アクリル・ペインティング

 まず資料に使う写真を選んで、適当な紙に下絵を描いて内容と構図を決定します。この段階で編集部のラフチェック、OKが出たらいよいよ本番です。
 次に、完成した下絵をトレーシングペーパーにコピーして、裏に2Bの鉛筆の粉を延ばしカーボン状にします。それをイラスト・ボード(主にBBケント細目を使用)にマスキングテープで仮止めして、よく尖らした3Hの鉛筆でなぞりながらトレースダウンします。
 ボードに薄く転写された下絵に、Fの鉛筆で薄めに陰影を入れていきます。このとき鉛筆のタッチが残らないように、ティッシュと綿棒で延ばしながら作業します。
鉛筆の陰影が完成したら、フィキサチーフで固定します。そして画面の周囲が絵具で汚れないようにテープでマスキングしておきます。
 肌や衣服などの広い色面以外をマスキング・シートで覆って、極薄に溶いたアクリル絵具(リキッテクスを愛用)をエアブラシで吹いて下塗りします。このときマスキングで絵具がはがれないように、グロス・ポリマー・メディウムを混ぜて粘度を補強しておきます。
 下塗りが終わったらマスキングを剥がして、着色の下に透けて見える鉛筆の陰影をガイドに、極薄に溶いたアクリル絵具を水を含ませた筆でぼかしながら着彩していきます。このとき絵具には、乾燥を遅らせるグラデーション・メディウムを混ぜます。この工程を、薄い色から濃い色へという順番で、四回から八回くらい繰り返します。また、肌の場合は、陰影が完成した上から、更に薄い赤などで色味を調整していきます。また、絵柄によって肌のツヤを強調したい場合は、鉛筆形の消しゴムを使ってハイライト部分の絵具を白く落としたりもします。
 広い色面の着色が終わると、今度は目や口や乳首や金具類といった細部を細筆で着色していきます。ホワイトはなるべく使わずに、白いところは紙の白を残しています。
人物が体毛を残して完成したら、今度は背景を塗りつぶします。不透明のアクリル・ガッシュ(こっちはターナーを愛用)で、ムラが完全に消えるまで2、3回重ね塗りします。
 体毛は肌から浮いてしまったり、身体の立体感を損なったりしないように、色を三、四色使い分けて描きます。最後に全体の明暗バランスを整えて完成です。
 ちなみに愛用の筆はキャムロン・プロというナイロン筆。安価な割にはコシもまとまりも良いので使いやすい筆です。太さはNo.3/0からNo.12くらいまでを使い分けています。