“Archetype: The Art of Timothy Bradstreet”

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 最近買った画集、その3。
 やはりアメコミのカバー画や、映画のポスター等のイラストレーションを描いている、ティモシー・ブラッドストリートの画集。どうやら第二画集らしいです。
 この人は、先日のジョー・ジャスコや先々日のボブ・ラーキンとは異なり、もっと若い世代で、絵の雰囲気もぐっと今様です。因みに、ラーキンが1949年生まれ、ジャスコが59年生まれなのに対して、このブラッドストリートは67年生まれ。……うわ、私より年下じゃん(笑)。
 収録作品は、アメコミ「ヘルブレイザー」(これの映画化が『コンスタンティン』)や「パニッシャー」のカバー画(私がこの人の絵を意識したのも、ここいらへんから)、良く判らないけどゲームか何かのヴィジュアル、映画『ブレイド2』(ギレルモ・デル・トロ監督)や『パニッシャー』(トーマス・ジェーン版)のビジュアル、エディトリアル用らしき『ノスフェラトゥ』(ヴェルナー・ヘルツォーク版)、『13日の金曜日』のジェイソン、『悪魔のいけにえ』のレザーフェイス、等々が掲載されています。
 それ以外にも、デジタル彩色作品に関しては、彩色済みのものとオリジナルのモノクロ線画が両方載っていたり、作画資料用の写真、サムネイルやラフスケッチ、コミックスからの数ページなんかも載ってます。
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 とにかく、画面をカッコヨク見せることに長けている人で、明暗構成の妙技と構図の緊張感はバツグン。ポーズの切り取り方とかは、さほどエッジなことはやっていない(というか、逆にシンプルなものが多い)んですが、それを画面構成だけで、問答無用のカッコヨサに仕上げるセンスは、本当にスゴイ。
 基本的に、コントラストの効いた白黒のペン画に、淡彩で彩色していくパターンで、彩色者は別の人(主にグラント・ゴレアシュという人のよう)の場合もあるんですが、油絵(これがまた、めちゃくちゃフォトリアル)やペンシル・ドローイングなんかも、ちょっとあり。
 ただ、私の趣味から言うと、モノクロのペン画や、それに水彩やカラーインクで淡彩を施したものは、文句なしに好きなんですが、デジタル彩色で、しかもかなりコッテリと色を乗せているものに関しては、質感が余りに写真に近すぎて、「これだったら写真を加工したものでいいんじゃないかなぁ……」という感じを受けてしまい、絵としての面白みには、ちょっと欠けるような気はします。
 とはいえ、全体に通じるダークなテイストとは、やっぱ「カッコイイなあ」と思いますけど。

 画集としては、先日の“The Art of Joe Jusko”と同じ版元なので、造本や大きさ、ページ数なども、ほぼ一緒。大判のハードカバーで、頑丈な造りの好画集です。
 テキストは、マット・スターンの前書き、ジム・ステランコの序文、充実したバイオグラフィー(ここにフランク・フラゼッタやバーニー・ライトソンのペン画が載っていて、ハイコントラストなペン画のルーツが判る感じでした)、の他、ページのあちこちに、ギレルモ・デル・トロ、トーマス・ジェーン、ゲイル・アン・ハード、バーニー・ライトソン、ゲイリー・ジャンニ、等々、映画界やイラスト業界の著名人のコメントなんかが載ってます。
“Archetype: The Art of Timothy Bradstreet”(amazon.co.jp)
 これは何故か、日本のアマゾンにもちゃんと在庫があって、しかも割引中。ジョー・ジャスコの画集と同じ版元なのに、どういうわけだろう、この違いは。
 因みに、これと同じ本で値段が倍近くするやつがありますが(これ)、これは「Sgd Ltd版」という表記があるので、おそらくサイン入りの限定版ではないかと。