投稿者「Gengoroh Tagame」のアーカイブ

フランスでの企画展 “Marins & Soldats” とか

 今日からパリのArtMenParisギャラリーで、企画展 "Marins & Soldats" がスタート。水兵と兵士というテーマで、ドローイングや写真が展示されます。
 展示品の幾つかは、この間見せて貰いましたが、上のDM(クリックするとデカくなります)にも使われている作家のドローイングは、ちょいとコクトー風でなかなか魅力的でした。写真も、野郎野郎したヴィンテージものとか、特にヌードとかではないのに、でも男の色気があってセクシーだったり。あと確か、パトリックが撮った、無名時代のジャン=クロード・ヴァン・ダムが、水夫に扮しているポートレイトなんてのも展示されるはずです。
 で、それに混じって、先日ここで書いた、「ドラゴンと闘う聖ゲオルギウスのイメージで、HIV/AIDSドラゴンと闘うキャプテン・ベアーの姿を、浮世絵調で」っつー私の新作も展示販売されます。抗HIV/AIDSキャンペーンの一環なので、収益の3分の1は寄付。
 私自身は見に行けないのが残念なんですが、どなたか機会のある方がいらっしゃいましたら、お立ち寄り下さると嬉しいです。

ゴードン・スコット追悼

 去る4月30日、ターザン映画やソード&サンダル映画でお馴染みの、ゴードン・スコットが亡くなりました。このブログでも何度か書きましたが、個人的に好きな俳優さんでした。享年80歳。合掌。
 ということで、追悼を兼ねて現在入手可能なゴードン・スコット主演映画のDVDを並べてみました。残念ながら日本盤はありませんが……。
“Tarzan and the Trappers” (1958)
Gordon_tarzanGordon_tarzan_set
 ターザン役者として有名なスコットだけど、DVD化されているのは、おそらくまだこの一作だけ。日本未公開らしく、邦題も見つかりませんでした。
 写真左はバスター・クラブ主演の『蛮勇タルザン』”Tarzan the Fearlee” (1933) とのカップリングのアメリカ盤。
 右は、同じくバスター・クラブ版と、エルモ・リンカーン主演の『ターザン』”Tarzan of the Apes” (1918)、ハーマン・ブリックス(ブルース・ベネット)主演の『鉄腕ターザン』”Tarzan and the Green Goddess” (1938)(クリフハンガー・シリアル『ターザンの新冒険』”New Adventures of Tarzan” (1935) の再編集版)、グレン・モリス主演の『大ターザン』”Tarzan’s Revenge” (1938) がカップリングされた二枚組。アメリカ盤。
 画質はどれも「古かろう、安かろう、悪かろう」の、似たり寄ったりです。
 因みに、エルモ・リンカーンのやつとグレン・モリスのやつは、日本盤DVDも出てます。特にグレン・モリスの『大ターザン』は380円と安価なので、ターザン好きならぜひゲットしておきたいところ。(ここで買えます)
『逆襲!大平原』”Romolo e Remo” (1961)
Rokulus_et_remus_1
 スティーヴ・リーヴスと共演した、ローマ建国神話ネタのスペクタクル映画、フランス盤。前にここで紹介しました。DVDは、ドイツ盤とスペイン盤も出ていますが、持っていないので内容は未確認。
“Maciste alla corte del Gran Khan” (1961)
Samson7miracles
 これもここで紹介済み。「マチステ中国に行く」といったキワモノ系ネタにも関わらず、けっこう見応えのある良作。アメリカ盤。
“Il Gladiatore di Roma” (1962)
Il_gladiatore_di_roma_1
 これまたここで紹介済み。責め場好きなら、これがマスト。イタリア盤。
“Goliath e la schiava ribelle” (1963)
Gordon_goliath
 アレクサンダー大王に協力して、ペルシャの暴君を滅ぼす冒険活劇。スコット君自身の脱ぎ場や責め場はありませんが、筋肉美は黒人ボディービルダーのサージ・ヌブレットが見せてくれます。あと、共演のミンモ・パルマーラが、普段はまったくイケない私ですが、この映画だとヒゲ&胸毛&露出度高めの衣装というトリプルコンボで、かなりセクシーでイケてます。ジョルジュ・マルシャル主演のソード&サンダル映画とのカップリング。ドイツ盤。ノートリミングで画質も極めて良好。
“Ercole contro Molock” (1963)
Gordon_moloch
 邪教の生贄の美女を救い、暴君を倒して民衆を解放する系の、アクション・スペクタクル。ボンデージはあるけど、責めと脱ぎはなし。犬みたいな鉄仮面のモロク神と、髪を振り乱して太鼓を叩く半裸の美人巫女集団絡みのシーンが、サイケなホラー・テイストでちょっと面白いです。ドイツ盤。ノートリミングだけど画質はイマイチ。
“Il Colosso di Roma” (1964)
Gordon_spartacusGordon_rome
 ローマもの。ローマ軍人スタイルのスコット君、なかなかコスチュームが決まってカッコイイです。ビリビリに破けたチュニック&血まみれで、岩山の丸木橋を渡るシーンがセクシー。炎の中に自ら手を差し入れて苦痛に耐える、なんてシーンもあり。脱ぎ場はなし。左がドイツ盤、右がアメリカ盤。
 アメリカ盤はワイドスクリーン・エディションと謳っていますが、これは一度テレビサイズにトリミングされたものを、更に上下にマスクをかけたインチキワイド。画質も、マスターは8ミリですかってなくらいのザッラザラ。リチャード・ハリソンのグラディエーター映画とのカップリング盤。
 ドイツ盤は、オマケは何もないけれど、ノートリミングで画質も佳良。
“Coriolano: eroe senza patria” (1964)
Gordon_gladiatoren
 ローマもの。ジャケはグラディエーターものみたいですが、こんなシーンはないし、剣闘士も出てきません(笑)。あ、でもスコット君がチュニックをはだけて、酷たらしい古傷を見せるシーンがあったから、もしかしたら元剣闘士の話なのかな。ドイツ盤。ノートリミング、画質はまあまあ。
“Hercules and the Princess of Troy” (1965)
Gordon_troy_mainGordon_troy
 テレビ映画のヘラクレスもの。海の怪獣と闘います。チープだけど、モンスター好きなら楽しめるかも。左がゴードン・ミッチェルの “Atlas in the Land of Cyclops” と、リチャード・ハリソンの “I Giganti di Roma” とのカップリング盤。右がゴードン・ミッチェルの “The Giant of Metropolis” とのカップリング盤。どちらもアメリカ盤。
 因みに “The Giant of Metropolis” は、ソード&サンダル meets Sci-Fi の果てしなく安っちい怪作なんですが、キワモノ好きならオススメの逸品。責め場も、怪光線(……に見立てた、ただのスポットライト)とか、ハイテク電撃棒(……に見立てた、木の枝みたいなただの杖)とか、毛むくじゃら侏儒猿人軍団に噛みつかれるとか、見どころ(?)いっぱいです。
その他、ボックスセット系。
Gordon_adventure
 ”Tarzan and the Trappers” 収録。他の収録作は、ハーマン・ブリックス版とグレン・モリス版のターザンものと、スティーヴ・リーヴス、レジ・パーク、アラン・スティール、ダン・ヴァディス、ロッド・テイラー、ピーター・ラパス、カーク・モリスのソード&サンダル映画。三枚組、アメリカ盤。画質はボロボロ。
Gordon_herculesbox
 ”Ercole contro Molock” 収録。その他に、スティーヴ・リーヴス、マーク・フォレスト、ミッキー・ハージティ、ダン・ヴァディスのソード&サンダル映画が7本収録された4枚組。アメリカ盤。トリミング版ですが画質は佳良。
Warriors_1
 ここで紹介済み。
 オマケの珍盤。
Gordon_white
 これはスティーヴ・リーヴスの『怪傑白魔』のDVDなんだけど、なぜかジャケ写がゴードン・スコットっつーシロモノ(笑)。リーヴス君は遠慮がちに、下の方に小さく横たわってます(笑)。

インタビューとか

 All Aboutにインタビュー記事が掲載されました。
ラブカル系Junchanの「かるなび」
 インタビュアーはJunchan。彼自身でも書いていますが、元バディの編集部ということで、過去にもあちこちで顔を会わす機会はあり、そのたびに挨拶とかはしていたんだけど、長い時間顔を付き合わせて喋ったのは、今回が初めて。以前から、何となく「真面目そうな人だな〜」なんて思っていましたが、ゆっくりお話ししてみると、やはり物事に真っ直ぐ向き合うタイプの方という印象でした。
 記事の方は、ちょいとヨイショされちゃって恥ずかしい気もするんですが、よろしかったら上のリンク先でお読み下さいませ。
 そうそう、記事の前振りでJunchanに「デザイナーのW&LT(ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク)を彷彿とさせ……」と書かれたんですが、これ、ちょっと前にも児雷也画伯から同じこと言われました。その時には誰だか判らなかったのでググってみたんだけど、う〜ん、私の外見って、こんなに怪しいかしらん……。(参照
 でも、ちょっと前にも三軒茶屋でホームレスに間違えられたり、新宿では警察官に職質&身体検査されたり、先日の渡仏の際にも、成田空港でチェックインカウンターの日本人女性スタッフに、何故か英語で話しかけられたりしたんで、おそらく自分で認識している以上にウサンクサイ外見なんでしょうね、きっと。まぁ、怪しい人は好きなので、正直けっこう嬉しいんだけどさ(笑)。
 しかし、実家に帰った際に、母の買い物に付き合って車の助手席に乗っていたら、後日近所で「○○さんの奥さんが、助手席に変な男を乗せてドライブしてた」なんて噂が立っちゃって、これはさすがに気の毒でした。因みにそれ以来母は、私と一緒に外出する際はデパートの店員とかに、聞かれてもいないのに自分から「これ、こんなですけど(どんなだよ)私の息子ですから!」と説明するようになりました(笑)。

何だかいろいろありました

 さきほど、絵を一点描き上げました。個展をした(あ、会期は今月末までだから、まだやってるのか)パリのギャラリーの依頼による、注文制作の絵です。
 オーダー内容は、「ドラゴンと闘う聖ゲオルギウスのイメージで、HIV/AIDSドラゴンと闘うキャプテン・ベアーの姿を、浮世絵調で」っつー、けっこうワケワカメなものだったんですが、ルーベンスの絵をベースイメージにして、そこに北斎や芳年をミクスチャーしてみたら、けっこうスラスラと楽しく描けました。
 描き上がった絵は、限定生産のエスタンプになって、来月10日頃から始まるギャラリーの企画展で、展示販売される予定です。流石に今回は渡仏はしませんが、サイン入れとナンバリングはしなきゃならない。DHLか何かを使って、刷り上がったものを日本に送ってもらい、サインとナンバーを入れて、アーティスト・プルーフを手元に置いて、残りをフランスに送り返す……ってな、ちょいと面倒なやりとりです。
 今回は完全な企画モノで、ゲイものだけどエロ抜き、コンセプト重視なのにコマーシャル・マーケット向けではないという、過去にやったことのないタイプの仕事。ちょいと戸惑いもありましたが、未体験だったぶん、新鮮な気持ちで絵を描けたような気もします。
 個展用に描いた「七つの大罪」連作同様に、日本での発表予定がないのは残念ですが、ま、そのうちどこかでお見せする機会もあるでしょう。
 どーでもいいことですが、パリ滞在中にオリヴィエのマシンガン・トークには、だいぶ慣れたはずだったんだけど、やはりブランクを挟んで、しかも国際電話越しの会話だと、そんな慣れなんてすっかりすっ飛んで、またアタフタ状態に逆戻りです(笑)。

 さて、これと関連したイベントで、六月の頭にパリで開かれるParisBearsなるベア・イベントにも、ちょっくら関与してます。まあ、関与っつーか、イベントのキー・ヴィジュアルに絵を提供した……ってな程度ですけど。
 こっちは旧作の流用。パリの個展にも出品したもので、だいぶ昔に『薔薇族』で描いた絡み絵の一部分。デザイン処理の関係なんでしょうね、画像の天地が90度回転していて、しかも左右反転されている。ひぃ、デッサンが……(笑)。どんな感じかは、ParisBears のサイトで見られます。
 このイベント、フランスのみならずヨーロッパ近郊諸国も集客対象らしく、去年だか一昨年だかに開催されたBarcelonaBearsのときは、かなり大規模に盛り上がったそうな。この時期に渡欧予定のある方、または欧州在住の方、よろしかったら遊びに行ってみては?
 私も行きたいけど、経済的にも時間的にも、さすがにそうそう渡航ばっかしてられないからなぁ。

 フランス絡みだと、ちょうど先週、ジャーナリストのアニエス・ジアールが、新しい本の取材のために来日したので、新宿で会ってゴハン食べました。
 でも、会話がフランス語になると、完全にオイテケボリ状態なので、うむむ、こうフランス絡みのあれこれが多いと、少しはフランス語も勉強しなきゃいけないかしらん。因みに私、先日のフランス行きで最初に覚えたフランス語は「ラディシォン・シルブプレ!(お勘定お願いしま〜す!)」というヤツでした(笑)。
 アニエスの来日に伴って、ちょいと彼女から頼まれごともされまして、そのために動いたり人を紹介したりもしました。これがきっかけで、また何か面白いことに繋がるといいな〜と思います。逆に、私のほうもアニエスから面白い方を紹介して貰ったので、これまた何か新しいことに繋がるかも……と、ちょっとワクワクしてます。

 更にこれらとは別件で、先週から今週にかけて、複数の話がドドドッと動き出しました。ほぼ決定したものから、まだまだ先が遠そうなものまで様々ですが、確定したものから順次発表できると思います。まぁ、全部ポシャっちゃって、発表することが何もなくなった……なんてことも、全くないとは言い切れませんが(笑)。
 そんなこんなで、現状は特に忙しいってほどでもないのに、気持ちだけが何だか忙しい気分になった二週間でした。

画集 “The Art of Gengoroh Tagame”、タコシェさんで取り扱い開始

Aogt 先月、フランスのH&Oから出版された私の画集、"The Art of Gengoroh Tagame" ですが、中野の書店タコシェさんで輸入販売していただけることになりました。
 本のサイズは、横21cm×縦26cm(A4の縦が少し短くなった大きさ)、フルカラー48ページ、ソフトカバー。英文と仏文による解説付き。タコシェさんでの販売価格は2,940円。
 収録作品は、2000年〜2005年に制作した作品の中から、フランス側のスタッフがセレクトしたもの。画風や描法で「マンガ・スタイル」「ウェスタン・スタイル」「オリエンタル・スタイル」の三章構成になっています。マンガ・スタイルは文字通りマンガ風、ウェスタンはPainterによるデジタル油彩画風、オリエンタルは浮世絵風の絵が、それぞれ収録されています。
 中野のタコシェさんの店頭でも、インターネットのオンラインショップでも、どちらでも販売しています。
 店舗の場所など、タコシェさんのホームページはこちら
 通販など、タコシェ・オンラインショップの「田亀源五郎ページ」はこちら
 思ったより早く、日本でも入手できるようになったので、実に嬉しい限りです。
 欲しいという方、どうぞご購入はお早めに!
 

アジアン・クイア・フィルム&ビデオ・フェスティバル・イン・ジャパン2007のご案内

 今度の土曜日、4/14(金)から4/20(金)までの一週間、下北沢で、第一回アジアン・クイア映画祭が開催されます。日本、韓国、台湾、香港、中国、タイ、イスラエル、インドネシア、フィリピンなど、12か国から集められたクイア映画が29作品上映。
 これらの上映作品、特に短編作品は、ソフト化される機会も少ないと思うので、それらをまとめて鑑賞できるのは、またとないチャンスです。また、映画祭としても第一回ということなので、応援の意味でも、ぜひ一人でも多く見に行って欲しいです。
 事前に見た作品がないので(前にもご案内はいただいていたんですが、ちょうどフランス行き&その反動の締め切りラッシュで、何もできない時期だったので)、オススメ作品とかは言えないんですけど、そこいらへんは映画祭のサイトで内容をチェックして、自分なりに狙いをつけてみてください。個人的には、イスラエルの作品やアニメーションなどが上映される「アジアン・ボーイズ短編集2」が気になる。
 人気作には、そろそろチケット完売のものもある様子です。予約はお早めに。
 映画祭の公式サイトはこちら

ちょっと宣伝、単行本「田亀源五郎[禁断]作品集」発売です

kindan

 ず〜っと出したかった待望の作品集が、ポット出版から発売されました。
 今まで諸般の事情で単行本化できずにいた、私の作品の中でもコアでディープなテイストの中短編マンガを収録。収録作は、古くは1992年の『さぶ』掲載作から、新しいところで2004年の『Super SM-Z』掲載作までを含む、「闘技場〜アリーナ」「瓜盗人」「KRANKE」「猛き血潮 中里和馬の場合」「猛き血潮 坂田彦造の場合」「NIGHTMARE」「ZENITH」「だるま憲兵」「衣川異聞」の全九編。
 もし、私に作家性というものがあるとすれば、この本はかなり色濃くそれが出ていると思います。そういう意味では、読み手を選ぶタイプの本かも知れません。そのぶん、お好きな方ならば深く愛していただけるような、そんな本になったと思います。
 そういう思い入れの深い本なので、造本や装丁にも凝ってみました。カバーを付けるかわりに、クラフト紙にスミ文字のみという、シンプルな外函入りです。でも、本体を出すとこんな感じに。
kindan_inside
 ポットさんの御協力を得て、私自身、長く手元に置いておきたい本を作ることができました。読者の方にも、数は少なくとも末永く愛していただければ本望です。
amazon.co.jpで購入

帰朝報告〜オマケ

 オマケ。チュニジアで撮った写真、幾つか。
 画像クリックで大きくなります。
Tunisiatunismedina
チュニスのメディナ(旧市街)
Tunisiasoussemedina
スースのメディナ
Tunisiasidibousaid
シディ・ブ・サイド
Tunisiacarthago
カルタゴのローマ人住居跡
Tunisiahercules
チュニス、バルドー博物館/酔っぱらって放尿するヘラクレスのブロンズ像
Tunisiagradiator
スース、考古学博物館/剣闘士のモザイク

帰朝報告〜日誌風(5)

帰朝報告、その6。
3月5日
 九時頃に目が覚める。今朝も足は痛くない、良かった。もう歳なので、一日遅れで来るかもと心配してたのだ(笑)。
 オリヴィエとランチの約束があったので、午前中に旅行代理店を探して、パリ滞在の後の寄り道用チケットを手配することにする。
 オリヴィエの情報をもとに、メトロに乗ってオペラへ。ところがオペラの駅が改装中で通過してしまい、一つ先のマドレーヌから徒歩で引き返す。
 教えてもらった代理店を探して、オペラ大通りを歩く。なかなか見つからず、かわりに、メガネのパリー・ミキのパリ店を発見(笑)。けっきょく、目当ての代理店を見つける前に、HISのパリ支店を見つけたので、ここで手配することにする。
 チュニスへの往復エア・チケットを調べる。ユーロ高もあって、予想していたより高い。日本で手配しておいた方が安かったかも、失敗だったなぁ。しかし、とりあえずチケットはゲット。宿泊は現地で探すことにして、往復の航空券のみ購入。
 ギャラリーに戻り、オリヴィエとランチ。自分一人だったら、怖くて絶対に入っていけないような、怪しげな路地の奥にある、モーリシャス料理の店へ。……あれ、マルティニーク料理だったかな? 自信がなくなってきた(笑)。
 陸稲に鶏や野菜の煮込みがかかった、カレーのような料理をいただく。インド料理から辛みを抜いたような味で、とても美味しい。食事をしながら、この個展が終わた後のプランや、今年のスケジュールなどについて話し合う。オリヴィエは、アイデアマン。次から次へとアイデアを聞かされるが、さて、その中の幾つが実現するやら。
 ランチの後、オリヴィエは来客の予定があるので別れる。
 オリヴィエから預かったお土産を、沢辺さんたちに渡したいので、電話してみる。書店で営業の最中だった。後で聞いたら、パリ市内の二件の書店で、『日本のゲイ・エロティック・アート』シリーズ100冊、『田亀源五郎【禁断】作品集』20冊の受注がとれたらしい。
 因みに『日本のゲイ・エロティック・アート』に関しては、フランスでは実に好評でした。このシリーズを編纂する際、私の念頭には、「1.エロティック・アート本来の効果、つまりオカズとしての有用性」、「2.オカズ云々を離れたレベルでの、独立したタブローとしての評価」、「3.それらを記録し、分析的に俯瞰することによる、文化史的な意義」という、三段構えの構成を持たせるよう心掛けていました。フランスでの反応は、それらのいずれのレベルもきちんと踏まえた上で、きちんと高評価してくれる声が多いのが嬉しい。
 話がズレましたが、沢辺さんたちとはポンピドー近辺で待ち合わせて、パリ市庁舎近くのカフェでお茶。オリヴィエからのお土産を渡す。因みに中身は、薔薇のジャムと、「桜風味の煎茶」という奇っ怪なモノ。後者に関しては、オリヴィエも「ストレンジすぎるだろうか」と心配していたけど、私が無責任に「大丈夫、大丈夫、みんなストレンジなものが好きな人たちだから」と後押ししてしまった(笑)。
 沢辺さんたちは、明日の午前中に帰国するので、ここでお別れ。
 夕方から、フォト・セッションの予定が一件入っていたので、ギャラリーに戻る。
 カメラマンのアレックス・クレスタに紹介され、早速撮影開始。
 アレックスは、けっこう野郎系のポーズや表情をリクエストしてくる。ところが、身近な方はご存じだと思いますが、私の所作は、かなりフェミニンな方。言われるままに顔を顰めたり、ビデオスターみたいにハンクなポーズをとるものの、どーにも落ち着きが悪い(笑)。そうそう、頼まれてシャツを脱ぎ、上半身裸にもされましたが、きっと期待していたものと違っていたんでしょう、すぐまた着せられました(笑)。
 でも、アレックスはとてもチャーミングな人で、しかもかなりイイ男。カメラマンより、モデルにしたいくらい。撮影後、しばらく楽しく雑談し、お互いの連絡先を交換。
 フォト・セッションの後、画家のギー・トーマスがギャラリーに来る。
 丁寧なペンシル・ドローイングで、熊系のポートレイトを描くアーティストで、日本で言うと、ちょっとakiくんみたいな作風の人。お土産に、サンタ姿の熊オヤジを描いたドローイングのプリントを貰いました。
 概してパリで会ったアーティストたちは、絵に対する自分の思想や哲学をはっきり持っていた。変に謙遜してみたり、斜に構えてみたりといった、不要なポーズがない。創作行為に対して真剣に向かい合っている感じで、会話していて手応えがあります。
 彼も例外ではなく、会話もかなりつっこんだ内容に。
 夜は、パトリックも呼んで三人で、このギャラリーでディナーを食べることになっていたので、オリヴィエがそのための買い出しに出かける。
 オリヴィエが戻ってくる前に、パトリックが到着。私に見せるために、自分が八〇年代に東京に行ったとき、新宿のカバリエで買ったという、三島剛の画集二種(第二書房の『若者』と、サン出版の『OTOKO』)と、矢頭保の写真集を持ってきてくれた。
 当然これらは私も持っていますが、一緒に見ながらアレコレ語り合っていると、ページの間に雑誌の切り抜きが挟まっていた。フランスのゲイ雑誌の切り抜きだったんですが、それが何と日本のゲイ・エロティック・アートを紹介している記事だったもんだから、私は大興奮。
 切り抜きは、”Gay Pied Hebdo” という雑誌の246号から。今から二〇年ほど前の記事だそうで、Didier Lestrade という記者が、三島剛、木村べん、矢頭保、長谷川サダオ、高蔵大介、林月光、内藤ルネ、武内条二らの作品を、図版入りで数頁に渡って紹介。過去、日本のゲイ・エロティック・アートが、フランスで紹介されていた事例を見るのは、これが初めて。
 やがてオリヴィエが戻ってきて、三人で食事。アート論から下ネタまで、さんざん喋って盛り上がり、深夜を過ぎた頃にお開き。
 オリヴィエとパトリックが帰り、私は就寝。
3月6日
 今日は、個展の設営を手伝ってくれたベルナールから、リュクサンブール美術館で翌日から始まる「ルネ・ラリック展」の、プレス向け内覧会に招待されている。
 朝の九時前、ギャラリーにオリヴィエが迎えにきてくれて、タクシーで美術館に向かう。お天気は、あいにくの小雨。
 美術館でベルナールが迎えてくれる。あいかわらず会話はないけれど、優しい笑顔で併設のカフェに案内してくれて、軽くコーヒーなどを勧めてくれる。パトリックも来ていた。
 一服した後、受け付けでプレス用のセット(カタログ、CD-R、DVDなど)を貰い、会場へ。
 来客は全て、招待された美術関係者だけという贅沢な環境で、ラリックの美しい宝飾品の数々や、ラリックの工房のスケッチ、時代背景を語る古写真や絵画などを見る。解説文は全てフランス語のみだが、オリヴィエやパトリックが意味を教えてくれる。箱根のラリック美術館からも、けっこうな数の作品が来ていた。
 展示をじっくり堪能し終わった頃、ベルナールが「カフェにシャンパンとかがあるから」と誘ってくれる。私は出口の売店を見たかったので、オリヴィエたちに先に行っていてもらい、カタログだのポストカードだのを物色。
 カフェに行くと、ちょっとしたパーティー会場のようになっていた。シャンパン、ワイン、コーヒー、(パトリックの解説によると)有名ブラッセリーの軽食、(やはりパトリックいわく)有名パティスリーのお菓子なんかが、食べ放題、飲み放題状態。試しにマカロンを一つつまんでみたら、これがすこぶる美味い。ついつい続けてパクパク。
 会場の人にオリヴィエが、私の個展のDMを配る。ここいらへんが面白いところで、アートに関して、これはファイン・アートだの、これはコマーシャル・アートだの、エロティック・アートだの、ポルノグラフィーだの、マンガだの、BDだの……といった、区分や敷居が全く感じられない。
 時に日本で、私の作品のフランスでの反応に関して、「アートとして評価された」的な意見を聞くが、おそらくそれは間違いだろう。アートであるなしなんて、たぶんどうでもいいことなのだ。良いと思うかどうか、それが全てのような気がする。ここのところ経験した私の驚き、例えば、大手新聞が作品を掲載したとか、マンガの批評の中にプルーストやロランの名前が出てきたとか、デヴィッド・リンチと同枠のテレビで紹介されたとか、そういったことは、そういったものと私の作品を分ける区分が枠が、そもそも存在していないからなのかも知れない。
 もっとも、帰国後に沢辺さんと話したときは、沢辺さんは私の説にはいささか懐疑的で、やはり層によっては枠は存在しているのではないか、とも言っていた。これに関しては、私もその可能性はあるとは思う。それぞれの消費層の中には、やはりジャンル的な枠の考え方はあるのかも知れない。しかし、とりあえず今回の滞在中に私が交流のあった、美術関係層やマスコミ関係層に関して言えば、やはり前述したリベラルな印象が強い。
 このパーティーには、私のオープニング・パーティに来てくれていた人も何人かいて、挨拶を交わす。それ以外にも、パリ市内のギャラリー・オーナーなどと雑談したり。
 一段落ついたところで、オリヴィエとパトリックと三人で会場を出る。
 小雨の中、メトロの駅に向かう。その途中、美術館から一緒になった知らない人に、道すがらの建物の窓を指さして、「あそこがマン・レイのアトリエだったんだよ」などと教えてもらう。
 オリヴィエは、これから来客の予定があるので、ここでいったんお別れ。
 パトリックはジムに行く予定だけど、まだ少し時間があるというので、それまでどこかでお喋りすることにする。「いいカフェがある」と、クリニャンクールまで連れていかれる。
 パトリックの言った「いいカフェ」の、何が「いい」のかは、カフェに着いたらすぐに判った。アラブ系の肉体労働者のたまり場のカフェなのだ。つまり「眺めがいい」ってこと(笑)。ガタイのいいヒゲ面の、ちょいと目つきの険しい男たちがたむろしてるのを見て、パトリックが「ゲンゴロー・ガイがいっぱいだ」と喜ぶ。まったく、ノンケ好きなんだから(笑)。
 パトリックには「ジムの時間になったら、私のことは気にしないで、適当に切り上げてね」と言ったのだが、「大丈夫」「いや、大丈夫」「もうちょっと話そう」「まだ大丈夫」の繰り返しで、けっきょく、最初は「二〇分くらい」と言っていたのが、小一時間ほども話し込んでしまう。
 ようやく重い腰をあげて、パトリックともお別れ。抱き合って別れを惜しむのも、パリの市街なら違和感なくできるのが良いところ。
 その後は、買い物か観光にでも行こうかと思っていたけど、雨がまだ降っているので、歩き回る気がしない。地下鉄一本で行ける屋根のあるショッピングセンター、フォーロム・デ・アールに行ってみることにする。
 ショッピングセンターで、本屋やCD屋、DVD屋などを物色。昔だったら、ここを先途といろいろ買いまくるところだけど、今はインターネットのおかげで、家にいながらにして海外通販が可能。けっきょく何も買わずに、ギャラリーに戻る。
 今夜は、オリヴィエの友人と、またギャラリーでディナーの予定。
 やがて、その友人二人が来たけれど、申し訳ないけれど名前を忘れてしまった。
 うち一人はクロアチア人、現在はスペインのファッション・ブランドで働いている人。パリコレのショーの演出のために、フランスに来ているところだそうな。オリヴィエとの関係は「掲示板で知り合った」ですと。……ナンパかい(笑)。
 この彼が、トラッシュなものが大好きで、オリヴィエのPCで、そーいったテイストのYouTube映像を、次から次へ見せてくれる。
 中でも最高なのが、ブルガリアで大人気だという、熊系ドラァグ・クイーン演歌歌手、Azis。ビデオ見て、私もイッパツで大ファンになった。この人はマジで好きなので、帰国したらDVD探さなきゃ。
 あと、ペルーのセクシー(?)テクノ民謡とか、クロアチアの超絶早弾き女性キーボード・プレイヤーとか。他にも、「アメリカン・アイドルで落選したオネエさん」とか「ミンクのコートを買って♪と歌うクロアチアのビッチ系セクシー歌手」とか、いろいろあったんだけど、名前を覚えていないので探せず。で、そういった数々を見せられ、五人集まってのオカマノリも手伝って、腹が痛くなるほど笑い転げる。
 かと思えば、前述の Azis の歌が「トルコ歌謡に似ている」という話から、思いがけなくオリヴィエと、ゼキ・ミュレン(トルコの美輪明宏みたいな歌手)やイブラヒム・タトリセス(トルコの熊系オジサン演歌歌手)の話で盛り上がったり。
 けっきょくお開きになったのは、夜中の一時過ぎ。私は、明日の午前中にチュニス行きの飛行機に乗るので、慌てて荷造り。
3月7日
 朝の八時、オリヴィエが来る。ギャラリーの鍵を返し、一緒にメトロの駅へ。
 オリヴィエは、空港行きのRERに乗り換えるガール・デュ・ノールまで、送ってくれる。駅のホームで、抱き合って両頬にチュッチュッと、お別れの挨拶。オリヴィエのマシンガン・トークは、私が乗った列車のドアが閉まるまで続いていた(笑)
 そんなこんなで、パリ滞在はここまで。
 このあと私は、チュニジアのあちこちを一週間ほど旅して、3月14日に日本に帰ったわけです。
 以上をもちまして、帰朝報告、全編の終了。
(終わり)

帰朝報告〜日誌風(4)

帰朝報告、その5。
3月4日
 サイン会当日。
 十時頃に目が覚める。幸い、足は痛くなっていない。良かった。
 夕方にオリヴィエとギャラリーで待ち合わせ、一緒にサイン会に行くことになっているので、それまで遊びに出かけることにする。
 カフェで、オムレツとカフェ・クレームでブランチ。一回一回の食事の量が多いので、一日二食でちょうどいい感じ。
 それから、ルーブル美術館に行ってみることにする。前に行ったことはあるけれど、それはピラミッドができる前だったので、どんな感じか見てみたかった。
 ルーブル到着。中庭にできたガラスのピラミッドを見て、つくづく感心。まず、こんな大胆なことを思い付いた、その自由な発想力自体がすごいし、それを実現した実行力もすごい。そして、いざ出来上がったものが、きちんと美しいというのが、一番すごい。伝統とモダンの、絶妙の調和。過去を大事にしつつ、そこに現代の息吹きも加えて、新しい美に生まれ変わらせていくという感覚に、心の底から感心。
 出かける前は、ちょっと中にも入ろうかと思ってたけど、入り口の長蛇の列を見て、それはやめにする。中庭の適当な場所に座って、のんびり池越しのピラミッドを眺める。
 しばしくつろいだ後、チュイルリー公園へ。ルーブル側から見ると、公園の樹木がまっすぐなパースを作り、その向こうにコンコルド広場のオベリスクが見え、更にその向こうに凱旋門が見える。一点透視法のお手本みたいな風景。そして視点を左にずらすと、エッフェル塔も見える。パリらしいモニュメントを三つ同時に見られて、とりあえず観光した気分になる。
 公園を散歩がてら、コンコルド広場に向かう。古代彫刻を模した石像があちこちにあるが、その上にいちいち鳩が1羽ずつとまっている。何だかユーモラスで面白く、写真を何枚か撮る。散歩したり、ベンチでくつろいだりしながら、ゆっくりと公園を通り抜けて、出口の側の本屋に入る。ボタニカル・アートのカードとかがキレイだったけど、けっきょく何も買わなかった。
 コンコルド広場からマドレーヌ寺院に向かい、そこからオペラ・ガルニエへ抜ける。途中のカフェで一服。
 気が付いたら四時近くだったので、ギャラリーに戻ることにする。
 オリヴィエと一緒に、サイン会のある書店 “BlueBookParis” に向かう。場所はポンピドーの近くなので、徒歩で移動。
 本屋についたら、もう行列が店の外まではみ出していた。ショーウィンドウに私の画集 “The Art of Gengoroh Tagame” と、同時発売の児雷也画伯の画集 “The Art of Jiraiya” が、仲良く並べてディスプレーされいていて、何だか嬉しくなる。
 一昨日のパーティーでも会った書店のスタッフ、メイディ・ハシェミが出迎えてくれる。アラブ系の顔に、人なつこい笑顔がカワイイ。沢辺さんたちも既に店に来ていて、中山さんが「あっちにいますから、何かあったら呼んでください」と言ってくれる。
 17:30、サイン会スタート。お客さんに、メモ用紙に名前を書いてもらい、それを見ながら本にサインしていく。片言の日本語で挨拶してくれる人あり、英語で話しかけてくれる人あり。ここいらへんは、日本でやるサイン会とあまり変わりなし。たまに、書いてもらったアルファベットが、私の目では判別できないこともあり、そんなときは横からメイディが助けてくれる。
 日本のサイン会と違うところは、ご夫婦名義……というか、自分とパートナーの名前を一緒に入れて欲しいというリクエストが多いこと。微笑ましいと思いながら、同時に、一冊ずつ買ってくれりゃ売り上げも上がるのに……とも思ってしまう(笑)。それともう一つ、自分で描いた絵をプレゼントしてくれるファンも何人かいて、これは日本では経験したことがないなぁ。
 自分の分と一緒に、友人に頼まれた分とか、友人にプレゼントする分を一緒に頼む人も多く、「誕生日プレゼント用のメッセージを入れてくれないか」というリクエストも数件。そんなときには、英語と一緒に日本語で「誕生日おめでとう!」と書いてあげる。
 サインした本は、やはり “The Art of Gengoroh Tagame” が多く、続いて “Gunji” や “Arena”、およびこれら三冊のコンボセット。ただ、中には日本語版の『嬲り者』や『PRIDE』持参の人もいて、珍しいところでは、同人誌『G-pro Party』を持ってきた人まで。オープニング・パーティにも来てくれた、在仏の均さんも、今や貴重な『獲物』他数冊持参で来てくれました。
 オープニング・パーティで取材され、昨夜の “Yes Sir!” でも会った例のインタビュアー氏とも再会。「昨夜は良く踊ってたね」と冷やかされる。
 変わったところでは、「この字を一緒に書いて欲しい」と、『戌』という漢字が印刷された名刺を出した人がいました。「これ、ドッグって意味だよ?」と確認すると、「自分のゾディアックがドッグなんだ」との答え。十二星座には犬はいないから、おそらく干支なんでしょうな。
 サインと一緒に、ちょっと絵を描いてくれというリクエストする方もいましたが、ギャラリーとの契約で、ドローイングを描くことは禁止。申し訳ないけれど、そう理由を言ってお断りする。
 漢字で「闇馬」と書かれたジャンパーを着ていた人がいたので、文字を指さして「ダークホースだね」と言ったら、「ダークホース・コミックのジャンパーなんだ」と裏地を見せてくれた。確かに裏地には、赤地に黒でアメコミのプリントが。で、その「闇馬」さんが、プレゼントだと言って茶色い紙袋をくれた。お礼を言って開けてみると、中に入っていたのは、前にもここで書いた、私が大ファンのマーク・ミン・チャンの画集。「えっ?」と思って名前を書いてもらったメモを見ると、この「闇馬」さんがアーティスト御本人。
 もうビックラこいて、思わず席から立ち上がって「大ファンなんです!」と握手。私が大喜びする様子を見て、横でメイディが「マークもここで原画展をしたことがあって、今回も僕が来るように連絡したんだ」と得意そう。並んでいるお客さんには申し訳なかったけど、手早く連絡先を交換して、一緒に記念撮影。
 そんなこんなで、二時間半ほど、ず〜っとサインしっぱなし。ミネラル・ウォーターのミニペットを用意して貰っていたんですが、スタート前に一口飲んだだけで、残りを飲めたのは一段落した後。
 列がなくなったので、今度は今日は来られなかったけど、書店にお取り置きを頼んだり通販を申し込んだ人の本にサインを入れる。その最中にも、新しい客がパラパラ来るので、そんなときは中断。
 取り置き分には、入れる名前を書いたメモが本に挟んであるんだけど、名前以外にも何か書いてあるものがある。メイディに「これは何?」と確認すると「バースデイ用メッセージ希望」とか「ドローイングのリクエストだけど、それは無理だから無視して」とかいう答えが。一番ウケたのは「あ……それは、代金まだ未払いってこと」ってヤツ。バーロー、うっかり一緒に書きこんじゃったらどーすんだよ(笑)。
 取り置き分が終わったところで、お店用の色紙を頼まれる。オリヴィエに目で確認すると、ドローイングOKの返事。サインと一緒にヒゲのオヤジの顔を描く。
 そろそろお開きにしようかと、改めて書店のスタッフたちに挨拶。メイディがお土産に、マーク・ミン・チャンの原画展のポスターをくれる。コートを着ていたら、また来客。そのサインを終えて、店から出て、待っていてくれた沢辺さんと「ゴハンどこで食べようか」とか話していたら、また来客。再び店に戻ってサインしてたら、メイディが「ホラホラ、早く行かないと一晩中サインする羽目になるよ」と笑ってた。
 オープニング・パーティでも会ったカメラマンの Kaseda さんも一緒に、みんなで近くのコルシカ料理屋に入る。しばらくして、アニエス・ジアールとそのパートナーが合流。注文とか通訳とか、Kaseda さんのフランス語が大活躍。
 沢辺さんも私も、アニエスが話してくれるフランスの出版界の様子に興味津々。アニエスは、沢辺さんのことを、てっきりゲイだと思っていたらしい。無理もない、私だってときどき、沢辺さんがノンケだってこと忘れちゃいます(笑)。因みに沢辺さん、パリ滞在中に二度ほど、田亀源五郎と間違えられたたしい(笑)。
 食事が終わり、店から出たところで、仕事あがりらしいメイディとバッタリ。「何でまだこんなとこにいるの!」と笑われる。
 アニエスたちと分かれて、歩いて帰る。ホテルに帰る前に、ちょっとギャラリーに寄って、熱いお茶でも飲んでいかないかと、沢辺さんたちを誘う。
 そんな感じで一服していたら、もう深夜近く。中山さんとみずきちゃんが、ソファで舟を漕ぎ始める。沢辺さんたちが帰り、私もバスを使って就寝。
(続く)