“For Greater Glory: The True Story of Cristiada”

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“For Greater Glory: The True Story of Cristiada” (2012) Dean Wright
(米盤Blu-rayで鑑賞→amazon.com

 2012年のメキシコ映画(ただしセリフは主に英語)。
 1920年代後半、宗教弾圧に端を発した、メキシコのクリステロ戦争を戦った男たちを描いた、歴史アクションスペクタクル。
 主演アンディ・ガルシア、共演オスカー・アイザック、サンティアゴ・カブレラ。ゲスト出演的にピーター・オトゥールも。監督は『ロード・オブ・ザ・リング』等でSFXスーパーバイザーをしてきた人で、これが初監督作作品らしいです。

 1920年代後半、メキシコ革命直後のメキシコ。
 カリェス大統領は新法で教会の閉鎖や外国人神父の追放を定め、宗教弾圧を始める。反対派は街頭書名やストライキなどで同法の撤廃を求めるが、やがて軍隊による神父の処刑や教会信徒の虐殺などが始まる。元々は悪ガキだった少年ホセは、自分を導いてくれたクリストファー神父が、生きるために信念を曲げるよりも、信念を貫き通すことを選び、目の前で処刑されるのを見て、深く感銘を受ける。
 やがて《クリステロ》と呼ばれる民衆の武力蜂起も始まり、聖職者でありながら自ら銃を持って戦うヴェガ神父の一団や、スゴ腕の地方豪族《14人殺しのヴィクトリアーノ》一派などが、それぞれ政府軍に対して戦いを始めるが、それらを取り纏める中枢が欠けていた。
 そこで、都心部のクリステロ支援一派は、往年の名将軍で現在は石鹸工場を経営しているゴロスティエタ将軍をスカウトする。ゴロスティエタ将軍によって纏まったクリステロたちは、いくつかのトラブルを経ながらも、やがて自由のために戦う一つの軍隊として生まれ変わり、政府軍を圧倒していく。
 そんな中、ホセ少年の家族が処刑され、誰もそれを助けられなかったことをきっかけに、彼もクリステロに参加する。息子を持たないゴロスティエタ将軍は、ホセ少年を我が子のように可愛がる。
 一方でカリェス大統領は、これが内戦だとは認めず、あくまでも一部の過激派によるテロだと主張し、石油利権が目当てのアメリカも、立場的にはメキシコ政府側につく。激化していく戦闘の中、ゴロスティエタ将軍は次第に、この戦いは宗教的なものでも政権争いでもなく、自由を求める民衆の戦いなのだという意識を深めていく。
 ところが、とある戦闘中にホセ少年が、身を挺してヴィクトリアーノを助けた結果、そのまま行方不明になってしまい……といった内容。

 スケール感のある娯楽大作としてたっぷり楽しめる出来で、およそ2時間半の尺も、長さを感じさせない面白さ。
 見所も盛り沢山で、いかにも歴史大作系のスペクタクル感もあれば、シーンによってはマカロニ・ウェスタンですかってな感じのガンアクションもあり、更に男泣き系のエピソードやエモーショナルな泣かせにも事欠かず。
 エンドクレジットで明かされるように、この戦争の犠牲者たちは、21世紀になってから列聖されたという事実もあるために、キリスト教色が濃厚な内容ですが、信仰オンリーの一辺倒ではなく、それに対して主要登場人物が疑問を呈したり、前述したように単なる宗教戦争とは捉えていない視点もあるので、非クリスチャンでも馴染みやすい感じ。
 キャラも良く、百戦錬磨の頼れる男ゴロスティエタ将軍(アンディ・ガルシア)の貫禄を筆頭に、神父服に弾帯をたすき掛けしたハンサムなヴェガ神父(サンティアゴ・カブレラ)、マカロニ・ウェスタンのならず者風の《14人殺し》ヴィクトリアーノ(オスカー・アイザック)……などなど、メインの登場人物は皆、文句なしのカッコ良さ。
 その反面、女性キャラは少なく、ゴロスティエタ将軍夫人(エヴァ・ロンゴリア)と、クリステロ支援組織の娘さんと、ホセ少年の母親くらいで、それぞれに見せ場は用意されているものの、基本的には男ばっかの話。
 折り重なる虐殺死体とか、線路脇に延々と立ち並ぶ絞首刑の列とか、ハードなイメージもあちこち出てきますが、そこいらへんはあまりエグくなり過ぎないように配慮してある感じで、ちょっと薄味に感じられる面もありますが、それが娯楽作品的な見やすさになっているというメリットもあり。
 また、ハリウッド映画では避けられがちな、子供が処刑されるシーンとかも、逃げずにしっかり描かれているので、そこいらへんはけっこう見ていて気持ちをかき乱されます。それだけでなく、少年を拷問にかけるシーンなんてのもあったり。

 というわけで、ガツンとくる重みというよりは、ダイナミックな娯楽史劇という味わいで、ちょいと盛り込みすぎの感はありますが、十分以上に面白い映画でした。モチーフに興味があれば見て損はなし、歴史物や戦争物が好きな方なら、たっぷり楽しめるかと。
 個人的にはヒゲのむっさい男ばっかなのも嬉しかったんですが(笑)、そういうの抜きにしても、燃える系の男の子映画好きにはオススメできる一本。

 オマケ。
 個人的にご贔屓のヴェガ神父(サンティアゴ・カブレラ)の写真。
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