アート・コレクターのお宅訪問、追補

 フランスからの携帯更新で、アート・コレクターのお宅にお邪魔したら、住んでる世界が違う感がバリバリでスゴかった、なんてことをお伝えしましたが、どうスゴかったのか、改めてお伝えしませう。
Paris_collector_a まず、場所からしてスゴいのだ。
 これがなんと、パレ・ロワイヤルの中! かつて作家のコレットが住んでいたのと同じアパルトマン! 建物に入る前から「どっひゃ〜!」でゴザイマス(笑)。
 で、いざ建物の中に入り、エレベーターに乗って居住階にお邪魔すると……もう玄関から、美術品と骨董品の山。床には、現代美術のドでかいオブジェだの、中世彫刻やアジア美術らしき石像や胸像だの、いたるところにズラズラと飾られている。
 壁も、これまたそこいら中が、三段五段に飾られた絵画で埋め尽くされていて、しかもハンパじゃない作家揃い。号数は決して大きくはないんですが、ぱっと見ただけでも、ピカソやマグリットやタンギーだってのが判るし、面白いデッサンがあったから「誰の絵ですか?」と聞いたら「スーティンだよ」ってな返事だし……もう、一緒に飾られてるウォーホールやホックニーが、小物に見えるくらいのラインナップ。
 すっかり美術館に来た気分でいるところ、椅子を勧められてお茶でおもてなしされたんですけど、これがまた、もう家具から食器から、どう見ても骨董品かアート・ファニチャーの「タダモノじゃない!」ってヤツばっかり。
 ティーカップ持ちながら、「……もしこれを割っちゃったら、いったいいくら弁償しなきゃならないの?!」ってな感じで、もう、お茶を飲むのもガクブル、壷から角砂糖を取るのもヒヤヒヤ、とてもじゃないけど、くつろげたもんじゃありませんでした(笑)。「おかわり、自由にね」って勧められても……いや、そんな高価そうなティーポット、おっかないから持ちたくありません、って感じ(笑)。
Paris_collector_b もっとも、招いてくださった方ご本人は、いたって気さくな方で、バルコニーに案内して外の景色を見せてくれたり(もちろん、見えるのはパレ・ロワイヤルの中庭なので、ステキな眺めに決まっております)、別の部屋やベッドルームを見せてくれたり(するとまた、ビアズレーやイヴァン・ビリビンがあって、ビビりまくり。でも、ビリビンの原画を見たのは初めてだったから、嬉しかった〜)、いろいろと気を使ってくれました。
 で、緊張しすぎてか、オシッコをしたくなったので、トイレを借りると、これまた壁に、コクトーとホックニーとバーン=ジョーンズとトム・オブ・フィンランドの、いずれもメールヌードのデッサンが飾られている……ってなステキさ。もう、緊張しすぎて、オシッコ止まるかと思いました……ってか、もう画廊の真ん中に便器があるみたいなもんで、「こんなとこで、チンポ出して放尿なんぞして、ホントにいいのか?!」ってな感じ(笑)。
 で、おそらく私が来るのに備えて、普段は仕舞っているのであろう私の絵を、部屋に並べていてくれたんですけど、う〜ん、何かちょっと複雑な気持ちがしましたね。
 何というのか、自分が描いた絵が他の人の「所有物」になっている、というのは、親が娘を嫁にやる気分に、ちょっと近いのかなぁ……。自分のものだったのに、もう自分のものじゃなくなった、みたいな、何とも言えない気分。
 まあ、それでも「うんうん、いい家に貰われて良かったね」という、変な親心みたいな気分にもなったりして。
 でも、もしこれが絵じゃなくて人間だったら、他の連中から「アンタなんて身分が違うわよっ!」とか「この淫売の小娘!」とかいって、いじめまくられそうな気もするけど(笑)。
 ……って、何で『女の闘い』風になるのやら(笑)。