トロント〜ニューヨーク紀行(4)

5月13日
 トロントからニューヨークへ飛行機で移動。
 さっそく予約をとっておいてくれたダウンタウンのホテルにチェックインするが、ここで問題発生。
 というのも、そこがホテルとは名ばかりの、広いフロアをパーテーションで仕切り、その中にベッドが一つ、天井部分は木の格子で蓋がしてあるておいう部屋(とも呼べない感じだが)で、もちろんシャワーとトイレは共同。うむむむ、雰囲気自体は悪くないので、一人で気楽なバックパック旅行とかだったら、こーゆー宿ももまた楽しだけど、今回は違うし……。
 現地スタッフも、どういう宿なのかちゃんと確認せずに予約したようで、夕飯に迎えに来てくれたアンとグラハムとクリスチャンに部屋を見せたら、彼らもびっくりギョーテン。タイムリーな話題ということもあって、アンなんか「従軍慰安婦の部屋みたい!」と(笑)。ただ、若いグラハムは「クール!」と言ってた(笑)。
 急ぎ対処をと、携帯であちこちに連絡をとるアン。結局、明日以降の宿は何とかするから、今日だけこの宿で我慢ということに。
 夕飯は4人でイタリアン。地元ニューヨーカーのオススメだけあって、味は上々。
 その後、ちょっとだけゲイバーに寄ってから、宿に戻る。
 流石、天井があって無いに等しいので、周囲からイビキの三重奏が(笑)。

5月14日
 けっきょく宿は、急なこともあってなかなか適当なホテルが見つからず、とりあえず数日、チップが家に泊めてくれることに。その間チップは、パートナーの家(20年来のパートナーシップながら、住居は別々というカップル)に。
 というわけで、アンと一緒にチップの家に移動。で、これがアッパーイーストにある高級ペントハウスで、まぁ入り口からして「ホテルですか?」ってな感じ。もちろんドアマンとガードマン付き。
 そして最上階にあるチップの家に行くと、これがまた「アメコミ博物館ですか?」ってな感じで、壁には額入りのアメコミ原画(私はアレックス・ロスくらいしか判らなかったけど、桑田二郎の原画もありました)がずらり、天井まである本棚兼サイドボードには、ヴィンテージのアメコミ玩具(主にバットマン)がびっしり。
 部屋にある家具は主にガラス製で、しかもいろいろ玩具やらレトロオブジェやらが綺麗にレイアウトされて並べられているので、なんか身動きするのもおっかなびっくり、水道の蛇口なんかオシャレ過ぎて、水の出し方が判らないくらい(笑)。
 最初の話では、ここに二日ほど泊まって、それから改めて別のホテルに移るという話だったけれど、最終的にはチップの好意で、ニューヨーク滞在は最終日までここに泊まることに。

 そうこうするうちに、チップとアンは仕事で去り、私は夜までオフタイム。
 ペントハウスを出て、土地勘を掴むためにブラブラ散歩した後、徒歩圏内で一番近いフリック・コレクションを見に行くことにする。
 で、そのフリック・コレクションは、アメリカの鉄鋼王の個人コレクションということもあり、収蔵数自体は大手美術館には全く及ばないものの、1つ1つのクオリティが素晴らしかった。中世美術から、ルネサンス、バロック、マニエリスム、ロココあたりまでをメインに、プラス印象派などの近代も少々……というラインナップなのだが、フリックさんはお金持ちなだけでなく審美眼も確かな人だったのか、とにかく一点一点が粒ぞろい。

 夜はチップの家で内輪のパーティ。
 チップ、アン、グラハム、ダン、クリスチャンの他、チップのパートナーのサンディ(これがまたイェール大学の教授だか何かで、ナボコフの研究やら詩作やら戯曲やらを手掛ける大物らしく、後日私は彼の家にも行き、チップの家以上のゴージャスさに仰天することになる)、クリスチャンのお兄さん、その他、出版関係者やら服飾関係者やら、色々と集合。次から次へと紹介されるけれど、ちっとも名前が覚えられない(笑)。
 とりあえず、東京にも支店があるというファッションブランド、Mishka NYCのグレッグ・リヴェラさんと一緒に撮った写真。
NYCmishka
 チップの家には素敵なテラスもあるので、夜景を見ながらデリバリーのピザ(アメリカ!)などで歓談。
 そして深夜に皆さんが帰り、私は1人で、昨夜とは天と地ほどかけ離れた、ゴージャスなベッドで1人就寝。

5月15日
 目覚ましをかけずに寝ていたら、昼過ぎまで寝てしまった。
 夕方の書店イベントまでオフなので、外に出て遅めのブランチを食べた後、やはり徒歩圏内にあるホイットニー美術館へ。
 ホイットニーの収蔵品はアメリカのモダンアートなので、もう一つ私の趣味とは離れたところがあるけれど、それでも楽しく見物。企画展でゲイ関係やAIDS関係を見られたのも収穫。

 時間になったので、地下鉄を乗り継ぎミートパッキング・ディストリクトにあるホテル(だか何だか)The Standard, High Lineへ。再開発系のおしゃれエリア。
 建物の近くでアンが待っていてくれて、「熊さんいっぱい来てるよ!」とはしゃぎながら会場へ。本屋かと思っていたら、なんかセレクトショップみたいな感じの店。
 チップと並んで座って、サイン会スタート。撮影はアン。
NYCstandard
 メール等で長い付き合いのゲイ・アーティスト、ロブ・クラークとも会えました。
NYCrobclark
 なんと父娘で一緒に来て、サインも連名でという、またまた今までなかったパターンも。お父さんが「うちはリベラルなんだ」と言っていたけど(笑)。
NYCfather&daughter
 となりでチップが「客層が羨ましい。自分のサイン会はスキニーな美大生とかばっかで、こんなベアーだらけじゃない」とか、わけのわからんことを(笑)。実際お客さんは、八割方ゲイ男性という感じ。
 サイン会に来てくれたコンテストビルダーの大胸筋を、私が下からぐいっとやってる記念写真を、自分のカメラで撮って貰いそびれたのは痛恨の失策(笑)。
 何のかんので3時間ずっと座ってサインしてたし、ちょいと立ち上がって記念撮影に興じていたりすると、アンから「ごめん、列が出来ちゃってるから席に戻って!」なんて言われたりしたので、盛況だったんだと思います。
 サイン会の写真は、グラハムもTumblrにもいろいろあり。こちら。一番下の個性的なファッションの方など、「流石ニューヨーク!」と思ったり。
 合間に取材も一つ受けました。記事はこちら。私は「気さくなパンダ・ベアー(因みにアジア人の熊系ゲイのことをパンダ・ベアーと言います)」だそうですよ(笑)。一枚目のチップと一緒の写真、自分でもお気に入り。

 サイン会の後は、チップ、アン、グラハム、ダンと一緒に、同じホテルのおしゃれ系レストランでディナー。おしゃれなのはいいけど、どうしてこう店内が暗いんだ……とか、内装がおしゃれすぎて、トイレの場所まで判りにくい……とか、いろいろ思うところはありながらも、ディナー自体は楽しく終了。
 グラハムはシカゴに帰るので、今日でお別れ。路上でがっつりハグ。
 地下鉄に乗って帰宿。