『クズが世界を豊かにする』

クズが世界を豊かにする─YouTubeから見るインターネット論 『クズが世界を豊かにする─YouTubeから見るインターネット論』松沢呉一

 仕事の息抜きにちょっと……とか思って読み始めたら、もうそのまま止まらなくなって最後まで突っ走り、結果、仕事に大支障をきたしてしまった……とゆーくらい、とにかく内容が面白い!
 まず最初に、それを強調しておきたいと思います。
 具体的にどういった内容の本かと言いますと、副題にもあるように、YouTubeで見られる種々雑多な映像の紹介を通じて、では、そういったものから何が見えるか、ということを著者が思索探求していき、それがインターネット時代におけるメディア論や、日本と欧米の比較文化論、アートやパフォーマンスの表現論、などなど、様々かつ刺激的な論考が述べられる本です。
 で、それがめっぽう面白い。
 基本的に語り口調のせいもあって、ミクロから始まりマクロへと至る著者の論考が、その移行プロセスそのままに、まるで共通体験をしているようにダイレクトに頭に入ってくる。しかも、ちっとも堅苦しくないどころか、逆にユーモア満載、しかも思考の展開プロセスはスリリングですらある(だって耳クソの話がメディア論に繋がったりするんだもの!)ので、読んでいてホント、面白くて、途中でヤメられなくなっちゃう。
 そんな具合で、著者の人並み外れた好奇心と探求心もあって、本の内容も実に多層的です。
 前述したような、メディア論や比較文化論といった要素もあるんですが、例えば、インターネット時代に対応した思考方法の転換を説く指南書的な側面もありますし、或いは、インターネット時代のメディアに適合した情報発信方法のHOW TO書的な側面もある。ビジネス書的に読んでも、おそらくヒントがいっぱいあるんじゃないだろうか?
 より有効に楽しくインターネットと付き合う方法も学べますし、特に、受動的にそれらを消費するだけではなく、ホームページやブログ等を使って情報や表現を発信したい人なら、この本から得るものは沢山あると思います。あと、作家さんや編集者さんだったら「判断の主体」の章は必読!
 私自身、これまで考えてきたこととか、これからやりたいと思っていることについての、方法論や思考法的な意味での解答やヒントがいっぱい得られました。
 そんなこんなで、お世辞抜きで激オススメの一冊。
 いや〜、思考する楽しさを満喫しました!
 松沢さん、スゴい!
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