Painterによる油彩画風の厚塗り画
STEP 1〜アイデアを練り込み、資料を探す


 作例は雑誌ジーメンのカラー口絵『淫画』シリーズ中の一点です。
 因みにこの『淫画』シリーズとは、下図のような「私にとってのエロ絵」を描いていく連作です。…必然的にSM系に偏っちゃってますね(笑)。
sample
 アイデアはいつも、日頃「そのうちこんな絵を描きたい」と溜め込んでいるネタの中から拾ってきます。で、今回は「スペクタクル映画に出てくるような奴隷の絵〜エロ化バージョン」に決定。

 次に、どんな状況にするか、股間を固くしながらあれこれ妄想します。(実はこの作業が一番好きだったりする)その結果、「家畜のように酷使されている」という状況に決定。さて、どんな労働にしましょう。ガレー船とか人間馬車なんか面白そうですが、前者はモブだし、後者は馬車のデザインを考えなきゃいけないので、ちょっと締め切りに間に合いそうもありません。(余談ですが「淫画」には2日から4日くらいしかスケジュールがとれないもので…)そこで思い付いたのが、旧約聖書のサムソンの話…「石臼」です。これなら時間的にも余裕ありそう。というわけで内容は、「鞭で追われながら、牛馬のように石臼を挽かされている奴隷」に決定。同時にタイトルも、そのものズバリで『牛馬の如く』に決定です。

 さて、決定した内容に従って、ディテールを練り込んでいきます。
 最初に奴隷ですが、これはもちろん素っ裸です。家畜に衣服は不要ですからね。拘束方法は、まず手を石臼に鎖で繋ぐ。亀頭にピアスをして石臼に鎖で繋げば、エロ度が更にアップするかも。脚部は古典的な鎖分銅が捨てがたいけれど、いかにも作業効率が落ちて不自然そうです。今回は足鎖だけに決定。本当のサムソンなら、頭髪を短く刈られ両目も潰されていなきゃなりません。この話は大好きなんですが、今回は最初に「スペクタクル映画風」と考えた時点で「頭髪も髭もボサボサの男を描きたい」という思いがあったし、目を潰すと編集者からクレームもつきそうなので、それはやめにします。
 次に看守です。鞭は不可欠。それもゴツい牛追い鞭が良さそう。さて、振り上げたところと、振り下ろしたところと、構えているだけと、どれがいいだろう。どれも捨てがたいけれど、画面が横長なので、振り上げたポーズで全身を入れるとなると、かなり小さくなってしまいそうです。ちょっと保留。
 そして状況。これは「日の当たらないダンジョン」という定番でいきます。理由は「地下牢が好きだから」です。まあ、いいかげん(笑)
 構図はどうしましょう。石臼の「重さ」を出したいので、これはかなり巨大にして、同時に形もちゃんと見せたい。そうすると必然的に、人間はかなり小さくなりそうです。ここいらへんで頭の中に、「アオリ」「真横」「俯瞰」といった3パターンくらいの構図が見えてきます。どれにするかは、資料を探しながら煮詰めていくことにします。

 ちょっと話はズレますが、私の場合、フォトリアル・イラストレーションで目指すものは「現実的な生々しさ」なので、できるだけ「自分の手癖で描いた形や、想像だけで描いた陰影」は入れないようにしています。よって、この「現実的な資料探し」が不可欠。逆にマンガ絵や輪郭線を生かしたドローイングの場合は、目指すものが違うので、資料もそれほど必要にはなりません。

 雑誌やネットで集めた男のヌード写真の山を引っかき回して、イメージに合った資料を探します。でも量が半端じゃないので一苦労。けっきょく数時間かかっても「これぞ!」というものが見つからず、ちょっとブルーな気分になります。
 そこで今回は、3DCGで資料を作ることにしました。これだと少なくとも、物体の影に関してはかなり正確にシミュレーションできるはずです。
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