
 で、そんな私なんですが、この映画で一カ所、ちょいと胸がときめいちゃったところがありまして(笑)。
 映画の前半、斥候隊一行が馬賊の元に身を寄せた際、馬賊の首領が建川斥候隊長に対して、部下の一人である野田隊員(演じるのは和製ターザン役者の浜口善博)のことを、彼がいないところで「良く気が付く」と褒めます。それに対して建川隊長は、ごく自然に「女だったら女房に貰いたいくらいですよ」と返すんですな。ここでときめいちゃった(笑)。ああ、自分の中にも、ホモソーシャル的なリレーションシップの中に、ホモセクシュアル的な幻想を見るファンタジーがあったのか、と、変なところで自己再発見してしまった気分になった(笑)。
 で、その後更に追い打ちをかけるようなやり取りまであるんですな。首領と隊長がそんな会話をしているところに、当の野田隊員が戻ってきて、早速その「良く気が付く」っぷりを見せる。すると首領が「なぁるほど、素敵なおかみさんじゃ」と呵々大笑する。こうなると、見ているこっちの気分は、もう「萌え」の領域に突入(笑)。自分の中に、ホモソーシャル幻想どころか、今度はやおい属性があることまで確認しちゃいました(笑)。
 この一連のシーン、ホンモノの腐女子の方々の感想を、ちょっと伺ってみたい気がします(笑)。

ちょっと宣伝、レディコミ初挑戦

 え〜、初めてレディースコミック誌でマンガ描きました。ぶんか社さんの『月刊 ほんとうに怖い童話』という雑誌です。

 とはいえ、実はレディコミ誌で描くのは全くの初めてとゆーわけではなく、以前某社から出たレディコミ誌でイラストは描いたことがあります。ただこの時は、お話しがきたときは「わ〜い、初レディコミ!」と喜んだものの、具体的な依頼内容を聞いたら、レディコミの中のホモコーナー(笑)みたいなヤツだったので、カックンきちゃったんだけど(笑)。

 今回は違います。イラストじゃなくてマンガだし、内容もゲイものじゃありません。う〜む、お仕事でゲイもの以外のマンガを描いたのは初めてだ。
 で、お話しが決まってネームをきりながら、一瞬「ひょっとして、過去に自分が描いた全てのマンガの、女性が出てくるコマ数の合計よりも、今回のマンガでは女性のコマが多いんじゃないか?」なんて思ったんだけど、よく考えたら、『バディ』で連載している「外道の家」で、お嬢様やらブスやらババァやら女性キャラをバンバン描いてるから、流石にそんなことはなかった(笑)。
 とはいえ、既に発売されている雑誌に載った予告カットを見た、大学時代からの友人でマンガ家仲間でもあるHちゃんから、「Yっくん(私の大学時代のあだな)の描いた女性キャラ見るの、すっごい久しぶり!」なんてメールを、貰っちゃったりもしましたが(笑)。

 あと、別の人からは、こんなことも聞かれました。
「田亀さん、レディコミ描くの?」
 うん。
「女同士の話?」
 ううん、男女もの。
「え、じゃあSM?」
 ううん、SMはなし。
「え……じゃ、何描くの?」

 ……ごもっともな反応でゴザイマス(笑)。確かに客観的に考えれば、私のマンガから同性愛とSMを取ったら、何が残るのかって感じではありますわな(笑)。
 でも、私の趣味嗜好を良く知る友人や、古くから付き合いのある連中からは、「これこれこーゆー雑誌にマンガ描くんだよ」と言ったら、「あ、向いてる向いてる」とか「得意そうだよね、そういうの」とも言われました。じっさい私自身、かなり自分の趣味嗜好を出せる世界だったので、描いててすっごく楽しかったし。
 専業作家になってから13年間、兼業時代も含めれば25年間、マンガでもイラストでも、ゲイものだけにこだわってやってきたけれど、それも自分の中で一段落ついた感があるので、これからはこうやって少しずつ、自分の「できること」や「やりたいこと」を拡げていければいいですね。
 編集者の方々、何かございましたらジャンルを問わず、ぜひお声をお掛けくださいませ。

 そんなこんなで、レディースコミックは初めて、ゲイものじゃないのも初めて、主人公が女性なのも初めて、一度に42ページの読み切りを描いたのも初めて……という具合に、色んな意味で初めて尽くし。
 1月24日(来週の水曜日)発売の、『ほんとうに怖い童話』3月号掲載です。普通に本屋さんやコンビニで売ってますので、よろしかったらぜひお読みくださいませ。
 で、アンケートなど出していただけると、更に嬉しいです(笑)。

“Centurians of Rome”

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“Centurians of Rome” (1980) John Christopher

 今まで、ソード&サンダル映画のソフトについて、何度か書いてきましたが、今回はちょいと変化球です。
 いや、変化球っつーか、これは反則か(笑)。だってこれ、ゲイポルノ史劇だから(笑)。でも、そう言うと何だかキワモノのようですが、あにはからんや、これは私が見た古今東西のゲイ・ポルノ映画の中でも、三本の指に入るマイ・フェイバリット。
 とゆーわけで、今回の記事は「エロ」ですから、お嫌な方はパスするように。

 ポルノ+史劇というと、有名なのはティント・ブラスの『カリギュラ』ですよね。公開当時は日本でも話題になりましたし、ゴージャスな画面や残酷趣味などの見せ物的な面白さはありましたが、まあ正直なところ、アーティスティックという面でもポルノグラフィックという面でも、どっちつかずの中途半端さで、さほど面白い作品ではない。
 理由はいろいろありますが、私にとって最大のそれは、単に豪奢なセットの中で乱交するだけで、エロティックな表現そのものに目を見張るようなものがなかったってことです。そういう意味では、富士見ロマン文庫から邦訳が出た、ノヴェライズの方が面白かった。ペントハウス誌のオーナーにして映画の制作総指揮も努めたボブ・グッチョーネが、映画の仕上がりに不満で手を入れたとは聞きますが、私はティント・ブラスの作品は、そーゆー横槍がないはずの『サロン・キティ』でも退屈だったから、そもそもこの監督とは相性が悪いのかも知れません。
 しかし、大金を投じて(『カリギュラ』は46億円らしい)ポルノ映画を撮るってこと自体は、結果はどうあれ、その心意気に拍手したい気持もあります。

 さて、そんな『カリギュラ』の向こうを張って……かどうかは判りませんが、その翌年に公開されたのが、この “Centurians of Rome” です。もちろん『カリギュラ』ほど大金がかかっているわけではなく、それでもIMDbのトリビアには「最も高い制作費を投じた(10万ドル近い)ゲイ・フィルム」とあります。
 まぁ、いくらゲイポルノとしては破格の予算を投じていても、『カリギュラ』とは桁が二つ違うし、実際の画面もゴージャスには程遠いです。50年代後半から60年代中頃のソード&サンダル映画の、安っちいクラスの作品と比べても、ず〜っとず〜っと貧乏くさい(笑)。
 でも、それなりに頑張ってはいて、例えば、何もない野っ原にローマ風の石柱をポツンと置いて、遺跡風の雰囲気を出していたり、建物の外観とかは、どこぞの図書館だか博物館だかにありがちな、ギリシャ・ローマ風のエントランスとかを使って撮っていたり、頑張って史劇らしいムードを出そうという努力や工夫は、充分以上に感じられます。
 そして特筆したいのが、この映画は『カリギュラ』と違って、ポルノグラフィーに徹しつつ、なおかつモノガタリとしても面白いんですな。

 映画は『スター・ウォーズ』のパロディで始まります。星空を背景に「昔々、ローマからそう遠くない所で……」ってな黄色いテロップが流れる(笑)。で、舞台はローマ郊外らしき野っ原に移り、そこで畑を耕すかなんかしてる仲良し二人組、黒髪にフルフェイスのヒゲのディミトリアス(ジョージ・ペイン)と、ブロンドに口ヒゲのオクタヴィアス(スコルピオ)がメイン・キャラクター。
 二人は親戚同士で、オクタヴィアスが税金が払えなくて困っている、みたいなことを会話で説明した後、一休みしようかと昼寝する。ここで見る淫夢が、最初の濡れ場。ロマンティックな音楽……因みにこれ、富田勲の『ダフニスとクロエー』を、おそらく無断で勝手に使ってるんですが(笑)……が流れ、色照明の中、二人のヒゲ男は全裸になって愛を交わす……ってな具合。
 そこに百人隊長(エリック・ライアン)が部下と共に馬に乗ってやってくる。「税金払え」と言われ、オクタヴィアスが「金がないから払えない」と答えると、その場で取り押さえられてしまう。百人隊長は、ディミトリアスに空の財布を投げ与えて、「明日までに金を持ってこい」と命令すると、下帯一つの裸にされたオクタヴィアスを縄で縛って、馬で引いて連れて行ってしまう。
 連行されたオクタヴィアスは、百人隊長のテントの中で、「美しい、天使のようだ!」とか何とか迫られて、部下と一緒に数人がかりで凌辱されてしまう……ってのが二番目の濡れ場。その夜、ディミトリアスがオクタヴィアスを助けにテントに忍び込む。で、「俺はこいつを始末してから行くから」と、オクタヴィアスを先に逃がして、石を拾って百人隊長を殺そうとするのだが、根が善人なのか実行できない。すると百人隊長が目を覚ましてしまう。
 こうして、オクタヴィアスは脱出できるが(因みにこのシーンでは、今度はエルマー・バーンスタインの『十戒』の音楽が……)、ディミトリアスが捕まってしまう。百人隊長はディミトリアスを縛ると、「お前を奴隷に売って、その金を税金にあててやろう」とか言いながら、裸にして身体に悪戯……ってのが、濡れ場じゃないけど三番目のエロ・シーン。
 この後、ディミトリアスは奴隷の競り市に出され、そこに来ていた、いかにも退廃メイクなフェミニン系の皇帝の目に留まり、お買い上げ、他の奴隷と一緒に地下牢に繋がれて、マッチョな調教師からセックス調教の開始。いっぽうオクタヴィアスは、ディミトリアスを助けるために、自分を「美しい」と言っていた百人隊長に色仕掛けで近付くが、それをきっかけに二人の間に情が通いはじめる。その頃、調教が終わったディミトリアスは、ついに皇帝の夜伽をするために寝室に連れて行かれ、寝台の柱に縛られ……ってな具合に、話が進みます。

 あらすじの紹介が長くなりましたが、こんな感じで、ジャンル・フィクションで期待されるクリシェを上手く使い、同時に要所要所をしっかり濡れ場で押さえつつ、キャラクターの性格や心情も絡めたストーリーをきちんと展開していく。内容も盛り沢山で、凌辱や縛りや鞭打ちもあれば、キスやラブラブや恋愛もあり、モノガタリ的なドンデン返しまである。
 ここまでちゃんとした「おはなし」があって、それがエロ・シーンと全く乖離していないのは、ポルノグラフィー的なモノガタリのレベルが極めて高いとゆーことで、もう「お見事!」って感じ。私が本作を、マイ・フェイバリットの一本にあげる、最大の理由がこれ。
 それと私の場合、幼少のみぎりから『十戒』やら『ベン・ハー』を見て、映画としての面白さと同時に、性的にもモヤモヤと惹かれていた……って事情もあります。
 で、映画を見た後、勝手に頭の中で「アレがあの後、あ〜なってこ〜なって……」ってなHな妄想を繰り広げて、エロい二次創作(笑)をオカズにマスターベーションしたりしてたわけですから、そーなるとこの映画は、もうある種の夢の具現化です。今からもう、20年も前になりますか、知り合いに初めてこの映画の裏ビデオを見せてもらったときは、「ひゃ〜、こんなのがホントにあったの!」と、マジでビックリかつ感激したもんです(笑)。

 あとまぁ、やっぱりポルノですからね、俳優陣がイケるかどうかってのも重要なんですが、これまた幸いなことに、私の好みに合致してる。
 昔の、まだフィルム撮りだった頃のゲイ・ポルノですから、皆さん今みたいにゴリゴリのマッチョやらビルダーやらってのではないですが、肉体労働系のナチュラルな逞しさで、これはこれでまた良きかな。顔も、メインの三人はいずれも私的にオッケーなタイプだし(特に黒ヒゲのジョージ・ペインの顔は好きだなぁ)、脇でも、ダンジョンの調教師なんかカッコいいし。
 不気味系の皇帝陛下も、他の役者とのコントラストが、逆にエロい気分をかき立ててくれるし、役者としてもけっこう見せてくれる。特にラストで見せる表情なんて、『サンセット大通り』のグロリア・スワンソンばり……までいくと褒めすぎだけど、でも、かなりの凄み。
 最近制作のゲイ・ポルノでも、こういった史劇風のものってのも、全くないわけじゃないんですが、残念ながらクオリティが、この作品の足下にも及ばないものばかりです。
 なんかね、ローマ風の衣装を付けて、それ風のセットでセックスしたりはするものの、キレイにタンニングした肌にビキニ跡がクッキリとついていたり、ラテックスのコンドームを使ってたりすると(まあ、これは仕方ないことではありますが)、興ざめも甚だしい。もちろん、モノガタリなんてあってなきが如しで、コスチューム・プレイではなく、悪い意味での「コスプレ」にしかなっていないんですな。

 あと、ハードコアのポルノビデオって、どうしても「結合部分をよく見せる」とかの工夫ゆえに、本来ならば陰になる部分にも照明を当てるから、結果として画面がフラットになりがちだったりします。まあ、上手いスタジオだとそこいらへんも上手くて、二灯三灯使いながらも陰影にはメリハリを付けて、全体も局部も共に見応えある画面作りはしていますが、そーゆー優良スタジオは限られている。
 でも、この “Centurians of Rome” は、そこいらへんがけっこう「映画的」なんですな。シーンによっては、オーラルセックスやアナルセックスをしていても、性器や結合部分が完全に影に隠れてしまっていたり、暗すぎて見えないことも多々ある。でも、それがかえってナチュラルな淫靡さを醸し出していたり、エロティックな雰囲気だったり。光と影で画面を作るという意識や、最近のAVでは見られなくなった職人的な技術が、しっかりあるという感じです。

 DVDの画質は、もちろん私が以前持っていた裏ビデオ版と比べると、問答無用の良画質ですが、こういうクラシック・ゲイ・ポルノのソフト全般と比べても、かなり佳良です。デジタル補正しているようで、映像はかなりシャープで鮮明。ただ、シャープネスをきつくかけたせいなのか、ちょっと全体的にフィルムの粒状感が目立ってしまったような、ザラザラした感じはあります。
 画質のサンプルは……う〜ん、内容が内容なだけに、キャプチャ画像をアップするのは差し控えます(笑)。どんな内容か知りたい人は、Centurians of Rome でGoogleのイメージ検索をすれば、スチル写真やキャプチャ画像が幾つかヒットするので、それを参考にしてください。
 ディスクは、プレスではなくDVD-Rですが、フルカラーのピクチャーディスク仕様。メニュー画面あり、チャプター付き。

『キングダム・オブ・ヘブン』ディレクターズカット版

Kingdomofheaven 劇場公開時にここで、条件付きながら絶賛したリドリー・スコット監督の『キングダム・オブ・ヘブン』ですが、劇場公開時に削除された本編50分を復活させたディレクターズ・カット版のDVDが、昨年暮れに出たのをお正月のお楽しみにとっておいたんですが……もう大傑作 だった〜!!
 
 前回の記事で「多少の瑕瑾」として挙げた気になるポイントは、ことごとくクリアです。
 まず、導入部のエピソードの増加が嬉しい。これによって人物の因果関係がクリアになり、同時に主人公バリアンの心情も、より切実なものに感じられます。おかげで、前に書いたような「こちらの感情が置いてきぼりにされてしまう感じ」は、きれいに払拭されました。……まあ、欲を言えば、もっと長くてもいいと思うけど(笑)。エルサレム以前2時間とエルサレム以降3時間で計5時間とか、セルゲイ・ボンダルチュクの『戦争と平和』並みの、全7時間とかでも良くってよ(笑)。
 エルサレム以降も、様々なちょっとしたエピソードが追加されて、それによってキャラクターたちの「魅力的ゆえに『もっと見たい』感が強くなるのに、前述の時間不足もあって描き込み不足」といったポイントもクリア。特に、ヒロインのシビラと、劇場版では完全にカットされていたシビラの息子のエピソードの復活は大きい。
 劇場版だと、シビラというキャラクターの心情がいまいち掴みにくく、モノガタリへの絡み方にも少々ぎこちなさがあり、同時にバリアンにも、内面の深さに物足りなさを感じる部分がありました。そのせいもあって、ついこの二人の動き方を見ていて「……もうちょっと別の手段もあったんじゃない?」なんて感じてしまう部分もなきにしもあらずだったんですが、前半のバリアンの描写と中盤のシビラの描写が共に増加したことで、それらの瑕瑾や違和感がキレイに払拭されています。
 こうして、メインのキャラクター二人にしっかり芯が通ったことと、その他のキャラクターたちも軒並み描写が深くなったことで、基本的に群像劇であるモノガタリが、もう文句なしの内容になった。オマケに、他の美点は前回述べたように数知れずですから、もう怖いモンなしの出来映えです。
 しかし、改めて見ても映像の深い美しさには惚れ惚れするので、こーなるとブルーレイ・ディスクの再生環境が欲しくなっちゃうなぁ(笑)。でも、我が家は狭いし、予算もない(笑)。
 そうそう、字幕の情報不足って点は、前に通常の劇場公開盤DVDが出たときから、ある部分は改善され、ある部分はそのままでした。例えば、「サラディン」表記はそのままですが(要だけ「サラーフ・アッディーン」に「宗教の救い」というルビがあったか)、New Jerusalemはちゃんと訳されてたり。
 DVDソフトとしては、本編のみになってしまったのは、ちと残念。
 とゆーのもこの映画は、時代背景の知識がそれなりにあるとないとでは大違いで、まあ、歴史映画ってのは概してそうですが、この映画の場合、扱っているテーマが現代にそのまま通じているものでもあるので、尚更そういう感が強くなる。「遠い昔の、知らない世界の人々のモノガタリ」ではなく、確実に「現在の世界と繋がった世界、繋がった人々のモノガタリ」なんですな。
 で、前に発売された「二枚組<特別版>」ってDVDには、特典ディスクにそこいらへんを絡めたドキュメンタリー番組が入っていて、これがそれなりに鑑賞の助けになった。ウチの相棒は、劇場で一緒に見たときは「面白いけど、正直ちょっとピンとこない部分あり」ってな反応だったけど、「二枚組<特別版>」を買って、特典ディスクを先に見て、それから改めて再び本編を見たら「すごい、感動倍増!」ってな反応になったんで。
 で、今回の「ディレクターズ・カット版」DVDですが、北米盤には、日本盤にはない特典ディスクが二枚ついているようです。どうやらこれはメイキングらしく、歴史背景の開設があるかどうかは判りませんが、内容はどうあれ、好きな映画だと特典映像も見たくなるのがファンの常(笑)。削られてしまったのは、やっぱり残念。
 かと思えば、前の「二枚組<特別版>」には、日本盤オリジナル特典とかで、オーランド・ブルーム来日写真集なる小冊子が付いていたんですが、これがまた「……(苦笑)」ってな感じでねぇ(笑)。来日記者会見とかのプレス用のスナップショットを集めただけのシロモノで、工夫もへったくれもありゃしない内容だった(笑)。『トロイ』のときの、オリジナル・メモパッドとかの方が、実用的なだけまだマシだったかも(笑)。
 つくづく、日本盤DVDは不幸な映画です。
 ただまあ、歴史背景云々は、『キングダム・オブ・ヘブン 公式完全ガイド』って本がなかなか好著なので、そっちで補完する手もアリ。
 まあ、そんなこんなはありますけど、だからって映画の品質に変化があるわけじゃないし、私は劇場公開版も「その年に見た映画のベスト1」でしたが、今回のディレクターズ・カット版で、もう「エバーグリーンの名作!」に昇格。……あ、でもこれ、シビラ役のエヴァ・グリーンと紛らわしいな(笑)。素直に「歴史に残る傑作!」にした方が良かったか(笑)。
『グラディエーター』で史劇ブームの再来の口火をきった監督が、そのブームの終わり(……史劇好きとしては認めたくないけど、終わりっぽいよね、こーゆー大作ブーム)に、これだけの作品を再びモノにしたのは、改めてスゴイ。
 さて、今年も何か面白い史劇映画は見られるかな。
 とりあえず、フランク・ミラーの『300』は、モノガタリは「スパルタ vs ペルシャ」のテルモピュライの戦い、主演は筋肉増量半裸ヒゲつきのジェラルド・バトラー、他にも裸のマッチョがウジャウジャ、しかも血まみれ、監督はザック・スナイダーってだけで、もうガチで楽しみにしてるんだが……ちゃんと公開してくれるんでしょうね?
 『キングダム・オブ・ヘブン』ディレクターズカット版DVD(amazon.co.jp)

サイトの引っ越しとか改装とか

 本家サイトのサーバを引っ越しました。
 これに際して、コンテンツを全て再アップロードしなきゃならないんで、ちょうどいい機会だと思って、前々からしたかったサイトの改装もすることにしました。
 
 とはいえ、大々的な改装というわけでもなく、サイト開設当時の考え不足で、コンテンツの増加と共にゴチャゴチャになってしまった階層構造を、もうちょいスッキリと整理したいというのと、今まで文字の大小や色はfontタグに、レイアウトはtableタグに頼っていたんですが、それらをcssによるコントロールに変えたい、という二点がメイン。
 そんなわけでブラウザで見る分には、大して変わっていないように見えると思いますが(笑)。
 残念ながらスキル不足で、tableタグの完全排除はできませんでしたが、表組み以外のシンプルなレイアウトに関しては、だいたいcssでのコントロールに変更できました。
 fontタグは、ほぼ完全に排除完了。書体や大きさをcssでの一括管理に切り替えたので、ブラウザごとの見た目はより統一されたかと思うんですが、環境によっては、前より文字が小さくなって見づらくなったと感じられる方もおられるかも。ここは思案のしどころだったんですが、それは個々のブラウザの文字サイズの変更で対応していただくことにしました。
 で、cssを導入したので、全てのHTMLファイルをそれにあわせて修正しなきゃならず、また階層構造に手を加えたので、あちこちリンクも修正しなきゃならない。ところが、何しろファイル数が1000以上あるし、私はサイトをテキスト・エディタでhtmlをチマチマ手打ちしていく……とゆーやり方で作ってるもんで、この作業がえらい厄介でした(笑)。もう、この厄介さゆえに、改装に手を付けていなかったくらいで(笑)。
 でもまあ、私が使っているエディタJeditには、マルチファイル対応の検索置換機能があるから、共通した変更点は、それで一気にできました。ただ、全てのファイルを全く同じように記述しているわけでもないので、置換できなかったり、置換したら逆にヘンなことになっちゃったりと、やっぱりチマチマと手修正が必須(笑)。
 とりあえず、全体の80%ほど修正したところで、アップロードすることにしました。まだ改築中のコンテンツも残っていますが、おいおいやっていくことにします。

お正月に良く聴いたCDあれこれ

Godowski『ジャワ組曲』レオポルド・ゴドフスキー
 ゴドフスキーってのは、ピアノの超絶技巧練習曲とかで有名な人らしいんですが、寡聞にしてそっちのことは良く知りません。検索してみると、何だかクラシックの中では、ちょっとキワモノっぽい扱いのようではありますが、何となくスゴそうな人ではあります。で、これはそんなゴドフスキーさんがインドネシア旅行に行った際の印象を、1920年代にピアノ組曲として作曲したものらしいです。
 聴く前は、ガムランとかをピアノで再現するようなヤツかしらんとか想像してたんですが(ホラ、何てったって超絶技巧だし)、いざ聴いてみるとフツーにキレイで聴きやすい、エキゾチックなピアノ小曲集でした。一曲目の「ガムラン」からして、いかにも西欧文化から見た東洋って感じのフレーズが頻出して、エキゾチカ好きにはかなりタマランものがあります。
 民族音楽的なアプローチを期待すると、わりと雰囲気だけという感じなので裏切られるとは思いますが(ピアノ版ガムランとかだったら、ジョン・ケージの「バッカナーレ」とかの方がオススメ)、覚えやすくキャッチーでエキゾチックなメロディーは、充分に美しくシンプルな力強さがあります。良く聴くと装飾音とかが複雑なんですが、フツーに聴いているぶんには実に流麗で、そんなヤヤコシサは微塵も感じさせないってのも、個人的には好感度大。
 そんなこんなで、自分のルーツとは直接縁がない観光音楽的な民俗楽派みたいな……って、よーワカラン説明ですが(笑)、そんな味わいがあるので、エキゾチカ好きや、お堅いことは気にしない国民楽派や民族楽派好きにオススメ。インドネシア人女性ピアニスト、エスター・ブディアルジョの演奏も、パキッと立った音の粒が気持ちいし、表現力もありながら過度に情緒に流れることもなく、個人的に好感度大。
“ジャワ組曲” ゴドフスキー (amazon.co.jp)
Still『交響曲第1番 アフロ=アメリカン/交響詩 アフリカ、他』ウィリアム・グラント・スティル
 スティルという人は、アメリカのクラシック畑において、黒人の作曲家や指揮者としてパイオニア的な存在の人らしいです。生没年は1895〜1978年ですが、自らのルーツであるアフロ=アメリカン文化の要素を、ロマン派的なクラシック音楽に組み込んだような、いわば遅れてきた民族楽派ってな感じでしょうか。
 全体の印象としては、楽曲はあくまで平明で美しく、それがシンプルな力強さになってエモーションを揺すぶられます。特に、冒頭に収録されている「イン・メモリアム〜民主主義のために亡くなった有色人種の兵士たちへ」なんて、黒人霊歌的な哀切さと軍楽的な力強さとクラシック的な雄大さや繊細さが合体していて、聴いていて思わず泣きそうになったほど。これ、すっげーオススメ。
 メインの「交響曲第1番 アフロ=アメリカン」も、ブルーズっぽいキャッチーな哀愁メロディーの第1楽章、それがよりメロウになる第2楽章、クラシックだけどミュージカルのレビューもそこのけの陽気でダンサブルな第3楽章、前述の「イン・メモリアム」にも通じる哀切な雄大さで始まりパッショネイトでドラマチックに幕を降ろす第4楽章まで、楽しさも感動もテンコモリ。これまた激しくオススメ。
 そういうわけで、ロマン派や民族楽派好きとか、ガーシュウィン好きとかならオススメ。あと、映画音楽好きにもオススメなので、クラシックは聴かないけど映画音楽は好きで、最近だとジェームス・ホーナーとかハンス・ジマーとかが好きだという方も、だまされたと思って一度トライしてみては?
“交響曲第1番 アフロ=アメリカン” スティル (amazon.co.jp)
Yellowriver『ピアノ協奏曲 黄河、他』殷承宗、他
 これは有名ですよね。文化大革命のときに西洋音楽が禁止され、中国のクラシック音楽家たち総動員で制作された、政治的意図が明確な中華国民音楽。
 ガキの頃、NHKとかで中国のオーケストラの来日演奏の放送なんかがあると、よくこの曲が演奏されていたのを覚えています。クラシック的には完全にキワモノ扱いで、じっさい私が買ったCDの帯(NAXOS盤)の紹介も、「テンションの高いオーケストラによる導入に続き、モーレツな勢いで炸裂するピアノ・ソロによる炎の大アルペジオ、さらには絵に描いたような『いかにも中国風』の旋律の堂々と登場(中略)強烈・濃厚な中華ロマンは、そのあまりのわかりやすさゆえに聴くものをして赤面させるほど」ってな具合で、完全にギャグ扱い(笑)。だから、前述のテレビ放送を見た私が「この曲、好き」とか言うと、真っ当なクラシック好きなウチの父なんか、イヤ〜な顔をしたもんです(笑)。
 でも、この「ピアノ協奏曲 黄河」って、そういう「判りやすさ」が最大の魅力だと思います。映画音楽でもエキゾチカでも何でも好きな人なら、クラシック的にはキワモノでも、割とフツーに聴ける楽しい曲だと思います。もう、中国製スペクタクル映画を見ている気分になれます。
 加えてこのCDは、同時収録で中国のピアノ曲がいっぱい入っていまして、これがまた何とも愛らしい佳品揃い。例えば「月を追う色とりどりの雲」って曲は、高峰三枝子の「南の花嫁さん」の原曲である中国の民謡をクラシック風にアレンジしたもので、お馴染みの親しみやすく美しいメロディが、ヒラヒラと舞う蝶のごとく美しいアルペジオに飾られながら奏でられ、聴いていてウットリしちゃいます。同じく民謡をアレンジした「愉しいロソ」も、ピコピコ動き回る音の粒が、何だか子ネズミでも走り回っているようで、楽しいのなんのって。他にもモンゴル民謡をアレンジした小品集とか、どれもこれも心の琴線を擽るような、エキゾ懐かしいメロディの宝庫です。オリジナルものでも、「バレエ組曲 人魚」の一曲目のタイトルが「朝鮮にんじん」だったりすると、もうそれだけで何だか嬉しくなっちゃう(笑)。
 ってな具合で、この同時収録のピアノ小品だけでも一聴の価値あり。ゴドフスキーの「ジャワ組曲」同様にエキゾ好にはもちろん、服部良一や中華懐メロ好きにもオススメです。
“ピアノ協奏曲 黄河、他” 殷承宗、他 (amazon.co.jp)
Addiofratellocrudele『さらば美しき人』エンニオ・モリコーネ
 前にここでDVDを紹介した、ジュゼッペ・パトローニ・グリッフィ監督、シャーロット・ランプリング主演映画のサントラのリイシュー盤CDです。
 DVDの紹介時にも書きましたが、音楽は哀感を帯びた古楽風の美メロ。映画と併せるといささか饒舌に過ぎる感があったけれど、逆に単体の音楽としてはそれが強みでもあります。改めて音楽だけ聴いていると、やはりこの哀愁メロディーは良いなぁ。ハープシコードや木管で奏でられる美しい旋律、そこに控えめに寄り添って情感を盛り上げる美麗なストリングス、ときおり顔を出すスキャット(モリコーネだからエッダかな?)、ひたすらメロウで美しい。
 メロディーはキャッチーで全体の雰囲気が古楽風という点では、ニーノ・ロータの『ロミオとジュリエット』にも通じるものがありますね。あっちの方がよりスウィートですけど、全体を通して一種のポップ感や歌謡感があるあたりは似ています。ゴスなミサ風の曲まで、そこはかとないポップ感が漂っているのも、まあご愛敬(笑)。
 前にここで紹介した『ヘラクレス/ヘラクレスの逆襲』と同じDIGITMOVIESからの復刻なので、ブックレットには各国版のポスター(日本のもありました)やロビーカード、スチル写真等が掲載。プロモーション用スチルは、やっぱヌード・シーンが多いのね。ランプリングの乳首もオリヴァー・トビアスの美尻もバッチリ載ってます(笑)。
 DIGITMOVIESのサイトを見ると、昨年暮れの発売にもかかわらず、既に在庫が稀少のようなので、欲しい方はお早めにどうぞ。
“さらば美しき人” モリコーネ (amazon.co.jp)
『さらば美しき人』DVD (amazon.co.jp)

年末進行とか『トランスポーター2』とか

 年末進行、無事終了。今年の仕事、全て完了。
 ……とはいえつい数日前に、年明け早々にラフ出しのお仕事が一件入ったので、寝正月ってわけにはいかなさそうですが(笑)。
 さて、昨日は仕事あけで久々に家の外に出た(笑)ので、レンタルビデオ屋さんに寄ってみましたところ、『トランスポーター2』が「準新作」落ちしてたので、さっそく借りて相棒と一緒に鑑賞。
 で、相棒との会話が以下のごとく。
 まず、映画が始まる前。
相「『トランスポーター』って、あれだっけ、最初にビーチでパーティ中に、一族郎党皆殺しにされちゃうヤツ?」
私「ちゃうちゃう、それは『パニッシャー』」
 そして、タイトルバックのあたり。
相「ああ、あれか、ボロいアパートに、デブやピアス男と一緒に住むヤツ」
私「それは『パニッシャー』」
 そして、主人公が男の子を迎えに行って、車に乗せたあたり。
相「親子かな、あれ、でもこの男の奥さんと子供は、前作で殺されちゃってるよね?」
私「それは『パニッシャー』」
 う〜ん、確かに見た時期は近いような気もするけど、混同するほど似てるか? 『トランスポーター』と『パニッシャー』(笑)。
 いちおう「トラボルタと『マルホランド・ドライブ』の女が悪役だったのが『パニッシャー』で、平幹次郎みたいな顔した、すっげ〜変テコな髪型の東洋人が悪役だったのが『トランスポーター』」と説明してみました。
 まあ、「ヒロインがレベッカ・ローミン・ステイモス(あ、今はステイモスは取れたんだっけ?)が『パニッシャー』で、東洋人がヒロインなのが『トランスポーター』」でもいいんだけど、うちの相棒は、なぜかレベッカ・ローミンとケイト・ベッキンセールがゴッチャになる奇癖の持ち主なので、この説明だと更に事態が悪化しそう(笑)。
 ちなみに『パニッシャー』、個人的には大好きな一本でゴザイマス。
 で、この説明で納得してくれたのかどうかはともかく、以降の会話では『パニッシャー』の名は出ず、ロシア人科学者を見て、
相「あ、こいつ、また出てるよ」
私「誰だっけ?」
相「ほら、『フロム・ヘル』の御者」
私「あ、そーかそーか」
 とか、男の子の母親を見て
私「何か、キャメロン・ディアスが値崩れしたみたいな女じゃない?」
相「自分は一瞬、梅宮アンナに似てると思ったけど、よく見たらそーでもなかった」
 とか、まあ他愛のない無害な会話が続きました(笑)。
 で、『トランスポーター2』、肝心の映画の中身はどうだったかというと……う〜ん、前作の方が面白かったね(笑)。
 ジェイソン・ステイサムの脱ぎ場が減ってるとゆー欠点(笑)を抜きにしても、全体的に大味だったので、ちと残念。