“Melpomen” by Conrad Steinmann

melpomen
 先日の『ポンペイの輝き』展にて、ミュージアム・ショップで購入。古代ギリシャの復元音楽です。いちおう展覧会の関連商品っぽい陳列の中にあったんですが、ポンペイでもローマでもなくてギリシャもの(笑)。
 古代ギリシャの復元音楽というと、このCDと同じハルモニア・ムンディ・レーベルから出ている、グレゴリオ・パニアグア(Gregorio Paniagua)の『古代ギリシャの音楽(Musique de la Grece Antique)』という名高い名盤があります。私も、古楽や民族音楽を聴き始めた頃に出会い、ドップリはまって愛聴していました。amazon.co.jpを見ると、日本盤は既に廃盤みたいですが、輸入盤だと今は900円そこそこで買えるんですな、あの名盤が。ビックリ(笑)。
 さてこの”Melpomen”、内容はというと、4人編成の小規模のアンサンブルで、アウロイという縦笛、バルビトスという竪琴、パーカッション類などの古代の復元楽器によるシンプルな演奏にのせて、アナクレオンやサッフォーといった古代ギリシャの詩人の詩を、澄んだ穏やかなソプラノで詠唱のように歌うというものです。一曲当たり1〜3分程度で、全21曲。
 歌も演奏も、たっぷりと間合いをとった隙間のあるもので、全体的な印象は極めて優雅。メロディーは概して憂いを帯びたような、少しもの悲しさが漂うものが多く、縦笛がペンタトニックのフレーズを素早く奏でる様などは、どこか邦楽にも通じる味わいがあります。パゾリーニが『王女メディア』で劇判に邦楽を使っており、それがミョーにはまっていたということがありましたが、ちょいとそれを思い出しました。
 古代ギリシャの音楽は現存しているものが極めて少ないらしく、前述のパニアグアのアルバムは、復元と同時に多くを新たに作曲したものでしたが、今回のコンラッド・ステインマンも同様らしく、リコンストラクションとコンポーズが共にクレジットされています。パニアグアのアルバムは、イントロからしてハッタリが効いており、全体的にもかなりムード演出が過剰になされていて、それがまたかっこよかったりしたんですが、このステインマンのアルバムは、それと比べるとだいぶ大人しめ。作家性や芸術性よりも、学究性が優先されているような、そんな印象。ケレン味はあまりありません。
 とはいえ、この大人しさも、これはこれでまた良きかな。古代というには、少し質感が滑らかすぎて荒い力強さには欠けますが、前述したように極めて優雅で美しいので、流しながらボーッと聴いていると、個人的にはかなり和めます。エキゾチックな味もあるので、例えば後期のDead Can Danceとか好きな人とかにもオススメできそう。
 40ページ近いブックレットが付いた、紙のアウターケース入り。解説は、仏語・英語・独語併記。歌詞は更にギリシャ語も併記されています。
[amazonjs asin=”B000BTE4LG” locale=”JP” title=”古代ギリシャの音楽 Import (MELPOMEN: ANCIENT GREEK MUSIC)”]
[amazonjs asin=”B00004TVG7″ locale=”JP” title=”Musique de la Grece Antique”]