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“The Camp on Blood Island” (1958) Val Guest

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“The Camp on Blood Island” (1958) Val Guest
(イギリス盤DVDで鑑賞→amazon.co.uk

 1957年制作のイギリス(ハマー)映画。二次大戦時、東南アジアの島にある日本軍の戦争捕虜収容所で、サディスティックな所長に苦しめられる連合軍捕虜たちを描いた、戦争エクスプロイテーション(?)アクション映画。
 監督は同じくハマー・プロで『原子人間』『宇宙からの侵略生物』などを撮ったヴァル・ゲスト。

 東南アジアのとある島にある、日本軍の戦争捕虜収容所は、サディスティックな所長ヤマミツ大佐とその部下サカムラ大尉に支配されており、連合軍の捕虜たちは暴虐と飢えと疫病に苦しんでおり、今日もまた、脱走を図った一人の捕虜が銃殺された。
 捕虜たちのリーダーであるランバート大佐に、民間人(多分)で近くの女性捕虜収容所に妻と子供もいるビーティは、サボタージュなどはせずに日本軍と穏やかに交渉すべきだと言うが、ランバート大佐はそれを是としない。
 実はランバート大佐は、他の捕虜には内緒で、オランダの民間人捕虜ヴァン・エルストと一緒に、密かに無線機を組み立てていた。そしてある日、日本軍の壊れた無線機の修理部品が到着し、ヴァン・エルストはそれを盗みに行く。
 そしてある情報を得たランバート大佐は、ビーティら他の捕虜たちに、自分の計画を打ち明ける。それは、過去にも捕虜虐待で問題を起こしているヤマミツ大佐が、もし日本が負けたときには、証拠隠滅のために捕虜全員を虐殺して、この収容所を無に帰そうとしているということだった。
 そして何と、戦争は既に2日前に日本の降伏で終わっており、ヤマミツ大佐らは無線が故障しているために、その事実を知らずにいたのだった。ランバート大佐とヴァン・エルストは、虐殺を避けるためにそれを日本軍に知らせまいと暗躍していたのだった。
 しかしそこに米軍の飛行機が墜落し、パラシュートで脱出した米兵ベラミー中尉が捕虜になってしまう。終戦を知っている彼の口から、果たしてその事実はヤマミツ大佐に知られてしまうのか、そして捕虜たちの運命は……? といった内容。

 50年代のB級映画ということで、ヤマミツ大佐(ロナルド・ラッド)もサカムラ大尉(マルネ・メイトランド?)も、およそ日本人には見えないとか、この二人を筆頭に他の日本兵の喋る片言の日本語もシッチャカメッチャカだとか、まぁおかしな所はあれこれあります。また、ベラミー中尉の乗る飛行機の飛来〜撃墜〜脱出を効果音だけで描くとか、いかにも安い部分もあれこれ。
 ただ、ストーリー自体は、そこそこ上手くひねりを入れてあったり、展開にもあれこれ工夫があるので、当初想像していたよりはけっこう面白く見られました。
 軍人やら医者やら神父やら、キャラクターも色々と取り混ぜて良く立ててあるし、前半は収容所内のドラマ、中盤にチェンジ・オブ・ペースを入れ、後半は秘密作戦&少人数での脱出行などをあしらい、クライマックスは銃撃戦という構成も、娯楽映画的に手堅くて佳良。
 惜しむらくは悪役二人の最後が、エモーショナルな要素を加味してはいるものの、イマイチあっけなくて盛り上がらないのと、ラストも、まぁ流れとしては判るんですが、これまたイマイチあっけないところ。原因は、肝心のヒーローであるランバート大佐のキャラが、さほど立っていないあたりにありそう。

 残酷な日本人描写に関しては、まぁそこそこ。嫌な感じに描かれてはいますが、でもそれほど酷くもなく「う〜ん、戦時中はこれくらいのことはしてたかもねぇ」という感じ。収容所が舞台のせいか、それほど珍妙な日本文化描写も見られなかったし。
 当時のロビーカード等ヴィジュアル資料を見ると、日本刀による斬首のシーンがフィーチャーされていますが、劇中での描写自体は比較的あっさり。残酷さやエグさよりも、斬首人を演じるミルトン・リードというプロレスラーの、上半身裸の見事な肉体の方が印象に残るくらい。
 そっち系の興味で言うと、捕らわれたベラミー中尉(フィル・ブラウン)がシャツを脱がされて、ヤマミツ大佐に鞭打たれるシーンがありますが、これも描写自体はあっさりながら、事後の背中のミミズ腫れの様子がけっこういい感じ(笑)でした。

 DVDはイギリス盤。フィルムの状態は良く、オリジナルのシネスコ(正確には『メガスコープ』だそうですが)をスクイーズ収録、英語字幕もあり。付随のブックレット(24ページ)には写真や解説も盛り沢山の、とても良心的な仕様。
 そんなこんなで、キワモノを期待しちゃうと、意外にマトモなので裏切られるとは思いますが、本国でも70年代に何度かTV放送があって以降はソフト化されていなかったカルトものらしいですし、『空飛ぶモンティ・パイソン』がこの映画に影響を受けている云々もあるそうなので、興味のある方はどうぞ。
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 The Camp on Blood Islandで画像検索すると、こんな感じで、やはりやたらにプロレスラー斬首人のヴィジュアルが目立ちます。なかなかいい身体でしょ?

ゲイ・アート・ブック”Raunch”に作品収録

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 Bruno Gmünder社から出たゲイ・アート・ブック、”Raunch”に作品が収録されました。
 タイトルのRaunchってのは、「卑俗」とか「猥雑」とでも訳せばいいのかな? まぁそんな感じの切り口で、写真やイラストなどのゲイ・アートをまとめたハードカバーのアートブックです。

Gengoroh Tagame
 私の作品は、この1点のみ。昔「薔薇族」に描いたやつです。

 他はいろいろ、世界のあちこちから総勢40名近くのアーティストやスタジオの、Raunchな写真やイラストを収録。
 というわけで、内容を少しご紹介。

Kevin D. Hoover(アメリカ/ニューヨーク)
Kevin D. Hoover
この人の作品が、かなり私のテイストにマッチしていて、しかも収録作品数も多くて嬉しかった。

Inkedkenny(カナダ/トロント)
Inkedkenny
この人も好きなアーティスト。収録作品数も多し。

左/George Towne(アメリカ/ニューヨーク)、右/Jeremy Lucido(アメリカ/ロサンゼルス)
George Towne & Jeremy Lucido

Robert W. Richards(アメリカ/ニューヨーク)
Robert W. Richards

左/Strut Walker(アメリカ/ニューヨーク)、右/Darren Ankenbauer(アメリカ)
Strut Walker & Darren Ankenbauer

Grae(アメリカ/ニューヨーク)
Grae
キャラや状況設定に親近感。趣味が合いそう。

左/Andrea Madalena(イタリア)、右/Bearfighter(ドイツ)
Andrea Madalena & Bearfighter
左のAndreaとは、先日イタリアでボローニャの個展オープニングやベアパーティで会いました。モヒカンで笑顔が可愛いオーランド・ブルームって感じのナイスガイ。
with Andrea

Rubén Gauna(アルゼンチン/ブエノスアイレス)
Rubén Gauna
先日ベルリンで、Bruno Gmünderのスタッフに、この人の絵をプリントしたTシャツを見せて貰いました。同社が制作販売するようなことを言っていましたが、ネット上では情報が発見できず……って、良く考えたらお土産に一枚いただいていたんだっけ(笑)。
tshirts

《書誌データ》
RAUNCH / Various Artists

Photo Book
Pages: 160
Size: 21,5 x 28,5 cm / 8,5 x 11,25 inch
Format: Hardcover with dust jaket
Colour: full colour
ISBN 978-3-86787-664-3
May 2014
29,95 €

 残念ながら日本のアマゾンでは取り扱いなし。ご注文はアメリカやイギリスのアマゾンなどからどうぞ。

“Teddy Bear”

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“Teddy Bear” (2012) Mads Matthiesen
(米盤DVDで鑑賞→amazon.com

 2012年のデンマーク映画。
 母親の盲愛に縛られて自立できないアラフォーのプロ・ボディビルダーが、愛と女性を求めてタイに行くというヒューマン・ドラマ。
 この映画の原型となった、同じ監督&キャストによる短編”Dennis” (2007)は、ベルリンの最優秀短編賞受賞。

 38歳のプロ・ボディビルダー、デニスは、母親と二人暮らし。母は彼を溺愛しており、同時に彼をその愛で縛り付けてもいる。デニスはそんな母に「友人と映画に行く」と嘘をついて、女性とデートを試みたりするのだが、極端に奥手なので全く上手くいかない。
 そんなある日、デニスの叔父がタイからお嫁さんを連れてくる。二人の様子を見て、そして叔父から「タイなら彼女を見つけるのも簡単だ」と聞いたデニスは、母親に「ドイツの大会に出る」と嘘をついて、単身タイのパタヤへと旅行に行く。
 パタヤでデニスは、叔父が紹介してくれた斡旋人を訪ねるが、そこで紹介される女性はいわゆる商売女で、デニスが期待していた出会いとは違っていた。また、同地で西洋人がタイ人女性をはべらせて騒ぐ様子にも、どうしても馴染むことができない。
 そんな中、同地でボディビルジムを見つけたデニスは、自分の受賞歴を知るタイ人ボディービルダーとの交流を経て、ようやく一息つくことができ、やがてジムのオーナーである、未亡人のタイ人女性に心惹かれるようになるのだが……といった内容。

 何と言っても主人公デニスを演じるKim Koldの存在感が、その肉体共々素晴らしく(実際に様々な受賞歴のあるプロ・ビルダーだそうです)、その彼の俳優デビュー作でもあり、YouTubeでも公開されている前身となった前述の短編”Dennis”がとても良かったので、その長編版ということでかなり期待して見た一本。
 全体の雰囲気は実に穏やかで、静かで淡々としつつも温かみがあり、鑑賞後の後味も上々。
 ストーリー的には、実にシンプルな内容ながらも「この先どうなるんだろう」という要素で牽引していき、ゆったりしたペースながらも弛緩は皆無。
 ドラマ的にはエモーショナルな起伏もありますが、それすら描写自体は穏やかで、映画の半ば以上がタイが舞台というせいもあって、何というか、ゆったりとした空気感にしみじみ浸れる感じ。全体に漂う自然なリアル感も素晴らしい。
 筋肉の小山のような巨漢なのに、内気で気弱なデニスのキャラも良いし、ジム・オーナーのタイ人女性も、いわゆる美人では全くないけれど魅力的。どちらも演技的にはほぼ素人らしいですが、とてもそうとは思えない自然な佇まい。お見事です。
 ただ、見る人によっては、女性観が男性目線すぎると感じられるかも知れません。
 個人的には、男性同士やビルダー仲間となら屈託なく接することができるのに、女性相手だとどうしていいのか判らず、更に母子関係にも縛られた男を描いた内容なので、これはこれで良いのではと思いますが。

 さて、原型となった短編”Dennis”と比較してみると、あちらは主人公の《異形》としての煩悶にフォーカスが当たっていたり、また、ある意味で異様な母子関係を描いているのに、なのに不思議としみじみとした後味が残るというギャップがあったりしたのに対して、本作ではそういった要素は後退気味。
 そういった諸々の要素は、既に”Dennis”で語り終えたという風情で、こちらの”Teddy Bear”はその後日譚&決着編という感じです。なので、母子関係や主人公の内面という点では、2本続けて見た方がより味わい深くなりますし、逆に言えば、”Teddy Bear”単品を独立した作品として見てしまうと、いささかそういった部分に突っ込み不足が感じられてしまうかも。
 幸い”Dennis”もDVDのボーナスで入っているので、これは是非続けて見ていただきたいところ。

 というわけで、とにかくまずは、この主人公を愛おしく思えるかどうかがキモになると思いますが、私はもうバッチリでした。
 クオリティも高いので、単館上映系の映画が好きで、しかも筋肉男が好きな方だったら、これは激オススメの一本です。

 そして前身となった短編”Dennis”ですが、DVDにも収録されていますが、YouTubeでも英語字幕版が公開されています。

“Vampires: Brighter in Darkness”

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“Vampires: Brighter in Darkness” (2011) Jason Davitt
(アメリカ盤DVDで鑑賞→amazon.com、イギリス盤もあり→amazon.co.uk

 2011年制作のイギリス製テレフィーチャー。マッチョ系ゲイ・ヴァンパイアもので、いちおうシリーズ化の予定らしく、続編は”Vampires: Lucas Rising”となる模様。
 どんな内容かというと、一言で言えば……すっげー中二病でした(笑)。

 紀元500頃、古代ローマの軍人ルーカスは仲間と共に、永遠の命を求めて東欧の某所を訪れる。そしてそこでヴァンパイアの女王と出会い、首尾良く自分もヴァンパイアになる。
 それから1500年後、イギリスに住むゲイの青年トビー(美味しそうな身体+タトゥーの、犬系カワイコちゃん、ヒゲ付き)は、姉のシャーロットが仕掛けたブラインド・デートに出掛けるが、その相手がヴァンパイアのルーカス(ハンサム&ノーブル系、ちとワイルド、身体良し、ヒゲ付き)だった。
 トビーは自分のためにレストランを丸ごと貸し切りにしたルーカスにちょっと引きつつ、それでも彼に惹かれるが、「ホテルの部屋に来ないか」というお誘いは、今日のところは淑女らしくお断りする(ゲイだったら、ここは直行すると思うけどw)。
 またの再会を約束してルーカスと別れたトビーだったが、自宅の前まできたところに、シュッと目にもとまらぬ早業でルーカスが現れる。どうしてここにいるのとうろたえるトビーに、文字通り目を光らせて「君が好きだ、中に入れてくれ」と迫るルーカス。
 催眠術にかかったように(って実際に術にかかってるわけですが)ルーカスを家に入れてしまうトビー。そこでまた目を光らせてトビーに迫るルーカス。最初は嫌々していたトビーも「俺が欲しいんだろ?」と迫られ、結局「欲しい」と返事。お互いのシャツを激しく剥ぎ合い、ソファーに倒れ込み、荒々しく互いの身体をまさぐるうちに、ルーカスが「シャーッ!」と牙を剥きだして、トビーの首筋にガブリ。哀れ血を吸われて意識朦朧となるトビー。
 そこにドアを激しく叩く音。何とそこには、もう一人のルーカスがいた! どーゆーこと???
 実はトビーの血を吸っていたのは、ルーカスに化けた仲間の吸血鬼アンソニーだったのだ! 玄関で「僕を招きいれてくれ、トビー!」と叫ぶルーカス。朦朧としながら「入っていいよ」と答えるトビー。途端、ルーカスは部屋内に突入、トビーからアンソニーを引きはがす。
 しかし血を吸われたトビーは哀れ虫の息。そんなトビーの命を助けるために、ルーカスは自分の血を飲ませる。邪魔をされたアンソニーは逃走。やがて意識が戻ってパニックるトビーに、ルーカスは全て説明する(…ってもヴァンパイアの血を飲めば、その主のライフ・ヒストリーが判るという便利な設定なんですがw)
 トビーは自分がヴァンパイアになっちゃったことにショックを受けるが、でもまあルーカスのことを愛しているし(いつから???)すぐ興奮して牙出して「シャーッ!」ってやっちゃうけど、でも空中浮揚とかもできるようになったし、これはこれで悪くないかな、と納得(いいのか?)。
 というわけで、二人はもっとカジュアルでオシャレな服に着替えて(さすがゲイ)、夜の街にデートに繰り出す。デートといってもゲイクラブに行くとかじゃなく、超人的な身体能力を活かして屋根の上をピョンピョン、満月の下でロマンティックにキスといった塩梅。
 しかしその頃、ルーカスが仲間の承諾なしに勝手にトビーをヴァンパイアにしたことを、アンソニーやもう一人の仲間マーカスは問題視していた。更に彼らヴァンパイアの元祖である女王は、地獄(だか何だか)の扉を開けて、世界を破滅させヴァンパイア天国にしようとしていた!
 ここはお約束通り、世界破滅計画には荷担しないことにしたルーカス。ヴァンパイアの女王は招集を拒否したルーカスを裏切り者と決定。一方トビーは、ヴァンパイア化して数時間にも関わらず、恐るべき潜在能力を発揮。
 果たして世界は滅亡から救われるのか? ……ってな内容。

 実はこの後まだまだ、ルーカスが飛行機の屋根に乗ってエジプトへ行き、古代エジプトの元祖ヴァンパイア(神殿に鎮座しアヌビス神を侍らせながらも、なぜかイヤホンでヒップホップを聴いているというモダンっ子)に指導を仰ぎに行くとか、トビーの元彼が彼のことを忘れられず、家に強引に押しかけたときにアンソニーに攫われてしまい、そして結局その元彼もヴァンパイア化し、クライマックス直前あたりでは、もうゲイのヴァンパイアたちの痴話喧嘩の様相を呈してきたり、何の伏線もなく「古の錬金術師が作った《生きていて血を滴らせる石・ブラッドストーン》」だの、強大な力を持つ偉大な魔女だの、女神ヘカテだの、巨大サソリだの、トビーとルーカス危機一髪の時に唐突に昔なじみのサキュバスが現れて加勢するだの、もうトンデモ展開の目白押し(笑)。
 そんなこんなでツッコミ出すときりがない、全編通じて中2病フルスロットル!
 もちろん「実は××が巨大な力を秘めていて、後になって覚醒する」という定番展開なんかももありましてよ!
 いやぁ、笑った笑った(笑)

 とはいえ、なんか作り手の《愛と情熱》を激しく感じるので、ひどい出来っちゃあそうなんだけど、個人的にはかなり好きです。低予算なのは丸わかりだけど、でもその中で頑張っているのは伝わってくるし。
 あと男優陣(基本的に全員ヴァンパイア)が、なかなか上玉を揃えていて、演技力はともかくルックは全員悪くない。ちゃんとトビーは可愛く、ルーカスは格好良く見えるし、体育会系のアンソニーもなかなか。
 反面、女優はひどいんですけど(笑)。やっぱゲイが作ってるから、女はどうでもいいのかしら(笑)。
 ゲイ的にセクシーなシーンだと、トビーとルーカスが一緒にシャワーを浴びながら、互いにガブガブ噛み合い(笑)、肌を伝う血を舐め合うなんてのは、けっこう上手く撮られていて、あー基本的にはここが撮りたかったんだろうなぁという感じ。だったら下手な色気ださずに、もっとこぢんまりした話にすりゃいいのに……という気もしますが(笑)。ヴァンパイアの女王の世界征服のせいで、話がシッチャカメッチャカになっちゃってるので(笑)。
 あと、とにかく考えなし&唐突に話がどんどん進んでいくので、2時間もあるのに余分なことをしている余裕がなく、結果的に展開が早くなっているのも佳良。正直、演出自体(撮影もね)はへっっったくそなんだけど、でも飽きはしないという。
 特撮系も、この手の作品にしては頑張っている方で、クリーチャーも何種類か出てくるし(とはいっても俳優と絡んでアクションとかは殆どないんですが)、デジタル合成なんかも駆使していたり。
 まぁ、牙が突き出たヴァンパイヤ入れ歯のせいで、役者さんの滑舌が悪くなっちゃって、なんか喋りがモゴモゴしてヒアリングするのが大変だったとか、あと何かっつーとヴァンパイア同士が、その牙を剥き出して「シャーッ!」「シャーッ!」と威嚇し合うのが、なんかネコの喧嘩を見てるみたいで、その度に笑っちゃったりはするんですけど(笑)。

 というわけで、作品の出来自体は決して褒められたもんではないにも関わらず、それでも変なDVDスルー映画やVシネの「たりぃ〜、まだやってんの〜、さっさと終わんねぇかな〜」とは無縁で、ぶっちゃけ個人的にはかなり楽しめました。続編を作る気マンマンで、唐突に《引き》で終わるラストも爆笑だったし(笑)。
 そんなこんなで、好きだわぁ、これ! でも、トラッシュ趣味のない相棒は、横で退屈して居眠りこいてましたし、万人にはオススメいたしかねますが、予告編でピンときた人なら、タップリ楽しめるはずです。

“Fetih 1453 (The Conquest 1453)”

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“Fetih 1453” (2012) Faruk Aksoy
(トルコ盤DVDで鑑賞、米アマゾンで入手可能→amazon.com

 2012年制作のトルコ映画。メフメト二世とその腹心の軍人ハサンを主人公に、1453年のコンスタンティノープル陥落を描いた大作史劇で、トルコ国内では大ヒットを記録。英題”The Conquest 1453″。

 とある夜、コンスタンティノープルの夜空に凶兆である帚星が現れる。それと共に時のオスマン帝国のスルタンに王子が誕生、予言者はその子が偉業を成し遂げると告げる。
 やがて成長した王子が、腹心ハサンと剣の稽古をしている最中に父王崩御の報が届き、やがて王子はメフメト2世として即位する。祖父の夢を見たメフメトは、周囲の豪族を束ねコンスタンティノープル攻略を夢見るようになる。
 メフメトの勢いを恐れた東ローマ皇帝コンスタンティノス11世は、裏から手を回しカラマン侯国をメフメトにけしかけるが、メフメトはハサンの活躍によって情報を事前に入手、カラマン侯国に勝利する。コンスタンティノープル攻略に反対する宰相ハリル・パシャを押し切り、メフメトはその第一歩として城塞(ルメリ・ヒサル)を建設する。
 一方でハサンはウルバンという腕の良い技術者と出会い、その美しい養女エラに恋をする。コンスタンティノスはウルバンに大砲を建造させようとするが、ウルバンが拒否したため、エラを人質に取って建造を強要しようとする。しかしハサンが二人を救出し、メフメトの元へ届ける。ウルバンとエラは、オスマン軍のために、不落のコンスタンティノープルの城壁を破壊できる巨大砲を作ることにする。
 コンスタンティノスはヴァチカンと手を結んで十字軍の協力を得ようとするが、ローマはその条件として、東方教会がカトリックの権威にくだることを要求する。コンスタンティノスはそれを受け入れるが、第4回十字軍とラテン帝国の暴虐を知る重臣や、コンスタンティノープル総主教らは、それに反発する。一方のメフメトは、東方教会に対して信教の自由を保障する。
 やがて巨大砲が完成し、いよいよコンスタンティノープル包囲戦が始まる。しかしコンスタンティノープルに付いたジェノヴァからの援軍と、その隊長ジョヴァンニの働きにより攻城戦は難航する。しかもジョヴァンニは以前エラに結婚を申し込んだことがあり、ハサンとはライバル関係にあたる男だった。
 戦況が膠着する中、ハンガリーから十字軍が来て挟み撃ちにされるとの噂が流れ、疲弊したオスマン軍の兵士たちは次第に戦意を失っていく。またハリル・パシャも、そもそもこの作戦は間違いだったのだとメフメトに迫る。
 そういった状況に押されて、やがてメフメト自身も戦意を挫かれそうになるのだが、しかし……といった内容。

 スペクタクル史劇好きなら、間違いなく大いに楽しめる一本。
 160分の長尺のうち、前半の80分でコンスタンティノープル攻略に至るあらましを、後半の80分で攻城戦をたっぷり見せるという構成で、若干CGの粗はあるものの、スケール感や物量感では文句なしの大作。
 作劇的には、歴史劇的な叙事要素を、メフメト2世とコンスタンティノス11世を軸としたドラマで描き、アクション・アドベンチャーやロマンスといった娯楽要素を、ハサンとエラとジョヴァンニのパートで押さえるという構成をとっており、これがなかなか効果的で、重厚な歴史劇の魅力と痛快娯楽作の魅力が、上手い具合にサンドイッチ状態になっている印象。
 最大の見せ場であるコンスタンティノープル攻城戦は、表現自体は昨今のハリウッド史劇のアレコレと同じような感じで、特に個性や目新しさはないものの、既視感があれども迫力のある画面、テンポが良い展開、ハリウッド的ながらも効果的な劇伴など、諸々の要素が合わさって、十分手に汗握る見せ場になっています。
 そこに加えて、仲間意識や自己犠牲といった泣かせ場面とか、ライバル同士がぶつかり合う激しいアクション・シーンとかいった、娯楽ドラマ的に美味しい要素があれこれ出てくるので、気分的な盛り上がりはかなりのものですし、クライマックスなんかもベタながらも感動的で、ちょっと目頭が熱くなっちゃったりして。
 欲を言えば、ちょっとエピソードのつなぎがぎこちなかったり、説明不足と感じられる部分はあります。
 鑑賞後にウィキペディアで確認してみたところ、ウルバンの巨砲は連続発射が出来なかったとか、オスマン艦隊がジェノヴァ艦隊に破れた結果、丸太のコロを使って艦隊を山越えさせるという奇策をとったとか、そういったあたりはスペクタクル的な見せ場という面も込みで着実に描かれている反面、それらに至るあらましといった部分が些か犠牲になっている感があり。ハギア・ソフィア大聖堂(アヤ・ソフィア)で迎えるエンディングも、舞台設定や絵的な魅力は十分ながらも、もうちょっと余韻が欲しかった。

 人間ドラマの方は、メフメト2世とコンスタンティノス11世のパートは、やはりキャラクターとして自由に動かせる制約的なものがあるのか、またセリフ等に専門的な要素が多く、私の語学力ではちょっと追い切れない部分もあったせいか、生き生きというには少し物足りなさがあったんですが、ハサンとエラとジョヴァンニのパートに関しては、これはもう痛快娯楽時代活劇といった感じの判りやすさで、もうタップリ楽しめました。オマケに、ハサンもジョヴァンニも実にカッコ良い(笑)。
 ただこの二人、髪型といいヒゲといい衣装の色といい、実に良く似た外見で、慣れるまで見分けがつかなくて大変だったんですが(笑)、これはおそらくヒロインを挟んで相似形の対称関係ということで、意識して似せているんでしょうね。でないとここまで紛らわしくする理由はないし。因みに、こっちがハサンで、
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こっちがジョヴァンニ。
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 セミヌードなのは単に私の趣味(笑)。
 この二人もなかなかマッチョなんですが、他にも、ウチの相棒が大胸筋に興奮していたこのキャラとか、
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きっと全員ヤールギュレシ(トルコ国技のオイルレスリング)の選手なんじゃないかというこの連中とか、
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マッチョやヒゲといった目の保養もあれこれあり(笑)。
 ともあれ前述したように、全体を通して物量感はバッチリですし、衣装やセットも文句なしのハイ・クオリティなので、史劇好きだったらそれらを見ているだけでも目の御馳走。それに加えて、ダイナミックなストーリーと、魅力的な役者たちによる良く立ったキャラ……と、スペクタクル史劇的な醍醐味はタップリと堪能できます。
 題材に興味を惹かれた人なら、まず見て損はない一本だと思うので、日本盤DVD発売を切に希望。

「映画秘宝EX 最強アクション・ムービー決定戦」

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 本日発売のムック『映画秘宝EX 最強アクション・ムービー決定戦 〜筋肉と爆発のチャンピオンまつり〜」に、80年代以降のソードアクション映画(……の主にマッチョ系)について、ちょいと文章を書かせていただいております。
 混ぜていただけて感謝! ^^
 で、このムックなんですが、とても21世紀の映画本とは思えない暑苦しい表紙イメージ(褒め言葉です)の通り、中身の方も、写真図版といい可読性の限界まで詰め込まれた文字レイアウトといい、何とも素晴らしく暑苦しい(繰り返しますが褒めています)。
 日ごろ暑苦しい男を専門に描いている私が言うんだから、これはもう間違いなし(笑)。それぞれの書き手さんたちによる、愛と熱意と変な汁がギッチリ詰まったって感じの本で、熱気ムンムン。
 どのページ捲っても、「筋肉と爆発のチャンピオンまつり」という副題に相応しく、ひたすら過剰なパワーで押しまくり。図版は眉顰めて凄みを効かせたアクションスターばっかだし、テキストの情報量もスゴくて全部読むにはけっこう時間がかかりそう。
 というわけで大いに読み応えがあって秋の夜長の友としてバッチリ、少し肌寒くなってきた今の季節にもピッタリなので(そうか?)、宜しかったら是非お読みくださいませ。

映画秘宝EX最強アクション・ムービー決定戦 (洋泉社MOOK) 映画秘宝EX最強アクション・ムービー決定戦 (洋泉社MOOK)
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2012-11-01

“Aravaan”

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“Aravaan” (2012) Vasanthabalan
(インド盤DVDで鑑賞)

 2012年制作のインド/タミル映画。
 18世紀の南インドを舞台に、盗賊村や人身御供といったモチーフを、神話的な雰囲気で運命劇的に描いた時代物。

 18世紀の南インド。とある小さな村は盗賊で生計を立てているが、その村の盗賊団には、盗む相手は金持ちだけ、子供のいる家からは盗まない、盗みの際に血を流さない、などのルールがある。
 ある日、とある王妃の首飾りが盗まれ、その村に嫌疑がかかる。しかし村の盗賊団はその件には関与しておらず、盗んだのは一匹狼の別の盗賊だった。その盗賊を見つけ出し首飾りを取り戻せば、褒賞として大量の穀物を与えるとの条件で、村で一番の腕利きの盗賊コンブーディは、犯人を捜しに旅立つ。
 やがてコンブーディは、首飾りを盗んだ一匹狼の盗賊ヴァリプリを捕まえるが、彼の腕前と人柄に惚れ込み、仲間にしようと村に連れ帰る。村人たちは自分たちの濡れ衣の元となったヴァリプリを最初は拒否するが、彼が仲間になるための試練を見事にクリアする。しかしヴァリプリは、自分は天涯孤独の身だと過去を多く語ろうとしないため、村人の中にはまだ彼に疑惑を抱く者もいた。
 ある日コンブーディは、自分が村一番の腕利きだと証明するために、先祖代々難攻不落の砦に盗みに入ることにし、それにヴァリプリや他の仲間も同行する。盗みは上手くいったものの、逃走時にコンブーディが捕まってしまう。仲間たちは、もう彼の命運は尽きたのだと諦めるが、ヴァリプリは救いに戻るべきだと主張し、見事コンブーディを奪還する。しかしその最中、敵将がヴァリプリを《チーナン》と別の名で呼ぶ。
 コンブーディを連れて村に戻り、瀕死の彼を手厚く看護するヴァリプリに、コンブーディの妹は恋をしてしまい、恥を忍んで自分からヴァリプリに結婚して欲しいと頼むが、拒否されてしまう。そして、妹を思いやったコンブーディがヴァリプリを問い詰めると、彼は辛そうな様子で「自分は既に結婚していて妻がいる」と告白する。
 コンブーディはヴァリプリに、では天涯孤独と言ったのは嘘か、それにチーナンというのは誰のことだと詰め寄るが、ヴァリプリはそれに答えようとはせず、それをきっかけに二人の間には溝が生じてしまう。
 そんな中、様々な村から人が集まる祭りがあり、他の村から挑戦を受けたコンブーディは、一人で暴れ牛に立ち向かう。ヴァリプリは助力を申し出るが、コンブーディは拒否、その結果、牛の角で突かれて殺されそうになってしまう。
 見るに見かねたヴァリプリは、コンブーディを助けるために競技場に飛び込み、見事牛を倒すが、その直後、例の砦で彼を《チーナン》と呼んだ男が現れ、仲間と共に彼を取り押さえてしまう。コンブーディがそれに抗議をすると、男は「こいつは人殺しだ!」と答える。
 こうして、今まで謎だったヴァリプリの真の過去が、次第に明かされていくのだが、それは二つのいがみ合う村の間で起きた謎の殺人事件と、その背後の陰謀、そして過酷な人身御供の風習と、悲しい恋の物語だった……という内容。

 前半部分は盗賊村とヴァリプリことチーナンの話、インターミッションを挟んだ後半が、殺人事件と人身御供を巡るチーナンの過去話で、最後にそれらが一体化して、ギリシャ悲劇を思わせるような運命劇的なクライマックスに……という構成。
 地肌が剥き出しの岩山が主体の荒々しい風景の中、腰布一枚の裸の男達が織りなす、血に彩られた因果のドラマが繰り広げられる……という映画の雰囲気自体は、原始的な生命力を感じさせてくれて大いに魅力的。部分部分では、かなり印象に残る場面も多々あります。
 そういう感じで、かなり異色……というか意欲的な内容で、モチーフやテーマも実に興味深いんですが、映画の出来としてはちょっと惜しい結果なのが残念。ストーリー、キャラクター、俳優、美術などは佳良なのに、肝心要の演出がイマイチ。
 ストーリー的にはエモーショナルなエピソードも多いんですが、演出に巧さや溜めが足りないので、イマイチ心に迫ってこない。また映像的にも、魚眼レンズを多用したり変に構図に凝ったりはしているんですが、それがこれといった効果には繋がらず、単に新奇さだけで終わってしまっている。編集もぎこちなさが感じられますし、牛の暴走などのスペクタキュラーな見せ場が、チープなCGやイマイチのデジタル合成で白けてしまうのもマイナス要素。
 ストーリーの後半、当時、神殿などの建築時に人柱を立てる習慣が珍しくなかったこの地方の村では、(ネタバレを含むので白文字で)殺人事件の仲裁として、殺された男の仇敵の村から同じ年頃の男を一人、人身御供にすることで痛み分けにするという方法がとられることになるんですが、主人公は籤でそれに選ばれてしまい、30日後に首を刎ねられる運命となります。
 主人公を愛していた村娘は、父親の反対を押しきって、30日後には寡婦になることを承知の上で彼と結婚する。しかし彼は、事件の真相が判らぬまま自分が生け贄にされるのに納得がいかず、残された30日間で真犯人を捜そうとするのだが……
といった緊迫した状況にも関わらず、その合間にコメディリリーフやミュージカル場面が入るのも、インド映画のお約束が完全に裏目に出てしまった感じ。
 これでもし監督に力量があれば、例えばタミル映画の監督で言えばマニ・ラトナムとかバラとか、そういった監督が撮っていれば、かなりの傑作に化けた可能性もあるだろうに……うーん、何とも惜しい。雰囲気的にはパゾリーニの古代モノみたいな感じもあって、かなりいい感じなんだがなぁ……。
 ヴァリプリ/チーナン役の男優さんは、多分初めて見る人だと思うんですが、整った顔立ち(ちょっと華には欠ける感がありますが)のフィットネス系マッチョさんで、身体の線なんか実に綺麗。コンブーディ役の男優さんは、何本か見たことがある人ですが、“Majaa”で演ったヴィクラムの弟分が印象的だった人。目力と豊かな表情が印象的で、ガチムチ系で美味しそう(笑)な身体共々、陽性の生命力を感じさせてハマり役。
 あと、過去編に出てくるマハラジャの役が、何とお懐かしや『アシャンティ』や『007/オクトパシー』のカビール・ベディだったんですが、いやもうすっかりオジイチャンになっちゃって、言われなきゃぜんぜん判らなかった……。

 全体としては、モチーフ的に好みの内容だけに尚更「惜しいな〜」という感が強いんですが、こういう題材ならではの映像的お楽しみどころは色々あるので、興味を惹かれた方なら一見の価値はありかも。
 多くを期待し過ぎずにご覧あれ。
 予告編。

 主人公が人身御供に決まった後の土俗的/神話的なミュージカル場面。途中からいきなり娼館での歌舞場面に繋がっちゃうのがビックリなんですが、そこいら辺の感覚がやっぱイマイチ雑なんだよなぁ……。

 盗賊村のお祝い騒ぎのミュージカル場面。前半部はこういった陽性の大らかさが魅力で、それと後半のシリアス運命劇とのコントラストは見所の一つ。

“Force”

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“Force” (2011) Nishikant Kamat
(インド盤DVDで鑑賞→amazon.com

 2011年制作のインド/ヒンディ映画。警察と麻薬カルテルの闘いにロマンスを絡めて描いた、ジョン・エイブラハム主演のアクション映画。
 もともといい身体をしていたジョンだが、更にバルクアップしていてえっらいマッチョになっててビックリの一本。

 主人公ヤシュは警察の麻薬対策班。3人の仲間と共に潜入捜査をして、麻薬組織に大打撃を与える。
 捜査の最中にヤシュは偶然、同じ若い娘と何度かでくわす。マヤというその娘は、最初は見るからにギャング然としたヤシュを敬遠するのだが、彼が実は警察官だと知って心が動き始める。ヤシュは最初からマヤに惹かれているのだが、これまで友人以外には特に愛する人間もいなかった彼は、その気持ちを押し隠す。しかし次第に快活で積極的なマヤに押されていき、ついに彼女の方から愛の告白をされるに至り、自分の気持ちに正直になり彼女との結婚を決める。
 そんな中、壊滅的な打撃を受けた麻薬組織のボスの、若い弟で今まで海外にいたヴィシュヌが帰国し、組織は海外の麻薬カルテルとも組んで、これまで以上に活発に動き始める。
 次々と発生する新たな麻薬事件に、ヤシュたちのチームも情報屋を使って反撃を始める。そしてついに、組織のボス自ら赴いた取引現場を押さえることに成功するのだが、その際にボスを逮捕するのではなく、正当防衛で射殺したことで人権査問委員会にかけられ、ヤシュたちのチームは全員停職処分にされてしまう。
 そんな折り、ヴィシュヌは殺された兄の復讐を誓い、まず裏切り者の情報屋を一家諸共惨殺し、同様にチーム全員とその家族の殺害と、ヤシュに予告する。そして予告通り仲間の一人が、停職中で無防備だったところを、一緒にいた恋人と共に殺されてしまい……といった内容。

 まあこれは何というか、主演のジョン・エイブラハム(の筋肉)を愛でるだけの映画です(笑)。
 話としては良くありがちなB級クライム・アクションといった感じで、それ自体は別に悪くはないんですけど、正直エピソードの組み方など、お世辞にも上手いとは言えない作劇。正義とは何だとか、法の限界とか、愛とか、男たちの絆とか、あれこれ盛りだくさんではあるんですけど、あまり上手く捌き切れていないので、話としてはどうにも取っ散らかった印象に。
 だったらいっそ、クリシェ通りの痛快アクションにしてくれればいいんですが、後半のハードな展開とかウェットな要素とかが邪魔になって、全体の爽快感はイマイチ。ラストも「う〜ん、こんな形で伏線を回収されても……」と後味が悪い。
 個々のアクションとかの見せ場はそこそこ面白いし、シャープでスタイリッシュな映像のテイスト自体も悪くないんですが、演出として見せるまでには至らず。
 ただ「うぉ〜、ジョン・エイブラハムかっけぇ!」というポイントだけに絞って見る分にはオッケー。前述したように以前と比べてえっらいバルクアップしていて、“Dostana”の頃と比べるとビックリするくらいに筋肉モリモリになっています。 ^^
 そんなジョンが、ギャング風のいでたちで殴り合ったり、重そうなバイクを持ち上げて相手に投げつけたり(笑)、はたまたオシャレな装いでヒロインとロマンチックに絡んだり、銃弾打ち込まれて崖から突き落とされたり、悪漢と取っ組み合ったり……と、ジョンを愛でるという点では見所はいっぱい。
 でもって、悪役のヴィジュット・ジャムワル(?)という人も、これまたなかなかのハンサム&マッチョガイ。
 そしてクライマックスではこの二人が、戦っている間にまずジョンの服がキレイに破けて(笑)上半身裸になり、続けて悪役の服も同様に破けて最後は裸に……ってな楽しい展開に(笑)。笑っちゃったけど、でも正しい演出(笑)。

 というわけで、残念ながら映画の出来そのものはイマイチですが、こんなジョンと、
force_john
こんな悪役が、
force_villan
こんな風に対決する映画なので、
force_battle
個人的にはそこだけでも充分オッケーでした(笑)。
 ジョンのファンやインディアン・マッチョが見たい方なら、お楽しみどころありです。
 ”Force”予告編。

 インド映画ですが制作にはFOXが入ってます。
 制作サイドが推す見所もやはりジョンの肉体美らしく、プロモ映像もこんな感じ。

“Agneepath”

Blu-ray_Agneepath
“Agneepath” (2012) Karan Malhotra
(インド盤DVDで鑑賞、後にBlu-rayで再購入→amazon.com

 無実の罪で父親を殺された男の復讐を描いた、2012年公開のインド/ヒンディ映画。タイトルの意味は「炎の道」。
 主演はリティック・ローシャン。本国では今年の1月に公開され、オープニング記録を塗り替える大ヒットを飛ばしたそうな。
 1990年の同名映画(アミタブ・バッチャン主演)のリメイクだそうです。
 
 主人公・ヴィジャイ少年の父親はマンドワ島で教師をしており、未だ封建的なその地の人々の意識を近代的に変えようと試みていた。しかし古くからの藩主は、彼の人望を快く思っていない。そんな折り、藩主の息子で幼い頃から怪異な容貌でいじめられていたカンチャが島に帰ってくる。
 カンチャは製塩を営んでいる村人たちの土地を巻き上げてコカインの生産を始めようとするが、ヴィジャイの父親がそれを阻止する。結果、彼はカンチャによって少女強姦の濡れ衣を着せられ、村人たちにリンチされた挙げ句、カンチャの手でバンヤン樹に吊され、息子の目の前で殺される。
 ヴィジャイ少年は身重の母親と共に、島を逃れてムンバイへと行くが、臨月の母親がスラムの路上で倒れてしまう。しかし彼女はスラムの娼婦たちの手助けによって無事路上で出産、ヴィジャイには妹ができ、一家はそのまま、自分たちを助けてくれた娼婦のところに身を寄せる。
 そんな折り、ヴィジャイはムンバイ市中で父の敵カンチャの姿を目撃する。後をつけた彼は、コカインの売り込みにきたカンチャが、ムンバイの裏世界を支配し少女の人身売買を営むギャング、ラーラによって、手もなく追い返されてしまうのを目撃する。
 しばらく後、スラムの路上でラーラが裏切り者を処刑するという事件が起こる。ヴィジャイは目撃者として警察に呼ばれるが、集められた容疑者の中にラーラがいるにも関わらず「犯人はこの中にはいない」と嘘をつく。そしてその嘘に激昂した警察官と争いになり、その警官を射殺してしまう。
 こうしてヴィジャイ少年は、復讐のためにはまず力を手に入れることが必要だと、ラーラの元に身を寄せるが、母親はそんな息子を許さず、母子は絶縁関係となる。
 それから15年、青年になったヴィジャイは、今やラーラの右腕として、ムンバイの裏社会に大きな力を持つようになっていた。
 そんなヴィジャイに、彼の幼なじみで、妹が生まれる際に最初に助けてくれた少女でもあるカーリは想いを寄せている。しかし復讐に生きるヴィジャイは、彼女の気持ちを受け入れることができず、彼女もまた、仕方なくそんな状態を受け入れている。
 ヴィジャイと母親の関係は、未だ絶縁状態のままであり、15歳になった妹は兄の存在すら知らない。しかしヴィジャイは妹の誕生日が来るたびに、密かにプレゼントを贈っており、カーリ始めスラムの仲間たちも、そんなヴィジャイの想いを良く理解してくれている。
 一方で父の敵カンチャは、ムンバイの警察と裏で手を結び、密かにコカインの販売網を作りつつあり、ラーラの実の息子もコカイン中毒になっていた。それを知ったラーラは、息子に与える予定だったシマをヴィジャイに与える。息子はそれに反発するが、ラーラはヴィジャイは所詮捨て駒だと息子を諭す。
 そんな中ヴィジャイは、その状況を逆手にとり、カンチャに近づくルートを作るために、狂言の暗殺劇を仕組んでラーラと息子を罠にはめ、自分を完全に信用するように仕向ける。そして二人が罠にはまったところで、まず息子の方を、同じく罠にはめたカンチャの手下共々排除する。
 息子の悲報を聞いたラーラも倒れ、ムンバイの裏社会を手中に収めたヴィジャイは、マンドワ島に乗り込みカンチャと対峙する。しかしその最中、回復したラーラがヴィジャイの裏切りを知り、彼の妹を捕まえて売り飛ばそうとする。
 ヴィジャイは妹を救うために、急ぎムンバイに戻るのだが……といった内容。

 マッチョな孤高のヒーロー(リティック・ローシャン)のハードな復讐劇に、わだかまりによる肉親との分断という泣き要素、美しいヒロイン(プリヤンカ・チョープラー)との切ない恋模様、派手なアクション、そして歌と踊り……という、「これぞインド映画!」って感じの濃厚な一品。
 エピソードのディテールが不足気味など、作劇は昔ながらのインド映画らしい荒っぽいところがありますが、演出は今風の洗練された味わいで見所が盛り沢山。エモーション描写は、もうコテコテの濃ゆ〜いタイプですが、オーバー過ぎて笑っちゃうということもなく、そういった匙加減は上々。
 という感じで、インド映画的の伝統的な要素に背を向けるでなく、それらをしっかり押さえつつも、そこに今の感覚もプラスしたといった感じの、かなり見応えのある一本でした。
 そういった意味では、前に感想を書いた快作”Dabangg“と同じタイプですが、シリアス劇ということもあって、この”Agneepath”の方が伝統寄りで、そんなクドさもまた魅力的です。
 リティック・ローシャンは、マッチョさが更に増したという感じですが、アクション的な見せ場は意外と少なく、どちらかというと内面の煩悶描写に見せ場が多し。演技力の高さも手伝って、いわゆる超人的な強いヒーローではない生身の感じが良く出ていて、血と汗と涙にまみれた芝居も文句なしに熱い。またまたファンが増えそうな感じのカッコ良さです。
 敵役のサンジャイ・ダットが、また実に良く、子供の頃から「キモ〜い!」と虐められてきたというキャラなんですが、これが本当にキモくて憎々しい。ヒーローと悪役、この双方がしっかり立っている(しかもどっちも濃い!)のは、全体の成功の大きな一因では。
 この二人が対決するクライマックスは、ちょいと溜めすぎというか引っ張りすぎの感もあったんですが、そうやって引っ張っている間にリティックのシャツがビリビリ破れていき、逞しい上半身が剥き出しになる……なんて効果になっていたりもして、ちょい納得したり(笑)。
 ヒロインのプリヤンカ・チョープラーも、幸薄い系の役所なんですが、なにしろ美人だし、加えてそこかしこで、陽性でコケティッシュな魅力も振りまいているので、尚更その薄幸ぶりも引き立つといった塩梅で、これまた好配役。
 ラーラ役のリシ・カプールも、存在感といい演技といい文句なしの良さ。また、主人公の仲間でヒジュラ集団が出てくるんですが、これが安直なお笑い担当とかではなく、しっかり熱い見せ場に絡んできたりするのも、個人的に好印象。
 歌と踊りは、ロマンティック系はあまり印象に残らないんですが、後半にでてくるガネーシャ祭りと暗殺劇が交錯するそれは、これぞインド映画の醍醐味というか、インド映画でしか味わえないスペクタキュラーな見所となっており、ここだけでも一見の価値は充分以上にあり。

 そんなこんなで、とってもとっても「インド映画!」という感じで、インド映画的な良さはテンコ盛りで、かつ今風の作品らしく、極端な破綻や作りの乱暴さはない……といった出来なので、インド映画好きだったら文句なしに楽しめる一本だと思います。
「今」のインド映画を見たい方で、同時にこってり濃厚味が好きな方には、特にオススメしたい一本。
 予告編。

 とにかく圧倒される、ガネーシャ祭りのシークエンス。

男性下着ブランドAndrew Christianのデザイナー氏から下着をいただきました

andrewchristian
 Andrew Christianというアメリカのセクシー男性下着ブランドがありまして、そこの商品PVがいつも凝っていて、しかもゲイビですかってなくらいにセクシーなので、気に入ったのがあるとちょくちょくツイッターでツイートしていたんですが、その話が同ブランドでデザイナーをしていらっしゃるGodaさんに、お友達経由で伝わり、御礼としてバディ編集部経由で、同社の下着をいくつも贈っていただきました!
 いやぁ、ツイッターでこういうことが起きたのは初めてで、とてもビックリ&嬉しく、まずこの場を借りて御礼を申し上げます。
 ググってみると、Andrew Christianの下着は、日本でもあちこち扱っているショップがあるようなので、セクシー下着好きの皆様、ぜひお買い求めくださいませ。
 普段使いのプレーンなものでも、クロッチ部分が立体縫製になっていて、股間のモッコリがとてもとても強調されたり、或いはグッと扇情的に、バックが丸出しになっていたり、ジョックストラップ(いわゆるケツ割れ)にちょっとオシャレな工夫があったり……と、勝負下着 or プレイ用としても、実にヨロシイかと。

 というわけで自慢かたがた、いただいた下着をご紹介。
 まず、お尻が丸出しになるやつ。
ac1
 商品名が”Almost Naked (ほとんど裸)”というので、袋から出してバックを見たときに「……なるほど」とか思ったんですが、実際は、生地の肌触りがとても良く、ほとんど履いてないみたいな感じということらしいです。ケツ割れと比べるとストラップの食い込みがないとか、臀球のホールドがしっかりしていて心地よいとかいった感想も。

 そして、ブリーフ系と、ローライズ・ボクサーブリーフと、おしゃれケツ割れ。
ac2
 フロント部分を見ると判るように、どれもクロッチ部分が立体縫製になっていて、じっさいに履いてみると、ホント嫌ってほど股間が目立ちます。
 ……なんて言うと「履いた写真をアップしろ!」とか言われるんですが、そんなことをしたら逆に営業妨害になりそうなので(笑)、ここは前述したセクシーPVの数々の中から幾つか貼りますので、それでご確認くださいませ。

LICK by Andrew Christian from Andrew Christian on Vimeo.

A “Brief” Love Affair by Andrew Christian from Andrew Christian on Vimeo.

Andrew Christian Booty Camp from Andrew Christian on Vimeo.

Pink Paradise Pool Party by Andrew Christian: REMIX from Andrew Christian on Vimeo.

 検索したら、アマゾンでも幾つかヒットしました。あんまり過激なのはなかったけど(笑)。

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