“Marketa Lazarová (マルケータ・ラザロヴァー)”

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“Marketa Lazarová” (1967) Frantisek Vlácil
(英盤DVDで鑑賞→amazon.co.uk

 1967年制作のチェコスロバキア映画。監督は前に見て感銘を受け、ここで感想を書いた”The Valley of the Bees (Údolí včel)”と同じフランチシェク・ヴラーチル。
 グラジスラフ・ヴァンチュラ(って知らない名前ですが)の同名小説を元に、中世の対立する部族や異なる宗教間での愛を描いた、叙事詩的内容の作品。1998年にチェコの映画関係者によって、20世紀チェコ映画のベスト1に選出。
 日本でも2006年の「チェコ映画回顧展1965-1994」等で上映があった模様です。(参考

 13世紀のチェコ。地方豪族の息子、ミコラーシュとアダムの兄弟は、支配階級の貴族一行を襲い、金品を強奪して、貴族の息子クリスチャンを捕虜にする。
 すると同じく地方豪族で、ミコラーシュたちとは対立関係にある長ラザルが、ミコラーシュの強奪に便乗して、ハイエナのように獲物をあさる。そこを兄弟に捕らえられたラザルは、娘マルケータの名をだして命乞いをする。
 ミコラーシュはラザルを見逃し、クリスチャンを自分の村に連れ帰る。ミコラーシュの父コズリクは、敵を皆殺しにしなかったことで息子を責める。一方でクリスチャンは、ミコラーシュの妹アレクサンドラと恋に落ちる。
 後日、ミコラーシュはラザルのもとを訪れ、支配階級の圧政に対抗するために同盟を持ちかける。しかしラザルはそれを拒否し、逆に彼を配下の手で袋叩きにする。ラザルの娘で、信心深く将来は修道院に入って神に仕えることを願っているマルケータは、父の振る舞いにショックを受ける。
 マルケータはミコラーシュに救いの手を差し伸べるが、彼はそれを拒否して帰って行く。やがて傷も癒えたミコラーシュは、報復としてアダムと共に郎党を率い、ラザルの館を襲い火を放ち、ラザルを門扉に釘で磔にし、マルケータを連れ去り、そして犯す。
 ミコラーシュの父コズリクは、息子がマルケータを連れ帰ったことを快く思わないが、ミコラーシュの母は、男たちの神をも畏れぬ狼のような心に、愛が人間らしい火を点すと預言する。
 息子を惑わした罰として、コズリクはマルケータに鉄釘のついた靴を履かせるよう命令するが、ミコラーシュはそれを拒否する。クリスチャンも共に異を唱え、アレクサンドラもクリスチャンを庇う。その結果、4人は鎖で村の外に鎖で繋がれてしまう。
 一方、支配階級側は軍勢を集め、コズリクの村を襲撃しようとしており、その一行にはクリスチャンの父も加わっていた。彼らは進軍中にアダムを捕らえ、それを人質にコズリクに降伏を迫るが、コズリクも人質としてクリスチャンを披露する。
 そして、隙を見て逃げ出したアダムが弓で射殺されたのをきっかけに、ついに戦いの火蓋が切って落とされ……といった内容で、この後もあれこれ事件が起こり、最終的には、ミコラーシュとマルケータの関係を軸に、悲劇的ではあるけれど救済の光も残る結末へと物語は進んでいきます。

 いや〜、これまた手強かった……。
 なんせ、そもそもの物語の背景に当たる勢力分布が複雑な上、更に作劇法が叙事を丁寧に説明してくれるタイプではない。
 断片的とも言えるエピソードや、フラッシュバック、セリフの一端といった効果を多用して、散りばめられたそれをつなぎ合わせると、ようやく全体像が見えてくるという作り。おかげでもう誰が何なのか、このシーンが何を意味しているのか、もう最初のうちは混乱し通しでした(笑)。
 で、半分まで見たところ(二部構成の作品です)で、もうギブアップ。DVDをいったん止めて、同梱のブックレット掲載の解説を読み、それでようやく全体像が把握できたので、改めて後編を鑑賞。
 すると、基本となるストーリーの骨子自体は、実はさほど複雑ではないことが判りましたが(それぞれのキャラクターの立ち位置や、勢力的な所属を理解して見れば、物語自体はオーソドックスとも言える叙事詩的な内容だった)、それでも頻出する宗教的&哲学的問答とかに、やっぱりノーミソがきりきり舞い(笑)。
 テーマとしてはおそらく、人間らしい感情や愛は、部族習慣や宗教のドグマを上回る強さがあるということだと思うんですけれど、ストーリー的な意味でもテーマ的な意味でも、多種多様なエピソードが混在していて、しかもそれがシャッフルされたかのように提示されるので、ホント手強いこと手強いこと(笑)。
 でも、難しいアレコレは置いといて、とりあえずシンプルな愛の物語という側面をピックアップしてストーリーを追うと、これはなかなか感動的な内容で、基本的には悲劇ではあるんですが、ラストの後味も良かった。

 というわけで、内容把握に関しては、どれだけ理解できたか心許なくはあるんですが、映像的にはもう圧巻。
 一見、エイゼンシュテインか黒澤明かという感じの、重厚で堂々たる史劇のようなんですが、そういったスタイルと同時に、アヴァンギャルドなカメラワークとか、鮮烈なイメージのフラッシュバックとか、前衛映画もかくやという映像が混じっている。
 そんな静と動、古典と前衛といった、対象的なイメージが入り乱れ、しかもそのどちらもが、ハッとするほど美しかったり圧倒的だったり。
 美術や衣装も、キリスト教的なものから異教的なものまで、目の御馳走いっぱい。伝統的な合唱を多用した音楽も素晴らしかった。
 また、マルケータの美しさを筆頭に、それぞれのキャラクターの佇まいや面構えなども良く、とにかくいろんな意味でオナカイッパイになった一本。
 というわけで、これまた「理解できたかできないかは脇に置いておいて、好きか嫌いかで言えば問答無用で好き!」なタイプの映画でした(笑)。
 とりあえず、劇中の音楽とスチル写真を使った、ファンメイドのクリップを貼っておきます。映画の史劇&叙事詩的な側面の雰囲気は、これでだいたい掴めるかと。
 でもまぁぶっちゃけ、とにかく手強かったので、できれば日本語字幕付きで再鑑賞してみたい……というのが本音かな(笑)。

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【追記】この『マルケータ・ラザロヴァー』、昨年2011年にデジタル修復され(参考)、同じく昨年暮れにチェコ本国でDVDとBlu-rayが発売されました。
 Blu-rayはリージョンA&B再生可能(Cはテストレポートなし)、英語字幕付きだという情報をネットで得たので(参考)、チェコの通販サイトをあたって何とか購入してみました。
 手元に届いた商品を試してみたところ、情報通りリージョンA固定のBlu-rayプレイヤーで問題なく再生、英語字幕もちゃんと収録されていました。
 ジャケット裏の解説や、同梱の薄いブックレットも、チェコ語と英語併記。
 Blu-rayディスク1枚と、ボーナスDVDディスク1枚の二枚組。ボーナスディスクには関係者インタビュー、ショート・ドキュメンタリー、フィルモグラフィ、ギャラリーなどが収録されている模様(まだ内容は未確認)。
 そして特筆すべきは、画面と音のレストア。
 映像は、英盤DVDとは比較にならないほどの美麗さで、ディテールの再現性、階調の豊かさなど、文句なしの高画質。強いて言えば、ハイライトの飛びに若干キツい部分が見られるのと、章題の中間字幕部分が、シャープネスの影響か、少しザラついた画質になっていることくらい。
 音質も向上していて、この映画では音楽と画面がシンクロする場面が多々あるので、そういった部分での効果が倍増している感じ。私はチェコ語のヒアリングなんて全くできませんが、それを前提に、セリフ等も囁きから怒鳴り声まで、よりクリアになっている印象があります。
 ご参考までに、私がオーダーしたサイトは、こちら

【追記2】後に米クライテリオンからもBlu-rayが出ました。日本のアマゾンでも取り扱いあり。
[amazonjs asin=”B00BX49BZM” locale=”JP” title=”MARKETA LAZAROVA”]

“Мольба (Molba / ვედრება / Vedreba / The Plea / 祈り)”

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“ვედრება / Vedreba” (1967) თენგიზ აბულაძე / Tengiz Abuladze
(ロシア盤DVDで鑑賞、米アマゾンのマーケットプレイスで入手可能→amazon.com

 ソ連/グルジア映画、テンギス・アブラゼ監督作品。露題”Мольба (Molba)”、英題”The Plea”、邦題は『祈り』と『嘆願』と二例確認。
 グルジアの詩人ヴァジャ・プシャヴェラ(Vazha Pshavela)の詩をベースにしたもので、アブラゼ監督作品としては、これと1977年制作の『希望の樹(幸せの樹)』(未見)、1984年制作の『懺悔』で、三部作となっているらしいです。
 内容は、中世(?)のコーカサス(カフカーズ)で対立している2つの部族にまつわる、叙事詩的な悲劇的エピソード2つと、いつともいずことも知れない廃墟のような古城で、巡礼と天使と悪魔が信仰や欲望について語る言葉や、様々な象徴的なイメージを織り交ぜながら、劇映画的な台詞ではなく、詩の朗読を主体として綴ったもの。
 今回は各々のストーリーを最後まで解説してしまうので、ネタバレ等がお嫌な方は、次の段は飛ばしてください。

 叙事詩的な挿話は、共にコーカサス山中の村を舞台にしており、一つめはムスリムと敵対しているキリスト教徒の村が舞台。
 そこでは、打ち負かした敵の右手を切り取って持ち帰り、それを城壁に晒すのが慣習なのだが、敵に敬意を払った一人の勇者は、それをせず、更に斃した敵のために生け贄を捧げて祈る。
 このことが長老を初め他の村人たちの反感を買い、勇者は家を焼かれ、家族共々村から追放されてしまう。雪原を彷徨う彼は、故郷と信仰に別れを告げる。
 二つめの挿話は、ムスリムとキリスト教徒、二人の狩人が山中で出会うことから始まります。
 獲物は一つしかなく、ムスリムの狩人は獲物を半分に分け、更に家路から遠く離れているキリスト教徒の狩人を、自分の家に客として泊めようと提案する。こうして二人はムスリムの村へ行くが、長年敵対しあっていた二つの部族だけに、周囲の村人はそれを是としない。
 敵であっても、掟に従って客としてもてなすべきだという主張は、親類縁者を殺された村人たちによって退けられ、敵部族の狩人は捕らえられ、祖霊を慰めるための生け贄として殺されてしまう。それを見た村の娘は、残されるであろう彼の妻のことを思い、涙する。
 残る一つのエピソードが、巡礼と天使と悪魔の話です。
 いずことも知れぬ廃墟のような古城で、神と善を求める巡礼に対して、悪魔は人間の欲望について語る。天使は人間に寄り添うものの、多くの人間はその姿を見ることがない。巡礼は人の世の苦しみを嘆くが、やがて悪魔は天使と婚礼をあげ、天使は母となり子供を抱くが、それは人間の赤ん坊ではなく猿だった。
 周囲では家屋が燃やされ、盲目の乞食の群れが騎兵に蹴散らされ、大勢の人々が見渡す限りの墓穴を掘り続ける。その光景に巡礼は、「もう墓穴は見たくない、もっと幸せな良いものを見せてくれ、私は世界を見たくない」と神に祈る。
 しかし天使は絞首刑に処され、人々は無表情にそれを見上げる。そして祈りの言葉ともに、映画は幕を降ろす。

 う〜ん、これは手強かった。私の知識と語学力では、半分も理解できたかどうか……。詩の朗読がメインなので、見慣れない古風な単語が山ほど出てくるし、固有名詞もそれが何なのか判らないことが多くて……見終わってから調べましたが、《Kistin (キスト人)》なんて言葉、初めて聞きました。
 コーカサス地方には、そういった少数部族がいろいろあるらしく、いちおうこの映画で出てくる二つは、キリスト教側が《Khevsur》(参考) 、ムスリム側が《Kistin (キスト人)》(参考)のようです。
 そんなこんなで、良く判らないことが多々あったとんですが、まあそのそもがストーリーを追うタイプの作品ではないし、何と言ってもモノクロの映像がものごっつう魅力的なもんだから、見ていてちっとも退屈ではなかったり。

 全体の雰囲気は、パゾリーニとタルコフスキーとパラジャーノフを足して三で割ったみたいな感じ。
 とにかく、登場人物の顔だけでも何とも味わいがあって魅力的だし、衣装や風景(鑑賞後にあれこれググっていたら、例えばこことか、劇中で見覚えのある光景が出てきたので、出てくる建物とかもどうやらセットではなく、実際に存在するものを使っている模様。)や、スチル的な映像感覚も素晴らしく好みでした。
  おそらく、ちゃんと理解しながら読み解けば、もっと色々と意味が見つかるんでしょうが(この監督の『懺悔』はそういう作品でしたし)、画面をボェ〜っと見てるだけでも充分幸福。
 というわけで、理解できたかできないかは脇に置いておいて……って、それでいいのかって気もしますけど(笑)、好きか嫌いかで言えば、問答無用で「好き!」です、この映画。

 以下、幾つかクリップを貼っておきますが、これらを見て「ぐっときた!」という方だったら、おそらくワケワカンナクても見て損はなし(笑)。
 敵の右手を切り落とさなかった勇者のエピソードから、冒頭〜決闘〜村への帰還部分のシークエンス。

 二人の狩人のエピソードから、墓所での生け贄のシークエンス。

『ウィルトゥース』イタリア語版単行本が出ました

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 昨年末、イタリアで私の二冊目の単行本”Virtus”が発売され、手元にも本が送られてきました。
 版元はRen Booksという新興の会社。
 担当編集者のニーノ・ジョルダーノ氏は、ヒゲもじゃの巨漢で見るからに熊さん系ながら、かなりの日本オタク、それもオカマテイストの入った系のオタク氏で、『ガラスの仮面』や『キャンディ・キャンディ』の話をすると止まらなくなるという好漢で、聞くところによるとプライベート用のメールアカウントが「月影千草」だという話(笑)。
 拙作『ウィルトゥース』イタリア語版商品ページは、こちら。既に竹本小太郎さんのイタリア語版マンガ単行本なども出しており、今後もオークラ出版「肉体派」のマンガ単行本のイタリア語版を出版予定(のはず)です。

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 で、このイタリア語版『ウィルトース』ですが、収録作は表題作のみとなっており、サイズはA5と、共に先に出たフランス語版と一緒。
 造本はペーパーバックで、表紙はしっかりとした厚手の紙にグロスPP貼り。本文の紙質も良く、印刷も良好。
 内容は、表題作のみ収録という点以外は、基本的には日本語版と同じですが、フランス語版と同様にセンサーシップの関係で、幼少時のクレスケンスが父親の玩具にされるくだりに、ちょっと絵の差し替えや修正が入っています。
 また、以前出たイタリア語版単行本“Racconti estremi”では、編集氏の「カッコいいから」という要望で、効果音等の日本語の手書き文字をそのまま残した形でしたが、今回は、他のフランス語版やスペイン語版単行本と同様、手書き文字を全て外して絵だけにした状態の画像データを渡し、そこに改めてあちらで先方で効果音を欧文で入れて貰うというという形(これまた編集氏の要望による)になっています。
 で、この新たに加えられた欧文の効果音が、実に元の私の手書き文字の雰囲気を上手く再現してくれていて、これはちょっと感激。参考のために比較画像を作ってみましたが、こういった細やかさという点では、今まで出た外国語版単行本の中でもベストな出来かも。
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 あと、ちょっと興味深かったのが、この効果音に関してなんですが、例えばスペイン語版『外道の家』なんかのユニークな擬音と違って、このイタリア語版『ウィルトゥース』のオノマトペは、何故かそこだけアメコミ風というか、英語になってたりします。
 例えば、剣が縦にぶつかる場面では《CLANG》、ブスリと刺さる場面では《STAB》という具合。足音は《TAP》、そしてキスシーンは《SMACK》……って、なんかスヌーピーみたい!(それは違う)
 そんなこんなで、まぁ古代ローマを舞台にしたストーリーなので、作者としては、いわばキャラクターたちを帰省させるみたいな思いもちょっとありまして、あちらの読者にも楽しんで貰えたらな〜、と願っております。
 もし入手したいという方がいらっしゃいましたら、前出の出版社のリンクから直接か、もしくはイタリアのアマゾン(Virtus [Rilegato] Gengoroh Tagame)からも購入可能です。

『アイアンクラッド (Ironclad)』

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“Ironclad” (2011) Jonathan English
(米盤Blu-rayで鑑賞→amazon.com

 2011年製作の英・米・独映画。
 13世紀初頭のイングランド、マグナ・カルタ調印後に掌を返し、賛同者を弾圧していくジョン王と、それに抵抗して篭城した地方豪族やテンプル騎士の戦いを、正史から消された逸話として描いた、アクション史劇。
 主演ジェームズ・ピュアフォイ、共演ポール・ジアマッティ、ブライアン・コックス、デレク・ジャコビ。

 13世紀初頭イングランド、ジョン王(ポール・ジアマッティ)はマグナ・カルタに調印したものの、これで内戦が終わったと油断した諸侯たちを、デーン人の助力を得て片端から惨殺していく。
 主人公のテンプル騎士マーシャル(ジェームズ・ピュアフォイ)はそれに巻き込まれ、護衛していた主である僧侶と、仲間の騎士たちを、ジョン王率いるデーン軍に殺される。独りカンタベリーに辿りついたマーシャルは、ジョン王に抵抗中のアルバニー公(ブライアン・コックス)と出会う。
 アルバニー公は、カンタベリー大司教がフランスのルイ王太子に応援を頼む間、堅牢な砦であるロチェスター城でジョン王の軍を迎え撃ち、時間を稼ごうとし、マーシャルもそれに同行する。ロチェスターに向かう道中、アルバニー公は顔なじみの共に戦う戦士たちを集める。
 ロチェスター城主(デレク・ジャコビ)は一行を歓迎しないが、時既に遅くジョン王の大軍が城外に迫っていた。主人公たちは城門を閉ざし抗戦するが、相手の大軍に対して味方はたったの20人程度。
 激しい攻城戦が繰り返される中、やがて食糧も欠乏していき、果たして彼らはフランスからの援軍が来るまで持ちこたえられるのか、そもそも援軍は本当に来るのか、そしてこの戦いの意味とは…? ってな内容です。

 ジョン王の手によって正史から消された…という設定であるように、歴史物としては決して正しい内容とは言えないそうで、what ifものとして見た方が良さそうですが、そこさえ気にならなければ、これはなかなか面白く見られました。少なくとも、娯楽性と迫力はタップリ。
 映像的にもストーリー的にも、スケール感はさほどありませんが、状況を篭城&攻城戦のみに絞ってあるのが功を奏していて、それによるデメリットはほとんどなし。逆にドラマとしては、フォーカスが散らずに上手く絞られているという印象にも。
 特に映像面では、下手に舞台を拡げていない分、ストーリーの殆どが城の中だけで展開するので、変に安っぽい映像になって白けたりしないのがいいです。とは言え移動中の点景に、《カワウソ漁をしている(?)漁師》みたいな《それっぽい》絵がちらりと挟んだりして、上手いことムードを盛り上げてくれている印象。
 血飛沫と人体破壊がバンバン出てくる血生臭い戦闘場面は、手持ちカメラ風の画面の迫力もあって、かなりの見応え。ただ、かなりゴアです。コスチューム劇としてはかなり過激な描写で、スプラッター・ホラー並の描写もあるので、そういうのが苦手な方には、正直ちょっとキツいかも。
 そんなアクションの合間合間には、登場人物それぞれのドラマがあれこれ挟まります。で、上手い具合にクリシェを使って、キャラクターが立って適度に感動移入もした頃に、再びオッソロシイ戦闘シーンになるもんだから、けっこうハラハラして「うぉ〜! 危ね〜! 死ぬな〜!」ってな感じにエモーションも揺さぶられたり。

 加えて役者もそれぞれ良く、まず主演のジェームズ・ピュアフォイですが、まぁ地味きわまりないムサいオッサンではあるんですが、それが真面目で無骨で寡黙な役柄に良く合っています。
 脇を固めるブライアン・コックス、ポール・ジアマッティ、デレク・ジャコビは、安心の存在感と演技力で、ストーリー全体をがっちりサポート。
 仲間の戦士たちは、見覚えがあるのはジェイソン・フレミング(怒りっぽく女好きというキャラ)くらいでしたが、ルックス的にも特徴的にも上手くキャラが立っているので、アンサンブルとして実に良い雰囲気。
 あと、音楽もなかなか佳良。古楽風味、教会声楽風味、エピック風味、泣き節、etc.…の要素を、上手い配分で織り交ぜられている感じで、ぶっちゃけ高級感は映画の出来以上かも(笑)。
 Blu-rayのパッケージには「七人の侍+ブレイブハート」なんて書いてあり、実際テーマや見所としては、アバウトに言えばそんな感じです。決してそれらと比肩するような傑作というわけではないけれど、でも肩の凝らない娯楽アクション作としては、充分に佳良な出来だと思います。
 こういったジャンルが好きで、でも歴史云々を筆頭に細かいことをあまり気にせず、そして血まみれゴア描写も大丈夫という方だったら、まず見て損はないかと。

 まぁ個人的には、この監督が前に撮った『ミノタウロス』(2006)というヤツが、何つーかそのお世辞にも良いとは言えないシロモノだったので、正直この”Ironclad”には全く期待していなかったところ、思いの外良い出来だったというのも印象の良さにつながっているかも知れません(笑)。

 あとゴア描写に関しては、残酷描写だけ集めたファンメイドのクリップがYouTubeにあったので、リンクを貼っておきます。誰がどういう具合に死ぬという意味でネタバレを含みますが、興味のある方はどうぞ。こちら

 余談。
 リドリー・スコット版『ロビン・フッド』と続けて見ると、けっこう面白いかも知れません。キャラクターやテーマ的に、けっこうアレの後日譚的にも見られるので。
 内容的にも、ロマンと現実の間で引き裂かれて、結局どっちつかずになってしまっていた感のある『ロビン・フッド』に対して、テーマをロマンに絞って上手い具合にコンパクトに纏めた本作と、対照的な見比べが出来るのが、個人的には面白かったり。
【追記】
『アイアンクラッド』の邦題で、2012年6月9日から日本公開→公式サイト
【追記2】
 日本盤DVD出ました。

アイアンクラッド [DVD] アイアンクラッド [DVD]
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2012-09-05

新春ゲイ系動画4連発

 最近、TwitterでつぶやいたりFacebookでシェアした動画クリップの中から、ゲイ&熊&体毛系のものを幾つかピックアップ。
 セクシー系。イタリアのベア系ゲイナイトのPV。
 ネタが《ハッテン》なので、身に覚えありとゆーか生々しく感じられて、ちょいとドキドキしました(笑)。

 お笑い系。ゲイゲイしくてベアベアしい、ヒッチコック『サイコ』のパロディ。
 ちゃんと本家同様に、ボディダブルを使っているあたりも可笑しい(笑)。

 ビックリ系。イタリアのAIDS防止キャンペーン絡みのPV。
 内容云々よりも、何よりかにより体毛のモジャモジャ具合にビックリ(笑)。そして更にビックリしたのは、この動画をFacebookでシェアしたら、「このモデル知り合い。監督も自分が出た別のAIDS防止キャンペーンの短編を撮った人」というコメントがついて、しかもそれが拙著イタリア版『ウィルトゥース』のエディターさんからだったということ(笑)。

 カワイイ系(個人的に)。ゲイ・ポルノスターがシャワールームで、歌って踊ります。
 因みに口パクではなく、ご本人が歌っているとのこと。

ちょっと宣伝、新連載『エンドレス・ゲーム』スタートです

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 12月21日発売の雑誌「バディ」2月号から、新連載マンガ『エンドレス・ゲーム』スタートです。
 今回は《現代もの/キャラは若め/エロはハード》ってな感じでいきたいと思っております。
 前にここで、主人公をどんなタイプにするか思案中と書きましたが、ヒゲボウズでいくことにしました。最初に考えていたのは、もう少しスレンダーなアスリート体型だったんですけれど、プロットを練るうちにイマイチしっくりこなくて、最終形態はけっこうガチムチ系に(笑)。
 どのくらいの長さにするかは、まだちょっと決めかねておりまして、アバウトに6回〜10回ってところかなぁ……ってな感じで、キャラが良く動くようなら長め、そうでもなければ短くなるかもということで、編集さんからもOKをいただいております。

 そういうわけで、長目になるにせよ短く切り上げるにせよ、仮に10回だと160ページになるので、どの道そんなに長編って感じ(因みに『ウィルトゥース』が124ページ、『童地獄・父子地獄』が158ページ)にはならないかな?
 今回の第一話は、まだイントロって感じですけれど、次号以降どんどんエロ場面を増やしていくつもり(笑)なので、しばらくの間よろしくお付き合いいただけると嬉しいです。

Badi (バディ) 2012年 02月号 [雑誌] Badi (バディ) 2012年 02月号 [雑誌]
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2011-12-21

endlessgame-PR
 それと新連載なので、またHypeを使ってアニメーション効果付きのバナーを作ってみました。
 本家サイトのメニューページにも貼ってありますが、こちらにも単体でアップしましたので、よろしかったらご覧あそばせ。まだ1話しか描いていないので、使えるイメージも少なく短めですが、ひょっとしたら2話か3話を描いた段階で、もうちょっと内容を足すかもしれません(笑)。【公開終了】

メリー・クリスマス

santastrip
 クリスマスも近いので、ちょっとしたお遊びをこちらにアップしました。
 クリックでサンタクロースを脱がせる、HTML5を使ったアニメーションです。透過PNGを使ったので、IEだと上手く見られないかも(書き出し時にそんなメッセージが)……駄目だった方はごめんなさい。

スペインの雑誌”UXXS Magazine”にインタビュー掲載

uxxs
 スペインはカナリア諸島で発行されているゲイ向けフリーペーパー”UXXS Magazine” No. 46に、拙インタビューと作品数点(カット)が掲載されました。
 フリーペーパーとはいっても、フルカラーで70ページもある下手な雑誌顔負けの冊子。スペインのカナリア諸島というローカルエリアで、これだけのものがフリーペーパーとして成り立つとは、今更ながらあちらのゲイ・マーケットの強固さと層の厚さに溜め息……日本だと考えられませんね、こんなの……。

 内容は、クラブやショップの広告、イベントカレンダーやマップなどの合間に、HIV、アート、リゾート、映画、ピープル等々、様々な記事が入っているもので、ざっと見た感じ、記事が65%の広告が35%くらい?
 エディターさん曰く、フリーペーパーなので性器の露出はNGということでしたが(というわけで私の作品も、それを避けたセレクトになっています)、カバー写真からもお判りのように、なかなかセクシーな誌面になっています。

 で、私のインタビュー・ページは、こんな感じ。
uxxs_inside
 例によってメールで英語のQ&Aをやりとりしたもので、質問内容は「どうして今の仕事をするようになったの?」とか「インスピレーションはどこから?」とか「『外道の家』を描くのにどのくらいかかった?」とか「初めて男の裸を描いたのはいつ?」などなど。
 ちょっと変わったところでは、「他の多くの日本のゲイ・アーティストと違って、貴方の作品は主に強く逞しく毛深い男が凌辱されるけれど、それが貴方の成功の一因となった?」なんて質問も(笑)。

 この雑誌ですが、発行元のサイトでPDFファイルがフリーでダウンロードできますので、興味のある方はどうぞ。
www.uxxsmagazine.com
 6ページ目の見開きなんか、けっこうグッときますぞ(笑)。

ちょっと宣伝、ボディースーツ&触手マンガ描きました

monsterhuntshow
 11月22日発売のコミック・アンソロジー「肉体派ガチ! vol.1」に、8ページの読み切りショートコミック掲載です。
 タイトルは『モンスター・ハント・ショー』で、内容は……ちょいSci-fi系のボディースーツ&触手もの。
 お題が「戦うおっさん」ということなので、まぁそういう内容になっています。ノリは軽め。
 このアンソロジー、vol.1となっていますが、要するに旧「肉体派」シリーズの仕切り直しで、編集さんも同じです。版元がオークラ出版からオークスに変わりましたが、これも元を辿れば同じ系列会社。
 というわけで「肉体派」シリーズがお好きだった方なら、何の違和感もなくお楽しみいただけるかと。
 コミック好きの皆様、ぜひ一冊お買い上げくださいませ。
【追記】アマゾンでは取り扱いがなくなったので、楽天ブックスとかでどうぞ。
肉体派ガチ!(1)楽天ブックス