“The Art of Joe Jusko”

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 最近買った画集、その2。
紹昨日介したボブ・ラーキン同様、アメコミのカバー画などを描いてきた、ジョー・ジャスコの画集。
 経歴を見ると、ちょっと変わった人で、マーヴェルやエピック・マガジンなどでイラストレーションを描いていたかと思うと、その後ポリス・アカデミーに入学して、NYPDの警察官になったりしています。数年後、アートへの情熱が戻ったとかで、警察官からアーティストに復帰はしたようですけど。
 またまた、表紙はご覧のようなセクシーねーちゃん(&シム・シメールみたいなホワイト・タイガー)ですが、中身は、半分くらいは裸のマッチョ絵、それも、ボブ・ラーキン以上に暑苦し〜い野郎絵……ってなパターンです(笑)。

 収録作品は、やはりボブ・ラーキン同様にアメコミ版コナン”The Savage Sword of Conan”のカバー・イラストレーションや、様々なアメコミ・ヒーローの他、エドガー・ライス・バローズのターザン・シリーズのドイツ語版表紙絵(私が初めてこの人の絵を意識したのは、これでした)、同じくバローズの火星シリーズのイラストレーション、セクシーねーちゃん系だとヴァンピレラにシーナにララ・クロフト、はたまたWWFのプロレス関係のイラストレーションなんてのもあります。
 また、下絵やラフスケッチもあれば、古いものではアマチュア時代の未発表作まで掲載されているので、このアーティストの全画業を俯瞰できるような内容になっています。
 巻末には、簡単なHOW TO DRAWページまで付いていて、これは絵描きにとっては興味深く見られるはず。

 画風は、これまたボブ・ラーキン同様、コテコテのアメリカン・リアリズム。
 リアリズム的な上手さという点ではラーキンには及びませんが、細密画的な細部の描き込みとか、後述する筋肉描写への独特なこだわりなどによって、パルプ系のリアル・イラストレーションには余り見られない「アク」があるので、それが独特な個性になっているという特徴があります。原色を多用した、時として毒々しいまでの色彩感覚も、その「アク」を強めている感じ。
 さて、その筋肉描写ですが、サンプルをご覧いただければ一目瞭然のように、あからさまにボディビルダーのそれを指向しています。筋肉の張りや血管の浮きから、作品によってはポーズから肌ツヤにいたるまで、コンテストに出ているのボディービルダーか、ボディービル雑誌に掲載されているようなトレーニング風景の写真みたい(左下の作品なんかその典型)。
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 まあ、マッチョを描く人なら、多かれ少なかれボディービルは参考にするでしょうけど、ここまでボディービルボディービルしている人は、ファンタジー・アート系ではちょっと珍しいかも。かなりフェティッシュというか、マニアックな香りすらします。
 個人的な感覚で言えば、例えばターザンがここまでボディービルダーなのは、ちょっとどうかという気もするんですが、それでも、この徹底したこだわりと描き込み具合には、問答無用の強さと迫力は感じます。ボディービル系のマッスル・マニアの人だったら、なおさらタマラナイ魅力を感じられるかも。

 版形はA4強の大判。ハードカバーの立派な造本で、ページ数も330ページ近くとヴォリュームたっぷり。もちろん、全ページフルカラー。
 テキストも、詳細なバイオグラフィとか作品解説とか、ふんだんに入っています。造本は頑丈だし、印刷も高品質なので、画集としてはわりと理想的な作りかと。その分、お値段もそれなりですが。
“The Art of Joe Jusko”(amazon.co.jp)
 これまた、何故か日本のアマゾンだとマーケット・プレイスしか出ていませんが、アメリカのアマゾンには在庫があるので、送料さえ気にしなければ、ボブ・ラーキンの画集と一緒に注文するってのもアリかも。