“Hercules The Avenger” + “Hercules And The Black Pirates”

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“Hercules The Avenger(La Sfida Dei Giganti)” (1965) Maurizio Lucidi + “Hercules And The Black Pirates (Sansone Contro Il Corsaro Nero)” (1964) Luigi Capuano
 米盤輸入DVDのご紹介。例によってソード&サンダルものです(笑)。
 レグ・パーク主演のヘラクレスものと、アラン・スティール主演の変わり種ヘラクレスものの、2 in 1ディスクなんですが、内容に触れる前に、まずこのジャケからダウト!
 このジャケはレグ・パークでもアラン・スティールでもなくって、スティーヴ・リーヴス主演の『鉄腕ゴライアス・蛮族の恐怖』”Goliath And The Barbarians (Il Terrore Dei Barbari)” (1959)のポスター・ヴィジュアルだぁ〜ッ!
 とゆーわけで、このヒゲマッチョはリーヴスで、抱きついている女人は同映画のヒロイン、チェロ・アロンソです。どっちもこのDVDには、出てこないからねっ! ……まったく、いい加減な仕事してるなぁ(笑)。
 さて、ではまず”Hercules The Avenger”から。
 これは、ミスター・ユニバース・コンテストでスティーヴ・リーヴスのライバルで、アーノルド・シュワルツェネッガーの憧れのヒーローでもあった、レグ・パークの最後の映画出演作。
 とはいえ、実はその内容は、見せ場のほとんどは彼主演の旧作『アトランティス征服』”Hercules And The Captive Women (Ercole Alla Conquista Di Atlantide)” (1961)と『ヘラクレス 魔界の死闘』”Hercules In The Haunted World (Ercole Al Centro Della Terra)” (1961)の名場面をツギハギして、それに幾つか新しい場面を足して、全く別の話に仕上げた、というもの。そんなわけで、ちょっと「……インチキ(ぼそっ)」と言いたくなるタイプの作品ではあるんですが(笑)、まあそれを気にしなければけっこう楽しめる内容です。
 物語は、とある国の女王が、求婚者たちに言い寄られて悩んでおり、一方ヘラクレスの家では、彼の息子がライオン狩りの最中に大怪我を負ってしまう。ヘラクレスは神託を受け、息子の命を救うために大地の奥底に降りていくが、その途中で無人島に置き去りにされそうになったり、ドラゴンと闘ったり、煮えたぎる沼の上を綱渡りしたり、空飛ぶミイラに引っ掻かれたり(笑)と、さまざまな艱難辛苦を受ける。
 その頃、件の女王は、助けを求めてヘラクレスの留守宅を訪れ、その帰途でヘラクレスに似た男に会う。実はこの男は、大地の女神ガイアの息子アンタイウスで、ヘラクレスの不在時を狙って彼の後釜になろうとしていた。女王は、この偽ヘラクレスと共に国へ帰り、彼の助力で求婚者たちを追い出すが、偽ヘラクレスはそのまま宮殿に居座ってしまう。やがて、苦難の果てに無事息子の命を救って家に戻ったヘラクレスは、ある国で自分の偽物が暴虐をふるっていると知る。再び神託を受けたヘラクレスは、偽物を滅ぼすために立ち上がる……ってな内容です。
 でまあ、こういった中でのスペクタクルな見せ場、例えばヘラクレスの地底世界での冒険の数々とか、クライマックスの火山の噴火と都市の崩壊とかが、全て旧作の流用なわけです。本作オリジナルの部分では、こういったスペクタキュラーな見せ場は全くない。唯一それっぽいのは、偽ヘラクレス対ヘラクレスのシーンなんですが、これもギャラリーなしのタイマン勝負だしねぇ(笑)。まあ、肉弾戦としての魅力はあるけど(偽ヘラクレスは母である大地から足を離さない限り無敵である、なんていう神話伝説好きには嬉しい擽りもあります)、スペクタクル・アドベンチャーを見たいのなら、素直にオリジナルの二本を見とけって感じでしょうか。
 とはいえ、ツギハギのわりには上手く工夫されていて、話としては決して悪くない。あと、流用元の旧作は、『ヘラクレス 魔界の死闘』のホラー風味が加わった幻想性といい(監督は後にホラーの巨匠となるマリオ・バーヴァ)、『アトランティス征服』のスケール感や都市の崩壊の大迫力といい、どちらも良い出来映えなので、たとえ流用とはいえども、スペクタクル・シーンの見応えは充分あります。考えようによっては、これ一本で二本分美味しい……と言えなくもないし(笑)。
 ただし、いわゆる責め場は皆無。筋肉美は堪能できるし、艱難辛苦で苦しむとかはありますが、捕まって縛られたり、拷問されたりは一切なし。あ、野郎じゃなくても良ければ、ブロンド美女の髪吊りがあるけど(笑)。
 しかし、実は個人的に捨てがたいのが、偽ヘラクレスことアンタイウス役のジョヴァンニ・シャンフリーリア(Giovanni Cianfriglia)。
 マッチョではありますがバルクはさほどなく、身体のデカいレグ・パークと比べるとかなり細く見えるんですが、なんだかエッチな身体でねぇ(笑)。ゴードン・スコットやリチャード・ハリソンに少しウェイト足して、筋肉のキレも良くしたような体系……と言えばイメージが伝わるかな? 無理か(笑)。
 あと、顔。ブサイクではないものの華はあまりなく、奥目気味の地味〜な顔なんですが、これが私的にはかなりイケちゃうタイプなのだ。どことなく、ボクサーの平仲明信をもうちょっと男前にした感じで、顔としてはレグ・パークよりも断然好き(笑)。
 調べてみると、この人、このテのソード&サンダル映画ではけっこうクレジットされているんですが、他作品では正直印象に残っていません。もともとスタントやボディ・ダブルの方らしく、スティーヴ・リーヴスの代役もやっていたらしい。後にはケン・ウッドと名前を変えて、マカロニ・ウェスタンにも出ていたようなので、そっち系に詳しい方ならご存じかも。
 私的には、このジョヴァンニ君を見れるだけでも、充分オッケーな作品でゴザイマス。もう、ラブよ、ラブ(笑)。
 収録は、シネスコのレターボックスでスクイーズ。画質は、多少ボケたり滲んだりしている感があったり、フィルムの傷が目立つシーンもありますが、退色は気にならない範囲だし、米盤としては佳良な方。中の上クラスってとこでしょうか。独盤や仏盤の高画質に慣れちゃうと、正直かなり劣る感はありますが、日本で普通に売られているマイナーどころの旧作とかでも、これ以下の画質のときもあるし。字幕はなし。リージョンコードはフリー。両面ディスクです。
 因みに、元ネタの『ヘラクレス 魔界の死闘』は米盤が、『アトランティス征服』は仏盤があり、これがどちらも、メジャーのソフトそこのけの高画質&ハイクオリティ。前述のようにどちらも良作(あ、こーゆーのが好きな物好きにとっては、ですよ、あくまでも)ですから、興味のある方はお試しあれ。ご参考までに、ジャケ写を載っけときます。
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 左が『魔界の死闘』米盤、右が『アトランティス征服』仏盤。
 あ、もちろん『アトランティス征服』はPAL盤。音声も字幕も伊語と仏語のみ、英語はありません。
 さて、余談ですが、前述のジョヴァンニ君、実は以前ここで紹介した”Kino Kolossal” (2000)というソード&サンダル映画の歴史を綴ったドキュメンタリーでも、すっかりオジイチャンになって(とはいえ、えらくマッチョなオジイチャンですが)出演しています。
 で、当時の仕事仲間のミンモ・パルマーラ(先日紹介した『ロード島の要塞』の他にも、リーヴスの『ヘラクレス』のイフィトゥス役や『大城砦』のアイアース役で印象に残ってます。やはり後には、ディック・パーマーという名前でマカロニ・ウェスタンに出ているらしい)と一緒に、当時の裏話を語ったり、二人で剣戟やガン・アクションを再現してくれたり。
 このドキュメンタリー、言葉が判ればホント面白そうなんだけどなぁ……悔しい(笑)。
 もひとつ余談ですが、Reg Parkの表記が「レグ」か「レジ」かが悩みの種。
 最初に見たときはすんなり「レグ」と読んだんですが、こういった映画にリアルタイムで親しんでいた世代の友人が「レジ」と呼んでいたことと、何かの予告編(アメリカ版)でハッキリ「レジ」と発音していたので、一度は「レジ」でファイナルアンサーかとも思ったんですが、今度は前述の”Kino Kolossal”で、イタリア語の発言の中で「レグ」と発音していて、またグラグラ。
 しかし、彼は確かイギリス人だよなぁ……だが、allcinema ONLINEだと「レグ」だなぁ……でも、Reginaldの略だから、やっぱ「レジ」かなぁ……(笑)。
 では、続いて”Hercules And The Black Pirates”。
 え〜、ぶっちゃけた話、これはいわゆるソード&サンダルものじゃありません。フツーの海賊映画……ってか、それとも違うか。主人公は海賊じゃなくて、海賊と闘う政府側の人間だから。
 まあ、ハッキリ言って、かなり「安い」です。冒頭の海戦シーンとか、他の映画の流用だってのが見え見えで、炎上する帆船の映像とかに、スティールのアップ画像をオーバーラップさせて、戦闘に「参加」させてるあたり、ちょっと切なくなるし(笑)。もちろん本編に入っても、アクションはせいぜい甲板で斬り合いするか、小舟で帆船に乗り込むかくらいで、軍艦同士の海戦なんてスペクタクルは微塵もありません。
 舞台は、スペイン統治下のカリブ海かどっか。そこに何故かヘラクレスがいるわけですが、マチステものとかにあるみたいな、異世界にマッチョが召還されるパターンですらなくって、フツーに「いる」んですな。海賊退治に功績があった将官たちに、提督が名前を尋ねるシーンがあるんですが、他が皆「何たらメンドーサです」「ホセ何たらです」なんて、いかにもスパニッシュな名前を答えていくのに、スティールだけ唐突に「ヘラクレスです」だもん(笑)。まあ、エルキュール・ポワロみたいに、ファースト・ネームが「ハーキュリーズ」なだけかも知れないけど、そこんとこのツッコミも何もない(笑)。
 でまあ、提督の娘との身分違いの恋があったり(このヘラクレス君は、漁師の息子だそうな)、実は裏で海賊と通じている裏切り者の高官がいたり、少女が悪人に誘拐されちゃったり、話的にはお約束のテンコモリ。意外性はカケラもないので、安心して(笑)ゆっくりまったり観られます。劇判がいかにもスペイン風な、フラメンコか闘牛みたいな陽気なノリなのも、更にまったり感に拍車をかけます(笑)。
 主演のスティール君は、ヒゲなし&チュニックでも腰布でもないってのは、個人的な趣味から言えば「下げ」要素ではありますが、それでもマッスル・ムービー的には、それなりに工夫あり。
 まず、しょっぱなから宮廷の宴会で、力自慢の軽業師相手に上半身裸でレスリング。海賊との乱闘シーンでは、次第にシャツが破れていき、最後には上半身裸に。で、海賊にとっ捕まった後、泳いで逃げだすんですが、岸辺に着いたときには、ズボンも脱げていて下着一枚になってる(笑)。まあ、ズボンはすぐまたはきますが、上半身は何故かす〜っと裸のまま。で、めでたしめでたしのラストシーンだけ、革のベストみたいのを着るんですが、これがまたミョ〜に胸ぐりが深いベストで、何だかフェチ系ショップで売っている、ラバーのタンクトップみたいなシルエットなの(笑)。
 ……ってな具合で、このテの映画の見せ所としては、けっこうツボは押さえている……かな? まあ少なくとも、ボディビル男優は脱いでナンボというのは、制作者も心得ているようで(笑)。アクション・シーン全般が、剣戟よりも殴り合いメインなのも、いかにもマッスル・ムービー的でご愛敬。
 責め場としては、まあ捕まったヘラクレスが、海水が浸水してくる船倉に、鎖で縛られて放置されるくらい。まあ、鞭打ちとかに比べるとヌルい責め場だし、拘束自体もアッサリ抜け出してしまうんですが、そこから脱出までは、それなりに引っ張って見せてくれる。あと、この拘束が両手を頭上にあげる形で、黒いワキ毛がモジャモジャしてるのが見えるのが、個人的にはプラス・ポイント(笑)。
 ですが、実は個人的な最大の収穫は、別にありまして。
 前述した、軽業師とのレスリング場面。この相手のマッチョ軽業師が、何と、”Hercules The Avenger”の偽ヘラクレスこと、ジョヴァンニ・シャンフリーリア君なのだよ! ヒャッホ〜、すっげー得した気分(笑)。まあ、アップはほとんどないし、すぐに退場しちゃうんだけど、上半身裸だしヒゲもあるしね、嬉しい嬉しい(笑)。
 というわけで、このDVD、私的には「ジョヴァンニ・シャンフリーリア・パック」ということで、もう強引に「アタリ」判定(笑)。
 収録は、4:3のテレビサイズ。画質はかなりボケていて、”Hercules The Avenger”よりもだいぶ劣りますが、それでも何とか色は残っています。あ、でも最後のロールだけ退色していて、画面が急に赤くなっちゃうけど(笑)。まあ画質的には下の上ってトコでしょうか。
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