ちょっと宣伝、イタリア語版単行本、発売されました

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 前にここで、私のイタリア語版マンガ単行本・第一弾が先々週発売されたとお伝えしましたが、昨日、見本が届きました。
 本のタイトルは”RACCONTI ESTREMI”。英語だとextreme storyという意味だそうな。
 ただ、本を開くと1ページ目に、”Kinjiki”というタイトルがあって、一瞬この『禁色』が副題かと思って、「ひぇ〜、そんなおこがましい、ヤメテクレ〜!」とか思ったんですが、奥付を確認すると、下記の記載を発見。
RACCONTI ESTREMI
di Gengoroh Tagame
collana Kinjiki
volume 1, autunno 2009
 collanaというのは「ネックレス」とか「叢書」とかいった意味らしい。というわけで、これは「禁色叢書・第一巻」なんですな。
 シリーズ全体の名前と判って、ホッとしました(笑)。

 本全体の造りは、サイズはA5、カバー付きのペーパーバック。
 総ページ数は、200ページ強、価格は15ユーロ。
 カバーは、左上の書影だと判らないんですが、葡萄茶色の地色と角版のイラスト部分がツヤのないマットPPで、黒の地紋と白のアルファベット部分のみ、ツヤのあるグロス加工になっています。
 とってもキレイで品の良い装丁。気に入りました。
 内容は、短編マンガ8本に加え、巻末には、私のインタビュー、ラフスケッチ数点、各作品に関する注記、擬音に関する解説なども収録されています。
 綴じは、日本と同じ右開きで、巻末のテキストページだけ左開き。というわけで、マンガの絵も逆版にはなっていないので、ホッと一安心。なぜ安心かというと、絵を描く人なら判るはず(笑)。
 紙質も印刷も上々だし、丁寧に作ってもらえたようだし、嬉しいなぁ。こうなると、解説とかを読めないのがクヤシイ(笑)。

 具体的な収録作品リスト(とイタリア語題)は、以下の如く。
・MASOCHISTA(「マゾ」)
・PATRIOTTISMO – L’ESERCITO DEI VOLONTARI DELLE LACRIME(哀酷義勇軍)
・GIGOLO(ジゴロ)
・BURATTINAIO(傀儡廻)
・GASTRITE DA STRESS NERVOSO(神経性胃炎)
・PATIBOLO(晒し台)
・CHIGO(稚児)
・CONFESSIONE(告白)
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 作品をセレクトしたのは先方で、「未単行本化のものを」とリクエストされたので、当時まだ雑誌掲載のみだったマンガのコピーを渡して、その中から選んでもらいました。
 ただ、契約が締結してからこうして本が出るまでに、例によってけっこう時間がかかったので、その間に日本で出た『髭と肉体』と、収録作品が4本かぶってます。残りの4本は、今回が初単行本化。
 ちょっととりとめのないラインナップのような気もしていましたが、こうして並んでみると、さほど案ずるほどでもないかな。最後を『告白』で締めてくれているあたりも、なかなかいい感じです。
 ただ、イタリア初上陸にしては、巻頭に「ヒゲなし若め主人公」ばっか4本並んでいるのが、ちょいと誤解を招くかもしれないなぁ(笑)。私の十八番の「ヒゲ熊拷問」が、一本しかないし(笑)。

 内容をじっくり見ていると、細かなところも神経が行き届いています。
 例えば各作品のタイトルですが、まず作品のアタマに、本の表紙と同じ地紋を用いた新規の章扉があり、そこにイタリア語のタイトルが書いている。その章扉をめくると、白ページ(つまり章扉の裏は白紙になっている)を挟んでマンガが始まるんですが、マンガの元々タイトルが入っていた場所に、今度はローマ字表記の日本語タイトルが入っている。
 また、マンガに出てくる、ポスターや看板の文字の処理を見ると、例えば『哀酷義勇軍』だと、義勇軍募集のポスターは日本語のままで、欄外に意味を説明した注がある。かと思えば、適性検査の結果が出た掲示板は、これは画面でもイタリア語に翻訳されていて、ちゃんと文字に掲示板に合わせたパースもついている。
 些細なことではありますが、こういったのを見ると、「ああ、丁寧に作ってくれているなぁ」って感じで、生みの親(笑)として実に嬉しい。

 因みにフランス語版では、擬音もフランス語に置き換わっていましたが、このイタリア語版では、日本語の擬音がそのままになっています。どうしてかというと、「そのままにして欲しい」と言われたからで、理由を聞いたら「カッコイイから」なんだそうな(笑)。
 ここいらへんの感覚は、国や個人によってまちまちのようで、スペインの出版社(契約済み)は「置き換えたい」派でした。ちょっと前に会って話したアメリカ人も、「置き換えたい」派。でも、長い付き合いのあるアメリカ人のファンは「英語の擬音は表現力に乏しいから、日本語のまま残して欲しい」派。
 まるで、映画の字幕派と吹き替え派みたいなので、いっそ、擬音の切り替えができる電子書籍版とか作ったら面白いかも(笑)。