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単行本『冬の番屋/長持の中』表紙絵メイキング

 今回の単行本表紙をどんな感じにするか考えたとき、最近いくつか続けて手掛けた出版以外の作品で、墨で描いた白描に朱墨や金色墨汁などで色を加えるとか、或いは2〜3色の版画であるとか、そういった手法が自分でも新鮮で面白かったので、そのテイストを出せないかと考えました。
 因みに以下がその最近手掛けた作品で、順に、オーストラリアの企画展用に描いた『波濤 A』、日本のTシャツ企画展用に描いた『串刺し』、カナダTCAFの依頼で描いた『竜巻』になります。
wave1TagameTshirtTornado

 というわけで、担当編集氏に「クラフト紙っぽい色合いの用紙に特色3色刷りで版画風に」と提案し、予算の範囲で何が可能で何が不可能か、見積もりをとってもらいました。
 最初の段階では、黒(もしくは濃紺か焦げ茶)の線描をメインに、そこにポイントカラーとして赤と金を加えたいと希望。すると担当デザイナー氏&印刷所の方から「赤は沈むのでオペーク赤を使った方がいい、それも下地にオペーク白を敷いて2度刷りで」とのご提案。
 しかしそうすると、インクが一色増えてしまうので、さてどうしたものかと思っていたら、「こんな感じになります」というサンプルで、色の濃い用紙にオペーク白を敷いた上に特色で刷った見本を見せていただきまして、そこで「え、こんな感じになるのなら、逆に色を入れるのはやめて、オペーク白の効果を活かした方がカッコイイんじゃね?」と思いまして。
 予算的にもOKだったので、注意点などを確認の上《茶色の板紙に濃紺・オペーク白・金の三色刷り》に決定。
 条件が決まれば、後は描くだけ。
 用紙見本や刷り見本などをお借りして、頭のなかでイメージを固めつつ、コピー用紙に水色鉛筆と鉛筆で下絵を描いていきます。オペーク白の効果を活かしたかったので、翻る白褌を天使の羽に見立てた、ボンデージ毛深マッチョ天使の絵にすることにしました。
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 下絵が出来上がったところで、スキャンしてパソコンに取り込み、印刷時のタチキリ線入りテンプレート(サイズは後で描く原画原寸)上に配置して、構図を決定。
 絵自体の構成要素が少なく、しかも文字等はいっさい入らないデザインなので、余白のバランスなどがだらしなくなってしまうと致命傷。位置や大きさなどを、検証しながら厳密に詰めていきます。
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 構図が決まったら、それを原寸でプリントアウトして、ライトボックスで透かしながらドローイング。
 今回は「天使」というモチーフ上、いつもの自分の和のテイストと、洋の宗教画的なテイスト(具体的にはビザンチン絵画をイメージ)をミックスしてみたかったので、用紙は和紙ではなく洋紙(といっても単なる画用紙ですが)をセレクト。
 メインの描線は墨と毛筆ですが、前述のテイストを出すために滲みや掠れは使わず、描線もあまり走らせすぎず、かっちりと形を抑えるような描き方にしました。
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 坊主頭の表現は、金網+ぼかし刷毛でスパッタリング。
 体毛は、くっきり&緻密に表現したかったので、ペンを使用。
 で、今回、画材屋で見つけた日光の超研磨ペン先(丸ペン)というのを初めて使ってみたんですが、これが実に優れもの。普通の丸ペンに比べると引っかかりも少なく、繊細な線がスイスイ引ける。
 おまけに保ちも良くて、私の場合普段だと丸ペンは、16ページのマンガ原稿を描く間にも2本消費してしまったりするんですが、この超研磨ペン先は、この表紙イラストで目の粗い画用紙にみっちり描いた後、そのまま雑誌の連載マンガ16ページ用にも使いましたが、いまだにへたれておりません。
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 線画が出来上がったところで、それをスキャンしてパソコンに取り込み、Photoshopで使う版(色)ごとにレイヤー分け。背景は、用紙の色をシミュレート。
 体毛の描線を繊細&しっかり出したいので、製版時に網掛けをしないように頼み、作業もアンチエイリアスをかけない2値/1200 dpi/印刷原寸で進めます。
 背景のパターンはIllustratorを使用。
making_gifAnimation

 レイヤー構成は、こんな感じ。
making_layer

『天使 B』の方は、右側の布が煩く感じられたので、最終的には消しました。
 この画像は、仕上がりイメージに近づけるために、ちょっとレイヤーの透明度をいじってみたもの。
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 いろいろと初めての試みもあるので、果たして自分のイメージ通りのものが出来上がるか、いささか不安もあったんですが、いざ出てきた校正刷りがもうバッチリの仕上がりで、安心すると同時に大喜びしました(笑)。
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『田舎医者/ポチ』表紙絵メイキング

 本日、一般書店&ネット書店でも『田舎医者/ポチ』発売になりました!

田舎医者/ポチ 田舎医者/ポチ
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2012-04-13

 というわけで、発売記念に表紙絵のメイキングなんぞを。

●下絵
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 B4のコピー用紙に鉛筆で下絵を描きます。今回の狙いは《レトロモダンなテイスト》なので、いつもの絵とは少し形の取り方を変えています。具体的には、形を少しリアルから装飾系に振って単純化し、線も減らしました。

●白描
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 下絵をライトボックスで透かしながら、墨と筆でドローイングします。線に若干の粗さや力強さ、木版画的なぎこちなさといった味が欲しかったので、通常使う紙より目が粗い、普通の画用紙を選び、筆も小学生用の安い水彩筆を使ってみました。

●スキャニングと補正
 下絵と白描は、それぞれ位置や形を合わせて、スキャナーでパソコンに取り込みます。白描のみ、紙白を飛ばして透明セル状にし、細かなゴミを取るなどの補正をしておきます。

●マスク作成(背景)
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 下絵をIllustratorで開き、それをテンプレートにして形をとっていきます。これも木版画風のシャープな感じにしたいので、鉛筆ツールを使って一発描きでガシガシ描いていきます。
 本番の彩色時には、レイヤーの透明度をロックして彩色用マスクと兼用したいので、パーツごとにレイヤーを分けておきます。色は後から調整するので、この段階では適当に。
 画像は左から、実際の作業画面、アウトライン表示した状態、レイヤー構成……になります。

●マスク作成(人物)
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 今度は白描をIllustratorで開き、それをテンプレートに形をとります。こちらはドローイングの線とぴったり合わせる必要があるので、ペンツールを使います。

●色彩設計
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 背景用と人物用マスクを、それぞれレイヤー構造を維持したままPSD(350dpi)で書き出し、Photoshop上で合成し、更に白描のレイヤーも読み込んでから、全体の最終的な色彩設計をします。決まったら、レイヤーを結合せずにそのまま保存。これがそのまま彩色用の本番ファイルになります。

●彩色
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 彩色用ファイルをPainterで開いて、さきほど決めた色彩設計通りに、スポンジツールを使ってカスレや色ムラを出しながら塗っていきます。
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 奥から手前へ、レイヤー構成通りに、ただひたすら塗ります。レイヤーの透明度をロックしているので、はみだしなども気にする必要なし。デジタルでステンシルをしているようなもので、実はかなり楽チンな手法(笑)。
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●そんなこんなで、けっこうあっという間に完成(笑)。
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Photoshopによるマンガ原稿の仕上げ動画


 先日、ふとした拍子に「Mac OS Snow Leopard以降のQuickTime Playerでは、PCの作業画面の動画キャプチャができる」ということを知って、なんか試してみたくなったので、いつもやっているマンガのPhotoshop上での仕上げ作業をムービークリップにしてみました。
 いざ録画した素材を編集する段になって、ようやくPCの壁紙がちょっとアレなことに気づき、う〜む、もっと無難なものに変えておいた方が良かったか……などと思いましたが、もう後の祭り(笑)。というわけで、画面の真ん中でこっちを睨み続けるヴィクラム様が気になるかもしれませんが(因みに映画『Raavanan』のスチル)、まあ気にしないでください(笑)。

 基本的には、マンガ1ページ分の作業をそのまま丸々録画して、それを4倍速と8倍速を織り交ぜて再生したものです。
 但し、普段ならアクションとバッチを使って、複数ファイルを一度にまとめて処理している作業(この場合は【スキャン画像補整>2値化>セル化>ゴミ取り準備】まで)や、ファンクションキーを割り振ったアクションで、ボタン一発で処理している作業(【グレー画像の網点化】や【完成画像のグレースケールから白黒2値への変換】)などは、そのままだと何が起きているのかちょっと判りにくかったので、この動画クリップ制作用に、後から改めてアクションを使わずに再作業したものを録画した部分もあります。
 また、最後に出てくる完成画像には、キャラクターの上腕にタトゥーが入っていますが、作業動画にはそれが含まれていません。
 というのも、このキャラがタトゥーを入れているということを、すっかり失念して数ページ作業を進めてしまい、気づいたときには既に作業画面の録画も終えてしまっていて……という事情がありまして(笑)。なんか、それ用にわざわざ再作業するのもアレだよなぁ……ってな感じで、そこはそのままにしてしまいました。
 いちおうここで補足しておきますと、タトゥーはベクター画像のパスデータを、Photoshopのカスタムシェイプに登録しておき、それを自由変形とワープを使って形を整えて貼り込んでいます。

 動画制作に関しては、QuickTime Playerでの録画は【ファイル>新規画面収録】で行えます。
 再生スピード変更はQuickTime Proを使って、【ファイル>書き出す>イメージシーケンス】で目的の再生スピードに合わせてコマを落とし、それを再度【ファイル>イメージシーケンスを開く】で動画に戻しています。編集も、これは時系列で繋げばいいだけなので、QuickTime Proの【コピー>ペースト】で大概は済ませています。
 こうして出来た作業動画を、iMovieに読み込み、頭の写真と最後の画像を足し、BGMやテロップを付けています。
 BGMは昔GarageBandで作った曲を使用。Logic Expressでブラッシュアップしたフルコーラス版は、ここにアップしています。

膿盆とか

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 相棒と熊と一緒に町に出たら、とある店頭で、歯医者さんとかで「ぺっ!」てするときに使う、豆みたいな形のステンレス皿を発見。
「あ〜、いいな、これ、欲しいかも」なんて言ってたら、相棒が「じゃ、誕生日プレゼントに買ってあげよう」と。
 安価なものなんですが、べつに欲しくもない高額なものを貰うより、値段に関係なく、その時に欲しいものが貰える方が嬉しいので、喜んで買って貰いました(笑)。

 で、その店頭で初めて知ったんですが、この皿って、正式名称が「膿盆(のうぼん)」っていうんですな。
 最初「うみぼん」かと思って、ちょっと「うげ」ってなった(笑)。
 どうして、この膿盆を欲しかったかというと、ペン皿に良さそうだな、と思って。
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 どう? ちょっとカッコ良くない?(笑)

スクリーントーンとかWordPressとか

 訳あって、久々にスクリーントーンなんぞを使いました。
 マンガの仕上げをデジタルに切り替えて以来なので、切ったり貼ったり削ったりするのは、およそ10年ぶりということになるんですが……ひ〜、こんな面倒くさいシロモノだったっけ、トーンって(笑)。
 まあ、もともと私はトーンテクがある方ではなかったし、マンガ制作作業の全行程の中でも、一番キライなのがトーン貼りってな感じだったんですが、10年もブランクがあると、もともと得意でもなかった技術が、更に衰えていてビックリです。このスピードのノロさでは、アシスタントも勤まりそうにない。
 って、正直アシスタントってやったことないんで、実際はどんなものなのか、良く知らないんですけど(笑)。

 さて、スクリーントーンというと、圧着するための道具も色々あって、専用のヘラとかもあるんですけど、私の経験上では、一番便利かつ効果的(キレイに圧着するための時間も手間もかからない)な道具は、Zippoのオイルライターのお尻です。これが、角に程よい丸みがあって、持ちやすく力も入れやすく、しかも幅広なので一度で押さえられる面積も広い。
 こんな感じで持って擦ります。
zippo
 アナログ仕上げでスモーカーの方は、ぜひ一度お試しあれ。いや、スモーカーじゃなくても、トーン使うひとだったら、そのためだけにZippoのオイルライター買ってもいいんじゃないか、ってなくらい、個人的には使いやすいと思っています(笑)。
 あ、ただし、使っていくうちに、ライターのお尻がハゲチョロケになります(笑)。

 それとは別件で、ここ数日、本家サイトのサーバにWordPressをインストールして、ちょこまかいじっております。
 Twitter全盛時代に、いまさらブログソフトをいじり始めるなんて、我ながら周回遅れの気がしなくもないんですが、ここんところ本家サイトの情報告知系のページ更新が、いちいちHTMLを手打ちして作らなきゃいけないのが面倒くさくて、ついつい放置気味だったもんで、そこだけ手軽に更新できるブログ式に切り替えたかったもので。
 ぶっちゃけ私は、PHPだのMySQLだのと言われても、何じゃソレってな感じでサッパリなんですが、ネット上のマニュアルと首っ引きでやってみると、けっこう何とかなるもんですな。データベース構築のところで、一瞬ちょっと躓いたくらいで、後はわりとあっさり出来ました。
 これだったら、前に新設したスケッチブログも、既成のブログサービスを借りるんじゃなくて、サイト内に自分で作っちゃえば良かったかも。
 一回インストールしてしまえば、テンプレートも豊富にあるし、日本語版もあるし(とはいえ、私が作りたかったのは英語表示ページだったので、日本語版だと、ブログ上の表示が自動的に日本語に翻訳されてしまうのを、英語表示に戻す方法がちょっと判らなかったので、試行錯誤の結果、現在は英語版を使っております)、あとは普通のブログサービスを利用するのと大差ないですな。
 これでフリーだとは、何ともありがたい限り。

デジコミ用、Photoshopで作るスポットライト風効果

 前回の記事の新作マンガ『スタンディング・オベーション』の背景には、下図のような画面効果が良く出てきます。
spot_00_sample
 スポットライトをクロスフィルタ越しに見たような効果で、以前『闘技場〜アリーナ』を描いたときに作ったものの流用なんですが、良い機会なので作り方のTips解説なんぞを。

 まず、新規ファイルを作成します。解像度200dpi、モードはグレースケールで、天地左右5センチ四方の正方形の画像を作ります。
spot_01_menu_newfile
 解像度が200dpiと低いのは、ライトの光の筋を適度な太さにするため。後述するフィルターで作る効果との兼ね合いで、あまり高解像度の画像で作ると、筋が細かくなりすぎるので、まずは低解像度で作成して、それを最後に解像度を上げる方法をとります。
 サイズは適当でいいですけど、必ず正方形にすること。
 上記の設定で作った新規ファイルが、これ。
spot_02_img_newfile
 ……って、わざわざキャプチャ画像を出すほどのもんじゃなかったか(笑)。

 新規レイヤーを作成して、その中心に黒で正円を描きます。
spot_03_layer_BR
 楕円選択ツールを、shiftを押しながらドラッグして、正円の選択範囲を作り、それを黒で塗りつぶすのが良いでしょう。円の大きさは、直径が正方形の一辺の1/4〜1/5くらいを目安に。

 黒の正円を、画面の中心に配置します。
spot_04_img_BR
 これは正確に中心に置かなければいけないので、いったん「command + A」で画面全体を選択してから、「レイヤー>レイヤーを選択範囲に整列>垂直方向中央」と、同「水平方向中央」を使うといいでしょう。

 黒丸のレイヤーをコピーします。
spot_05_layer_copyBR
 コピーしたレイヤーはいったん非表示にして、元のレイヤーを背景と結合します。
spot_06_layer_invisibleBR

 背景に「フィルタ<表現手法<風」をかけます。
spot_07_menu_WR1
 種類は「標準」、方向は「右から」。
 すると、こんな感じになります。
spot_08_img_WR1
「command + F」で、同じ設定のフィルタをもう一度かけます。
 すると、こんな感じになります。
spot_09_img_WR2
 同じ「風」フィルタを、今度は方向を「左から」にしてかけます。
spot_10_menu_WL1
 こうなります。
spot_11_img_WR1
「command + F」で、もう一度かけます。
spot_12_img_WR2

 次に「フィルタ>ぼかし>ぼかし(移動)」で、角度を0、距離を75ピクセルで、黒丸に移動ぼかしをかけます。
spot_13_menu_BLd
 距離はお好みで構いませんが、中心部があまり薄くならないように、黒が残る感じにします。
 こうなります。
spot_14_img_BLd

 ぼかした黒丸のある背景をコピーして、レイヤーにします。
spot_15_layer_copyBL1
 コピーしたレイヤーを、「編集>自由変形(command + T)」を使って、横に引き延ばします。
spot_16_menu_TR
 このとき、黒丸の中心がズレるとまずいので、必ず「option」キーを押しながら、変形の中心が画像の中心になるようにして、左右どちらかのハンドルをドラッグします。
 こうなります。
spot_17_img_TR
 この左右のボケ足の伸び具合が、そのままスポットライトの光軌の長さになります。

 このレイヤーをコピーして、合成モードを「乗算」にします。
spot_18_layer_copyBL2multi
 コピーしたレイヤーを、「編集>変形>90°回転」します。
spot_19_menu_R90
 時計回りでも、半時計回りでも、どちらでも可。
 すると、こんな感じの黒十字になります。
spot_20_img_R90

 最初に作って非表示にしておいた黒丸のコピーレイヤーを、表示状態にします。
spot_21_layer_BRvisible
 その黒丸レイヤーを、「自由変形」を使って、黒十字の交叉点からちょっとはみ出るくらいの大きさに拡大します。
spot_22_menu_TRBR
 このときも、拡大の中心がズレないように「option」と、正円のプロポーションが崩れないように「shift」を押しながら、コーナーハンドルをドラッグすること。
 こうなります。
spot_23_img_TRBR

 拡大した黒丸のエッジを、「フィルタ>ぼかし>ぼかし(ガウス)」を使ってぼかします。
spot_24_menu_BLBR
 ここでは半径9ピクセルでぼかしをかけてますが、数値はお好みで。このボケ具合で、スポットライト中心部のクッキリさが変わります。
 こうなります。
spot_25_img_BLBR
 これができたら、もう画像を統合してしまいましょう。

 統合したら、「イメージ>画像の回転>角度入力」で、45°回転させます。
spot_26_menu_R45
 これまた、時計回りでも反時計回りでも、どちらでも可。
 こうなります。
spot_27_img_R45
 切り抜きツールで不必要な余白を削除し、「command + I」でネガポジ反転させれば、出来上がり。
spot_28_img_nega

 この画像を、最終的に使用する解像度に変更(私の場合は600dpiか1200dpi)して使います。
 その際、「縦横比を固定」と「画像の再サンプル」にチェックが入っていて、手法が「バイキュービック法」になっているかどうか確認すること。

 では、実際の使い方も見てみましょう。
 グラデーションを付けた別画像の上に、スポットライトの画像を、自由変形を使いながら、好きな場所・好きな大きさで配置します。
spot_29_img_use
 スポットライトのレイヤーの合成モードを「スクリーン」にします。
spot_30_layer_use
 すると、こんな感じになるわけです。
spot_31_img_useresult
 もちろん、角度なんか付けてみてもOK。
spot_32_sample2

 ただし、光軌の角度が一つ一つバラバラだと不自然に見えます。こういった光軌は、クロスフィルタなどのレンズフィルタによって生じるものなので、一つのカメラから見える全てのライトの光軌は、全て同じ角度になっていることが原則なので。
 というわけで、角度を付ける場合は、最初のライトに角度を付けておき、それをコピーして使うのが良いと思います。

 以上、お粗末様でした。

マシン・トラブルと新環境

 マンガの締め切り直前に、マシントラブル発生。
 よりによって締め切り直前に……と思いつつ、しかし私の場合、マンガ制作でコンピュータは仕上げに段階でしか使わない、つまりベタ塗りとトーン貼りだけ(「バディ」の原稿に関してはネーム入れも)なので、まあ必然っちゃあ必然か(笑)。

 因みに結論から先に言うと、まあ何とか間に合いました。
 ここ数年はずっと、メインの作業にはMac mini G4 + Pantherっつー、かなりレトロな組み合わせを使っておりまして、もう一台、Intel iMac + Leopardってのもあるんですが、そっちはホビーユースのみで、まだ仕事には殆ど使っていなかったんですな。
 とゆーのも、マンガの仕上げで最もよく使う、PowerToneっつーPhotoshop用のプラグインがネックでして。こいつが、いつまでたってもバージョンアップしてくれないので、Intel Macに入れているPhotoshop CS4に正式対応していない。
 加えてPhotoshop CS4は、スキャナー機器のTWAINにも対応していないし、逆に、Mac mini G4に入っているPhotoshop CS2 + PowerTone 3っつー組み合わせには不満がなかったので、まあ古い環境のままでズルズルきていたわけです。
 ところが、このMac mini G4がイカれやがった。「?」マークが点滅したまま、起動しないんですな。
 いくつか応急処置を試してみたものの、効果なし。これ以上マジで対処していると、締め切りブッチの危機なので、急遽Intel iMacで仕上げをすることに。

 ただ幸いなことに、以前あれこれ調べたときに、Photoshop CS4でもRosettaで起動すれば、PowerTone 3もTWAIN機器も使えるということは判っていた。
 で、その時点で、念のためにIntel iMacにも、PowerTone 3のインストールは済ませていたし、トーンファイルや、スキャナーの初期設定や、Photoshop用のマンガに使うデータ(アクションとかスウォッチとかトーンカーブとかブラシとか、エトセトラ、エトセトラ……)なんかはコピーしていたし、それ以外にも、必要なファイルは常に外付けHDにバックアップをとっているので、まあ要するに、テーブルの上を片付けてマシンの配置を変えて、あとは機械を繋ぎ直しさえすれば、Intel Macでも作業は問題なく出来るというわけ。
 仕事である以上、サブマシンは常に確保していないとね。

 とはいえ、いざ作業を始めると、それでも幾つか小さなトラブルにはぶつかりました。
 例えば、タブレット(Intuos 3)の動作が変。考えてみると、まだIntel iMacには繋いだことがなかったので、急いでWACOMのサイトからドライバをダウンロード。
 ところが、これがヘンに時間がかかって(残り4時間とか表示される)、挙げ句の果てにはタイムアウトしてしまった。しかし、それまで無線LANでネットに繋いでいたIntel iMacを、急遽イーサネット・ケーブルを背面にブッ刺して有線接続にしたら、あっという間に問題解決してダウンロード終了。
 本来ならばここで、無線LANに使っているAir Macのアレコレとかも、再検討しなきゃならないんだろうけれど、そんな余裕はないので後回し(笑)。

 肝心のPowerTone 3の方は、まあ基本的には問題なく作動してくれるんですが、Photoshopのアクションで組んでいるトーン貼り(砂目とかドットとか、貼る面積や場所に左右されないトーンのうち、自分の定番の何種かをアクションに組み込んでいます)を何度か実行すると、「メモリが足りません」というアラートが出て使えなくなったりしました。
 これは、いったんPhotoshopを終了してから再度立ち上げると解決。アクションを使わないトーン貼りのみだと、このアラートも出ず。

 TWAIN機器の方も、問題なく作動してくれたんですが、スキャニング中にTime Machineのバックアップが始まると、何だか挙動不審になるような気配が。
 時間がないので正確な判断ではないですが、とりあえず、マンガの仕上げ作業中は、Time Machineは手動でオフにしておきました。

 あと、慣れの問題もあります。
 Photoshop CS4では、CS2と比べて、手のひらツールでビューを移動すると、ヘンにグニョーンと動いたり、止めたつもりがビミョーに動き続けて気持ち悪かったり、ドキュメントを複数開いたら、デフォルトでタブ表示になっていて使いにくかったりしたんですが、そこいらへんは初期設定をアレコレ切ったら解決。
 CS4から出来るようになったビューの回転は、これはなかなか便利で大歓迎なんですが、前述した初期設定で必要のない項目を切った際に、「OpenGL描画を有効にする」も切っていたら、このビューの回転も使えなくなってしまい、一瞬、原因が判らずに戸惑ったり。

 逆に、良いポイントもいろいろあり。
 まず、何てったって処理スピードの違いが大きい。
 というのも、「バディ」の誌面が大きくなったのを契機に、作業サイズを、それまでのA5原寸/600 dpiから、B5原寸/1200 dpiに変えたんですが、正直なところ以前のMac mini G4 + Photoshop CS2の環境では、かなり重くてストレスでした。

 ちょっと話が逸れますが、何でサイズと一緒に解像度も上げたかというと、掛けアミのツブレ具合とか垂直水平の流線の出具合(特にヌキ部分)で顕著ですが、やはり解像度を上げるとそれなりの効果はあるんですよね。まあこれは、私が最近ペンタッチを変えて、それまでのイリヌキがハッキリした一本線から、よりザクザクとラフに重ねて線を引く度合いが増えたところ、従来の600 dpiでは追っつかない部分が出てきたってこともあります。
 くっきりした線の再現性では、600 dpiでも問題はなかったんですが、「筆勢主体、荒れやかすれも上等!」な線だと、線のニュアンスが失われると、それが「味」ではなく「汚れ」になってしまう。いささか逆説的ではありますが、それが自分なりに得た結論。
 あ、でもこれはあくまでも、白黒二値の場合ですよ。グレースケールやカラー画像だったら、そこまで解像度の影響はないと思います。よく言われるように、350dpiもあれば充分。あと、白黒二値でも、スキャンではなくデジタル描画の場合も、これまた話は別だと思います。

 さて、話を戻しますと、前の環境と比べると、こっちのIntel iMac + Photoshop CS4は、いくらRosettaで起動しているとはいえ、そういったストレスはなく、サクサク作業ができます。
 私の場合、スキャンした線画をクリンナップするのに、アバウトに「サイズ変更>トーンカーブ補正>線画のチャンネル保存>線画のセル化>ゴミ取りを容易にするためのゴミのピックアップ」といった作業をアクションで組み、それを複数ファイルに対してバッチで自動処理しているんですが、以前はそれを始めると「やれやれ、一休みするかい」と、ちょいとベッドにゴロンと横になったりしていたところ、今回は「ちょっと一服……」程度の時間で終わってしまったり(笑)。
 こんな具合で、ファイル一つ開くにも保存するにも、以前よりだんぜん早くなって大助かり。

 あと、ショートカット・キーの扱いが変わったのも、使いやすくなりましたね。
 例えば私の場合、作業中によく使うショートカットで、「鉛筆」や「ブラシ」の「B」や、「バケツ」や「グラデーション」の「G」なんてのがあるんですが、これが複数回押すと、順番にツールが切り替わるようになった。最初はこれ、その仕組みに気付かなくて、「うが〜、さっきまでバケツだったのに、なんで勝手にグラデーションに変わってるんだよ、使えね〜!」とかムカついていたんですが、いったん慣れてしまったら、便利だったらありゃしない(笑)。

 というわけで、このまま新環境でもぜんぜんオッケー、それどころか、おそらく結果としては作業効率も上がって万々歳……と言いたいところなんですが、現実問題として、PowerToneの扱いを考えると、果たしてこれもどこまで保つやら……。
 CELSYSさん、ホント何とかしてよね……と、Mode時代からの付き合いの身としては、声を大にして言いたい。
 Comic Studioもいいソフトだとは思うし、私も部分的には使っているんですが、でも総合的には、私みたいにPC上でのペン入れはせず、仕上げだけをデジタルでやりたい場合は、あんまりアドバンテージないんスよ。
 オンラインストアも閉じてしまい、入手ルートも確保されていない現状では、こんなこと愚痴っても無駄かもしれないけど。

 そんなこんなで、環境移行もしたことだし、前にここで当時のデスクトップ画像を披露しているので、新環境の画像もアップしときます。
imac_desktop
 今度のデスクトップは、前にここここで書いた、ポーランドのTV版『クォ・ヴァディス』で巨人ウルスス役を演じていた、柔道選手ラファウ・クバッキの勇姿。今はもうなくなっちゃったらしい、本人の公式サイトからダウンロードできた壁紙です。
 色だけ、自分でセピアにいじったんだったかな? デスクトップがあんまりカラフルだと、絵を描いたりするには何かと邪魔なので。

『髭と肉体』カバー絵メイキング

 新刊単行本『髭と肉体』のカバー絵のメイキングです。
 とはいえ、メイキング用に途中経過画像を保存していたわけではないので、残っている素材やレイヤー統合前の画像を使った、簡単なプロセス解説程度ですけど。

 まず最初に、編集さん(&営業さん)のラフチェック用に、スケッチを描きます。
 水色の色鉛筆でアタリをとり、その上から鉛筆で形を描き起こします。
f+b-01a-draft
 ブログ用に、トーンカーブで描線を強調して、アタリ線とフィニッシュ線の関係を見やすいようにしてみました。
f+b-01b-draftdetail

 ラフスケッチができたら、編集さんに見せて確認をとります。
 今回は、あらかじめ表紙デザインのテンプレートをいただいていたので、スケッチと一緒に、アバウトなトリミング案も送りました。引きのA案と、寄りのB案の、二つを提案して、自分はB案の方が良いと思うが、いかがだろうかと付記。
f+b-02-dummy
 結果、図柄は基本的にOK、トリミングはB案で決定。
 ただ、営業サイドから、キャラクターをカメラ目線にしてくれというリクエストあったので、若い方のキャラの目線を、カメラに向けることで対処することにしました。

 本番用の線画を描きます。
 ラフスケッチを、そのまま下絵として使います。下絵をケント紙の下に敷き、ライトボックスで透かしながら、ペンとインクでドローイング。
f+b-03-drawing
 基本的には、マンガと同じタイプの絵ですが、量感は彩色で出すので、陰影系のタッチは入れないことにしました。

 ドクロのタトゥーは、輪郭線を使わないこともあり、Illustratorで作ることにしました。
 下絵をIllustratorに読み込んで、ペン、ライン、ブレンドなどを使って、タトゥーの図柄を描いていきます。カラー・イラスト用ということもあり、マンガ本編で使ったデザインよりも、少々ディテールを増やしてあります。
 判りやすいように、線を赤にして塗りをなしにしてありますが、実際に使ったファイルは、線をなしにして塗りを黒にしたものです。
f+b-04a-tatoo
 タトゥーの図柄を、本番のペン画と位置を併せ、Photoshopに書き出してマスクとして保存します。
f+b-04b-tatoomask

 Painterで背景の壁を描きます。
 描き方は簡単。まず、壁の基本色にグラデーションで明暗を付けた、複数の画像を用意しします。次に、本番画像のクローンソースに、そのグラデーション画像を指定して、カラーをクローンソースにしたスポンジツールで、テキトーにポポポポポンと塗っていけば、この画像の出来上がり。
f+b-05-bg1
 次に、新規レイヤーを作って、壁のひび割れや剥落を描き込みます。それがこの画像。
f+b-06-bg2
 次に、また新規レイヤーを作って、合成モードをフィルタか乗算にして、そこに寒色系で影を描きます。
f+b-07-bg3
 背景はこれでオシマイ。

 Photoshopで、パスを使って彩色用のマスクを作ります。
 使ったパスとマスクの数は、ご覧の通り。
f+b-08-mask&pass

 再びPainterに戻って、さっきの彩色用マスクを選択範囲として読み込みながら、フィギュアを彩色していきます。
f+b-09-fatherskin
f+b-10-sonskin
f+b-11-colorall

 彩色が一通り終わったら、残りの作業はPhotoshopで行います。

 タトゥーを入れます。
 肌のレイヤーを複製して、Illustratorで作ったタトゥーのマスクを選択範囲として呼び出し、選択範囲を反転させた後、タトゥー以外の肌を消去します。
f+b-11a-tatoo01
 そうして作ったタトゥーの肌のベースレイヤーに、レイヤー効果のベベルとエンボスを使って、うっすらと皮膚の盛り上がりを作ります。わざとらしくならないように、最終的に判るか判らないかくらいの、ギリギリのラインを狙います。
f+b-11a-tatoo02
 その上に乗算レイヤーを作り、同じタトゥーの選択範囲を使って、ノイズを加えたダークグレーでタトゥーの色を入れます。
 全体を同じ濃さにしてしまうと、肌の立体感から浮いてしまうので、ライト部とシャドー部ではグレーの濃さを変えます。具体的には、肌レイヤーをグレースケールに変換したものを、マスクおよび選択範囲として使って、肌の明暗とタトゥーの明暗を揃えています。
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 フィギュアの下半分に、新たな乗算レイヤーを使って、シェードを入れます。
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 最後に、調整レイヤーを使って、全体の色調を整えます。
 単行本のカバー用イラストなので、ちょっと派手めがいいかと思い、彩度とコントラストを高めにしてみました。
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 以上。

カートゥーン調とか

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 カートゥーン調のデフォルメでラクガキをしていたら、興が乗ってきたので、彩色してみることにしました。
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 ボールペンで描いたラクガキを、スキャンしてPCに取り込み、表示を薄くして下絵にします。
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 下絵をPainterで開き、新規レイヤーを作成します。そこにテキトーな色で、肌からペン入れしていきます。ツールは「先丸ペン10」を使用。
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 肌のペン入れが終わったら、再度新規レイヤーを作成して、髪・ヒゲ・眉毛・体毛のペン入れ。終わったら、また新規レイヤーを作成して、今度は目をペン入れ。
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 こんな調子で、一つのパーツにつきレイヤーを一つずつ使って、ペン入れしていきます。作業上の判りやすさ優先で、それぞれの色を決めているので、こんなギンギラギンの色遣いになりました(笑)。
 全部ペン入れできたら、PSDで保存してPainterを終了。
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 ペン入れした画像をPhotoshopで開き、まず全体のシルエットのマスクを作ります。シンプルな線画だったので、背景部分を自動選択し、それを3ピクセルほど拡張してから、選択範囲を反転させるだけで済みました。
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 線画と背景の間に新規レイヤーを作成し、そこにさっきのマスクを使って、シルエット全体を肌色でベタ塗りします。とりあえずテキトーな色で塗りつぶしてから、「イメージ>色調補正>色相・彩度」で調整すると楽。
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 肌の色が決まったら、肌の線画レイヤーを選択して、やはり「イメージ>色調補正>色相・彩度」を使って、線画の色を肌の色に合ったものに変えます。
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 次に、肌の色レイヤーの上に、髪・ヒゲ・眉の彩色用の新規レイヤーを作成し、パスで選択範囲をとって塗りつぶします。カートゥーンのイメージなので、金髪っぽく黄色にしてみました。色が決まったら、それに合わせて線画の色も変更。
 同じ手順で、白目、黒目、乳首と、着色していきます。
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 全体の着色が終わったら、こんな感じに。昔のアメコミのヒーローっぽい配色にしてみました。
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 黄色のパーツに、ゴールドをイメージした「照り」を入れてみます。黄色パーツの色レイヤーの上に、乗算モードで新規レイヤーを作成し、エアブラシツールでシャドウを入れます。
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 次に、一番上にスクリーンモードで新規レイヤーを作成し、やはりエアブラシでハイライトを入れます。何で一番上かというと、ハイライトは黄色のパーツの線画にも乗せたいので。
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 ちょっと画面が淋しいので、シャドウも入れます。
 一番上に乗算モードで新規レイヤーを作成し、彩度の低い薄紫色で、全体にまとめてシャドウを入れます。パスで形をとって塗りつぶし、ガウスぼかしでボケ足を作ってから、不要な部分を消しただけという簡単手法(笑)。
 これで終わり。
 狙い通りカートゥーンっぽくなったかな?
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 因みに、色替えも簡単です(笑)。